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お店とヨウコの休暇

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お店とヨウコの休暇

大樹の村、店舗計画。

大樹の村にも店がいるのではないだろうか。

仕事に必要な物は村から出すが、個人で欲しい物があるときに入手手段がない。

その入手手段として店がほしい。

そういった俺の考えから、かなり昔に俺が勝手に計画していた。

しかし!

残念ながら計画は 頓挫 ( とんざ ) している。

なぜなら、まだ村に通貨がないから。

いや、通貨はある。

あるんだ。

金貨、銀貨、大銅貨、中銅貨、小銅貨と山のように。

ただ、これらは外部との取引で使われるだけで、村のなかでは使われていない。

通貨の前段階として始めた褒賞メダルで、個人で欲しい物を入手できるようになったからなぁ。

ちなみにだが、褒賞メダルの交換や仕事に必要な物を求めるときは、大樹の村では各種族の代表が取りまとめることになっている。

大樹の村以外では、各村の世話役が取りまとめて大樹の村に伝える形だな。

だから、一村は獣人族の女の子、マムに。

二村はリザードマンのナーフに。

三村は文官娘の一人、ラッシャーシが取りまとめている。

四村には世話役がいないが、ベルか万能船の行き来があるので万能船の船長のトウが取りまとめて伝えてくれている。

温泉地はヨルが大樹の村に来たときだな。

まあ、まだ大樹の村に店を作る頃合いではないのだろう。

もう少し、各村の住人が増えたら改めて考えよう。

そう思うのだが、実は店舗はすでに完成している。

そう、完成しているんだ。

ハイエルフたちが、頑張って作った。

居住エリアに。

陳列用の棚が並んだ、コンビニや雑貨屋みたいな感じの店を。

ただ、さきほども言ったけど村に通貨はない。

では、この店はどのように使われているのか?

物々交換所として、利用されている。

物を置く、そしてなにかを持って帰る。

それだけ。

もちろん、最初になにかなければ交換は成立しないのだが……

自宅で採れた野菜とか、仕事での試作品、使わなくなった道具などを置いて、なにも持っていかない者がいるので成立している。

厳密に言えば交換せずに持って帰ってもいいらしいので……

これって物々交換じゃないな。

まあいいか。

余っている物を置き、必要な物を持って帰る感じだ。

なんにせよ、村の住人の交流の場として活用されている。

ちなみに、この交流の場となっている店。

正規の店員はいないが、ザブトンの子供たちが当番で管理している。

当番の主な仕事は、店の開け閉め、あとは店を閉めるときに日持ちしない物が残ってしまったとき、それを俺の屋敷に持って帰ること。

幸いなことに、日持ちしない物は人気なので、なかなか残ることはないそうだけど。

ザブトンの子供たちが当番で開けているので、悪天候のときや雪が深いときは閉まっていることが多いそうだ。

おっと、そうそう。

この店舗。

せっかく店があるのだからと、村の住人や子供たちの、買い物を練習する場所として使われることがある。

その場合だけ、ちょっとした品を並べて買い物の真似事ができる。

お金の数え方や、商品の受け渡しなど、なるべくトラブルにならないようにと売り手、買い手のどちらの立場でも大丈夫なように教えている。

意外だったのは、文官娘衆の面々。

彼女たちは大半が貴族の出身なので、買い物は執事や侍女に頼むか、店の者を家に呼ぶスタイル。

その際もお金のやりとりは本人がせず、執事か侍女がする。

貴族の御令嬢は、自分でお金に触れないらしい。

触れるにしても、金貨とか銀貨のみ。

これは偉ぶっているのではなく、通貨はいろいろな人が触れるからだそうだ。

衛生面を考えると、触らないのが最適と。

金貨や銀貨は、執事が磨いているから安全らしい。

なるほど。

……

防疫 ( ぼうえき ) のことを考えると、定期的に通貨の洗浄はしたほうがいいのかな。

大丈夫?

大樹の村に持ち込まれた通貨は、ルーやティアが魔法で洗浄していると。

村以外でも、国やそれなりの商会が入手した段階で、魔法で洗浄されている?

でも、誰もがそういった魔法を使えるわけじゃないんだろ?

小さな村とかだったら……

魔王国では教会が、通貨の洗浄を請け負っている?

宗派によってやらないところもあるけど、大きいところはやっていると。

へー。

そうだったのか。

話がそれたが、店舗を使って練習することで、村の外でも困ることは少ないだろう。

村での練習で自信がついたら、五村で実際に買い物をするそうだ。

などと思いながら、店舗で買い物の練習をしている子供たちの様子をうかがった。

「これ、いくら?」

「中銅貨二十枚だよ」

「高いなぁ、中銅貨十枚でどう?」

「あー、中銅貨十八枚」

「うーん、中銅貨十二枚」

「中銅貨十七枚で」

「中銅貨十三枚!」

「よし、売った!」

買い手役の子と、売り手役の子が売買成立と同時に教師役の天使族を見た。

見られた天使族は商品を手に取り、裏に貼られた値札を子供たちに見せる。

「仕入れ値が中銅貨七枚、適正価格は中銅貨十枚。

だから買い手はちょっと高く買っちゃったかな。

もっと驚くぐらい低い値段からスタートしないとねー」

「えー、半額でも駄目なの?」

「十分の一からでも、駄目なときがあるわよー」

「ぬうう……価格の表示義務がほしい」

「ふふ、たしかにねー」

五村では、俺が関わっている店の大半で価格を表示しているので、それに 倣 ( なら ) った店が多いけど、五村以外だとなぁ。

「商品を見る目、相手を見る目を鍛えましょう。

一応、この商品は五村で私が中銅貨八枚で買ってきた商品ですからね。

あと、売り手側は……なぜ中銅貨二十枚からスタートしたのです?

売り手は適正価格を事前に知っているのですから、もう少し高くてもいいと思いますが?」

「私の引いた状況クジが、“大量に仕入れ過ぎ”だったので。

買い手が逃げない値段にしました」

「素晴らしい。

ちゃんと 状況 ( シチュエーション ) を理解していますね。

さらに、買い手は適正価格の三倍以上の値のときは、買わなくていいという状況クジでした。

お見事です」

「えへへ」

なるほど。

売り手と買い手に分かれ、さらに状況クジを個々に引くことで買い物を複雑にしているのか。

もっと簡単な、「これいくら」「中銅貨十枚だよ」「いま持っているのは中銅貨十五枚だから……」みたいなのを想像していた。

「では、次の組に参りましょう。

売り手、買い手は状況クジを引いてくださいねー。

相手に見せちゃ駄目ですよー。

顔にも出さないように」

「はーい」

ふーむ。

俺より買い物上手になりそうだ。

俺は値引き交渉は、売り手でも買い手でも苦手だからなぁ。

……

俺も混ぜてもらって、一緒に勉強した。

子供たちの容赦ない値引きに、泣きそうになった。

ヨウコの休暇。

頑張ってくれているヨウコに休んでもらおうと、準備をした。

五村の文官やヨウコの秘書たち、休むヨウコの代理戦力を担う天使族たちの全面協力により、ヨウコに六十日ほどの休みを与えることに成功した。

もちろん、俺も協力し、五村に行く頻度を多くしている。

休みのあいだ、ヨウコには里帰りやヒトエとの 団欒 ( だんらん ) を楽しんでもらおうと考えていた。

結果から先に言おう。

ヨウコは五日でギブアップだった。

休暇のギブアップってなんだろう?

ヨウコの休暇、初日。

ヨウコは娘のヒトエとともに温泉地に向かった。

そこで二日ほどのんびりし、休暇中の予定を考えるとのことだった。

しかし、なぜかヨウコは二日後に大樹の村の屋敷に戻り、部屋に 篭 ( こも ) ってしまった。

ヒトエは普段通り。

温泉地でなにかあったのか?

なにもなかったらしい。

そう、なにもない時間が過ぎたそうだ。

ヨウコはそれに耐えられなかった。

ヨウコは屋敷から動かず、四日目に生気のない顔で……

「頑張って休む」

という、わけのわからないことを言い出したので、仕事に戻ってもらった。

ヒトエは残念がったが、ヨウコは職場で生気を取り戻した。

休みというのは、本人が望んでいないと逆に疲れさせてしまうのか。

反省。

無理に休ませず、日々の生活のなかで、 労 ( いた ) わる方法を考えよう。

あ、ヨウコの代理戦力を担う天使族たち。

帰る準備をしているところを悪いけど、仕事は継続だから。

天使族の長 ( マルビット ) の許可というか、指示だから。

とりあえず春まで頑張って。

俺も手伝うから。

天使族「儲けだけを考えると痛い目をみることになるので注意ですよー」

子供A「物語とかで知ってるー」

子供B「『仕入れ値を操作できる俺は暴利を貪る』ってタイトルだっけ」

子供C「そうそう、街から追放されるやつだったよね」

子供D「商業ギルドからも追い出されたやつだー」

子供E「家族にも見捨てられてたね」

子供F「儲けることだけに集中して、お客を見なかったのが失敗だよねー」

子供G「反省して再起するのかと思ったけどそのまま落ちぶれたのは……」

子供H「現実は厳しい」

子供I「物語の中ぐらい、優しくてもいいんじゃないかなと思う」