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第192話 祭り巡りとフリマ

異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ — ncode.syosetu.com · All chapters

第192話 祭り巡りとフリマ

のんびり回です。

弱めのイベントが多いので、タイトルに難儀しました。最終的に適当に決めました。

見事勝ち抜き戦10連勝を達成した俺には、大会運営から豪華賞品が贈られた。

「これ何だ?」

「協賛店の割引チケットです。 祭典週間 ( フェスティバル ) 期間中、対象店舗の商品が全て20%OFFになります」

豪華……かなぁ……?

いや、参加無料のイベントで貰える賞品としては豪華と言えるか。

割引なら、利益は多少減るが、別途予算を割く必要が無いから色々と楽なんだよね。

「有難く使わせてもらう」

「いや、大盛り上がりでこちらとしても大満足です。是非、祭りを楽しんでいってください」

こうして、イベント会場を後にした俺は、外で待っていた5人と合流する。

「仁君、おめでとうございます……」

《おめでとー!》

「お疲れ様です。どうぞ、お飲み物になります」

「お、サンキュー。あ、これはミオが預かってくれ」

マリアから渡された飲み物を飲み、ミオに割引チケットを手渡す。

「何これ?おー!お祭りって色々と割高だから助かるわ」

「本当に助かりますわ」

割高な物を色々と食べる気満々のセラも喜ぶ。

ミオ曰く、お金はあるけど、節約できる部分では節約したいそうだ。主婦かな?

そして、そんな和気あいあいとした俺達に近づく二つの影……。

無駄に勿体ぶった言い方をしたが、ソルとルーナの2人である。

「貴様、我の部下として、我が国に来る気はないか?」

俺達の前に立ったソルが、いきなりそんな事を口にした。

喋り方で予想は付いていたが、どこぞの国のお偉いさんだったようだ。

「我が国?」

「うむ。我が名はソル・ヘラクレス。ここより東、ヘラクレス帝国の皇帝である」

お偉いさんはお偉いさんだが、 皇帝 ( トップ ) だとは思わなかったよ。

試合も終わった事だし、折角だからステータスを覗いてみよう。

名前:ソル・ヘラクレス

LV201

性別:女

年齢:19

種族:人間

称号:超越者、ヘラクレス帝国皇帝

スキル:

<一子相伝LV-><影雄演舞LV-><超越LV10>

20歳未満でレベル200オーバーと言うのは珍しいな(ウチのパーティは除く)。

そして、当たり前の様に『超越者』の称号を持っている……。

ああ、スキルは多すぎてユニーク級以外を省略したよ。

魔法系、技能系は0個だけど、武術系、身体系は嫌になる程大量にあったから。

それも、軒並み高レベルと言うオマケ付きだ。

一応、強さの秘訣も理解し、納得した。

<一子相伝>

武術に関わるスキル、および所有者の知識を保持できる。名前に反して継承先は指定できず、所有者の死亡時にランダムに移動する。武術に関する知識を保持するが、記憶を保持する訳ではない。

<影雄演舞>

武器を浮かせて操作する事ができる。予め型を登録しておくことで、自由に再現することができる。型ではなく本人を登録することで、仮初めの自我を持った影として再現できる。ただし、影が攻撃を受けた場合、本人にも同じダメージが入る。

寄生……継承属性付きの<一子相伝>により、高レベルの武術系スキルを引き継ぎ、その技術を<影雄演舞>で余すところなく再現する。

相性の良いスキルによる見事なコンボである。

なお、<影雄演舞>は継承されるスキルに入っていないので、完全にソル限定の構成だ。

さて、色々と分かってスッキリしたところで、ソルのお誘いを丁重に断ろうか。

「悪いが、俺は誰かに仕える気はないんだ」

「そうであろうな。我も言ってみただけだ。貴様の様な強者が、皇帝と言う肩書きだけで首を垂れるとは思っておらん。ルーナよ」

「はい。どうぞこちらをお納めください」

呼ばれたルーナが懐から封筒を取り出し、俺に手渡してきた。

「これは?」

「ヘラクレス帝国への招待状です。ソル様は自身の認めた強者を国に招きます」

「我に仕えるかどうかは、我が国を見てから決めるが良い」

「日時の指定、同行者の制限などはございません。お越しの際に招待状をお見せ下さい」

ある種のフリーパスみたいな物か。

アルタ、後でヘラクレス帝国について教えてくれ。

A:はい。

「ルーナよ。武器の件も伝えよ」

「はい。ジン様、ソル様は武器の蒐集をしておられます」

ソルの戦い方を考えれば、むしろ集めていない方がおかしいとすら言える。

高レア度装備ならば、<影雄演舞>の負荷にも耐えられるし、高レア度装備特有の特殊能力があれば、更に戦略の幅が広がる。

ソルの本気は、模擬戦用の武器では到底発揮できないのだ。

「お売りになる予定の業物があれば、是非買い取らせていただきたく思います。今は手持ちが少ないので、帝国にお越しの際になりますが……」

余談だが、<影雄演舞>によって破壊された模擬戦用武器は、ルーナが弁償していた。

あれでも 魔法の道具 ( マジックアイテム ) の武器だから、意外とお値段が高い。それを20個以上壊したら、お財布に大ダメージを受けるのは必至である。

「今のところ、売る予定はないな」

「はい。一応、お伝えだけさせていただきました。ソル様は、強者と武器に興味がある。そう覚えておいていただければ幸いです」

戦闘狂 ( バトルジャンキー ) らしい興味の方向性ですね。

「また、ソル様は強者と武器を探す為の遠征に出る事があります。その為、ヘラクレス帝国に不在となる帰還がある事、ご承知おき下さい。大体、一月以内ですので、お待ちいただけると幸いです。本日もイズモ和国へ向かった帰りで、一月以内の遠征でした」

「強者はともかく、武器の方は魔剣鍛冶師が不在であったがな」

不満そうに言うソル。

イズモ和国の魔剣鍛冶師って、ウチの 聖魔鍛冶師 ( ミミ ) の事じゃありませんか?

A:はい。

確か、ミミは元々魔剣の鍛冶師として有名だったはずだ。

武器の蒐集者からしてみれば、見逃せない人材なのは間違いないだろう。

余計な事を言っても話が拗れるので、お口にチャックである。

「適当に立ち寄った余興で、貴様の様な強者を見つけられたことだけは僥倖であった。気が向いたら、我が国に来るが良い」

「それでは、失礼いたします」

こうして、伝えるだけ伝えた2人は去って行った。

俺が参加を希望していた模擬戦イベントを終えたので、今後は他の皆の希望に従ってお祭りを楽しむことにした。

まずはセラとドーラの希望。『大食い大会』である。

「さあ、残り時間もあとわずか!果たして、勝つのはセラ選手かドーラ選手か!?」

「聞けば、2人は旅の同行者と言う事です。食費が凄いことになりそうですね」

2人の司会がセラとドーラの一騎打ちを実況する。

当初の懸念通り、セラとドーラに勝てる選手はおらず、いつの間にか2人の一騎打ちになってしまった。

厳密に言えば他の選手もいるが、2人にペースを乱されたせいで、手が動いていない。

セラは元々大食いだったから問題はないが、ドーラはここ最近非常に良く食べる。

気になってアルタに聞いた所、ドーラの進化には多くのエネルギーが必要になる為、食べる量も自然と増えたと言う。それにしても多い気はするが……。

進化が終われば食欲も落ち着くそうなので、今はそれほど心配していない。

つまり、セラといい勝負が出来るのは今の内だけという事だ。

余談だが、ドーラも『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』を食べ始めたので、食費は問題ない。

「一体、ドーラ選手のどこにあれだけ入るのか!?全く理解できません!」

「セラ選手は恐らく、摂取した栄養が胸に行っているのでしょう。見事です」

司会の1人がナチュラルにセクハラ発言している。

「それにしても、お二人ともテーブルの上が綺麗ですね。大食い大会だと、多かれ少なかれ汚れるものなのですが……。セラ選手は上品な食べ方ですので理解できますが、ドーラ選手のテーブルに落ちる前にキャッチするというのは、私も初めて見ました」

セクハラ司会者は真面目なコメントも出来るのか。

セラは仮にも元貴族令嬢と言う事で、食事のマナーは覚えている。

早食いだからと言って、汚らしい食べ方はしないし、アレで味わって食べているそうだ。

ドーラの方は綺麗に食べる習慣が無いからこぼすのは仕方ないが、食べ物を無駄にするのは嫌だという事で、食べカスが落ちる前にキャッチしている。

ある意味では2人共ハンデを背負っている訳だが、それでもその速さは圧倒的である。

「さあ!食べたホットドッグの数は、セラ選手が256個!ドーラ選手が254個!このままセラ選手が勝つのか!ドーラ選手が追い付くのか!後1分、最後の勝負です!」

「ホットドッグではなく、ウインナー単体の方が男性受けは良かったでしょうね。残念です」

真面目なコメントの後にセクハラ発言で落とす……。

このセクハラ司会者、どうにか出来ないかな?

あ、大会運営っぽい人がセクハラ司会者をどこかに連れて行った。

流石に度を越えていたのだろう。

その隙にドーラとセラの差はホットドッグ1つまで縮まっていた。

ドーラの食べる速度は最初の方と比べるとアップしている気がする。

しかし、ドーラの奮闘虚しく、追いつく前に無情にもタイムアップとなった。

「ここで試合終了!大食い大会、優勝はセラ選手です!」

「やりましたわ!」

《くやしー!》

見事優勝したセラには希少で高級な食材のセットが贈られ、惜しくも準優勝だったドーラには希少ではないが高級な食材のセットが贈られた。

見事に食材のセットばかりである。

「ただいま帰りましたわ」

《ただいまー!》

表彰式を終えた2人が戻ってきた。

食材セットは2つともセラが担いでいる。

「おう、お疲れー」

「お疲れ様です……。相変わらず、凄い食事量ですね……」

メンバーを大食い順に並べるとセラとドーラの大食い組、俺とマリアの普通組、さくらとミオの小食組の順になる。

さくらは年齢の割には小食だ。栄養不足と言う事もないようだが……。

「見ているだけでお腹いっぱいになりますよねー」

「はい……。昼食は少なめにしようと思います……」

「右に同じくです」

小食組は大食い大会を見ただけで食事量が減るらしい。

俺はむしろ、腹が減ってきたくらいなのだが……。

「2人はしっかりと楽しめたか?」

《まけてくやしー!でもおいしかったー!》

「私も楽しめましたわ。それにしても、最後は危なかったですわ。ドーラさんの食べる速度が上がりましたから」

「何か理由があるのか?」

それは俺も気になっていたので、ドーラに尋ねてみた。

《えっとね。いっぱい食べる食べかたと、はやく食べる食べかたがちがうってわかったの》

「なるほど、ついにドーラさんもその領域に入ったのですわね。そうですわ。時間ギリギリになって、余裕があるのならば、食べ方を切り替えた方が効率的ですわ。 私 ( わたくし ) は今回、一定のペースで食べる事を自ら枷にしていたので使いませんでしたが」

《つぎはもっとうまく食べるから、セラにもまけないよー!》

「そう簡単には負けませんわよ。本気の 私 ( わたくし ) には、他にも10以上の 戦略 ( たべかた ) がありますから」

「……………………」

いや、大食いバトル漫画みたいなやり取りをされても困るんだけど……。

「そうだ!賞品の食材セット見せて!」

「ええ、どうぞ」

ミオに促され、セラが食材セットを降ろして開ける。

「うんうん、中々に良い物が揃っているわね!」

「どれも高級食材のようですし、ミオさんに調理して頂きましょう」

《ミオー!おねがーい!》

「よし!ミオちゃんに任せなさい!」

ミオが張り切っているので、今日の夕食は豪勢になりそうだ。

協賛店の割引チケットもあるので、現地の食材には事欠かないだろう。

お次はさくらの希望であるフリーマーケットへと向かった。

「アルタから、探していた本が売られていると教えてもらいました……」

さくら曰く、1巻から6巻まであり、最終6巻だけ持っていない本が売っているそうだ。

続きが気になって仕方がないとの事。

「言ってくれればさくらの都合を優先したのに……。売り切れたらどうするんだ?」

「そうですわ。大食い大会はまだ機会があったのですわ」

俺の武闘大会もセラ達の大食い大会も、一度きりのイベントではない。

売り切れる可能性があるさくらの方を優先して問題なかった。

「大丈夫です……。その本が売られ始めたのは、料理大会が終わる頃でしたから……」

「それなら良いんだけど……。まだ、売れていないのか?」

A:売れていません。

フリーマーケットの会場はかなり広い公園だった。

参加者は思い思いの場所に商品を陳列している。

商品を見て回るのは後回しにして、さくらのお目当てのブツへと一直線で進む。

目的地には、カートに乗った大量の本が置いてあった。

さくらは迷わず一冊の本を手に取り、店主のおじさんに渡した。

「これ、下さい……」

「あいよ。1000ゴールドだな」

この世界、印刷技術を伝えた日本人が居るようで、本はそれなりに普及している。

しかし、普及し始めたのが比較的最近の為、それ以前の本は貴重なのである。

印刷はあるが、複製の手段はない。印刷用に起こし直すのも手間なので、ベストセラーでもなければ、一点物と言うのも珍しくは無いのだ。

これが一点物の希少本だったら、桁が2つ3つ上がってもおかしくはない。

無事に購入を終えたさくらが、安堵の息を漏らす。

「無事に買えました……。装丁も綺麗なので、本棚に置いても映えるんですよ……」

余談だが、屋敷の自室に本棚を置いているのはさくら、ミオ、マリアの3名。

さくらは物語中心、ミオはレシピ本、マリアは俺の元の世界の情報を書き記しているそうだ。内2名が買うのではなく、書く側というのも面白い。

「俺も知的さをアピールするために本棚でも用意するかな。もしくは眼鏡」

「眼鏡=知的って言うのも、随分と古いイメージよね。そもそもご主人様、知的なの?」

ミオに言われ、改めて考えてみる。

「……学校の成績は別に悪くないぞ。選択問題は全問正解だし」

「ご主人様に選択問題とか、相手が悪いとしか言えないわね。記述問題は?」

「それなりは取っていたと思う。……やっぱり、知的アピールは止めておこう」

そもそも、親友にガチのインテリが居たから、『知的』という単語のハードルが高いのだ。

俺は、俺の認める『知的』に達していない。大人しく諦めよう。

「マリア。本棚は用意しなくて良いからな」

「……はい」

マリアの歯切れが悪い。

やはり、俺が口にした瞬間に念話で準備を進めていたのだろう。

A:していました。

「あ、でもご主人様の眼鏡姿は見てみたいかも。さくら様もそう思いません?」

「はい……。少し見てみたいです……」

「……マリア、眼鏡を準備させてくれ。度は入れるなよ」

「はい!」

女子に眼鏡姿を見たいと言われたら、嫌とは言えないよな。

この後、アドバンス商会の主力商品に、眼鏡が追加されたのは別のお話である。

さくらの目的を達成したところで、このままフリーマーケットに留まる事にした。

順番的にはマリアの希望の場所に行くべきなのだが、こういう時にマリアは自己主張をしない。今回も希望は無いので、他の人の行きたい場所で良いと言っていた。

という訳で、丁度お昼時なので、適当に屋台で食べ物を買いながら適当に歩き回る。

「2人共、まだ食べられるんですね……」

大食い大会であれだけ食べたセラとドーラの2人は、普通に1人前以上の食べ物を持っている。さくら、ミオは先程言っていた通り、少な目だというのに……。

「時間制限が来ただけで、満腹になった訳ではないのですわ!」

《まだまだ入るー!》

「えぇ……」

さくらも引いているし、正直俺も引いている。

時間制ではなく、量で勝負が決まる場合、相当に長引いたのだろう。

「気になっていたんだけど、2人の胃袋に底ってないの?」

「最近は『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』抜きだと、満腹になる事はほぼありませんわ」

《ドーラもー!》

「マジかー……」

驚きの回答にミオも引いている。

これで、引いていないのはマリアだけである。

マリア、俺に関係ない事では引いたり動揺したりする姿を見かけないから……。

「そう考えると、早い段階でセラを満腹に出来る『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』の魔法を創ってもらったのは正解だったな」

「流石、仁様の慧眼とさくら様のお力です」

マリアがすかさずヨイショしてきた。

「ええ、本当に助かっていますわ。ただ、最近はご主人様の『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』を食べる機会が減っているのが残念でなりませんわ」

昔はMPの多い俺がほぼ専属で作っていたが、今は配下のステータスにも十分な余裕がある為、『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』を作る機会は相当に減った。

《ドーラも、ごしゅじんさまが作ったのがいちばんすきー!》

「え?『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』って味があるのか?」

俺は『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』を食べていないので、どんな味なのか知らない。

「もちろん、ありますわよ。美味くもなく、不味くもない不思議な味ですわね。ただ、魔力の提供者によって、効果が発揮された時に感じるものが違うのですわ。ご主人様のは……、安心するようなものを感じますわ」

《すきー!》

『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』は魔力を栄養に変える魔法だ。

出来た物が、変換前の性質に影響されるのは考えられない事ではない。

「そう言われると味が気になるけど、自分の作った『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』を食べても意味がないんだよな……」

実は、『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』が効果を発揮するには、『他人の魔力で作った物』という条件が付く。

自分で作った物を食べても、栄養素にならないのである。

だからこそ、セラは自分の魔力で『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』を作らない。

「今度、皆で『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』の交換会でもしてみるか?輪になって、隣の人が作った『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』を食べるんだ。もしくは、音楽を流して、止まった時に持っていたヤツを食べる」

「クリスマスのプレゼント交換かな?」

正直、俺もそれをイメージして言ったところがある。

「仁様、栄養素を低くするようにお気を付け下さい」

「ああ、それは分かっている」

マリアに言われるまでもない。

そのままの『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』は一般人が食べるものではない。

確か、1粒で成人20人分の栄養素が取れたはずだ。

栄養素は任意で変えられるので、出来るだけ低くして作れば大丈夫だろう。

一番低くすれば、どの程度になるのかな?

A:一番低くして、小食の女性が1回の食事で摂取する程度です。さくらの食事1回分、と置き換えてもらって構いません。

それでも、軽く一食分にはなるのか。

「『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』だけで一食を済ませるのはお勧めできないわね。栄養を摂るだけじゃなくて、噛むという行為自体にも意味があるから」

「 私 ( わたくし ) 達も、『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』だけで1食済ませる事はほとんどしませんわ。やはり、温かい食事が一番ですわ」

「そうだな。やるとしても1回限りにしよう」

『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』はあくまでも不足分を補う物であり、主食にする物ではない。味が気になるなら、交換会は1回やるだけで良い。

この時の俺は気付いていなかった。

1回だけ、俺の作った『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』を入手できる機会がある。それが意味する事を……。

後に、参加者が配下1000人以上となった、『 兵糧玉 ( エナジーボール ) 』交換会は、こんな些細な会話から始まったのである。

軽く腹を満たしたところで、本格的にフリーマーケットを見て回る。

大抵の場合、俺がフリーマーケットなんかに行くと掘り出し物があるのだが、今日は不思議と全く見つからなかった。

仕方がないので、良く分からない置物を数点購入した。

多分、招き猫とか狸の置物の親戚みたいな奴。小さいので、適当に棚に飾れる。

「ご主人様、話に脈略がないわよ?」

「いや、折角来たんだし、何か買いたいだろ?掘り出し物があったら迷わず買うけど、無かったら適当な物を買うしかないだろ?」

「いくら何でも、適当過ぎない?本当に欲しかったの?」

「……………………」

本当に欲しかった訳では無いので、コメントは出来ない。

「すいません。同じものを下さい」

ミオと話をしている間に、マリアが同じものを購入していた。

「……マリアちゃんは、ある意味本気で欲しがっているわね。ご主人様とお揃いだから」

「そうだな……」

マリアの部屋の棚には、俺の棚と同じものが多く見られる。

マリアの部屋に入ると、一瞬自分の部屋と錯覚することもあるくらいだ。

先にも述べた本棚等、多少の違いはあるが、基本的なレイアウトが酷似している。

それにしても、ここまで掘り出し物が無いのも珍しいな……。

アルタ、何か知っているか?

A:ネタバレ防止との事でしたので、マスターが関わるか不明な掘り出し物をニノに回収させておきました。それなりに貴重な物も多く、確保するべきだと判断いたしました。

アルタの仕業だったのか……。

そりゃあ、< 千里眼 ( システムウィンドウ ) >を使って回収されたら、掘り出し物なんて残る訳が無いよな。

まさか、それが理由でニノが同行を断ったのか?もしそうなら、悪い事をしたな……。

A:いいえ。同行を断った後、ニノが仕事を要求してきたので頼みました。本当は、別の者を呼ぶ予定でした。

ニノ、 仕事中毒 ( ワーカホリック ) になってない?大丈夫?

A:メイドの休暇は義務なので問題ありません。メイド総長のルセアが休むのも仕事の内、と言い聞かせています。

おお、ホワイト職場。

言い聞かせないと駄目な点と、結局は仕事である事に変わりがない点は気になるが……。

……アレ?よく考えたら、マリアが休んでいるところをあまり見かけないんだが……。

「仁様、私は< 超休息 ( ディープレスト ) >と< 快眠快起 ( レストトゥスタンド ) >を併用し、短時間で効率的に休んでおりますので、全く問題はありません。それより、仁様の側に居られることの方が重要です」

おお、ブラック職場。

何気に初耳のユニーク級っぽいスキルまで使って休んでいる。

真の 仕事中毒 ( ワーカホリック ) はマリアだったか……。

「休むことをスキル頼りにするのもどうかと思うが……」

「……長く休もうとすると、仁様の事が気になって逆に眠れないのです」

「重症だな……。無理はするなよ」

「はい」

マリアに関しては、色々な意味で好きにさせてやるのが良いのかもしれない。

フリーマーケットを満足するまで見て回り、優先参加権でイベントを荒らし回った後、俺達は島外れの海岸に来た。

予定では、明日の朝一で流れ島に向かうとの事なので、最後の下見の様なものだ。

そこには、俺が思っていたよりも立派な帆船があった。

周囲にある大量の船とサイズは同程度だが、基礎の造りや装備は全く違う。

A:ここにあるのは試作機であり、本命は別の場所で作成されていました。

通りで、今まで見かけなかったわけだ。

「明日の予定は問題なさそうか?」

「ん?ああ、アンタらか。見ての通り、問題はねえよ」

作業中の 海の男 ( アース ) に尋ねると、頼もしい答えが返ってきた。

作業中といっても準備は既に終わっており、点検を繰り返しているだけのようだ。

「おや、貴方達も来ていたのですね」

もう1人のインテリ眼鏡も俺達の存在に気付く。

ええと、名前は……アイルと言うそうだ。

「明日の予定に変更がないか、確認に来たんだ」

「貴方達のおかげで、無事に船も完成しました。予定よりも良い物が出来ましたが、一回の航海で廃棄する前提と言うのが少し勿体ないですね」

2人は流れ島から帰る事を考えていなかった。

当然、船にも帰るための機能は含まれていない。

「今更な話だな。何もかもを投げ捨ててでも、あの島に行くと決めたはずだろ?」

「勿論です。それだけ、良い物が出来たというただの自画自賛ですよ」

どんなに良い物が出来たとしても、2人にとっては手段でしかなく、目的ではない。

「なあ、事が済んだ後、要らなければその船を俺にくれないか?」

「はあ?何を言っているんだ?」

「家族を連れて戻れるとしても、その船はもう要らないんだろ?大破していなかったら、記念品として俺にくれ」

折角、良い出来の船なのだ。流れ島に放置するのは勿体ない。

だったら、俺がお持ち帰りした方が良いというものだ。

「俺は構わないが……、正気か?」

正気です。

「金銭的な支援もされていますし、僕も構いませんよ。どうやって持ち帰るつもりなのか、気になる点ではありますが……」

「それは見てのお楽しみだな」

こうして、俺は行きの船と、帰りに船を手に入れることになった。

ヘラクレス帝国には行きません(断言)。

次回は3/10日です。ただでさえ遅れているのに、9日しかないのは無理です。

恨み言は、2月だけ日にちを少なくした人に言ってください(謎の責任転嫁)。