LNCrawler

お花見

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

お花見

「今日あたり満開だな。いい花見になりそーじゃねーか」

「まだ早朝ですし最高の場所をゲットできますよ!」

「う、うん…」

「ふあ…ねむーい…」

まだ、朝早い時間。すっかり暖かくなった春の陽気。私はツナ、獄寺、山本と一緒にお花見の場所取りに駆り出されていた。早起きしたから欠伸が出る…。重たい瞼もこすった。

…ていうか、女の子たちってお弁当の準備じゃないの。それを言ったら「お前はそっちだ。いいから行け」ってあの赤ん坊、また言いたいことだけ言ってブツッて電話切りやがったんですよ…。リボーンって私の扱いだいぶ雑だよね?それも聞くとお決まりで「秘書修行だ」って言われるけど絶対秘書関係ないと思うの…。

まあどっちも早起きには変わりないし、どっちでもいいけどね…。そんなことを考えながら歩いているうちに桜の景色が見えてきた。

「わ…綺麗…」

ひらっ…と舞う桜。辺り一面、満開の淡いピンク。私はその景色を見上げて思わず目を奪われた。凄い…綺麗。それは寝ぼけた頭を覚ますにも十分すぎるほどだった。

「おー、ラッキー!」

「これで殺されなくて済んだ~」

「一番乗りだ!!」

しかもまだ誰の姿もない。これには一緒に来た男子3人も喜んでいた。へえ…これくらいの時間だと一番になれるものなんだなあ…。じゃあどこにしようかと考える。しかしその時、背後からそれを止める知らない男の人の声がした。

「ここは立ち入り禁止だ。この桜並木一帯のは並場所はすべて占領済みだ。出てけ」

振り向くと一本の桜の木の影から出てきた学ランリーゼントの人。不良…?なんか、並中風紀委員みたいな装いだな…。ていうかもしかしたらそうなのでは?

その風貌にツナはビビってたけど、残りのふたりは特に物怖じすることはない。山本は言い返した。

「おいおい、そりゃズリーぜ。私有地じゃねーんだしさー」

「誰も話し合おうなんて思っちゃいねーんだよ。出てかねーとしばくぞ」

山本の意見にボキボキと指を鳴らし始めた不良さん。ええ…力ずくで排除的な感じですか…。すると真っ先に喧嘩を買ってしまうのはこの男…。

「るせっ」

「はがっ!」

「ちょ、獄寺…!」

「獄寺くん!」

獄寺は学ランの人に近づくと、その腹部に思いっきり膝を入れた。それによりうずくまって倒れこんでしまう学ランの人。本当短気男…。あちゃー…と私やツナは頭を抱えた。

「何やら騒がしいと思えば君達か」

するとまた別の声が聞こえた。いや…この声は…。今度は聞き覚えがある。ぞくっとした嫌な予感。恐る恐る振り向くと、やっぱりそこには予想通りのあの人。

「雲雀さん!あ!この人、風紀委員だったんだ!!」

「…やっぱり」

木に寄りかかり、こちらを見ていた雲雀さん。ツナは倒れたその人の腕を見て腕章の存在に気がついた。風紀委員の腕章…。私はさっきの予感が的中して「はあ…」とため息が出た。なんにせよ、雲雀さんが出てきたとなると、きっとタダじゃすまない…。

「僕は群れる人間を見ずに桜を楽しみたいからね。彼に追い払って貰っていたんだ。でも君は役に立たないね。あとはいいよ。自分でやるから」

「い…委員長」

「弱虫は、土に還れよ」

「がはっ!!!」

雲雀さんは先程獄寺が蹴り上げたあの人に歩み寄り、自らトンファーでトドメを刺した。血が垂れるトンファー。…そ、そこまでやらなくても…。

「僕は見ての通り人の上に立つのが苦手なようでね。屍の上に立っている方が落ち着くよ」

相変わらずとんでもないこと言ってらっしゃる…。

あたたかい春の陽気のはずだったのに、ぞくーっと一気に背筋が凍り付いた。

「いやー、絶景!絶景!花見ってのはいいねー♪」

するとまた別の男の人の声が聞こえてきた。今度はえらく機嫌がよさそうな…ていうか酔っ払い?でもこの声も知ってる。

「っか~!やだねー!男ばっかっ!」

「Dr.シャマル!!」

「まだいやがったのか!このやぶ医者!ヘンタイ!スケコマシ!!」

また別の木の影から出てきたのはボトルを持って既にすっかり出来上がっているシャマルだった。いつものごとく獄寺は暴言オンパレード。するとシャマルのいる木の枝の上には花咲かじーさんのコスプレをした赤ん坊の姿が。

「俺が呼んだんだぞ」

シャマルはリボーンが呼んだと言う。何のために…?一緒にお花見するため?それならそれでいいけど、リボーンがわざわざ声掛けたって言うとなんとなく深読みしてしまう…。

「おめーら、かわい子ちゃん連れてこい!…っと、おおっ、よく見たら愛しのナマエちゃんもいるじゃねーか!ナマエちゃ~ん!こっち来て俺と一緒に仲良くしよ~ぜ~!」

「え…い、いや…それはちょっと」

シャマルがハートを飛ばしながらブンブン手を振ってきた。ひえ…。雲雀さんとは別の意味でぞくっと悪寒。

「誰が行かせるか!!黙れこのヘンタイ!!気持ちわりーこと言ってんじゃねえ!」

すると獄寺が前に出て怒鳴ってくれた。…わりと庇ってくれるよなあ獄寺。それを見たシャマルはひゅう~と口笛を吹く。

「おー、なんだなんだ、隼人。ヤキモチかぁ?お前も口説けばいーじゃねーか」

「なっ!ば…っ!!んなわけねーだろ!!わけわかんねーこと抜かしてんじゃねえぞ!!」

更に怒鳴る獄寺。その顔はキレすぎてか真っ赤になっている。…わけわかんねーことを抜かす。うん、本当に。ヤキモチて…。ビアンキさんといいシャマルといい、なんだかなあ…。まあシャマルは獄寺のことテキトーに揶揄ってるだけだろうけど。

ところでその一方、雲雀さんはリボーンの登場に機嫌がよさそうだった。

「赤ん坊、会えてうれしいよ」

「俺たちも花見がしてーんだ。どーだ、雲雀。花見の場所を賭けてツナが勝負すると言ってるぞ」

「なっ、なんで俺の名前出してんだよー!!」

「ゲーム…いいよ。どうせ皆潰すつもりだったしね。じゃあ、君たち4人とそれぞれサシで勝負しよう。お互い膝をついたら負けだ」

向こうは向こうでなんか物騒な話が進んでる…。サシで勝負…。4人て私も入ってますよね、そうですよね…。

「やりましょう10代目!いや、やらせて下さい!」

「一応ルールあるし、花見してーしな」

「みんなやる気なのー!?」

「いや私はやる気じゃない…」

獄寺と山本はやる気のようだった。そんなふたりの様子を見てショックを受けているツナ。私はいやいやと手を振って拒否する…けど、ダメだろうなコレ。

「心配すんな。その為に医者も呼んである」

「あの人女しか診ないんだろ!!ナマエしか意味ないじゃん!!」

リボーンは怪我をしたらシャマルに診て貰えばいいと。いやいやツナくん…私もあんまりあの人には診てもらいたくないぞ。

そんなシャマルは恐ろしいことに酔っ払いテンションで雲雀さんに絡みに行く。

「へー、お前が暴れん坊主か。お前、姉ちゃんいる?」

「消えろ」

「のへーー!!!ふぎゃーー!!!」

そして秒でトンファーの餌食になった。医者消えたし…。

でも雲雀さんも乗り気だろうし、これってもう避けられない。そこで一番手を買って出たのは獄寺だった。

「10代目!俺が最高の花火の場所をゲットしてみせますよ!」

「えっ!でも獄寺くん、相手は…!」

前に出た獄寺を心配するツナ。でもそれを止めたのはリボーンだった。

「まあ、見てろ」

見てろ…。それはつまり、最初に雲雀さんと戦った頃とは違うって意味?

確かに獄寺は、普通に喧嘩は強いと思う。でも相手はあの雲雀さんだから、見ているこちらも落ち着かない気持ちはあるけど…。

「てめーだけはぶっ飛ばす!!」

「いつも真っ直ぐだね。わかりやすい」

向かって行った獄寺。雲雀さんはそれを迎え撃つようにトンファーを振り下ろす。素早い一撃。でも獄寺はそれを避けた。そして、ふわっと雲雀さんの周りにバラまいた大量のダイナマイト。

そういえば獄寺、新技考えてるって言ってた…!!

「果てな」

新技・ボムスプレッズ。

ドガァン!!と激しい音を響かせ、雲雀さんを包んだ爆発。

え…獄寺、凄い…。

「え゛え゛っ!マジで雲雀さんを!!」

目の前の光景にツナも驚いていた。

え、やったじゃん、獄寺。10代目がこんな風に言ってくれるのはかなり嬉しいのでは?

「あのスピードと柔軟性は強化プログラムで身に着けたものだぞ」

リボーンのこの台詞はちょっとこじつけくさいけど…。あの強化プログラム…ねえ。

「で…?」

だけどその時、煙の中から聞こえた声。

…!!

雲雀さん…。ブオッと巻き起こった風。それは雲雀さんがトンファーで爆風を飛ばした証。

「続きはないの?」

「なっ!!トンファーで爆風を!?」

「二度と花見を出来なくしてあげよう」

「くっ…」

獄寺に襲い掛かる雲雀さん。獄寺は屈んで咄嗟に攻撃を避けたけど、今回のルールは膝をついたら負け。今、獄寺は膝をついてしまった。

「獄寺は膝をついた。ストップだ」

「やだよ」

リボーンは制止を掛けた。でも獲物を捕らえるように目の色を変えた雲雀さんは止まらない。ちょ!膝をついたら負けのルール決めたの雲雀さんじゃなかったですか!?

「獄寺っ!!!」

殴られる…!!そう咄嗟に名前を叫んだ時、ガキンッと何かが雲雀さんのトンファーを受け止めた。

「次、俺な」

そう言ったのは剣を構えた山本だった。山本のバット…いつの間に。雲雀さんも山本が刀で受け止めるのは想定外だったらしく、少し顔をしかめていた。

「これならやりあえそーだな」

山本も受け止めた際、手ごたえを感じたらしい。でも、やはり雲雀さんは雲雀さんなのだ。

「ふうん、どーかな?僕の武器にはまだ秘密があってね」

「秘密…!?」

繰り出す攻撃。ガンッと、またトンファーと刀がぶつかったその時、雲雀さんのトンファーから仕込み鉤が飛び出した。…刀が引っ掛かった…!

「ぐわっ!くっそー、またかよ」

ドザッ…と山本の体は投げ飛ばされる。これで山本も膝をついてしまったので負け。そうなると次の相手は…私かツナ。

「次はツナだぞ」

「ええー!?俺は無理だよ!!何にも強くなってねーし!!」

リボーンが指名したのはツナだった。当然ツナは嫌がる。自分は何にも強くなっていない。でもリボーンはそう思ってはいないらしい。

「さっさと暴れてこい」

「ちょっ、待てよ!!」

聞く耳持たず、撃ち込まれた死ぬ気弾。ツナは額に炎を灯し、裸になって復活する。

「復活!!死ぬ気で雲雀を倒す!!レオンー!!」

死ぬ気のツナはレオンを呼んだ。するとレオンは細長く変化する。あれって…掃除用具のはたき…!?

「うおお!!」

「君は変わってるね。強かったり弱かったり、よくわからないから、殺してしまおう」

「だぁ!!!」

ツナははたきで雲雀さんのトンファーとやり合っていた。その戦いは互角。どちらも引くことなくぶつかり続ける。ツナ…、凄いけどなんではたき…。

しかしやはり相手が雲雀さんとなると何か消費が激しいのかもしれない。ツナの死ぬ気はあっという間に解けてしまう。あ、やばい。

「い゛!?わっ、ちょっ、待って!ひいっ!!」

死ぬ気だろうがなかろうが雲雀さんには関係ない。容赦なく振り回されるトンファーから必死に逃げるツナ。だけどその時、奇跡が起きた。

どさっ…!!

「え!?」

「おお!」

「やった!!」

落ちた音。

私は目を見開き、隣では山本と獄寺も驚き喜んでいる。

雲雀さんの膝が、ついた…!?

「えー!?うそっ!?俺がやったの~!?」

「違うぞ。奴の仕業だぞ」

目の前で雲雀さんが膝をつき困惑するツナにリボーンが指をさして教える。その小さな指の先にいたのはDr.シャマル。先程雲雀さんに吹っ飛ばされたシャマルは木にぶつけた頭をさすりながら体を起こした。

「おー、いて。ハンサムフェイスに傷がついたらどーしてくれんだい」

シャマルの必殺技はトライデント・モスキート。666種の不治の病原菌を持つ蚊を操り敵を病死させてしまうという恐ろしい技。菌やウイルスが吸着しやすい体質であるシャマルだからこそ出来る技みたいだけど…それをさっき雲雀さんに使ってたって事?

「わりーけど超えてきた死線の数が違うのよ。ちなみにこいつにかけた病気は桜に囲まれると立っていられない桜クラ病つってな」

桜クラ病…。正直なんじゃそらって病気だ。でも今それが発病したから、雲雀さんはこの桜を前に立っていられなくなってしまった?

ただ雲雀恭弥という男の気力は凄い。雲雀さんはそんな中でもゆっくりと立ち上がった。でもフラフラしてる…。多分、相当無理してる気がする。

「約束は約束だ。せいぜい桜を楽しむがいいさ」

雲雀さんはそう言い残し、その場から去っていった。病気にかかったまま…桜並木長いけど、大丈夫かな。

その背中はなんとなく心配になる。あんなにフラフラしてる雲雀さん見たこと無いし…。

「ツナさーん!ナマエちゃーん!」

その時、名前を呼ばれた。ハルの声。はっと見ればハルに京子、奈々さん、ビアンキさん、ランボとイーピンの姿があった。どうやら待ち合わせの時間。お弁当チームもやってきたみたいだ。

「ぐっ…」

「あ、獄寺…」

獄寺がサッとその場から逃げているのが見えた。ああ…ビアンキさん。特等席でみんなは喜んでくれてる。その声を聞きながらも、私は獄寺の事を追いかけた。

「獄寺、待って。大丈夫?」

「…ナマエ」

青白い顔して振り返った獄寺。とりあえず一瞬しか視界に入れなかったからか、軽い腹痛程度で済んでいそうだ。

まあ獄寺には言いたいことがあったし、少しふたりで話すのもいいかもしれない。

「ねえ、この間言ってた新技ってさっきのやつ?」

「え?ああ…まーな」

新技ボムスプレッズ。さっき雲雀さんに放ったあの技は、やはりこの前考えていると言っていた技だったようだ。

「やっぱそっか。へー、結構凄かったじゃん。ビックリしたよ」

「は…?…結局効かなかっただろーが」

「まあ結果的にはそうだったけど、でも本音だよ。おおって思ったもん」

「……。」

あっと言わせてやると言っていた獄寺。折角の新技をかわされてしまい、本人的には思うこともあったのかもしれない。でも宣言通り、こちら的にはあっと言わされた気分だもの。

「褒めてるんだから素直に受け取っときゃいーじゃん。私、なかなか強いので。そういうの見る目はあると思うなあ」

「…自分で言ってんじゃねーよ」

ふふふと笑う。すると獄寺の表情も。ああ、笑った。しかめてることが多いから、たまに見れると少し嬉しい気がする。

「桜、綺麗だね」

「…ああ」

その時ひらっと桜が舞う。やっぱり綺麗なピンク。

そしてちらりと見る隣。はじめて見た時も思ったけど、獄寺の銀髪は綺麗。今その色がピンクの中に映えて、より綺麗だと思った。

To be continued