ランキングの星の王子
ランキングの星の王子
放課後、帰り支度をしていると何やら慌てた様子の獄寺が私の席にやってきた。
「おい!ナマエ!今から10代目のうちに行くぞ!!」
「………は?」
いきなり何だ。意味がわからず顔をしかめると、バァンと机を叩かれて急かされた。
「いいから荷物しまえ!!早く!!行くぞ!!」
「ええ…って、ちょ!?」
まだ出したままだったペンケース。ペンや消しゴムもまだその中に入れてなくて。獄寺はそれらを全部雑に掴み、私の鞄の中に放り込んでしまった。ちょ!ペンとか消しゴムそのまま!何すんだこいつ!!文句を言おうとするも、その言葉も獄寺の更なる急かしの中に消えてしまう。
「よし!オラ、行くぞ!!さっさとしろ!のろま女!!」
「のろま女!?」
ちょっとあまりに酷い言い草ではありませんか!?なにをそんなに急いでるの本当に…。なんかもうよくわかんないけど従った方が楽な気がしてきた…。ああもう、鞄の中あとで整理しなきゃ…。諦めた私は鞄を肩に掛け、とりあえず獄寺のことを追いかけた。
「ねえ、何をそんなに急いでんの?」
学校を出ても早歩き。でもひとまず少しは余裕が出来たので聞いてみる。すると獄寺もそこでやっとワケを話してくれた。
「ランキング小僧が来たんだよ!」
「らんきんぐこぞう…?」
聞いてもよくわかんなかった…。
…ランキング?小僧?とは一体何ですか。
「ランキングフゥ太!こいつにランキングを作らせたら右に出るものはいないという情報屋だ!」
「情報屋…?ランキング作ってる人なの…?って、それが何?」
「鈍いなお前も!10代目の右腕に相応しいランキングで俺は何位なのかを聞くに決まってんだろ!お前には証人になってもらう!」
「え、何その超個人的でピンポイントなランキング…」
ツナの右腕ランキング…?そんなのあるワケない…ってか普通に考えて作れないでしょ。意味がわからないんだけど。
「お、獄寺!ナマエ!」
「あ、山本」
よくわからず困惑していると声を掛けられた。振り向けば「よっ」と笑顔の山本の姿。私が手を振り返すと、隣で獄寺が舌打ちした。
「お前らどーしたんだ?こんなとこいるってことはツナんちか?」
「うん、獄寺が行きたいんだって。私は、なんか連れてこられてよくわかんないけど…」
「ははは!なんだそれ!でもなんか面白そうだな!」
「だー!!てめぇら!!立ち話はじめんじゃねえ!!!」
獄寺が怒った。どんだけランキング聞きたいの…。とりあえず獄寺がうるさいので山本も交えて私たちはツナの家へと向かった。
「10代目~!!なんで俺に教えてくれなかったんスか!?ランキング小僧が来てるって!!」
「獄寺くん!」
「よくわからんけどお邪魔しまーす」
「そこで偶然ふたりに会ってな、面白そーだから俺も来たぜ!」
「ナマエ!山本も!」
沢田家に到着し挨拶すると、ツナが2階から顔を覗かせた。獄寺は誰よりも早く靴を脱ぎ、真剣な顔で階段を上っていく。
「前からランキング小僧には聞いてみたいことがあったんです。俺の聞きたいことはただひとつ…10代目の右腕に相応しいランキングで俺は何位なのか!!」
あ、ここでも言ってる。てことは本気でそのランキング教えて欲しいのか。……もしかして本当に出せるの?ていうかランキングフゥ太ってどんな人。小僧…ってことは子供?
色々考えながら私も階段を上ってツナの部屋を覗くとそこにはハルの姿があった。
「あれ?ハル?」
「はひ!ナマエちゃん!聞いてください!フゥ太くん凄いんですよ!天才占い師なんです!」
「天才占い師…?」
…情報屋じゃなかったっけ?今度は占い師?興奮しているハルが指差す先を見ると、そこには小学生くらいの可愛らしい顔立ちの男の子がいた。もしかしてあの子がフゥ太?
「出来るのか、小僧!」
獄寺もその子に話しかけていた。どうやら本当にあの子が情報屋のランキングフゥ太らしい。ごくごく普通の男の子に見えるけど。彼は真剣な面持ちの獄寺にこくんと頷いて返していた。
「カンタンだよ。ツナ兄の右腕に相応しいランキングでしょー」
え、出来るの。ていうかカンタンなの?でも出せるなら私もちょっと知りたいかも。
獄寺がツナの右腕に相応しいのかどうか、か。
この調子でもし山本の方が上だったりしたらどうすんのかな獄寺。それはそれでちょっと面白そうだけど。まあ努力すればいい話だし、そうなったら慰めるくらいはしてあげようかな。
そんなことを思って少しワクワクしていると、急に辺りのものが浮き始めた。は!?
「え、なに?なにこれ!?」
「フゥ太くんが占いするとこうなるんです!すごい演出ですよね!」
「え、演出…」
驚いているとハルが教えてくれた。多分これ演出違う…。でもランキングを出す時こうなるってこと…?その辺は後でツナに聞くか…。
「いくよ、隼人兄の順位は……」
順位は…!
「圏外」
けん、圏外…?
「なにーー!!!」
獄寺が絶叫した。いや、震え出した。え、圏外…?
「ランキング圏外なんてあんの?」
「ランキング圏外だなんて言ってないよ。大気圏外だ」
ツナが聞くとサラッと答えたフゥ太。ランキング圏外じゃ無くてまさかの地球の外だった…。え、そこまで相応しくないと。
「アハハハ!また面白れぇ奴だなー!」
笑う山本。山本は相変わらず遊び感覚…。いや今回は私もイマイチよくわかってないけど。
獄寺は青い顔してる。するとフゥ太は別のランキング結果を獄寺に示した。
「でも隼人兄、マフィアのファミリーの右腕だけが仕事じゃないよ。隼人兄は保父さんに向いてるランキングでは8万2千203人中1位なんだし」
「なっ!?」
「いつもランボと喧嘩してる獄寺くんが…!!」
「保父さんですかーー!!!?」
獄寺が、保父さん…。ぜ、全然想像出来ない…。
ツナとハルもショック受けてるし…。
「隼人兄は子供好きランキングでも8万2千203人中2位なんだもん!ぴったりじゃないか」
「はがっ!…俺…子供好きだったの…?」
獄寺の顔はサアァァ…と青ざめていく。いや子供好きの自分そんなにショック?そりゃまこっちもさっぱり想像つかないけども。
「流石フゥ太だわ!見事なランキングさばき。でも大事なのは愛よ!」
「ヒイイイビアンキー!!!」
天井から声がした。見上げるとそこにいたのはフゥ太の力によって天井に張り付いているビアンキさん。長い髪が広がって若干ホラーチックになってる。ハルは「カッコイイですー!!」とか言ってるけど正直怖いですビアンキさん!!
「あ!!獄寺くん色んなショックで石化しちゃったー!!?」
「ご、獄寺…」
度重なるショックとビアンキさんの登場で完全に固まってしまった獄寺。おーい、と肩を揺らしても反応なし。ダメだコレ…。
「この際、愛のランキングを使って誰が誰を愛しているかハッキリさせましょ。ナマエ、貴女も名案だと思うでしょう?」
「へ?」
名前を呼ばれて間の抜けた声が出てしまった。見上げたビアンキさんはうっとりした目で弟の肩を揺らす私を見ている。
あ、あー…これまだビアンキさんに勘違いされてるー。…いや、あれから誤解を解くチャンスがなかなか無くて確かにそのままだけども…。
「面白そうだな。フゥ太、やってくれ」
リボーンは乗り気だった。それを聞きフゥ太はランキングをはじめる。
「じゃあまずは、ツナ兄が愛してる人ランキング。いくよ」
「はぁ!?まじで!?ちょっ、フゥ太!待って!!」
焦り出すツナ。え、なにこれ公開処刑じゃん…。みんなの前で好きな人ばらされるの…。いやツナが好きな人は京子なの知ってるけど。でも私が知ってるだけで他の全員がそうとは限らないよね。現にハルなんかはドキドキした顔してるし。え、もしかして泥沼化する?ツナは止めようとするも、フゥ太に近づいたら体がぶわっと浮かび上がってしまった。憐れツナ。いや、私が行ってもどうせ同じく近づけないだろうから。
「第1位は…レオン!!」
発表されてしまったその名前。しかしそれを聞いた瞬間全員一瞬止まった。レオ…え、レオン?レオン…って、リボーンのカメレオン?
「う、嘘ー!!!」
当人であるツナが叫び、頭を抱えて混乱し始める。いや混乱してるのはこっちも同じだ。ツナって爬虫類好きだったっけ…?
そしてその答えに大きなショックを受けたハルはダッと走り出し窓に張りついて涙ぐんだ。
「ハルはとんだ伏兵に負けました…ハルのハートはこの空と同じ大雨です…」
「!雨…?」
雨。その単語を聞いた瞬間、フゥ太が反応した。そして途端に消える部屋中の浮遊効果。浮かんでいたものがパタッ…と床に落ちていく。ツナやビアンキさん、一緒に浮かんでいたランボやイーピンもドサッと落ちた。
「んー…たるい…僕、雨に弱いんだ…。雨なんか嫌いだよ。ランキングの能力がデタラメになっちゃうし…」
フゥ太は気だるそうにゴロンと床に転がった。どうやらこの子は雨が弱点らしい。ランキングの能力にも支障が出る…?ってことはもしかして、これまでに出たおかしなランキングの結果は…。ツナもハッとしていた。
「ってことは、雨が降ってからのランキングは間違いなの!?」
「じゃあ俺のランキングも…!!」
あ、獄寺復活した。
雨…。確か私たちがツナの家に着いた時、ぽつ…と少し頬に水が触れた感覚があった気がする。ということは獄寺やツナのランキングを見て貰った時には既に当てにならなかったのかもしれない。
するとリボーンが言う。
「雨が降ると能力が乱れるのはランキング星との交信が乱れるからって説があるんだ」
ランキング星…?やっぱり詳しいこと全然わからないけど、フゥ太はそのランキング星と交信することでランキングを出してるって事?またぶっ飛んだ話だな…。
でも今更だけど、獄寺が急かしてきた理由はよくわかったかも。何でもわかるランキング、か。
目を向けると相変わらず気だるそうに転がっているフゥ太。そう言えば私挨拶も出来てない。私はそっとフゥ太に近づいて傍にしゃがんだ。
「えっと、フゥ太…?大丈夫?」
「ううーん…あれ、貴女はナマエ姉…?うわあ、嬉しい…!僕、ナマエ姉とも話してみたかったんだぁ…」
「え、私と?ていうか、私のこと知ってるの?」
「うん、ボンゴレ10代目の秘書のナマエ姉!」
「あー…」
寝っ転がったまま。でも顔を上げて嬉しそうな様子が伝わってくる。どうやら彼は私を認識していたようだ。話してみたかったって言われて悪い気はしないのだけど、でもあれか…君も私を秘書と呼ぶ系ですか。
「そうだ、良かったらこれ、ナマエ姉にあげるよ。前にナマエ姉を見かけた時に作ったんだ。お近づきの印にね」
「え…?これ、ランキング?」
「うん!ナマエ姉の事、大切にしてくれる男の人のランキングだよ」
「え」
私を大切にしてくれる、男の人?そう言われ、思わず渡された紙を見る。
第1位…そこに書かれていた名前に私は目を丸くした。
「え…」
第1位…獄寺隼人。
えっ、は…?
獄寺が、私の事を大切にしてくれる…?
振り返る。そしてその顔を見ると、視線に気が付いた獄寺と目が合った。なんだよ、とでも言いたげな顔。しかめっ面で睨まれる。…いやいやまさかー。いつも結構暴言吐かれてますけど。のろま女。鞄に荷物ムリヤリどーん。ここに来るまでのやり取りを思い出すだけでも酷いものである。
これも雨の日に作ったんじゃないか説。…あ、うん。なんか、そんな気がする。ていうかそうだろと思った。
To be continued