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保育係

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

保育係

「え?ツナ、山本んちがお寿司屋さんなの知らかったの?」

「この間知ったよ…。なんでナマエ知ってんの?」

「いや普通に聞いたことあるよ…。山本のファンの子とか話してるし…。んで、なんだっけ?リボーンたちに騙されて食い逃げされて、バイトしたって?」

「そう…。あー、本当えらい目に遭ったよ…」

「ははー、まあその話は聞いてたけど、私が手伝いに行く義理別にないしねー」

けらけら笑えばツナはがくりと肩を落とした。

先日、山本の家である竹寿司で食い逃げ騒動があったそうな。その犯人は、リボーンに騙されたツナ。ツナはその借金を返すため、山本に手伝ってもらいながらバイトをする羽目になったとか。

以前に比べ、ツナの周りはだいぶ賑やかになった。それは楽しくもあるけれど、同時に厄介ごとも増えているのは否めない?

例えば今日の授業中も、またひとつ事件があった。

「ツナ…チャックがこわれてしっこできない…」

1-A。私たちの教室に、真っ青な顔して現れたのはランボだった。

トイレに行きたいけどチャックが壊れたというランボはツナに泣きつく。しかし結局間に合わず漏らしてしまい、その兄だと勘違いされたツナはクラス中の笑い者。

…まあ、ランボは群を抜いてトラブルメーカーではあるよね。

「ナマエちゃ~ん!お待たせしました~!」

「ハル!いらっしゃーい」

そんな日の放課後、私は校舎の入口付近で待ち合わせをしていた。携帯を見ながら待っていると、だんだん近づいてくる足音がして顔を上げた。

待ち人はハルだった。

今日は並中とハルの通う緑中の新体操部の交流試合がある日。そのためにハルが並中に来ることを聞いていた私はどうせなら会おうよと約束をしていた。

「ツナさんもいるでしょうか?折角なら会いたいですー!」

「あー、そうだね。ちょっといそうなとこ探してみよっか」

「はい!」

ハルの希望でツナを探してみることになった。そうして適当に歩いていると、なにやらわんわんと子供の泣き喚く声が聞こえてくる。というか多分この声は…。それを聞けばハルもピクリと反応する。

「はひ!?この泣き声、ランボちゃん!?」

「あー…かも」

「こうしちゃいられないです!ナマエちゃん行きましょう!!」

子供に優しいハルはいてもたってもいられないと走り出す。うーん、なんか厄介ごとの匂いするけど…。とりあえず私も走って追いかけた。

「何やってるんですかー!!!」

ハルの大きな声が響く。それを聞き、その場にいた皆が振り返った。

泣き喚くランボと、ツナに獄寺に山本、それからリボーン。あーいつもの顔ぶれ~って感じ。

私が来たのはともかく、ハルが並中にいることに皆は驚いたようだった。

「ハル!?なんでお前がうちのガッコにいるんだよ!」

「転入か?」

「違います!!新体操部の交流試合に来たんです。折角なのでナマエちゃんと待ち合わせして、やっとツナさんを見つけたと思ったらランボちゃんを泣かしてるなんて!」

ツナと獄寺にここにいる理由を説明しながらもご立腹なハル。山本は泣き喚くランボの傍で困り顔をしてなだめていた。

ツナと獄寺はハルと新体操というワードが結びつかないらしく困惑していたけど、そこは私も最初驚いたから何とも言えない…。

ハルはランボの傍に駆け寄り、山本と一緒になだめはじめた。ていうかなんで山本がひとりでランボのことなだめてるんだろうか。状況がよくわからないので私はとりあえず近くにいた獄寺に聞いた。

「ねー、獄寺。これ、どういう状況?」

「アホ牛の保育係を決めてんだよ…」

「保育係!?あんたよくそんなの参加してんじゃん」

「仕方ねーだろーが!保育係になった奴が10代目の右腕だっつーんだからよ…」

「あー…そーゆー。で、ランボ泣いてんのは?獄寺またいじめた?」

「俺じゃねーよ。山本のヤローがキャッチボールするっつってアホ牛に全力でボールぶん投げたんだよ。んで、顔面にヒット」

「5歳児に全力で投げたの山本…」

「ああ。あいつ、珍しくいい仕事したぜ」

なるほど。理由は分かった。確かに山本は野球の動作に入るとつい加減が出来なくなると前に言っていたような気がする。でも5歳児相手にやったんですか…。山本も意外と恐ろしいとこあるな…。それを見て嬉しそうにしてる獄寺もなんだかなぁではあるが。でもだから山本がランボのことなだめてるわけね…。

しかしお怒りモードのハルはそのへん勘違いしてる模様。

「こんないたいけなチャイルドを泣かして!たとえツナさんでもランボちゃんをいじめたらハルが許しません!!」

ランボを抱きかかえ、ツナに怒るハル。山本が「いや…これは俺が…」と言いかけても聞く耳なし。

でもこうして見てると、ハルは小さい子の面倒見がいいよね。

「あいつが一番保育係に向いてるな…」

「言えてる…」

「じゃあ、奴が右腕…?」

「いや一番気になるのそこ…?」

ハルが一番保育係に向いているとリボーンが言えば、ツナはこくりと頷く。そしてそれを見てショックを受けている獄寺。…この右腕への執着凄いよなホント。

しかしランボはハルに抱えられてもいっこうに泣き止む気配がない。山本のボール、相当痛かったのだろうか…。泣き叫ぶランボは頭から10年バズーカを取り出した。え。

ドガァンッ!!!!

自分に向かって10年バズーカを使ったランボ。大きな音と煙が自身を包むと、その姿が10年後と入れ替わる。そうなればハルが支えていられるわけもなく…。

「ヒャ!!!」

「う…っ!!」

片膝を立ててしゃがみこんだハルの膝が大人ランボにクリティカルヒット。今ゴキッって凄い音した。

「やれやれ…なぜ10年前にくるといつも痛いのだろう…」

「はひー!!誰ですかー!!?」

突然現れた伊達男に驚くハル。ああ、ハルは大人ランボと会ったことないよね。ていうかいきなりあんな兄さん現れたらそりゃ誰でも動揺するだろう。

「お久しぶりです、親愛なる若きハルさん」

痛めたお尻をさすっていたランボは立ち上がり、ハルに挨拶する。

しかしそれに対するハルの反応は子供ランボに対するものとは打って変わり、何かに耐え切れなくなったように悲鳴を上げてビンタした。

「キャアアアア!!!エロ!!変態!!胸のボタンしめないとワイセツ罪でつーほーしますよ!!なんか全体的にエロイ!!!」

「こ…これはファッションで…」

ハルって大人ランボみたいなのダメなんだ…。ボロクソ言われ大人ランボもショックを受けた模様。するとそれを見た獄寺はにやりと笑い、大人ランボの方に近づいて行った。

「ハル、わかるぞ!お前の言うことはもっともだ!それになんだ、このヘンテコな首輪は」

「え」

「おめーは鼻輪が似合ってるんだよ!アホ牛!!」

大人ランボのネックレスを掴んでこれまたボロクソ言う獄寺。もはやイジメ…。この男の性格の悪さよ…。

ハルから立て続けであまりのボロクソっぷりにランボのメンタルもズタボロの様子。

「ラ、ランボ…大丈夫?」

「あ…若きナマエさん…」

あまりの不憫っぷりに思わず声を掛ける。すると大人ランボはこちらに振り向き、目が合うと何かをグッと耐えるような顔をした。

「うっ…ナマエさんの顔見たら気が緩んで…。ちょっと胸を貸していただいても…」

「え」

「ざけんなてめえ。早く帰れ」

ふらっ…とこちらに手を伸ばした大人ランボ。しかし獄寺がその首根っこを掴み、雑にぶん投げた。いやま、5歳児ランボならともかくこのランボに胸を貸して欲しいはびっくりしたけど。

よたったランボはそのまま「失礼します…」と、ふらふらした足取りで去っていく。なんかもう哀れすぎる…。

「ん?おい、お前。角落としてるぞ!」

その時、山本がランボの落とし物に気が付いて声を掛けた。山本が拾い上げたのは確かにランボの角。ランボは一度足を止め、暗い顔のまま振り向く。

「あ…、投げてください…」

多分、何気なく言った言葉。でも山本が投げる動作に入った時、私はハッとした。あ、それ多分やばい…!

「あいよ!」

ゴッ!!

なんか風を切るとんでもない音がした。

またも加減を忘れた山本によって投げられた角はものすごい勢いでランボの額にクリティカルヒット。う、うわあ…。見てるこっちも引く勢い…。

「が…ま……うわあああああっ!!!!」

あまりに痛みに我慢出来ず、うずくまって大泣きし始めた大人ランボ。…うーん、これ見てるとやっぱこの人ランボだなあって気がしてくるよ。

結局、ランボの面倒はツナが見るしかないという方向で落ち着くことに。

「いや、ナマエは!?」

「私別に右腕になりたいわけじゃないしそもそもパース」

「ぐぬぬ…」

悔しそうなツナの顔。

私はへらっと笑って、厄介ごとは回避します。

To be continued