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試験開業から正式開業

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試験開業から正式開業

五村で洋菓子店フェアリーフェアリの試験開業が始まった。

数日行う予定で、初日は招待客のみ。

二日目以降に一般開放。

数日、営業してみて一度、店を閉める。

そこで改善できるところは改善し、本格的に営業を開始する。

初日は俺も招待されたというか、店長なので顔を出さないといけない。

しかし、主役となるべきは店長代理のロロネだ。

だから俺は子供たちを連れて行った。

「ロロ 姉 ( ねぇ ) だぁ」

「よそいきの服だぁ」

ロロネは子供たちに囲まれ、少し照れながらしっかりと仕事をしていた。

試験開業で出される商品は、全て妖精女王が試食して認めた味。

招待客からの評判はいい。

商品の説明は従業員がしてくれる。

ということで、俺は招待客との挨拶に終始した。

俺が今回の主役はロロネだと思っていても、対外的には店長代理。

招待しておいて店長代理に挨拶させるのは問題になるからな。

ちゃんと店長の俺が挨拶しないといけない。

ただ、よく知らない人もいるのでヨウコに手伝ってもらいたいのだけど……

ヨウコは俺と一緒にやってきたヒトエの相手をしないといけないからな。

仕方がない、頑張ろう。

夕食後。

大樹の村に戻ってきたロロネから、洋菓子店フェアリーフェアリの試験開業の初日は無事に終了したと報告を受ける。

申し訳ないが、俺は途中で子供たちと大樹の村に戻っている。

招待客は午前中に全員が来てくれたからな。

午後は店を閉めたのだが、ロロネは従業員たちといろいろとやることがあるので一緒には戻れなかった。

大丈夫だったか?

「はい。

問題ありません」

やっていけそうか?

「いまのところは大丈夫です。

なにかあったらご報告します」

うん、頼んだ。

ロロネは隠したり抱え込むタイプじゃないから、なにかあったら素直に報告するだろう。

補佐役の天使族たちもいるしな。

まあ、だからと言って任せっぱなしはよろしくない。

定期的に店に顔を出さないとな。

あと、セナにもロロネの様子をよくみるようにしてもらおう。

ああ、そうだ。

制服のほうはどうだった?

昨日、急に渡したから心配だったんだが?

職人には白いコックコートとコック帽、販売員には白色を基調としたメイド服とキャップ。

そして、補佐役の天使族には淡いクリーム色のジャケットとロングスカートを渡した。

「従業員一同、喜んでいました。

気合が入ると」

そうか。

それはよかった。

「私にはちょっとお洒落すぎるかなと思ったのですが……」

ロロネには店長代理として薄い緑色のジャケットとロングスカート、白いシャツと赤色の 紐 ( ひも ) ネクタイを渡した。

いまもそれを着ている。

よく似合っていると思うぞ。

「そうですか?

えへへ……」

ほかが白色やクリーム色で、ロロネだけが緑色なのは店長代理として目立つようにだ。

見知らぬ者が訪れても、 侮 ( あなど ) られないようにとのザブトンの心配りだな。

「あと、あの子たちも……」

店の警備を担当するザブトンの子たちだな。

店内にいても違和感のないように、ザブトンから子供たちにコック帽が配られている。

似合っていた。

ちなみに、そのコック帽をひっくり返すと中から建物の色に紛れる迷彩シートが出てくる。

迷彩シートがなくても隠れられるが、少しでも安全にというザブトンの親心だろう。

その迷彩シートにハクレンの鱗を粉にしたものを仕込み、魔法に対しての防御を向上させたのはルーだ。

俺じゃないぞ。

許可を出したのは俺だけど。

まあ、それは置いておいて……

チョコの評判はどうだった?

悪くないと聞いているが、俺の前だからな。

遠慮しているかもしれない。

「大絶賛でした。

ただ、やはり販売数を気にされる方が多く……」

そうだな。

一日一個は俺も少ないと思う。

しかし、カカオの収穫量が少ないからな。

四村での増産以外に、ほかの場所で生産しないと増やすのは厳しいかもしれない。

広い場所でと思うが……

五村の周囲は、すでに牧場や畑にしていて、空いている場所もなんだかんだと開発計画があるので難しい。

シャシャートの街も似たようなものだな。

あとは……少し前に行ったメレオの繁殖地。

あそこは魔獣や魔物はいるけど、土地はあった。

大きいカカオ農園が作れるだろう。

問題は許可されるかと、世話や収穫をする人手と、遠いから俺の管理を離れる点だな。

まあ、頭の中で考えても仕方がない。

ビーゼルに相談してみよう。

とりあえず、チョコの数はいまのままで。

なんとかしたくても、どうしようもない。

ロロネから、なにかあるか?

「そうですね。

試験開業は、問題が起きなければあと五日ほど続けようと思います。

かまいませんか?」

ああ、問題ない。

ロロネの判断に任せる。

何度も言っているけど、最初っから大儲けできるとか考えていないから。

無理せず、従業員と一緒になって店を盛り立ててほしい。

「はい。

頑張ります!」

十日後。

洋菓子店フェアリーフェアリは正式開業を開始する。

まだ開店していない。

そんな店の前に、十台の 幌 ( ほろ ) つきの小さい四輪のリヤカーが並んでいた。

リヤカーの荷台部分には魔道具の冷蔵庫とレジスターが設置されており、なにかを販売する目的だとわかる。

もちろん、扱う商品はケーキだ。

このリヤカーはケーキを移動販売するために用意されたもの。

リヤカー一台につき、護衛兼運搬要員二人と販売員二人が配属される。

リヤカーが十台なので、合計四十人。

リヤカーを運営するために新たに雇われ、フェアリーフェアリで短期研修を終えた四十人が、店前に綺麗に整列していた

それに対するはロロネ。

「全員揃っていますね。

では、一号車から十号車、活動開始!

お気をつけて!」

ロロネの掛け声で四十人が一斉に敬礼し、動き出す。

「一号車、行ってまいります!」

「二号車、発車!」

「三号車、出ます!」

それぞれが担当のリヤカーを引いたり押したりし、五村の中央部に向かって移動させる。

リヤカーにはそれなりの荷物が載っているので重いが、実はリヤカーも魔道具で車輪の回転をアシストしてくれる。

魔法動力のアシスト付きリヤカーだな。

五村は小山だから、坂道が多いのでその対策だ。

山エルフたちが、ギアの組み合わせにかなり悩んだと誇らし気に言っている自信作となる。

ぶっちゃけ、リヤカーにせず、浮遊庭園のように浮かして押せばいいのではと思うが……

しかし、浮遊庭園を使うにはルーの協力が必須で、ルーは店に設置する魔道具のほうに力を入れていたからな。

山エルフたちに頑張ってもらった。

そう考えると、今回は山エルフたちにはいろいろと頼んでしまった。

なにか 褒美 ( ほうび ) ……偉そうだな。

感謝を伝えることを考えておかないとな。

五村の中央部に向かったリヤカーは、あらかじめ決められた場所に移動し、ケーキの宣伝と販売を開始する。

それだとせっかく作ったフェアリーフェアリに客が来なくなるのではと思われるが……

客はもともと来ないだろ。

実際、不便な位置にあるからな。

試験開業でそれは判明している。

だからこその移動販売。

客が来ないなら売りに行けばいいのだ。

あと、ヨウコが洋菓子店をさらに数店舗、五村内に欲していたのでどこに出店するのかの調査も兼ねている。

ケーキがよく売れる場所や時間帯を調べてもらうわけだな。

最後に、ケーキの 又売 ( またう ) りの対策だ。

フェアリーフェアリが不便な場所にあるので、購入したケーキを五村で売るということが発生している。

暴利を 貪 ( むさぼ ) っているわけではないので見逃したいが……

扱っているのが当日に食べてほしい 生もの ( ケーキ ) 。

又売りする者の扱いが悪く、食中毒が発生しても困るのでなんとかしなければということだ。

ちなみに、ゴロウン商会が又売りをするのは日持ちするチョコなので、そっちは問題にしない。

事前に話し合って決めたことだしな。

まあ、当面はフェアリーフェアリは移動販売するためのケーキ作りの工房となるだろう。

移動販売でケーキと店の宣伝をしつつ、フェアリーフェアリの周囲が発展していくのを気長に待ちたい。

後日。

五村の各地でケーキを移動販売するリヤカーの後ろに、お茶を販売するリヤカーの姿があった。

「ケーキを食べるとお茶が欲しくなるそうで。

かなり売れています」

ロロネがそう報告した。

商機は逃さないらしい。

頼もしく感じる。

●エスカレーターの前で

ライメイレン「これしきで 臆 ( おく ) するとは」

ヨウコ   「浮いとる浮いとる! 浮遊魔法を使っとる! ずるっこじゃ!」