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殺され屋の男

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殺され屋の男

運動会という大イベントがひとつ終わり、少し落ち着いた秋の時期。そんななんでもない日だと思っていた日曜の朝、とある事件が起きました。

「あっ、ナマエちゃ~ん!」

「あ、ハル!…って、何そのカッコ」

外を歩いているとハルに声を掛けられた。暇してたからちょっと嬉しい。

しかし振り返るとそこにいたのは屋形船のようなセットを身に着けたちょっと様子のおかしい彼女。

「屋形船ですよ~!屋形船!」

「あ、本当に屋形船なの…。ってそうじゃなくて、なんでそんなカッコしてんの…?」

「ハル、文化祭の演劇で屋形船をやることになったんです~!折角なのでツナさんにもお見せしようかと思いまして!」

「そのカッコのままツナんち行くの…」

多分家から歩いてきてるんだよね?そして引き続きその姿で街中を歩くと…。

本人凄く楽しそうだけどその度胸も凄いな…。

「ナマエちゃんにも見せられて嬉しいです!ナマエちゃんお暇です?もしよかったら一緒にツナさんち行きませんか?」

「あー…まあお暇ではあるけど…。うん、わかった…じゃあ一緒に行こっか」

「はい!行きましょ行きましょ!」

ちょっとこの姿のハルと一緒に歩くことに躊躇いが生じたけどひとりで歩かせるよりは良いかもしれない…。ひとりだと本当にそれこそ不審者だ…。

そう判断した私はハルと一緒に沢田家に向かうことにした。

「お邪魔しまーす」

「ツーナさん!見てください!文化祭の演劇で、ハル屋形船をやることになったんです!」

奈々さんに挨拶しながら向かったツナの部屋。ハルは部屋に入るなり、ばばーん!と屋形船姿の自分を披露した。

しかしツナの反応は薄い。というか反応する気力すら無さそうな?

そこでハルと私は気が付く。ツナの部屋のベッドに寝ているひとりの男の人の存在に。…って、その人…口から血出てる?

「あ、ツナさん達も劇の練習ですか?すごーい!リアルな死にっぷりです~!」

「は、ハル…ちょっと待って」

ハルは言う。リアルな死にっぷり。確かに本当に死んでいるようで。

というより…なんかただ事じゃない感じがして、私は慌ててハルを止めた。いや私たち、劇とかしないし…。

そこでやっとツナが重たそうに口を開いた。

「違うよ…俺が本当に殺しちゃったんだ…」

「はひっ!?」

「ころ…」

涙を流すツナの表情から冗談ではないことが読み取れる。

私たちは絶句。ハルに至ってはあまりの事態によろけて壁に激突し屋形船を大破させてしまった。

ええと…マジでツナが殺してしまったと?でも死体がそこにあるのは紛れもない事実。

そこに流れたのは重苦しい静寂…。

するとそれを引き裂くように、ピンポーンというチャイムと騒々しい男ふたりの声が聞こえてきた。

「なんでおめーがここにいんだよ!」

「今日部活ねーからお前と同じ暇人なんだ!」

「コラ!誰が暇人だ!?一緒にすんじゃねー!!」

「さっき公園のベンチでタバコふかしながらハトに向かって暇だーって言ってたろ?」

「な!見やがったな~!!!」

な、なんつーくだならない会話をしてるんだ…。ふたつの声はよく聞き慣れたもの。獄寺と山本…。

階段を上がる足音も聞こえてくる。どうやらふたりはこの部屋に向かてきているらしい。

ツナとハルはあたふたと慌て始めた。慌てたところで隠しようもないでしょ…。私はもう諦めで頭を抱える。

そうこうしているとふたりが部屋に入ってきた。

「よお、ツナ!」

「お邪魔します、10代目!」

「………何してんだ?」

「かくれんぼ…スか?」

どうしようもなくなったツナとハルは身を縮こまらせて隠れていた。…が、時間もなく頭隠して尻隠さず状態なので全然バレバレ。その異様な光景に獄寺と山本の困惑が見て取れる。

ツナはのそっと顔を上げ、そして大泣きしながら絶叫した。

「俺の人生は終わったんだ~~!!!もー自首するしかないーーー!??」

「ツナさんが刑務所から出るまでハル待ってますー!!手紙いっぱい出しますーー!!!」

ハルも叫び出して収集つかん…。大号泣大絶叫のふたりに状況がさっぱり読み込めていない獄寺、山本。

「は?」

「へ!?」

「あー…ふたりとも」

「お、ナマエも来てたのか!」

「おい…ナマエ。どういう状況だこりゃ」

「実は…」

私はふたりに歩み寄り、自分が把握している限りで現状を説明した。

いや私も死体があってツナがやっちゃったかも?くらいしかわかってないけども…。

とりあえずここに集まったメンバーで事情を整理し、これからどうするかを考えることになった。

「落ち着けよ。まだツナがやったって決まったわけじゃないだろ?」

「そーっスよ。だいたいこいつ、本当に死んでんスか?」

「だ…だって…血が…」

山本と獄寺がツナをなだめる。どうやらツナはこの人を殺めた時の記憶がないらしい。

眠っていると銃声が聞こえて目が覚めて、この男が自分のベッドに倒れこんできた。その際ツナの手には拳銃が握られていて…と、そういうことだそうだ。

状況だけ見ればツナが犯人だけど、そうじゃない可能性があるのも事実。

「おい、起きねーと根性焼きいれっぞ」

「ちょ!?やめろバカ!」

本当に死んでいるか確かめるため、タバコを取り出して死体の顔に近づける獄寺。仮にも仏様に何する気だ!私はベシッとその頭を引っ叩く。「何すんだテメー!」って睨まれたけどどう考えてもお前が悪いだろ!

しかしその時、寸前に迫るタバコに反応してかピクッと死体が動いた気がした。うえ!?

「ぎゃあああ!!動いたああぁぁ…!!」

「救急車です!!救急車呼びましょーっ!!」

狼狽えるツナと救急車を呼ぼうとするハル。そうだ、動いたなら生きてるじゃん!助けられるかも!

でも救急車を呼ぶのはリボーンが止めた。

「その必要はないぞ。医者を呼んどいた」

「い…医者ってまさか…」

「ああ、そうだぞ。Dr.シャマルだ」

そう言ってリボーンが廊下から引っ張り出してきたのは酔いどれの男の人だった。いやどなたですか!?ツナは知ってるみたいだったけど…この人医者なの?朝っぱらからめっちゃ酔っぱらってるんですが。

するとその男を見て反応したのがもうひとり。

「あいつは…!」

「獄寺?」

「知り合いか?」

反応したのは獄寺だった。山本と一緒に知り合いかを尋ねると、獄寺が話し出したのは自身の幼少期。

「うちの城の専属医のひとりだった奴で、会うたび違う女を連れてて…誰?って聞くと妹だっつーから…ずっと兄弟が62人いると思ってた…」

「ははは!!なんだソレ!?」

「おバカじゃん…」

「うるせーよ!!」

爆笑する山本。私は呆気。まあ素直で純粋だったということなのだろうか…。

すると酔いどれ医師ことDr.シャマルは立ち上がり、その拍子に向こうも獄寺に気が付いた。

「よぉ、隼人じゃん」

「話しかけんじゃねー!!女たらしがうつる!!このスケコマシ!!」

「なんでーつれねーの」

女たらしにスケコマシ…。なかなか凄い言われようである。

でも幼少期の獄寺が知る限りで、少なくとも62人の女の人に手出してたって事だよね…。となれば…まあそういう人ってことなのかもしれない。

「Dr.シャマル!早く患者を診てくださいよ!!」

「そーだったそーだった。死にかけてる奴がいるんだってな。んー、どれどれ」

慌てて患者を診るよう頼むツナ。頷いたDr.シャマルは手を伸ばした。しかしその両手が触れたのはベッドの上の急患ではなくハルの胸。うげ…。

「キャアアアアア!!!!何するんですかー!!」

胸を触られたハルは悲鳴を上げながらグーパンチをくらわせた。それにより勢いよく吹っ飛んでいくDr.シャマル。

あ、ああ…なるほど…。獄寺が言っていた意味をここでとても理解した。ヤバい人だこの人…。

「この元気なら大丈夫だ。おまけに可愛いときてる」

「誰診てるんですか!!!」

ツナ、再び大絶叫。いやでもまさに…。本当、誰診てるんだ…。

ドン引きしてその様子を見ているとDr.シャマルの視線がこちらに向いた。

「おー、こっちにもカワイコちゃんがいるじゃねーか!!おじさんとチューしようぜー!!」

「は…えええええ!!?」

チュ、チュー!?!?

えー!ロックオンされたー!?唇を突き出してこちらに迫ってくるその姿にぞわわわわ!!む、無理無理無理無理無理ー!!!

しかしその時、目の前にバッと現れ、Dr.シャマルを遮ってくれた銀髪の背中があった。

「テメー!!近づくな!!この変態が!!」

「おー、なんだよ隼人。邪魔すんなよ。それとも何か?お前、その子にホの字なのかー?」

「なっ、ばっ…!?ちっ…ちげえよアホ!!」

「おーおー、あの隼人がねぇ~、へぇ~」

なんかニヤニヤしてるDr.シャマル。…なんなんだ獄寺の周りって。ビアンキさんといい変な勘違い進行しがちでは。

まあでも庇ってくれたのは素直にありがたい。私はちょんちょんと獄寺の肩を突いた。獄寺も振り向く。

「獄寺、ありがと」

「…別にっ、あいつが腹立つだけだ!」

ふん!とそっぽ向かれた。まあ別にお礼が言えれば私は満足だからその辺はどうでもいい。

それよりも重要なのはあのピクリと動いた死体の方だ。

「患者はこの人です!!」

ツナが慌てて指を指す。しかしその指の先を見たシャマルはやれやれと首を横に振った。

「ん、何度言ったらわかんだ?俺は男は診ねーって」

「そーいやそーだった」

「知ってたよなあ!!!」

男は診ない…あー、っぽい。まだ出会って数分だけどこの人ならそうかもしれないと納得出来てしまった。

そしてボケてるのかよくわからないリボーンと相変わらず絶叫するツナ。

「ってか本当にそいつ生きてんのか?瞳孔開いて息止まって心臓止まってりゃ死んだぜ」

シャマルは言う。生きているかどうか…。その言葉を聞いた私たちはひとつひとつ患者の状態を確認していった。

瞳孔は開いていた。息も止まっている。心臓も…。やっぱり死んでるー…。

「俺がふざけてる間に仏さんになっちまったのかもなー。仏さんには用がねーや。じゃ」

シャマルは言いたいことだけ言ってそのまま去って行ってしまった。あの人、結局やったのセクハラだけでは…。

しかし医者がいなくなってしまえばもう私たちに手立てはない…。ああ、こんなに突然幼馴染みが殺人犯に…。

「こんな時の為にもうひとり呼んどいたぞ」

重苦しい空気の中、リボーンがまたそんなことを言った。もうひとりって何さね…。

その直後、外からバイク音が響いてきた。そしてガラッと開いた窓から登場したのは学ランを羽織ったあの人…。

「やあ」

「「「「!!!」」」」

ひ、ひ、雲雀さんー!?!?!?え、ここ2階なんですが…!?なんでそんなナチュラルに窓からいらっしゃったので…!?

他校生で雲雀さんを知らないハルはきょとんとしていたけど、応接室事件のあの場にいた残りのメンツは顔を青くした。

そして最悪なことに、私はぱちっと目が合ってしまった。ひっ!!

「…ミョウジナマエ。君、セーラー服は届いたよね?一度も着ていないようだけど?」

「はい!?え、いやっ、私ブレザーの方が好みでして…!!」

セーラー服。風紀委員に入れと言われて届いたいわくつきのブツ。

そんなもん着れるか!!…とは流石に言えないので適当な言い訳をしてみる。すると雲雀さんは「ふうん…」と小さく頷いた。

「まあいいけどね。並中の制服を着ているのなら」

「え…そ、それは勿論」

どうやらお怒りには触れなかったらしい。いやでもそうだよね、私ちゃんと並中の制服は着てるわけだし…。別に怒られるようなことはしてないはずだ。

「今日は君たちと遊ぶために来たわけじゃないんだ。赤ん坊に貸しを作りに来たんだ。ま、取り引きだね」

雲雀さんはそう言いながら部屋の中に入ってくる。リボーンに貸しを作る…?

真っ直ぐ向かうのはあの死体の前。彼は死体をまじまじ見て「やるじゃないか、心臓を一発だ」と物騒な感心を見せた。

「うん、この死体は僕が処理してもいいよ」

そして更にとんでもなく物騒なことをさらりと言ってのける。

死体を処理…処理!?!?

「死体を見つからないように消して殺し自体を無かったことにしてくれるんだぞ」

「色んな意味でマズいよそれは!!!」

リボーンはなぜかあっけらかんとしている。今日はツナの絶叫が止まらない…。

雲雀さんは「あとで風紀委員の人間を寄越す」と言ってまた窓から去っていった。いや…風紀委員で殺しもみ消してるんですか…。うちの風紀委員って何なの…。そんなとこ絶対入りたくないんだが…!?

「いや!ちょ、あの!!」

流石にヤバイと思ったツナは慌てて窓に駆け寄る。そしてその後ろには短気な爆弾男。

「10代目!!どいてください!!あいつだけはやり返さねーと気が済まねえ!!」

「!?ちょっ、獄寺やめっ…」

ハッとした時にはすでに遅し。ダイナマイトに火をつけて窓の外に乗り出す獄寺。奴は「果てろ!」と抜かして雲雀さんにダイナマイトを投げつけた。しかし雲雀恭弥という男はその程度の攻撃など簡単にはねのける。

「そう死に急ぐなよ」

軽い口調、軽いトンファーさばき。獄寺の放ったダイナマイトはこちらに跳ね返って戻ってくる。…あ、終わった。

ドガアンッ!!!!

部屋の中で爆発したダイナマイト。おかげでこちらは大惨事。

「大丈夫すか?10代目!?」

「大丈夫じゃないわ!?そんなポンポンポンポンダイナマイト投げるなバカ!」

「ああ!?てめーに聞いてねーよ!!」

文句を言ったら睨まれたけど負けじと睨み返す。街中でそんなもんぶん投げまくるな!いつもいつもいつも!!

「お前、秋になっても花火持ち歩いてんのかよ…」

「花火じゃねえ!!」

そして山本は天然炸裂。山本って獄寺のあれ花火だと思ってたのか…。

とりあえず私は倒れてるハルに声を掛けた。

「ハル…だいじょーぶ?」

「うう…ほぇ!?ナマエちゃん、大変です!!死体がなくなってますーっ!!」

「へ!?」

手を取って起こすと異変に気が付いたハルが叫ぶ。死体がなくなった!?

見れば確かに死体が見当たらない。さっきの爆発でどっか飛ばされた!?

「いやー、死ぬかと思った。あぶないあぶない」

すると背後から聞こえた知らない声。今ここにいる誰の声でもない。ゆっくり振り返るとそこに立っていたのはあの死体の男。うんんんん!?!?

「こいつは殺され屋のモレッティだぞ」

リボーンは言う。モレッティ…?殺され屋…?

なんでも彼は自分の意思で心臓を止めて仮死状態になることが出来るアッディーオという技の使い手で、ボンゴレの特殊工作員だという。つまりは死んでおらず死んだふり。そしてリボーンは最初からこの人の事を知っていたと言うこと。この赤ん坊…。

「何だナマエ、何か言いたそうだな」

「…いえ」

こんにゃろうとか思ってたらチャキッと銃を手にしたリボーン。いや怖いって…。

このモレッティさんは日本に来たついでに10代目であるツナにアッディーオを見せに来たのだと言う。

とりあえず誰も死んでない、誰も殺してないなら良かったけど…。

折角の日曜日なのに、朝からどっと疲れた…。

ツナも安心と疲労でへろへろと座り込んで、怒る気力も無さそうだった。

To be continued