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バレンタインデー

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

バレンタインデー

「サンキュー!」

「てめーら付いてくんじゃねぇ!」

教室に響く黄色い声。その集団は大きく分けてふたつ。ひとつは山本の周りに集まる女の子。もうひとつは獄寺の周りに集まる女の子。

2月14日バレンタインデー。今日はふたりにチョコを渡したいという女の子たちが教室に殺到していた。

「あのふたり凄いな~、帰りまでひっきりなしだ」

「ね。そんなふたりとよくつるんでいるツナくんは何個貰ったんですか?」

「お前わかってて聞くの性格悪いぞ!?」

にやりと笑って聞くと、我が幼馴染みは私を睨んできた。うん、まあわかってて聞いてるけど。

「いーじゃん、0個じゃないじゃん」

「…いや、ナマエからのチョコってカウント入らないよね」

「…まあ奈々さんから貰うのと同じだわな」

ツナが今日学校で貰ったチョコの数はひとつ。それは毎年恒例の私からのチョコレートだ。これは物心ついた頃からあげているものであり、義理も義理の超義理である。だからカウントしていいのかというか、そういう感じじゃないというツナの気持ちはよくわかる。というか私もそんな感じだ。

「…京子ちゃん、誰かにチョコあげたのかな」

「え?」

ツナはちらりと帰り支度をしている京子の方に目を向けた。鞄を肩に掛け、教室を後にして行く京子。その姿を見たツナは机に肘をついて頭を抱えた。

「あ~~、気になる~~!!でももしあげてるの目撃したら俺凹むよな…この世の終わりだよ~…!ねえ、ナマエは何か聞いてないわけ?」

「ん?この世の終わりを知る覚悟があるってこと?」

「え!?京子ちゃん誰かにあげたの!?」

「さあ?」

「いやどっちだよ!?」

反応面白いな。ああああ…とまた頭を抱えるツナ。まあ、京子が今日チョコをどうするのかというのは一応知ってはいる。というか今年からツナの周りは大きく変わったし、普通に私以外のチョコも期待していいと思うんだけど。ハルや、それから京子も。…ただなあ、ひとつ問題があるというか何というか。

「直接聞けばいいじゃねーか」

「「!」」

その時ツナの背後から声がした。特徴的な声。ツナはハッと振り向いた。

「リボーン!学校に来んなって何度言ったら…!」

「さっさと行け」

ズガン!

響いた銃声。有無も言わさず額を撃ち抜かれたツナ。

「復活!!死ぬ気で京子のチョコの行方を知る!!待て!!京子!!」

死ぬ気になったツナは物凄い勢いで教室から出て行った。あーあ…待て京子とか叫ぶから教室中の注目集めちゃったし…。

「せ、積極的~。あれ…ダメツナだよね」

「あいつ、時々純愛の女神降臨すんのよ…」

「あれだけやられても沢田の気持ちに気づかない京子も凄いけどさ…」

聞こえてくるクラスメイト達の言葉。それにちょっと苦笑い。死ぬ気って純愛の女神降臨状態なんだ…いやむしろ女神とはリボーンか。確かに京子も鈍いかもしれないけど…。

私はその純愛の女神とやらに目を向けた。

「リボーン…、結局ツナんちでチョコ作りするの?」

「そーだぞ。だから今死ぬ気でツナを帰らせたんだ。毒チョコ製造を阻止させる為にな」

「あ、そう…」

今日、京子はハルと一緒にツナの家でチョコ作りをする予定だということを私は把握していた。だからツナは京子からチョコを貰うことが出来るはず…なんだけど。でも問題はなぜツナの家であるのかと言うこと。それはビアンキさんに作り方を教えてもらうからだ。

実のところ、私もそこのメンバーに入っているはずだった。というか多分、1番にビアンキさんに誘われたのは私だ。一緒に愛のチョコを作りましょう…って。でもポイズンクッキングになるのがわかってたから市販で素敵なの見つけてもう買っちゃったんですとか何とか言って私はどうにか断った。しかしそこに来て京子とハルだ。断った翌日、ふたりがビアンキさんに教えて貰うと嬉しそうに話しているのを見て私は青ざめた。止めようないでしょこんなん…。

「ま、ツナに何とかさせるぞ」

「はは…」

「それよりお前はどうすんだ?」

「へ?」

お前はどうする?聞かれてきょとんとした。

「どうするって何が?」

「ツナにだけ渡して終わりか?」

「え?リボーンとランボとフゥ太の分もあるよ。ツナに渡しといたから」

「そーじゃねーだろ」

「え、コワ…」

なんか今の声ドス効いてたんですけど…。

俺にはねぇのかコノヤロウって意味かと思ったけどそうじゃ無いの…。

「渡したい奴、いねーのか?」

「渡したい奴?」

そう言われ、くるっと振り返る。そこには相変わらず女子に囲まれている獄寺と山本。山本は爽やか笑顔で対応してるけど獄寺キレてるなあ…それすらも女子達はたまらないみたいだけど。

「うーん。一応、ふたりにも用意したけど…ねえ」

「…ふたり、か」

「ん?うん。日頃の感謝だしね。でもあれだけ貰ってるとあげても困りそう?ていうか1日中あれ見てるとこっちもだんだん面倒くさくなってくるよね。もうあげなくていいのでは」

「お前、あれ見てて何も思わねーのか」

「え?」

「…お前もつまんねーやつだな」

「は!?」

つまんねーって何!?いやとりあえずタイミングは見てたんだよ今日1日。でも休み時間の度マジでひっきりなしだったわけさ。だから今日は獄寺と山本とはまともに話してない。

「用意したならちゃんと渡せよ。んじゃ、俺は帰るぞ」

「え、あ、うん」

リボーンはとてとてと教室から出て行った。ツナ、無事に食べられるチョコ貰えればいいけどね。一途に想ってるのは知ってるからそれくらいは思うのさ。

でも、用意したならちゃんと渡せ…ね。

「………。」

チャックの開いた鞄の中を覗く。包装された箱ふたつ。うーん、あ、山本の家ならお寿司屋さんだしお父さんいるよね。それなら家に寄って渡して貰うのもアリかも。とすると問題は獄寺…。後で呼び出す?面倒くさい顔されるかな。それならいっそ明日とか…?いやそれはどうなんだろう。

「………帰ろ」

うん、とりあえず竹寿司に寄って帰ろう。獄寺は後で考えよう。ジー…と鞄のチャックを閉め、肩に掛けると私は教室を出た。

「よいしょ…と」

下駄箱に来てローファーに履き替える。両足履き替えたところで誰が凄い勢いで走ってくる足音が聞こえてきた。ん…?

「え、獄寺?」

「っ…ナマエ」

自然と視線が向く。するとその正体は獄寺だった。

「え、何走ってんの」

「女ども撒いたんだよ…!」

「撒いたの…?」

必死か…。まあ1日中イライラしてたしわからんでもないけど…。でも渡せなかった女の子達ちょっと可哀想だな…?明日の下駄箱やら机の上が凄い事になってそうな気がする。

「おい、さっさと帰んぞ」

「え?」

「え?じゃねーよ!早くしねーと見つかるだろ!」

獄寺は素早く靴を履き替えた。そして早く来いと私を急かしてくる。あ、一緒に帰るの?ああでも、それならチョコ渡せるかな。とりあえず私も頷き、学校から出ることにした。

「ったく…散々な1日だったぜ…」

「あー、まあお疲れ様…?」

「…なんで疑問系なんだよ」

「いやまあ、なんとなく…」

歩きながらもウンザリ気味に息をつく獄寺。まあ1日中追いかけ回されたらそりゃ疲れるか。でも女の子たちにとっても一世一代みたいな日だろうし、その気持ちもわかるからなんとも…。

ていうか、この調子だとやっぱこの人チョコいらないのでは…?渡すべきかどうするか、やっぱちょっと悩むな…。

「……つか、お前は誰かにやったのかよ」

「え?」

うーん…と悩んでいるとそう聞かれた。私のチョコ。今のところあげたと言えるのは…。

「ツナにはあげたよ」

「なっ、じゅ、10代目…?」

「うん。それはもうちーっさい頃から毎年あげてるからね。お決まりみたいな感じ」

「ああ…」

「あ、でも今年はリボーンとランボとフゥ太にも渡してねーって頼んだ」

「10代目の手を煩わせてんじゃねーよ」

「帰って渡すだけじゃん」

その程度煩わせにならんだろ。少なくともその10代目は何事もなく「わかったー」って了解してくれたぞ。

でもリボーンの名前を出したから、言われたことを思い出す。用意したならちゃんと渡せよ。まあ、そりゃそうよな。うん、まあ…日頃の気持ちで用意したのだから。私は鞄を開け、包みを一つ取り出した。

「獄寺、はい」

「え」

差し出したチョコレート。それを見た獄寺はなぜか固まった。

…ん?ゲッとか思ってる?

「一応日頃の感謝。試食したから美味しいと思うけど…あんだけもらってたら、やっぱいらない?」

「え!なっ、そ、そんなこと言ってねえ!!」

ぱしっと掴まれた。あ、いる?受け取ってくれたのでこちらは手を離す。

「あー…その、サンキュ…」

「うん」

「…へっ、お前、俺に感謝してることあんのかよ?」

「んー、まあ少なからずはあるじゃない?」

「だからテメェはさっきからなんで疑問系なんだよオイコラ」

睨まれた。けどそんなもんどこ吹く風である。

まあ、そりゃそれなりに一緒に過ごしてるんだから多少はあるだろうさ。具体例上げろって言われると困るけど。

「…試食っつったか。買ったのか。んじゃ、味は確実だな」

「うん。手作りで美味しく作る子凄いよね。まあ作るのも楽しいんだろうけど、市販は楽!美味い!」

「…いっそ清々しいな、お前」

「ていうか獄寺、手作り苦手じゃないの?それもちょっと思ったから市販の方がいいかなって思ったんだけど」

「……別に、姉貴のじゃなけりゃいーだろ。顔見知りなら」

「ん?そうなの?」

「…前にお前が握ったおにぎり食っただろうが」

「そういやそうだった!」

「お前その年でボケてんのかよ」

毎回嫌味を忘れん男だな。でも確かに言われてみれば前に家庭科で作ったおにぎり食べてたな。そっか。別に手作りでもいいのか。いやそれと作ったかどうかは別問題だけど。ていうか今年に関してはポイズンクッキングだし…。

「でも、渡せて良かった。学校だとなかなかチャンス無かったし、いらないかなとも思ってたから」

「え…」

あ、うん。なんかホッとしたかも。無事に渡せて。やっぱ折角用意したしね。

そうこうしていると道の分岐に着いた。山本の家に行くならここを曲がらないと。

「あ、じゃあ、今日私こっち行くから」

「あ?商店街でも行くのか?」

「うん。山本んち行く」

「はあ!?」

ビクッとした。急にでかい声を出す獄寺。え、なに!?

「び、ビックリした…急になに!?」

「…なんで野球バカんち行くんだよ」

「え、いや…山本にもチョコ買ったけど学校じゃ渡せなかったし、お父さんに預けてもいいかなって…。獄寺も一緒に行く?」

「……行く」

なんとなく聞いてみたけど、意外とすんなり頷いた。こいつ暇なのか今日。まあ私としては道中話し相手がいるのはいいけど。

「んじゃ行こ」

「あー…(俺と同じ包み…)」

コレだよともうひとつ同じ包みの箱を出す。ちなみにツナもリボーンもランボもフゥ太も全員同じモノだ。

こうして獄寺とふたりで竹寿司に向かうことに。途中、商店街で少し寄り道したこともあって、着く頃には山本も帰ってきていて本人に直接渡すことが出来た。

ついでに山本のお父さんの厚意で夕飯にお寿司をごちそうになって、最終的には色々ツイてる1日になったのでした。

To be continued