内藤ロンシャン
内藤ロンシャン
新学期。並盛中学に入学して1年が経ち、今日から私たちも2年生。
進級とくればまず最初に気になるのはクラス替え。張り出されたクラス発表の用紙の前は集まった生徒たちでざわついていた。
「ミョウジミョウジ…と、あっ、あった!A組か」
見つけた自分の名前。A組だったからすぐに見つけられた。とすると、次に探すのは自分が親しくしている友達の名前。笹川京子、黒川花…あ、やった、ふたりも同じクラス!あと気になるのは、沢田綱吉、山本武…それから、獄寺隼人。
「あ、みんな同じクラスだ」
自分が同じクラスだと良いなと思ってる人たちは幸運にも全員A組に名前があった。え、凄くラッキーじゃん。新学期から運使い果たしたんじゃないかってくらいには嬉しいクラス。
でも…なんだろう?あのツナの名前のところにあった変な花のデコレーション。おかげでツナの名前がちょっと見づらかった…というか、ちょっと歪んでたからもしかして隠れてたのツナがどけた?
「よー、ナマエ!」
「ん?あ、山本!獄寺も」
そんな時、後ろから声を掛けられた。目を向けると手を挙げて笑いかけてくれる山本。その隣には獄寺もいた。ふたりはまだクラスを見ていないらしく、傍に来ると一緒に紙を見上げた。
「名前、あったか?どーだった?」
「うん。A組。ふたりもAだったよ」
「マジ!?やりっ、じゃあふたりとも2年もよろしくだな!」
「野球バカなんてどーでもいいんだよ!おい、ナマエ!10代目はどうした!?」
「獄寺うるさいな…。ツナもAだよ、ご心配なく」
「よっし!」
みんな同じクラスだったことを喜んでくれる山本とは対照的に10代目10代目うるさい獄寺。また今年度もこの調子で変わらないんだろうなあ。まあでも恵まれたクラスなのは間違いない。
とりあえずクラスも把握したし、私たちはその場を移動してツナの姿を探してみることになった。
「おはようございます10代目!」
クラス発表の紙から少し離れたところで誰かと話していたツナ。しかし、人と話してるのが見えてるのか見えてないのか…いや多分あいつはツナしか見えてない…。10代目を見つけた獄寺は真っ先にその傍に駆け寄って行った。
「2年も同じクラスっすね!とりあえずナマエも一緒ですし、万全にお支えしますから!野球バカも同じなのが残念ですけど」
「おいコラ!」
「…私、別にお支えする気ないんですけど」
なんか色々好き勝手言ってる獄寺。おいおい…となる山本と私。それを見たツナも苦笑いを浮かべていた。
ていうか話してたの割り込んじゃって大丈夫なの?私はツナが話していた人物に目を向けた。…って、この人…。いや、話したことは無いし、よくは知らない。でも何かと噂は聞いたことがある人。
するとそこでやっと獄寺も傍に誰かいることに気が付いたらしい。
「なんすか、こいつ」
「えと…それが…」
「はいはい、ファミリーの皆さんお揃いで!ご紹介にあずかりませんが!トマゾファミリー8代目ボス!内藤ロンシャンで~~~す!!」
…!
トマゾ、ファミリー?
急に出てきた単語にびっくりする。え、マフィア?
内藤ロンシャンという同級生の事は知っている。確か花が言っていた。うるさいお調子者のホラ吹きだと。…よくよく考えると酷い言われようだな。でも風貌的になんとなくそれもわかるような。チャラくてテキトーそうな見た目。いや人を見かけで判断しちゃダメかもしれないけど。
しかしトマゾという名前は、マフィアの知識がある獄寺によれば思い当たるものがあるらしい。
「トマゾファミリーといえばマフィア創世期にボンゴレと対立し、お互いの2代目を殺し合った因縁のファミリー。ボスの名は代々ロンシャン!」
「えーー!!じゃあこの人!!本当にマフィアなのーー!?」
獄寺の説明を聞き、ツナは驚いていた。つまりツナはボンゴレ10代目としてロンシャンに絡まれていた?でもまさか同級生にマフィアがいるとは思わないからツナの方はにわかに信じられなかった、と。
ロンシャンの近くには並中の制服を着た人が3人立っていた。ヘッドホンをつけた背の小さい人。ロリータ風のヘッドドレスにスカートを身に付けた女の子。それから…どう見ても中学生には見えない細長いオジ…いや、男の人。
この人たちは、トマゾファミリーの人ってこと?
「てめーら、ここで何してやがる!」
敵マフィアだと認識した獄寺は敵意をむき出しにする。しかしロンシャン側はこちらをどう思っているのか…。ロンシャン自身からはあまり敵意というものは感じない。というか…。
「何って学校生活に決まってんじゃん!ここ地元なんだから!そー思うとすげーぐーぜんでしょ?ラッキーでしょ!おぼしめしって感じ!?仲良くしよーよ同じマフィアじゃーん!」
う、うるさいお調子者…。今、本人を目の前にして、花が言っていた噂の意味がわかったような気がする。個人的にはあまりお近づきにはなりたくないかもしれない…。
でもロンシャンの方は同じマフィア同士、こちらとお友達になりたいと?しかしツナ的にはマフィアの時点で勘弁してくれって感じだろう。
「いやだから…同じじゃなくて…!」
「そのとーりだ!てめーみてーなボンクラボスと10代目を一緒にするな!!」
ツナは自分はマフィアじゃないと言いたかったはず。しかし獄寺によって意味が書き換えられてしまう。そーゆー意味じゃなくてー!!ってツナの心の声が聞こえる気がするわ…。
「それはこっちのセリフだーっ!!ロンシャンくんはボンゴレのボスなんかに負けないぞぉー!」
すると細長い男の人が張り合ってきた。プンプンだった。…えええ。つまりロンシャン以外はボンゴレを敵として認識してるって事なのかなあ…。
そういえばあの派手な名前のデコレーション…真ん中に書いてあった名前は内藤ロンシャンだったような気する。つまりこの人もA組ということ。う、うわあ…。
「アハハハ!よくわかんねーけど面白ぇクラスになりそーじゃん!」
山本はいつも通りだった。いつもの山本的まとめ…。うーん…クラス発表見た時は恵まれたクラスだって思ったけど、なんか恐ろしく面倒くさいことになりそうな気がしてきた…。
そして悲しかなその予想は当たり、その日からロンシャン絡みで強烈な事件がいくつも起きた。
まずはトマゾファミリーの秘弾である嘆き弾。嘆き弾はその悲しみで周りの人間の同情を引くという代物。その効果のせいでうちのクラスの学級委員はロンシャンになってしまった。
その数日後にはリボーンの思い付きで起きた打倒トマゾファミリー事件。これはこちらがロンシャンの家に乗り込んでアジトを壊滅させた事件だ。やってたのほぼ獄寺とリボーンだけど…。でもロンシャン家はなぜか内乱起きてるし、引きずられて行っただけの私やツナはただただえらい目に遭った…。
それから余談だけど…ロンシャンは意外と恋多き男らしい。
「ねえ、獄寺。新学期初日さ…ロンシャン、テルミって彼女いたよね?ほら、学級委員決める時、教室に来た子」
「それが何だよ」
「いや…でもさ、ロンシャン家に乗り込んだ時はさなっぴって新しい彼女になってたでしょ?」
「そーだな」
「…ツナに聞いたんだけどね、そのふたりの間にもうひとりいるらしくて…用務員のおばちゃんともお付き合いしてたらしいよ…」
「よ、用務員…?」
教えると、獄寺の顔も引きつった。
新学期初日、ロンシャンにはテルミという彼女がいた。しかしその次の日には用務員のおばさんと付き合い、そして今は多分….さなっぴ?
正直ね、正直言うと…ロンシャンの彼女たちは皆、なんというか…個性的な感じだった。な、なかなか変わった好みだね…というか。いや感じ方は人それぞれではあると思うけど、そのへんは…。
しかしこの恋多き事実がまたひとつ事件を起こすことを、この時の私たちはまだ知らなかった。
To be continued