言ってくれる人
言ってくれる人
俺は村にあるギラルの家を訪ねた。
ギラルはソファーで横になっていた。
そのギラルの腹のうえで、オルトロスのオルが丸くなっている。
前々から仲よくなっていたが、かなり距離が近くなったな。
グーロンデが子供たちの勉強を見ている時間に、仲よくなったと。
まあ、いいんだけどな。
これ、ライメイレンとヒイチロウ……いや、グラルが作った菓子だ。
うん、グラルが作ったのを選んできた。
ヒイチロウのは、ライメイレンとグラルが独占したからな。
ライメイレンのは、ドースやハクレン、ドライムが食べてる。
味は悪くないぞ。
鬼人族メイドたちが、監督したから。
いや、ドースとギラルが作ったのに比べたら劣るが……
それを言ったら嫌われるから、美味いとだけ言うように。
喧嘩になっても、助けないからな。
そしてオルよ。
俺がこっちこいと 招 ( まね ) いているのに、まったく微動だにしないな。
ギラルがいいか。
それとも、動くのが面倒なだけか?
尻尾だけで返事するんじゃない。
本題。
俺がなぜギラルの家を訪ねたのか。
それはギラルから呼ばれたからだ。
「すまんな。
村長の屋敷だと、いろいろと耳があるから」
まあ、たしかにな。
秘密の話か?
「いやいや、たいした話ではない。
ただ、言いふらす話でもないのでな」
聞かせてもらおう。
「五村の新聞のことだ」
なにか問題でも?
「いやいや、問題はまだない」
まだ?
「あー、余計な世話かもしれんが……新聞は権力者にとっては危ない物となる。
注意せよと言いたくてな」
あ、新聞で 扇動 ( せんどう ) できることか。
「わかっているなら、気を緩めるなよ。
悪意ある者が新聞の力に気づくと、やっかいだぞ」
なるほど。
ありがとう。
注意しておこう。
屋敷に戻ると、五村で情報収集を任せている文官娘衆の一人、ララベルがやってきた。
「村長。
新聞の件でお話があるのですが……」
ララベルの父親から、新聞は危ないから注意しろと言われたそうだ。
具体的には、デルゼン出版に手の者を忍ばせるようにと。
なるほど。
忠告、感謝すると伝えてくれ。
返礼になにか品がいるなら、倉庫から適当に選んでくれ。
「ありがとうございます。
以前、送ったお酒が好評でしたので、それをいただきます」
ん?
以前送ったのって、外部向けの贈答品だろ。
もっといいのを選んでもいいんだぞ。
「いえいえ。
あれで十分です」
それならいいが……
まあ、無理強いもよくないか。
わかった。
それで、デルゼン出版に手の者を忍ばせるようにとアドバイスをもらったけど、実際にはどうする?
「ご安心を。
デルゼン出版には信頼できる者を数人、送り込んでいますので」
おおっ。
「役割としては、怪しい者が近づいたり、潜り込んできたときの警報ですので、捕えたりとかはちょっとできませんが」
それで問題ない。
危ないことは、警備隊とかに任せよう。
ヨウコとの連携は、しっかりとな。
「はい」
ララベルが部屋から出ていき、少し考える。
うーん、そうか。
壁新聞はメディア。
扇動の道具になるか。
たしか、フランス革命もメディアの力が強くなったから起こったという説もあったな。
別段、革命が起きるようなことはしていないが……
ギラルにララベルの父親と、二人から警告されたんだ。
気をつけたい。
しかし、だからと言って掲載する記事やイラストの 検閲 ( けんえつ ) とかはしたくない。
面倒だし、反発される。
となると、どうするべきか?
新聞を出しているのがデルゼン出版だけなのが問題か?
ライバルを作るか?
いや、気をつけるところが増えるだけだな。
うーん。
デルゼン出版のトップは、ヴェルサの同志。
……
まあ、彼女たちなら革命を起こすより、ヴェルサの趣味に集中するか。
油断は駄目だが、当面は大丈夫だろう。
でも、一応はヴェルサにメディアの怖さを伝えておくか。
ヴェルサに伝えたら、知ってると返された。
そして、そういったことは常に警戒はしているから安心していいとも。
ああ、混乱が起きると趣味に集中できないからか。
わかった。
信頼しよう。
……
わかったわかった。
始祖さんに、ヴェルサがいて助かっていると言っておくよ。
わかっている。
さりげなく言うから安心してくれ。
ちなみにだが。
ルーやティアも新聞の危険性には気づいていた。
しかし……
「いざとなれば、新聞を使っていろいろとするのかと」
「 長 ( おさ ) もそう考えて、準備していますよ」
あー、危険性を活用する側ね。
わかったけど、活用しないよ。
準備も不要。
だけど……天使族はそういったことをしているときが大人しいからなぁ。
生き生きしていると言ってもいい。
……
ティア。
準備はしてもいいけど、当面は使う予定はないと伝えてくれ。
「承知しました」
ちょっと短いですが。
よろしくお願いします。