雪合戦
雪合戦
「う~…寒い…」
冬空の下。降り積もった白い雪。
その景色にテンションが上がらないわけでもないけど、冷たい風に体が震えた。
「10代目!こっちっス!」
その時、獄寺が手を上げて振った。ああ、やっとの来たのか。休日の並盛中学。やってきたのはツナ、リボーン、ランボ、イーピン、フゥ太。現在沢田家に居候しているお子様集団。
一方、既にここで待っていたのは私、獄寺、山本、それから笹川先輩にディーノさんだ。
「あれー!?みんな何やってんのー!?」
ツナは驚いた顔をして私たちを見てきた。
何やってんのって…ツナ、なんで皆がここに集まってるか聞いてないの?
「今日はこいつらに呼ばれて来たんだ」
「へ?」
「俺たちもたまにはチビたちと遊んでやろーと思ってな」
「えーー!!!」
リボーンとディーノさんが説明すると、ツナの顔がぱあっと晴れた。多分さっきまでまるで日曜のパパ状態だ…とか思ってたんだろうな。
気付くと沢田家には子供たちが増えていた。そうすると必然的にツナが面倒を見ることが多くなるわけで。それなら少し手伝ってあげようかというのが今日集まった目的だった。
「やるなら俄然、雪合戦スよね!」
「お!燃えそーだなそれ!!」
「かってー雪玉作っか!」
「合戦!!なんという良い響き!!」
…とはいえ、こっちの皆さんもなかなかお子様テンションだ。ディーノさんまで雪玉作ってノリノリである。みんな元気だなあ…。私は来る途中で買ったホットミルクティーで体を温めていた。
とりあえず遊びは雪合戦で決まりらしい。チームは既にリボーンが考えてきてあるとか。
「ナマエ、これ読め。チームが書いてあるぞ。ちなみにお前は待機な」
「え?ああ、うん」
リボーンに紙を渡された。待機ってなんだ。それになぜ私が読む?まあ別にいいけど。
「それでは発表します。東軍はツナ、山本、イーピン、フゥ太の白マフラーチーム。対する西軍はディーノさん、獄寺、笹川先輩、ランボの赤マフラーチームです」
書いてあるままに読み上げた。でも読んでて思った。これ約一名、絶対異議あるやつでは。そしてその予感は的中。
「待ってくださいリボーンさん!!なんで俺が10代目と違うチームなんですか!?」
「謎だ」
「迷宮入りスか~~!?!?」
異議を申し立てたのは獄寺。ほらやっぱり。ツナと違うチームなら絶対言うとも思ったもん。
でもリボーンにはサラッと流されてしまう。獄寺もリボーンが決めたことに関してはそこまで強く言えないしね。
「ルールはこの日の為の特別ルール。レオン争奪戦だ」
リボーンはそう言ってレオンを掌に乗せた。するとレオンはむにゅ~んと形を変えて光り輝く玉になった。
両チームは30分間この光るレオンボールを奪い合い、終了時にレオンを持っているチームが勝ち。また、雪玉にはいくら当たってもいいが気絶したらリタイア。まずは雪玉と塹壕を作って30分後にスタートとのこと。
「優勝チームは明日1日ナマエをパシリにしていーぞ」
「ちょっと待って!?それ聞いてないんですけど!?」
「立派な秘書になるための特訓だぞ」
「秘書はパシリじゃないよ!?全国の秘書の方に謝ろうか!?」
いきなりとんでもないことを言い出したリボーン。
何勝手に人を賞品にしてるんだ!しかもパシリ!!そして私、秘書じゃない!!
しかしいくら文句を言おうとこの赤ん坊は聞いちゃいない。ガン無視&スルー。なんて奴…!!
「はは、ナマエ、気持ちはわかるぜ…。俺はパシリになんかしないから安心しな」
「ディーノさん…!!」
ポンポンと優しく頭を撫でられた。ちょ、ちょっと照れる…。でもこれが大人の余裕的なやつですか!
その隣では獄寺が舌打ちしてたけど…。え、なんの舌打ちだ。ていうかあいつは絶対パシリにしてくるやつだろ。
「うむ!俺もパシリとは言わん!俺は極限ミョウジにはボクシング部の体験入部をしてもらいたいぞ!!」
「え…」
「お?そーゆーのでいいんなら、俺も!ナマエ、朝一緒にバッティングセンター行かね?ナマエなら結構いいの打てそうな気がするんだよなぁー!」
「ええ…」
なんか、笹川先輩と山本も乗り気だ…。いやそれで良いのかって感じだけど…。
「ナマエのパシリ…意外と需要ある…。いやパシリなのか謎だけど」
「チッ…バカばっかッスね。おい、ナマエ。俺がバッチリこき使ってやるから覚悟しとけよ」
「やっぱあんたそーゆー奴だよね」
一方、俺別に嬉しくないな…みたいなツナと、通常運転獄寺。
まあリボーンに文句言っても無駄なので30分が経ち、雪合戦がスタート。私には気絶した人の判定をしろとのお達しが。…もはや今の時点でリボーンのパシリでは…。
「開始」
ブオッとリボーンが法螺貝を吹く。戦国時代かな…。
最初の方は出方を伺い、膠着状態が続いていた。しかしそこで一番に動いたのは熱い男、笹川先輩。
「極限まで攻めずして勝利は掴めん!!」
「んじゃこっちは定石通りに、いくぜ。そりゃ!!」
迎え撃つように雪玉を投げつけた山本。相変わらず剛速球。
でも笹川先輩の拳はその雪玉を打ち砕いた。
「そんななまくら玉、この極限ストレートの前ではマシュマロ同然!!」
「にゃろ、いくぜ!!」
「極限ラッシュ!!!!」
山本もわりと負けん気が強いのでどんどん豪速球を投げまくる。
しかしそれも次々と打ち砕いていく先輩。
両方凄いなコレ…。見応えあるわ。
「…待機、結構いいかも。外から見てるのもなかなか楽しいわ」
「ファミリーの特徴をよく知り、把握する。秘書に必要な知識だぞ。よく見ておけよ」
「……ねえ、そこに繋がるの?」
山本と笹川先輩のバトルは見ていて楽しかった。じっくり見るのに待機はこれ以上にないポジションだ。…けど、そこに繋げられるとは思わないじゃん。
まあでも…みんなの特徴、ね。
ツナとフゥ太は山本の援護をするべく地道に雪玉を投げていた。多分子供を交えた雪合戦で1番正しい遊び方だと思う。
ディーノさんは前に投げてるはずなのに明後日の方向に雪玉を飛ばしている。超絶運動音痴。今日、部下の人いないから…。
獄寺はディーノさんに呆れつつ、普通に早い玉を投げていた。まあ獄寺はわりと何でも卒なくこなすしね。ただ、そんな獄寺の玉を空中で叩き落とす伏兵がいた。その名はイーピン!
「やっぱり凄いやイーピン!!これで互角だよ!!」
フゥ太が喜びツナや山本も頷く。ツナチームには良い流れが出来始めていた。…と思ったのも一瞬。イーピンの餃子拳にはとある問題があった。それは臭い。強烈な臭いは風下であるツナたちをダイレクトに襲っていた。
「弾幕が薄いわ!!光る玉は貰ったぞ!!」
弱まったツナチームの攻撃。その隙を突き笹川先輩がレオンに向かう。あ、もしかして…勝負あり?しかしまたここでやらかす奴がいた。
ドガァン!!!
「うおっ!!無念!!」
突如、笹川先輩の背後を襲った激しい爆発。…爆発とくれば、犯人はひとり。
「10代目、俺です。スパイ活動が終了したのでそちらに戻ります!」
堂々寝返る獄寺。あまりの堂々っぷりに全員が唖然。いやまあでも正直この展開は読めてた…。
うーん、だけどこれ笹川先輩リタイアかな。一応、気絶判定はちゃんとやる。
するとその直後、急に地面の雪の中からバーンッとスーツの男たちが飛び出してきた。
「ならば我々も!!ボスを、守ーーる!!」
「遊びとは言えボスを敗軍の将にゃ出来ねーからな」
「うー、寒かったぜ…!」
「お前らいつから潜ってたんだ!?」
その正体は、獄寺が裏切ったのを見て飛び出してきたディーノさんの部下の方々。…こっちは予想してませんでした。ディーノさんも驚いてたけどいつから雪の中に…。ていうか、もう無茶苦茶ではコレ…。
「こんなんでいいのかよ審判!!」
「うん、ぴったり予想どーりだぞ。ナマエ、待機も終わりだ。お前もツナチームに入れ」
「え」
「お前また遊んでんなー!!」
ツナがリボーンにこんなのありかと意見するもこれが予想通りだと…。そして私にも入れと…。確かにさっきは4対4で人数揃ってたけどこうなってくると…。それを聞いていた獄寺が意気揚々とダイナマイトを取り出す。
「これでボンゴレ対キャバッローネってわけだな。なら、話が早い。果てろ!!」
「雪玉合戦から雪上の合戦になっちゃってるー!!」
ツナちょっと上手いこと言うじゃん!…じゃなくて!普通にダイナマイトぶん投げて雪要素皆無なんですが獄寺さん!?
「させるかよ、スモーキン・ボム!」
そしてディーノさん。部下の人たちがいればその能力は一味も二味も違くなる。華麗な鞭さばきで雪玉を操り、獄寺のダイナマイトを消し止め、またイーピンにも雪玉を喰らわせた。おお…!
「うわ、獄寺のボム全部落としちゃった!ディーノさんかっこい!」
「な!?ぐっ…て、てめっ、ナマエ!お前どっちの味方なんだよ!?」
「だって事実じゃん」
獄寺にキレられた。ふーんだ。でも本当、部下いると凄いなディーノさん。
「どーした?レオンは頂くぞ」
そして余裕のこの表情。イケメンが過ぎる気がします。
「そうはいかないわ」
しかしそこに意を唱える女性の声がした。…ん?女性?今日って私とイーピンしかいないような。イーピン日本語喋れないし、明らか違う人。
「えっ、あ」
振り向いて、そこにた女性の姿にハッとする。
え、これまずいのでは…?
私は少し心配な気持ちを覚えながら、ちらっと隣にいる獄寺に目を向けたのだった。
To be continued