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秋の終わりの審査

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秋の終わりの審査

収穫が終わり、あとは武闘会を待つばかりという時期のお昼過ぎ。

俺は五村のヨウコ屋敷にいた。

五村の報告がメインの会議があるからだ。

こういった内容だと大樹の村でやっているのだが、今回は資料の都合でヨウコ屋敷でとなった。

会議の参加者は俺とヨウコだけかなと思ったけど、シャシャートの街からやってきたミヨ、それとマルビットが参加した。

四人でコタツを囲み、コタツのテーブルの上にはフライドポテトとポテトチップスがある。

両方とも、作りたて。

俺が作った。

基本、塩味だが、 味変 ( あじへん ) のためにノリ塩、梅塩、マスタードを用意した。

ノリ塩、梅塩は、五村の新しい料理を考えているときにできた。

同じ料理ばかりで困るのなら、味を変えたらいいのだろうとの考えでだ。

評判はいい。

鬼人族メイドたちが、用途を広げようといろいろな料理に使い始めているぐらいだ。

マスタードはこちらの世界にも普通に存在している。

ただ、薬として使われていて高級品。

一般には出回らないのだが、ルーの要望で俺が【万能農具】を使って育てていた。

俺はそれがマスタードとはなかなか気づかず、かなり 悔 ( く ) やんだものだ。

気づいた今は、いろいろな料理に使われているし、各村で生産もされている。

一番多いのは大樹の村だが、今後は四村になるだろう。

あそこは浮遊庭園で、畑にできる土地が増えたからな。

文官娘衆たちも、外への販売品として期待している。

この場でも、評判はいいみたいだしな。

……

ヨウコ、ミヨ、マルビットの手が止まるようすがないが、そろそろ会議をしないか?

もう少し待て?

まあ、待つけど……

あ、ケチャップとマヨネーズを忘れていた。

追加しよう。

フライドポテトの追加?

どれぐらい必要だ?

最初と同じぐらい?

いや、最初の倍?

まあ、最初はお試し用と少なかったからな。

わかった。

俺はしばらく、フライドポテトとポテトチップスを作り続けた。

ヨウコたちに甘いわけじゃないぞ。

ヨウコ屋敷を警備しているザブトンの子供たちも欲しがったからな。

俺以外が気を取り直して会議を開始。

「ノリ塩が至高じゃな」

「梅塩も悪くなかったです」

「マスタードにケチャップは暴力的な味になりますね。

癖になります」

失礼、まだ気を取り直していなかったようだ。

温かい飲み物で落ち着いてもらおう。

食べていたのがフライドポテトとポテトチップスだから、緑茶がいいかな。

冷たい飲み物がいい?

コタツを出すのはまだ早かったか。

冷たい飲み物なら、炭酸入りのレモンジュースはどうだ?

シュワシュワしているが酒じゃない。

これも新しい料理を考えているときにできたものだ。

と言っても俺が炭酸を作ったのではなく、空気中から二酸化炭素を抽出し、高圧で出す魔道具をルーが作った。

魔法って凄い。

ただ、その魔道具は一台しかなく、持ち運べない。

なので大樹の村で炭酸水を作り、各地で味付けするスタイルになっている。

今回もそうだ。

「これは……なかなか」

「いいですねぇ」

「奇妙な体験です」

評判は……まあまあ、だな。

甘味が足りなかったかな?

炭酸水だけだと、甘くないからな。

もう少し、砂糖を混ぜるべきだったか。

そうみたいだ。

砂糖を増やして、おかわりね。

了解。

改めて、会議を行う。

真面目モードのマルビットの報告。

「天使族十人を教師役にし、五村に私塾を開きました。

評判は悪くありません。

いくつかの商人から、家庭教師として派遣してほしいとの要望もいただいております」

春のパレードで、魔王国における天使族の評判が予想より悪かったので、その回復策としての私塾開設だ。

まずは反発の少なかった五村で。

数年後にはシャシャートの街、王都で私塾を開く予定になっている。

「こちらが、派遣を求めてきた商人の一覧です」

マルビットがそう言って、文字の書かれた木の板をコタツの真ん中に置く。

それを見て、ヨウコとミヨが眉を 顰 ( しか ) めた。

「外部の商人ばかりじゃな」

「ですね」

五村やシャシャートの街の商人ではないらしい。

「私たちと 誼 ( よしみ ) を通じ、あわよくば村長への繋ぎにしようと画策していると思われます」

なるほど。

そんなことをせず、素直に訪ねてくれたらいいのに。

いや、たしかに俺はなかなか五村に顔を出さないけどな。

それで、断ったのか?

「いえ。

相手の目論見はわかっていますから、それらをエサにしつつ便利に使っていこうかと」

……

そういうことをするから、天使族の評判が悪いのではないだろうか?

あと、五村やシャシャートの街の商人じゃないなら、どこに教えに行くんだ?

宿か?

「いえ、その商人の本拠地がある街です。

ちょっと遠い場所になりますね」

大丈夫なのか?

「数人で行かせますし、ほかの街に堂々と行けるチャンスです。

情報を収集させます」

ま、まあ、ほどほどに。

俺が会う必要があるなら、なんとかするから。

「いえいえ。

村長のお手を 煩 ( わずら ) わせるようなことはいたしません。

ご安心ください」

わかったけど……

なんだろう。

真面目モードのマルビットって、頼もしいけどあまり安心できない。

ティアと違って、つき合いの長さが問題なのかな?

俺が心配そうな顔をしていたからか、ヨウコが励ましてくれた。

「村長。

こやつはこれでも天使族の長で、長らくガーレット王国を指導していたのだ。

失敗をせんとは言えんが、意地でも村長や五村に被害はおよばさんよ」

できれば魔王国にも被害をおよぼさないでほしい。

「善処します」

頑張ってください。

次はミヨ。

「五村保有の交易船は、今年の秋の段階で大型船三隻、中型船八隻、小型船十六隻となっています。

全て、シャシャートの街や商人に貸し出し、活用しているのですが……」

五村の資金を活用する方法として、数年前から船を造って貸し出すことをしている。

シャシャートの街での交易が活発になれば、その影響で五村も栄えるとの 目論見 ( もくろみ ) でだ。

そして、その目論見通りの成果は出ている。

これまでなかった品が流通したりしているしな。

問題なしという報告かなと思ったら、違った。

「今後の造船予定はどうなりますでしょうか?」

今後?

「いまと同じペースで造船の発注があるのでしたら、造船ドックの拡張をしようという意見がありまして……

正直に言えば、船大工たちから聞いてきてほしいと頼まれたんです。

今後も同じ量の発注があるのかどうか」

なるほど。

えーっと、ヨウコ。

「こちらの資金に問題はない。

船の貸し出し先に困っているわけでもない。

数年はいまのペースで問題なかろう。

あ、いや、増やせるなら増やしたい」

「残念ですが、船大工が足りません。

船員を育てる時間も必要です。

いまのペースが限界です」

「造船ドックを拡張するのであろう?」

「現状で厳しいから拡張案が出ているのです。

それに、船を求めるのは五村だけではありませんから。

独占すると恨まれますよ」

「むう」

そういうことで、現状維持で。

「承知しました。

では、そのように伝えます」

よろしく。

最後はヨウコ。

このヨウコ屋敷で会議をすることになった理由の資料が、どっちゃりとコタツの上に乗せられる。

「全て、村長宛ての 嘆願書 ( たんがんしょ ) だ」

……

これ、全部?

「うむ。

嘆願の内容は……簡単に説明すると 庇護 ( ひご ) 者になってほしいというものだな」

出資してほしいということか?

「それもあるだろうが、村長に認めてもらえることのほうが重要のようだ」

俺が認める?

「うむ。

五村の村長が認めた誰それ、という称号がほしいのであろう。

よって、我では判断できんのでな。

村長に任せる」

なるほど。

軽く見てみるが、大工、絵師、料理人、技師、発明家、薬師、魔法使い、小説家といろいろな職業から、届けられているようだ。

こういったのは前からあったのか?

「いや、この夏からだ」

夏から?

なにかあったっけ?

「なにかあったのは春だ。

魔王国のパレードに村長が参加したであろう?」

パレードに参加しただけで、この量の嘆願書が届けられる理由がよくわからないのだが?

「いやいや、あのパレードでは村長はかなり目立っておった。

そして、さきも言ったが、その村長に認めてほしいということだ。

ああ、怪しげなものや 詐欺 ( さぎ ) の 類 ( たぐい ) は省いておる」

その精査で時間がかかり、ここまで溜まるまで俺のところに来なかったと。

「定期的に話は振ったぞ。

後回しにされたが……」

それはすまなかった。

「そろそろ処理していかんと、待たせ過ぎるからの。

ここにあるのは、我も認めてよいと思われるものを優先しておる」

だったら、もうそれだけで認可なんだけどな。

俺が認める必要があるというのは、責任が重い。

ちゃんと読んで、審査しなければ。

……

とりあえず、ランク制にしよう。

「ランク制?

急になんの話だ?」

俺が認める度合いだ。

正直、嘆願書を読んでも判断できん。

すでに成果があるものならわかるが、そうじゃないなら悩むだけだ。

そこで、ヨウコの審査を通った者を星一つとする。

成果を出して、星二つ。

成果を出し続けて、星三つ。

これでどうだろう?

「おお、わかりやすい。

さらに向上心にも繋がる。

星一つはお試しであると周知させれば、悪用も防げるか。

ふむ。

そういったことを考えさせると、村長は頼もしいな」

楽がしたいだけだ。

「ふふふ。

ランク制は採用しよう。

ただ、最初の星一つを我の審査だけで決めるのは困る。

何度も言っておるが、村長に認めてもらいたいのだ。

村長にも審査してもらう」

えー。

「なに、先ほどまでよりは判断が楽であろう。

ミヨ、マルビットに意見をもらいつつ、一つずつ審査していこうではないか」

ヨウコの言葉に、ミヨとマルビットが頷いてくれる。

フライドポテトとポテトチップを食べた分は手伝ってくれるそうだ。

ん?

ザブトンの子供たちも手伝ってくれるのか?

ああ、フライドポテトとポテトチップを食べたからな。

わかった、助かる。

……よし。

それじゃあ、できる範囲で審査していこう。

しばらくのあいだ、俺は五村で誰を庇護するかの審査を続けることになった。

村長   「二酸化炭素の抽出の仕方は知っている。石灰石に塩酸」

村長   「塩酸?」

村長   「塩酸って、どうやって作るんだ? 電気分解が必要だったか?」

村長   「あと、塩酸って扱いが難しかったよな」

村長   「……」

村長   「ルー、魔法でなんとかならない?」

村長   「夏に出して、いまは秋の終わり……待たせ過ぎじゃないか?」

マルビット「こういったものは、待たせても大丈夫よ」

ミヨ   「そうですね。庇護希望なら数年待たせることはあります」

ヨウコ  「うむ、しかし五村のために働きたいという意欲もあるからな。急いでやりたい」

村長   「頑張ります」

お待たせしてすみません。

納税、歯医者、花粉症、その他でちょっとバタバタしておりました。