LNCrawler

落第剣士と剣術学院【三】

一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~ — ncode.syosetu.com · All chapters

落第剣士と剣術学院【三】

アレンとバブルの試合が終わった直後。

剣武祭運営委員は、蜂の巣を 突 ( つつ ) いたように騒がしくなっていた。

というのも、都にある五学院の一つ―― 千刃 ( せんじん ) 学院の理事長レイア=ラスノートが突然来訪してきたからである。

「こ、こんな地方の剣武祭にまで足を運んでいただけるとは……っ! た、大変恐縮な思いでございます……っ!」

剣武祭の責任者である初老の男は、激しく動揺しながらもなんとか感謝の言葉を結んだ。

それに対し、レイアは申し訳なさそうに頬を掻いた。

「あの……わざわざこんなVIP席を用意してもらわなくとも、私は一般席で良いのですが……」

実際これは彼女の本心であった。

彼女は剣武祭を視察すべく、一人の観客としてここへ来ていた。

それが偶然にも運営委員の目に留まってしまい、あれよあれよと言う間にVIP席に連れて来られたのだ。

「い、いえいえ! そういうわけにはいきませんっ! むしろこんな場所しか用意できず、大変申し訳ございません……っ!」

そう言って男は平謝りをした。

彼がこのように恐縮しきっているのには当然理由がある。

五学院の理事長は、絶大な社会的影響力と権力を有する。

もしもここでレイアの機嫌を損ねれば、『剣武祭』そのものがいとも簡単に無くなってしまうだろう。

剣武祭の責任者である彼が、このように恐縮してしまうのも無理のない話だった。

「そんなにかしこまらないでください。今回は剣武祭を――というよりは、剣武祭の出場選手を見に来ただけですから」

それからレイアは、運営委員の緊張を解くためにちょっとした 小話 ( こばなし ) をすることにした。

彼女としても、こんな張り詰めた空気の中で試合の観戦をするのは遠慮したかった。

「最近は千刃学院のさらなる発展のために、あちこちに足を伸ばしているんですよ。まぁ、スカウトのようなものですね」

昔は栄華を極めた千刃学院だが、近年は生徒の質が低下しており、五学院の地位が危ぶまれていた。

前理事長はその責任を取って辞任し、その後に開かれた理事長選挙によって、レイアが新理事長となった。

彼女は学院復興のために各地の有望な剣士を視察し、その実力が確かならば学費免除の推薦入学を持ち掛けた。

生徒の質を一気に改善することは難しい。そのため、一部の超優秀な生徒を抱き込み、部分的な質の向上に取り組んだのだ。

「なるほど……では、今回のお目当てはやはり前回優勝者の『賞金稼ぎ』でしょうか?」

少し緊張がほぐれた剣武祭の責任者がレイアに問いかけた。

「えぇ、もちろんです。『賞金稼ぎのローズ=バレンシア』――一度この目で見ておきたいと思いまして」

もしも噂通りの実力を持つようならば、すぐにでも推薦入学の話を持ち掛けるつもりだ。

「左様でございましたか。私は前回大会のときに初めて賞金狩りの戦いを見たのですが……一子相伝の 桜華一刀 ( おうかいっとう ) 流! あれは鬼気迫る凄まじいものがありましたよ!」

「それは楽しみですね。――ですが、別に私は何もローズだけを視察に来たわけではありません」

「……と、言いますと?」

「もしかすると思わぬ掘り出し物も見つかるかも、と少しだけ期待しているんです」

そう言ってレイアは、鋭い観察眼を舞台に向けるのだった。

■

一の太刀、飛影をもってバブルを破った後、俺は破竹の勢いで勝ち続けた。

十戦十勝――まさかこんなことになるとは夢にも思っていなかった。

そうして気付けば、次はいよいよ優勝の座を懸けた決勝戦だ。

決勝戦の準備が整ったのか、実況者がアナウンスを開始した。

「お待たせしましたっ! それではこれより本日最後の対戦、決勝戦を開始いたしますっ! 組み合わせは――ローズ=バレンシア選手対アレン=ロードル選手ですっ! 両選手、舞台へお上がりくださいっ!」

賞金稼ぎのローズ=バレンシア。

その名前には聞き覚えがある。俺と同い年の天才女剣士だ。

賞金の懸かった大会に出ては、鮮やかに優勝をかっさらい。

懸賞金の懸けられた犯罪者を見つけては、捕縛して聖騎士に突き出していた。

いったい何が目的かは定かではないが、とにかく腕が立つと評判の女剣士だ。

俺とローズさんは、二人して舞台へ上がった。

彼女は赤い瞳が特徴的な凛とした顔立ちで、ピンクがかった美しい銀髪が背中まで伸びていた。黒を基調とした上の服には赤いアクセントが入っており、お腹から胸の下部までの広い範囲が露出しており、少し目のやり場に困る。下は黒のローライズホットパンツだ。

彼女の戦いは、ずっと舞台の脇で見ていた。

こんな華奢な体で屈強な大男たちを手玉にとる剣技は、まさに圧巻の一言だった。

二人が舞台に上がったことを確認した実況者は、いつも通り両者の簡単な説明を始める。

「ローズ=バレンシア選手は一子相伝の秘剣――桜華一刀流の正統継承者! 一方のアレン選手はなんと我流でございますっ!」

そこまで口にした実況者は、一度大きく息を吸い込み、こう続けた。

「――しかし、断言できますっ! アレン選手の我流の剣を馬鹿にするものは、もはやこの場に一人としていないと!」

実況者の言う通り、バブルとの一戦以降、俺を嘲るものはいなくなった。

今はむしろその逆だ。

俺の勘違いでなければ、ある種の敬意のようなものが払われるようになった。

実際、握手を求めるものが大勢詰め掛け、なんと弟子入りを志願してきた人も数人いたほどだ。

握手には応じたけれど、さすがに弟子入りはお断りさせてもらった。

俺はまだまだ半人前のひよっこ。

人に剣術を教える立場にはない。

それからいよいよ試合開始直前になったところで、俺はいつも通りペコリと頭を下げた。

「よろしくお願いします」

すると、

「こちらこそ、よろしく頼む」

鈴の鳴るような澄んだ声で返事が返ってきた。

互いの挨拶が終わったところで、

「両者、準備はよろしいですか? それでは決勝戦――開始っ!」

実況者が試合の開始を宣言した。

同時に俺とローズさんは剣を抜き、互いに正眼の構えをとった。

全く同じ構えのまま、少しの間、睨み合いが続く。

(これまでの試合から判断するに、彼女の戦闘スタイルはカウンタータイプだ)

相手の攻撃を防ぎつつ、わずかな隙を見出し、そこへ必殺の一撃を加える守りの剣。

策も無く我武者羅に斬り掛かるのは悪手だ。

(ここは『飛影』を撃ち、相手の出方を見るとするか……)

そうして俺が次にとる手を決めた次の瞬間。

「っ!?」

目と鼻の先にローズさんの姿があった。

(呼吸を、合わされた……っ!?)

俺が息を吸い、まばたきをするほんのわずかな空白を突いた接近。

凄まじく高度な 体捌 ( たいさば ) きだ。

「桜華一刀流―― 桜閃 ( おうせん ) ッ!」

彼女は重心をしっかりと下げ、体重が十分に乗った突きを放った。

だが、不意の接近で崩されるほど俺の心は弱くない。

「――ハッ!」

胴体を狙った彼女の突きに対して、俺は全く同じ入射角の突きで迎え撃った。

その結果、剣先と剣先が――先端の一ミリでぴったりとぶつかり合って拮抗状態となる。

鉄と鉄が激しく衝突し、キーンという高音が響き渡った。

「嘘っ!?」

想像だにしない事態に、思わず目を見開いたローズさんにわずかな隙が生まれる。

このチャンスを見逃す手はない。

俺はすぐさま重心を落とし、重力を利用した加速により、一気に彼女の懐へ潜り込む。

「――シッ!」

「っ!?」

完璧なタイミングで放った俺の突きは――彼女の脇腹をかすめるだけに留まった。

一拍以上も出遅れたあの状態から、彼女は強引に身を捻り直撃を回避して見せたのだ。

きっと天賦の才能を持ちながら、尋常ならざる努力を積んだのだろう。

「く……っ。まだまだぁ……っ!」

一瞬脇腹を気にしたローズさんだったが、次の瞬間にはもう斬り掛かってきた。

「桜華一刀流―― 夜桜 ( よざくら ) ッ!」

それから俺と彼女は何度も何度も斬り合った。

その間、会場はこれまでとは打って変わって静かなものだった。

歓声や罵声は一切無い。

時折それぞれ感想をこぼしながら、ただ静かに俺たちの戦いを見ていた。

「おいおい、あの賞金狩りのローズがまるで子ども扱いだ……っ」

「半端ねぇな……。やっぱりもう一回弟子入り志願してこようかな……」

「馬鹿、迷惑を掛けるんじゃねぇ。アレンさんはお前なんかに構っているほど暇じゃねぇんだよ」

それから一合、二合と剣を重ねるたび――ローズさんの体に徐々に生傷が増えていった。

「はぁはぁ……。貴様、その剣……いったい誰にならった!?」

「いや、だからその……我流、なんですけど……」

我流というのは、やはり誇れることではない。

あまりそう何度も口にさせないでほしい。

「嘘をつくな! 貴様の剣には、試行と研鑽の積み重ねが――歴年の重みがあるっ!」

彼女は鋭い眼光をこちらに向け、はっきりとそう言い放った。

(す、鋭い……っ)

確かに、俺の剣には十数億年という時間の重みがこれでもかというほどに詰まっている。彼女の感じた『重み』は、多分それだ。

「……それは……気のせいです」

俺は目をそらしながら、ポツリとそう呟いた。

正直、一億年ボタンのことはあまり話したくない。

というか、話しても多分誰も信用してくれない。

すると俺の返答がお気に召さなかったのか、

「なるほど……あくまで白を切り通すつもりか……」

彼女は少しムッとした表情になった。

「いいだろう。ならば、その体に聞くまでだ……っ。一子相伝の秘剣、桜華一刀流の十七代目正統継承者としてこの勝負――勝たせてもらうぞ」

その瞬間、ローズさんの纏う空気がはっきりと変わった。

これまでよりもさらに研ぎ澄まされたそれは、まるで彼女自身が一振りの名刀になったかのようだった。

「桜華一刀流奥義―― 鏡桜斬 ( きょうおうざん ) ッ!」

鏡合わせのように左右から四撃ずつ――目にも止まらぬ八連撃が繰り出された。

(っ!?)

桜吹雪を思わせるその流麗な美技に、一瞬だが目を奪われてしまった。

その間にも猛然と襲い掛かる八つの斬撃。

しかし――それはあくまで『連撃』だった。

一撃一撃の間に、ほんのわずかな空白が存在する。

それをしっかりと確認した俺は、彼女の奥義に向けて技を繰り出す。

「八の太刀―― 八咫烏 ( やたがらす ) 」

これはたったの一振りで八度斬る技だ。

同じ『八』でもこれは連撃ではない――文字通り『同時に』八度斬る。

一撃一撃の間には、ほんのわずかな空白も存在しない。正真正銘『八つの斬撃をもって一撃』とするのだ。

完全に一拍以上遅れて放ったにもかかわらず、俺の八咫烏は鏡桜斬を食い破った。

「馬鹿、な……っ!?」

必殺の奥義を破られたローズは、がら空きの胴体を晒す。

「――終わりです」

隙だらけの彼女の体に――俺は袈裟切りを浴びせた。

「が、は……っ」

彼女は膝を付き、ゆっくりと前のめりになって倒れた。

シンと会場が静まり返る中、

「しょ、勝者っ! アレン=ロォオオオドルッ!」

実況者が結果を告げた。

それと同時に会場がドッと沸き上がる。

それはもういっそわかりやすいほどの――俺への称賛だった。

こうして見事剣武祭で優勝を飾った俺は、賞金として十万ゴルドもの大金を手に入れたのだった。

■

剣武祭から二日が経ったある日。

いつものように俺が校庭で一人剣を振っていると、院内放送が鳴り――俺は一人、校長室に呼び出された。

なんとなくだが、嫌な予感がした。

(……もしかして、あの噂のことか?)

俺がドドリエルとの決闘に暗器を使った、卑怯な手でだまし討ちをした、という根も葉もないあの噂。

神聖な決闘では、そういう卑怯な手はご法度だ。

もちろん俺はそんなことはしていないが、学院側からすれば事実なんてどうだっていいんだろう。

(はぁ……。今回ばかりは退学を言い渡されるかもしれないな……)

もしかしたらドドリエルの家――バートン男爵家から学院に何らかのプレッシャーが掛けられたのかもしれない。

(いや、そもそも俺の成績はこの学院の中でもぶっちぎりの最下位。成績不振を理由にいつ追い出されてもおかしくない立場だ)

多分、ドドリエルとの決闘が無かったとしても、そのうち退学を言い渡されていただろう。それが遅いか早いかの違いなだけだ。

(まぁ、幸いにして一億年ボタンのおかげで最低限の力は手に入った)

剣武祭で優勝できるぐらいの地力があれば、地方の騎士団ぐらいにならば、入れてもらえるだろう。

騎士団に所属し、聖騎士になれば安定的な給金がもらえる。

そうすれば、故郷の母さんに楽な暮らしをさせてやることができる。

(そういう道もありかもしれないな……)

そんなことを考えながら歩いていると、前方に校長室が見えてきた。

他の教室よりも少しだけ立派なその扉をコンコンコンとノックし、自分の名前を名乗ろうとしたそのとき。

「おぉっ、アレン君。待っていたよ!」

扉が勢い良く開かれ、中からえらく機嫌のよさそうな教頭先生が飛び出してきた。

(校長先生だけじゃなく、教頭先生まで……)

これはもう間違いない。

残念ながら、俺は今日限りでここを辞めさせられるようだ。

「おっと、こんなところで立ち話もなんだ。さっ、どうぞ中へ入ってくれ!」

「……失礼します」

教頭先生に連れられて部屋の中に入ると、これまた機嫌の良さそうな校長先生が出迎えた。

「おぉ、アレン君! よく来てくれたね!」

「ど、どうも」

何故か二人ともずいぶん機嫌が良かった。

多分……学院の落ちこぼれを排除できるこの日を喜んでいるんだろう。

そうして俺が心の中で、大きくため息をついていると。

「実は君にね……推薦入学の話が来ているんだよ!」

校長先生は予想もしていなかったことを言い出した。

「推薦入学……ですか?」

「そう! それもあの五学院に数えられる名門―― 千刃 ( せんじん ) 学院からだ!」

千刃学院――この名前は俺でも知っている。いや、剣士ならば誰もが知っている都の有名剣術学院の一つだ。

剣術学院は初等部・中等部・高等部の三つに分かれており、ここグラン剣術学院は満十三歳から満十五歳までの生徒が通う中等部。千刃学院は満十六歳から満十八歳までが通う高等部だ。

「片田舎にある我がグラン剣術学院が、かの五学院への進学者を輩出する。――これはとんでもない偉業だよ!」

「いったい何故アレン君に千刃学院から声が掛かったのかは不明だが……この際、手違いだろうがなんだろうが構わないさ! うちから、かの五学院への進学者を出したという事実が大事なんだっ!」

校長先生と教頭先生は終始興奮した様子で話していた。

「本当に、本当によくやってくれたね、アレン君!」

「さすがは我が校の生徒だっ! 立派に務めを果たしてくれたな!」

二人にがっしりと手と肩を掴まれた俺は、

「は、はぁ……」

ただただ生返事を返すだけだった。

「いや、それにしてもさすがはアレン君だっ! 実は最初から君には期待していたんだよ!」

「そうだ! 君には卒業生代表として答辞を読んでもらおうかな! もちろん、首席合格扱いだよ!」

それから二人は熱心に俺を褒めて褒めて、とにかくひたすらに褒めちぎってきた。

そんな二人を俺は――どこか冷めた目で見ていた。

(これまで散々俺へのいじめを放置してきたくせに……。千刃学院からの推薦入学が来た途端にこの対応か……)

二人はどうやら是が非でも俺を千刃学院に入れたいようだった。

多分『 箔 ( はく ) 』みたいなものが、このグラン剣術学院に付くのだろう。

しかし、この推薦入学の権利をどうするかは、俺一人で決めていい問題ではない。

「――すみません。その、少し……考えさせてもらえませんか?」

そうして自分の意思を伝えたその瞬間。

「か、考えるとは、どういう意味かね!?」

「それは推薦入学を受けないということかい!?」

二人は目の色を変えて詰め寄ってきた。

「千刃学院に進学するか、聖騎士として騎士団に所属するか、それとも魔剣士として人々の依頼をこなすか。――正直なところ、まだ決めかねています」

そう。

この選択は俺の今後の人生を大きく左右するとても大事なものだ。

「故郷に残して来た母さ――母とも相談する必要がありますし、今ここですぐに答えを出すことはできません」

やはり一度故郷に帰って、しっかりと母さんと話してから答えを出すべきだろう。

「ば、馬鹿なっ! あの千刃学院に行けるチャンスを棒に振るというのか!?」

「都の五学院を卒業すれば、上級聖騎士にだってなれるっ! 輝かしいキャリアが待っているんだぞ!?」

「……すみません。どうするかは、まだわかりません」

その後も二人は目の色を変えて、俺を千刃学院に送り込もうとしたが――俺は決して首を縦には振らなかった。

結局最後には根負けした二人が「いい返事が聞けることを待っているよ」と口を揃えて、話は一旦終わった。

「……それでは失礼します」

そうして俺が部屋を後にするとそこには、校長先生たちが呼びつけていたのか。それとも院内放送を聞きつけたのか。とにかく大勢の先生たちが集まっていた。

「アレン! 私が見込んだ通り、やはり君には才能がある! どうだい、今からでもうちの 神明 ( しんめい ) 流に入らないか?」

「いやいや! 彼には我が 真空 ( しんくう ) 流が似合っているな。どうだ、アレン君? 今なら特別に準師範のポストを用意するよ!」

「ちょっと何を言っているの!? 彼のような優れた剣士には、 風月 ( ふうげつ ) 流こそがふさわしいでしょっ!?」

どうやら俺に千刃学院から推薦入学の話が来たことは、既に先生の間では共有されているらしい。

三年前――ちょうど俺が一年生のときに「流派に入れてください」と頼み込み、取り付く島も無く断った先生たちだ。

普段は俺が剣術の質問をしようものならば、露骨に嫌そうな顔をして無視をしていたのに……今は こう ( ・・ ) だ。

(こういうのを『手のひら返し』って言うんだろうな……)

当然ながら、俺はこんなひどい先生たちの流派に所属する気はさらさらなかった。

この人たちは多分、「うちの流派からあの名門千刃学院への進学者が出た」という宣伝を打つために、俺を熱心に勧誘しているのだろう。

つまりは、俺をただの客寄せ道具としてしか見ていないということだ。

「……すみません、失礼します」

「あっ、ちょっとアレン君! せめて話だけでもっ!」

それから俺は早歩きで先生たちの間を通り抜け、一人帰路についた。

(はぁ……。とりあえず今週末にでも一度故郷に帰って、母さんに相談しないとな)

それにしても……今日は人間の汚い部分を見過ぎてしまったような気がする。

母さんやポーラさん――人間的に真っ当な人と会って、少し気持ちを浄化したい気分だ。

そうして俺は、ひとまず寮へと帰ったのだった。

『面白いかも!』

『続き期待!』

と思われた方は、ぜひお気に入り(ブックマーク登録)をお願い致します!