銀色と爆弾
銀色と爆弾
ボンゴレファミリー10代目ボスと、その秘書となれ。
リボーンがやってきて、なんだかおかしなことになり始めた日常。
持田先輩の一件があってから、みんなのツナに対する態度が少し変わった。ダメツナと呼ばれることは格段に減ったし、むしろ一目置かれるような…そんな雰囲気になった気がする。
私はもともと関わりがある分、ツナの良いところも知っているけれど、ダメな部分も誰より多く知っている。
怠け者だし、すぐサボるし、おバカだし。ダメツナと呼ばれても仕方がない。私だってそう呼んでいた。
だけどダメな部分ばかり目立って、良い部分を覆い隠してしまっていると思っていたから。
だからもしツナのいいところに目を向ける人が増えるのなら…それは悪くないかもしれないなって。
そんなことを思っていた矢先、私たちのクラスにひとりの転校生がやってきた。
「イタリアに留学していた、転入生の獄寺隼人くんだ」
担任が紹介する。黒板の前に立ち、クラスの注目を集めているひとりの男の子。
いつもは眠気でぼんやりしているホームルームだけど、今日は私も真面目に聞いて、その男の子を見ていた。
イタリアに留学…。最近マフィアとか聞いてたからちょっと複雑な気持ちになる。いやイタリアさんごめんなさい。
まず目を引くいたのはその髪色。わあ、綺麗な銀色だ。それから、淡いグリーンの瞳の整った顔立ち。ただちょっと目つきは悪い?アクセサリーもジャラジャラつけて…言うなれば、ガラの悪そうな雰囲気。
「ちょ…格好よくない~?」
「帰国子女よ!」
女の子たちの何人かは彼を見てはしゃいでいるようだった。
あー…まあ、あの顔立ちはモテそうだよなあ…。不良っぽいっていうのもポイントは高いのかもしれない。
「獄寺くんの席はあそこの…獄寺くん?」
担任が席を説明する前に、獄寺隼人は教室の中を進みだした。どこに行くのかと教室中が見つめる中、彼が真っ直ぐに向かったのはツナの元。
え、ツナ?
そう思ったのもつかの間、彼はいきなりガンッとツナの机を蹴り上げた。うん…!?
「でっ!?」
蹴られた机に体をぶつけたツナは驚き怯える。獄寺はツナを一睨みすると、くるりと背を向け空いている席に向かっていった。
え、なんで今蹴った?
唐突な展開にあれは絶対不良だと冷えた教室。一部の女子だけはそこがいい、ファンクラブ結成決定だなんだと浮ついていたけれど…。えええええ…。私としては困惑の感情が一番を占めていた。
「ふああ…疲れたー…」
放課後。掃除当番だった私はゴミを捨て終え廊下を歩いていた。やっと一日が終わり、気が抜けて欠伸が出る。
でもその時、窓の外で何やら言い争うような声が聞こえてきた。
「お前みたいなカスを10代目にしちまったらボンゴレファミリーも終わりだな」
「え!?なんでファミリーのことを?」
「俺はお前を認めねえ!10代目に相応しいのはこの俺だ!」
「な!?なんなんだよ急に?そ…そんなこと言われたって…!」
ボンゴレファミリー!?10代目!?最近凄く聞いた、でも学校で聞こえちゃマズイその単語が聞こえてバッと窓の外を見る。
「え…、ツナと…転校生?」
そこにいたのはツナと転校生の獄寺隼人だった。あの転校生…ボンゴレファミリーのこと知ってるの?
ふたりはこちらには気づいていない。獄寺はツナのことを鋭く睨みつけていた。
「目障りだ。ここで果てろ」
「んなあ!?バ!爆弾!?」
…!!
獄寺が取り出したのはダイナマイトだった。彼はタバコを吸い、その火で導火線に着火すると、ツナに向かって放り投げる。
「っ、ツナ…!」
流石にやばい!それを見た私は窓を飛び越えようと縁に手を掛けた。しかしその瞬間、導火線に何かが擦れ、シュッ…と火は消えた。え…。
そして気が付く、いつの間にか自分の隣にいた、窓の縁に座る小さなボルサリーノ。
「ちゃおっス」
「「リボーン!!」」
私とツナの声が重なった。
え、いつからそこに!?窓の縁に座って居たリボーン。
「って、ナマエも!?」とツナは声を上げ、そのタイミングでとりあえず私もその場の人物として認識されたようだった。
「思ったより早かったな。獄寺隼人」
「ええ?知り合いなの?」
「ああ。俺がイタリアから呼んだファミリーの一員だ」
「じゃあこいつマフィアなのか!?」
「ボンゴレの人…ってこと?」
リボーンとツナの会話を聞き、私も驚く。転校生が、まさかのマフィア…!?リボーンが呼んだって…。ただ、会うのはリボーンも初めてらしい。
「あんたが9代目が最も信頼する殺し屋リボーンか。…そこの女はなんだ」
「え」
獄寺の視線がこちらにも向いた。ギロリと睨まれる。
…いや、なんで何もしてないのに睨まれなきゃいけないんだ!ちょっとムッとする。でも私が何かを言い返す前に、口を開いたのはリボーン。
「こいつもファミリーだぞ。10代目ボスの秘書をするナマエだ」
「いやだからやるって言ってないんですが!?」
またその話!やめろ!と怒る。
でもリボーンは聞いちゃいない。
ついでに転校生も聞いちゃいない。
「秘書…」
「な、なに…」
今度はジッと見られる。なんですか。やるのかこの野郎。思わず睨み返して身構える。
しかし獄寺はそれに対し何か言うこともなく、リボーンに視線を戻した。
「沢田を殺れば俺が10代目内定だというのは本当だろうな」
「ああ。本当だぞ。ナマエもお前につける」
「いや何勝手言ってんの!?」
ツナを殺したら獄寺が10代目!?んでもって私が獄寺の秘書!?いやいやいや全体的に意味がわからないが!?
そして勿論、殺すだのなんだ言われてるツナも聞き捨てならないだろう。
「んじゃ、殺し再開な」
「おい!俺を殺るって…何言ってんだよ!冗談だろ!?」
「本気だぞ」
「なっ…ま…まさか…俺を裏切るのか?リボーン!今までのは全部嘘だったのかよ!」
「違うぞ。戦えって言ってんだ」
慌てふためくツナに戦えと銃を向けるリボーン。
つまり、10代目の座を賭けて戦えと…。でもそんなものにツナが乗るはずがない。
「じょ、冗談じゃないよ!マフィアと戦うなんて!」
「待ちな!」
「うわあ!」
当然、ツナは逃げ帰った。でも獄寺はそんなツナの前に立ちはだかり、今度は両手いっぱいのダイナマイトを構える。
い、いくつ持ってんの…。ていうかどこに持ってたのそれ…。
「獄寺隼人は体の至る所にダイナマイトを隠し持った人間爆撃機だって話だぞ。またの名をスモーキン・ボム隼人」
「す、スモーキン・ボム…」
まるで私の心を見透かしたかのように獄寺の説明をしてくれたリボーン。なんかふたつ名出てきた…。タバコで火をつけるからスモーキンって…?
でもまあとりあえず、ツナからしたらそんな説明も冗談じゃないというわけで。
「果てろ!」
「どひゃああ!!」
投げ込まれたダイナマイト。ツナは悲鳴を上げながら必死で走り回って逃げる。
い、いや…これは…。
「手を出すなよ、ナマエ」
「え…」
流石にツナを不憫に思ったその時、リボーンに止められた。ちょっとドキリとする。本当になんなんだろう、この赤ん坊。
「げっ、行き止まり!!嘘!!」
「終わりだ」
「ぎゃああああっ!!!」
行き止まりで逃げ場を失ったツナ。獄寺は容赦なくツナにダイナマイトを投げ放つ。その瞬間、リボーンはツナに銃を構えた。
「死ぬ気で戦え」
パンッと発砲された音。
その瞬間、ツナの額から血が飛び出る。
…!
あれが、死ぬ気弾!?話には聞いていた。でも、実際に撃たれた瞬間を見るのは初めて。幼馴染みの額に銃が撃ち込まれる瞬間など、正直言ってビビる。ツナの体は倒れこんだ。しかしすぐに腹部から破れ、脱皮をしたように体を飛び上がらせた。
「復活!!死ぬ気で消火活動!!消す!!」
額に炎を灯しパンツ一丁姿になったツナは、物凄い勢いでダイナマイトの導火線を握り、火を消し始めた。
ひっ…熱そう…。ていうかあのパンツ姿になるの、こういう感じだったの?色々合い始めた辻褄。いやでも…素手で消火活動、絶対やばいでしょ…。あれ平気なの?死ぬ気って凄いな…。
「なっ!2倍ボム!!」
物凄い勢いで消されていく導火線に、獄寺は追加でさらに大量のダイナマイトを投げる。しかしそれすらもすべて消化していく死ぬ気のツナ。
それを見て獄寺もムキになったらしい。今度は両手では飽き足らず、両腕に抱えるほどのダイナマイトを取り出す。いやだから…マジでどこに持ってたのそれ…。
しかし、それは無茶だった。ダイナマイトは腕から溢れ、ポロ…と彼の足に転がってしまう。
「しまっ…!」
獄寺の顔に焦りが滲んだ。
えっ、あれ…まずいんじゃ…。
「獄っ…!」
咄嗟に呼びかける。あの量のダイナマイトが爆発したら、その中心にいる彼はひとたまりもない。
でも、もう間に合わない…!
多分、彼自身も死を覚悟しただろう。しかし、そんな大量のダイナマイトに伸ばされる手があった。
「消す!!!消す!消す!消す!消す!消す!」
「つ、ツナ…」
転がるダイナマイトすべての導火線に手を伸ばし、火を消していく死ぬ気のツナ。そのスピードはすさまじく、ダイナマイトが爆発する前にすべての火を消し止めて見せた。
すべてが消えるとツナの死ぬ気も終わったらしい。額の炎が消え、ツナの様子も元に戻った。
「はあ~、なんとか助かった~…!」
「ツナ!」
「あ、ナマエ」
終わったなら、もういいでしょ。
私は窓を飛び越え、ツナの元に駆け寄った。
「あんた…これよく全部消したね…」
「ははは…なんとか」
駆け寄って、散らばるものすごい数のダイナマイトを見渡す。
恐ろしい量だな…。本当によく全部消し止めたものだ…。それにやっぱり、これ全部隠し持ってた転校生に驚きを隠せないんですが…?
そういえばその獄寺隼人はどうしたのだろう?気付いてはっと目を向けると、彼はガバッと地面に両手をつきツナに頭を下げていた。
「御見それしました!!あなたこそボスに相応しい!!」
「「!?」」
「10代目!!あなたについていきます!!なんなりとお申し付けください!!」
な…、え…、は…?
急に態度が180度変わった獄寺。その姿にツナとふたりでぎょっとする。
「負けたやつが勝った奴の下につくのがファミリーの掟だ」
「え″え″!?」
リボーンの言葉に凄い声を出すツナ。そんな掟あんの…。
「俺は最初から10代目ボスになろうなんて大それたこと考えていません。ただ10代目が俺と同い年の日本人だと知って、どーしても実力を試してみたかったんです…」
獄寺の方も真意を語り出した。10代目になるなんてつもりはなかった…。ただ、ツナの実力を試したかっただけ…。
「でもあなたは俺の想像を超えていた!俺の為に身を挺してくれたあなたに俺の命預けます!」
えっ、重…。え、マフィアってこういう感じなの…?急に激重ワードぶっこむじゃん…。そんなの小説とか映画の中だけの台詞じゃないのか…。当然、言われてるツナも困るわけで。
「そんなっ、困るって命とか…!ふ…普通にクラスメイトでいいんじゃないかな?」
「そーはいきません!!!」
ギンっとした視線に言い返され、速攻撃沈するツナ。相変わらず弱いなこいつは…。
「獄寺が部下になったのはお前の力だぞ。よくやったな、ツナ」
「なっ、何言ってんだよ!」
珍しく、リボーンはツナを褒めていた。まあ確かに獄寺の命を救ったのはツナだし、そこは誇ってもいい気がするけど。
ところで、さっきから地面に光ってる小さなモノが気になってる。それに近づき手を伸ばすと、それはライターだった。…中学にライター。ってことは、多分この持ち主は目の前にいるこの男だろう。
「え-と…獄寺?これ落ちてたけど…あなたの?」
「…ん?ああ」
差し出すと受け取った獄寺。やっぱり彼のものだったらしい。多分さっきの騒動の中でポケット辺りから落ちたのだろう。
無愛想に受け取る獄寺。ま、別にいいけど。
「ナマエ」
「えっ?」
渡せたし傍を離れようとすると、その前に名前を呼ばれた。こちらを見上げている獄寺隼人。
「あ?名前、違ったかよ?リボーンさんや10代目がそう呼んでたと思ったが」
「え、あ、いや、あってるけど」
ちょっとドキッとした。
いや…ツナ以外の同世代の男の子に下の名前を呼ばれるということがほぼなくて。クラスメイトの男子はまず苗字で呼んでくるし。
でも私は彼に自己紹介をしていない。それならば彼は私の苗字など知るわけもなくて、もし呼ぶのならツナたちが口にした下の名前になるのは道理だろう。
「お前、10代目の秘書になるんだよな?」
「は?」
「それなら10代目に仕える者、俺たちは同志っつーわけだ。俺たちでしっかり10代目をお支えしていくからな」
「……。」
なんか、同志認定された…。
獄寺隼人。思ったより悪い奴でもなさそうだけど…面倒くさい奴かもしれない。
To be continued