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新技術

異世界のんびり農家 — ncode.syosetu.com · All chapters

新技術

山エルフたちは、飛行船や 多目的人型機動重機 ( アーティ・ホース ) を調査し、いくつかの新技術を獲得したと成果を発表してくれた。

わかりやすい技術ではない。

正直、興味のない者がみたら、なにこれと言って流される。

しかし、わかる者にはわかる。

名前は知らないが、回転シャフトの連結や、横回転を縦回転にする構造。

なにかの構造でみたことがある。

こういった技術が積み重なって……

多目的人型機動重機になるのは、先が長そうだな。

「多目的人型機動重機がゴーレムに負けた理由が、なんとなくわかります」

発表した山エルフが暗い顔をする。

正直、多目的人型機動重機よりも、ティアが作るゴーレムのほうが簡単便利。

修理とかのメンテナンス性もゴーレムのほうが上。

「で、ですが、捨てがたい……」

泣くな。

大丈夫だ。

研究は続けてもらうから。

「村長」

頑張ろう。

「はい!」

村にはクリムの一号機のほかに、四機の多目的人型機動重機がある。

二号機、ベンゼ。

いろいろと角張ったデザインの機体。

ゴリラと言えばイメージしやすいかな。

三号機、ポカ。

曲線が多用された、ずんぐりむっくりな機体。

手足が短い。

しかし、パワーは四機のなかでもっともある。

これのイメージは……フグかな。

膨らんだフグに手足がある感じ。

四号機、ラーロック。

四機のなかでは、もっとも人型に近い機体。

それゆえ、ちょっと貧相に見えたりする。

しかし、人型に近いのでパイロットからは操縦しやすいと高評価。

イメージは……細身のドワーフ。

五号機、ハナサカ。

足の裏に巨大な球が無数にあり、それを転がして滑るように移動できる機体。

重機として踏ん張りが利かないのではと不安になるも、踏ん張りが必要なときは足の裏の球のあいだからスパイクが飛び出して地面を掴む。

イメージは……なんだろ?

サメかな?

サメに細い手と太い足をつけた感じ。

この四機を戦わせる案が出ているが、壊れる可能性が高いので不許可としている。

だが、性能比べやパイロットの腕比べはかまわない。

なので、多目的人型機動重機を使っていくつかの競技を行った。

武闘会で。

試合の合間の出し物として、ちょうどいいかなと思ったんだ。

まず、用意された丸太を規定数切って、指定された場所に運ぶ競技。

操縦者の腕が大きく影響した。

ユーリの扱う機体が一着のようだ。

あとはパイロットの腕の差で二着、三着と……

機体性能の差は、あまり感じられない。

さすが重機か。

遠投。

物を遠くに放り投げる競技。

今回は距離だけでなく、高さも競ってみた。

これは機体性能の差というか、腕の形状の差が出た。

もっとも人間に近い形状の四号機、ラーロックがもっとも遠くに、そして高く投げることができた。

腕だけじゃなく、肩や腰もしっかり使っていたしな。

それ以外は、似たような感じ。

障害物競走。

障害物の置かれたコースを、突破していく競技。

ハナサカが速かったんだけど、段差で転倒してしまった。

転倒時に破片が飛び散ったけど、壊れたのは競技開始前に装着した保護部品。

重機本体に破損はなかった。

よかった。

ただ、転倒したハナサカは自力で起き上がれなかった。

今回はほかの重機で起こしたけど、意外な弱点だな。

まあ、車とかも転倒したら自力で起きることはできないけど、車と違って手足があるから起きられると思っていた。

山エルフたちの話では、自力で起き上がれるのはラーロックぐらいだろうとのこと。

ベンゼはパイロットが頑張れば。

ポカは駄目だろうと。

まあ、体形をみてたらそうかな。

ちなみに、クリムのジークフリートは……

転倒しても、改めて召喚することで起きた状態にできると。

なるほど。

トラブルはあったものの、試合の合間の出し物としてはそれなりに盛り上がった。

あと、これまで多目的人型機動重機にあまり関われなかった村の住人に紹介できたのもよかった。

とくに、一村、二村、三村の住人は縁遠かったからな。

ただ、いろいろな種族に触れてもらい、コックピットの弱点が判明。

多目的人型機動重機のコックピットはかなり広く作られているので、体の大きい種族でも対応できている。

ただ、ケンタウロス族は無理だった。

なんとかコックピットに入れても、フットペダルの操作に難があった。

「種族ごとのコックピットが必要ですかね」

山エルフが検討しているが……うーん。

難しい問題だ。

武闘会が無事に終了し、冬に向けての準備が本格的に始まる。

……

なのに、俺は村の南の 開 ( ひら ) けた場所にいた。

目の前には車体。

以前、パレードで使った合体変形する馬車だ。

なので、馬車ではあるが馬の姿はない。

「それでは始めます」

山エルフの合図で、馬車が自走する。

誰も乗っていないように見えるが、馬車の内部には 箱 《 インテリジェンス・ボックス 》 が収まっている。

馬車の前方に 覗 ( のぞ ) き窓があるから、そこから外を見ているのだろう。

馬車は自在に動いている。

この馬車の動力は、魔石。

魔石から得られるエネルギーを動力としている。

これらは何度か見ているので、いまさら驚いたりはしないが……

あ、いや、これまでと違い、かなり動きがスムーズだ。

「車軸を独立させたことで、 急旋回 ( せんかい ) などもできるようになりました」

車軸を独立って……

ひょっとして、車輪一つに一つの動力?

「はい。

同期させるのに手間取りましたが、重機の調査で得た技術で……」

それはすごい。

が、その、じゃあ、左右に曲がるのは車輪の回転速度でか?

見た感じ、車輪が曲げられているようには見えない。

「以前はハンドル操作で車輪を傾けていましたが、これでも曲がれるので」

動力を車輪に 直付 ( じかづ ) けしたから、曲げる余裕がないんだな?

「そうとも言います」

なるほど……しかし、それだと車輪のグリップ力を上げないとな。

「グリップ力ですか?」

ああ、そうじゃないとどこかの車輪が滑ったら急に曲がる。

速度を出していたら、転倒する危険性が高い。

そう言ったタイミングで、馬車が盛大に転倒して大破した。

「救護班、出動!

急げっ!」

待機していた山エルフたちが、箱の救助に向かった。

大破した馬車から掘り出された箱は……保護部品に囲まれていたので無事のようだ。

「武闘会のときも思いましたが、保護部品は有効ですね」

そうだな。

箱を乗せるときは、できるだけ着けてやってくれ。

あと、人が乗ることを考えて、人用の保護部品というか安全部品の開発も頼む。

「承知しました。

頑張ります」