香港からの殺し屋
香港からの殺し屋
「ソーメンパン…」
購買の新製品ソーメンパン。それを私は二度見した。お、おいしいのかなコレ…。
しかしそんな私の気持ちとは裏腹に隣の男はそれをふたつ手に取った。
「え、買うのそれ」
「あ?なんか文句あんのかよ」
「いや文句はないけど。…ていうかふたつ?」
「折角だ、10代目にもお渡しするんだよ」
ソーメンパンを買った獄寺。相変わらずのツナツナツナ男である。
私は普通にポピュラーなクリームパンを買った。定番が一番よ定番が。そして甘いの気分!
入れて貰ったビニール袋を手にぷらぷらと教室に戻ってくる。しかし入口から覗いた席にはツナの姿が無かった。
「10代目がいねえ…」
「んー?トイレとかじゃないの」
別にそのうち戻ってくるでしょーと私は適当に返事をした。
するとそのやり取りを聞いていたらしい花がツナの行き先を教えてくれた。
「沢田なら屋上行ったみたいだけど?」
「花」
花によると、ツナは見知らぬ子供を追って屋上に向かったという。
見知らぬ子供…?ってことは、多分リボーンやランボではなさそうだ。リボーンは見かけてるだろうし、ランボは悲しかな前回のおもらし事件でうちのクラスでは認知されてるし。
「じゃあ屋上行ってみる?」
「おめーも来んのかよ」
「まー、京子も行ったって言うし」
ついでの情報で京子もその子を追って屋上に行ったそうだ。京子はその子の落し物を届けに行ったとか。ということで、私は獄寺と一緒に屋上に向かってみることにした。
「10代目、購買の新製品ソーメンパン一緒にどースか?」
「って、ちょ、獄寺!」
屋上の扉を開くなり、ツナの姿が見えた。しかし同時にこちらに飛んできた謎の影。私が慌てて声を掛けると獄寺は咄嗟にそれをキャッチした。…って、子供?獄寺がキャッチしたのは見たことのない小さな子供だった。辮髪…?もしかしてこの子が噂の見知らぬ子?
「獄寺くん!ナマエ!危ない!早くその子投げて!!」
ツナはその子を投げろと叫んできた。いや子供を投げろって何だ。でもその顔はなぜか切羽詰まった様子。
獄寺は深く考えなかったようで、10代目に言われるがままにこやかに、ぽいっとその子をツナに投げた。
「はい」
「俺じゃなくってー!!!!」
返されたツナは慌てて手を伸ばしながらも何故か泣き叫んでいた。俺じゃなければどこに投げろと…。
「あと三箇!!うわああっ!!!」
さんぴん…?謎の単語を発しながらその子をまたぶん投げるツナ。え、なに。私の幼馴染み幼児虐待している?
すると今度は何故かバレーボールのユニフォーム姿をしているリボーンによってパスされまたツナに戻されるその子。「戻すなー!!」とか叫んでるツナだけど、状況がいまだに理解できない…。なに、あの子を持ってたら危ないってこと?
「あと二箇!!」
自分の手に戻されたあの子をまたツナは投げる。
「よー、ツナ。また俺とお前補習だってよ」
「山本ォ!!」
その時ちょうど山本が屋上に上ってきた。ツナはまるで救世主が来たとでも言うような声。あの子はポスッと山本の手の中に落ちる。
「なんだこりゃ?」
「いいから山本!!思いっきり投げてー!!!」
ツナは叫んだ。思い切り。それでスイッチが押されたように山本はキッと目の色を変え、加減もなしに辮髪の子をぶん投げる。それはものすごい勢いで空へと投げ出され…。
ドォォーン!!!!!!!!
「な…」
空で起きた大爆発。爆風がビュオッと髪を揺らす。
唖然…。あの子…爆発した…。
放課後、私と獄寺はツナの家に寄り、獄寺は回収したあの子をグルグル巻きに縛り上げた。
「何もここまでしなくても…」
「何言ってるんスか。こいつ10代目を殺しに来たんスよ」
「えーっと…イーピンって言うの?この子…」
私はまじまじと改めてその子を見た。名前はイーピン。ランボとそう変わらなそうな歳だけど、人間爆弾と言われる香港の殺し屋らしい。得意技は餃子拳。
人間爆弾って…マジで爆発してたけど。ツナが叫んでいたピンというのは言わばカウントダウンで、額に浮かび上がる箇子が九箇から一箇に変わった瞬間、あの大爆発が起きるらしい。そのスイッチはイーピンの恥ずかしさが頂点に達した時。極度の恥ずかしがり屋であるイーピンは、カウントダウンが始まると人に擦り寄る癖もあると言う。
…あの時、獄寺のところに飛んできた時点で爆発しなくてホント良かった…。あの瞬間だったら私、獄寺と一緒に確実にお陀仏だったよ…。
「でも、根はいい奴だと…」
「あー、うん。京子も言ってたよ。昨日、落としたお金拾うの手伝ってくれたってさ」
縛られている姿を少し不憫そうに見るツナに私も頷いた。京子が忘れ物を届けに行ったのは、昨日自分が助けてもらったお礼の意味もあったらしい。
大爆発はおっかないけど、色々と話を聞いてみた感じ、そう悪い子でもなさそうだ。日本語が喋れないみたいだから本人との会話は難しいけど、その行動の端々から親切な子であるのは見て取れる。ただ、ツナを殺しに来たって言うのは無視できないけど。
するとリボーンがイーピンが持っていた写真を持って確認した。
「お前、この写真の奴を殺せって言われてきたんだろ?これはツナじゃないぞ」
ツナじゃない…?それを聞き、私、ツナ、獄寺もその写真を見せてもらう。
「え…」
「あ!」
「な…!?」
だ、誰ー…。
そこに写っていたのはツナとは全く似ても似つかないまったくの別人。
どうやらイーピンは超が付くほどのド近眼らしい。
まあとりあえずツナがターゲットじゃないってわかったなら良かったかな。
その後イーピンは未熟な己を鍛錬すべく、日本で修業を始めたのでした。
To be continued