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もやもやきもち

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

もやもやきもち

「沢田ちゃ~ん!とミョウジち~ん!!獄ちゃ~ん!!」

この日、私はツナと獄寺と一緒に道を歩いていた。しかしその時背後から聞こえた声に全員の顔が引きつる。ドタドタと近づいてくる足音。ああ…嵐を呼ぶ笑顔が来てしまった…。

「てめー誰が獄ちゃんだ!!」

獄ちゃんという名のあだ名をつけられた獄寺はロンシャンに殴り掛かった。…私もいつの間にかミョウジちんとか呼ばれてるし。いや別にいけどさ…。

「わ、わっ!こりゃストレスだ!獄ちゃんストレス溜まってんだよ!ボウリングでスッキリしよっ!!」

殴られても軽いロンシャン。むしろ獄寺のイライラはストレスだと。そしてその解消にボウリングに行こうという唐突な提案をしてくる。

しかしそう言った直後、何故かロンシャンは私の顔を見てハッとしてきた。…何だ。

「わわ!!そういえば獄ちゃんとミョウジちんって付き合ってたりする!?」

「はあっ!?」

「…はい?」

急に聞かれた意味不明な質問。獄寺はデカい声を上げ、私は顔をしかめる。一体何がどうしてそう思ったんだお前。

「てっ、てめー!いきなり何言ってやがる!!」

「いや全然…付き合ってないけど、何で?」

「ええー!!だってふたり仲良しジャーン!!でもそっかそっか、それなら良かった、うんうん!!」

とりあえずすぐに否定した。いやだってそんな誤解は早く解くべきでしょ、獄寺の為にも。

するとなぜかニッコニコになるロンシャン。良かったって何が…。

「んじゃなんの心配もないね!!実は男3人集めてんのよ!!これで男ぴったり!ひーふーMEー!!あーもー楽しみにしてもらっちゃってオーライ!オーライ!むこーもカワイイ女の子ジャンジャンきちゃうからさ!」

「女の子!?」

ツナが驚いて声を上げた。男を3人集めていて、向こうもカワイイ女の子…。私と獄寺が付き合ってないなら何の心配もない…ってことは、それってつまり?

「ま、まさかそれってデートしろっていうの!?」

「またまたボンゴレギャグー!!デートの一歩手前でしょ?沢田ちゃーん!!出会いだよ、出会い!初めて出会う3対3!女の子たちと気が合えば!あ、気が合えば!あ、ゴロニャンニャン!!ニャンニャンニャン!!」

相変わらず耳に痛いテンション…。でもつまりは合コンってことか。ツナと獄寺を合コンに誘うて…またすんごい話ぶっこんでくるなこの人。

「アホか」

「それにロンシャンこそ、彼女いるだろ…?」

「え?さなっぴ?とっくに別れたよ!」

獄寺は吐き捨てる。そしてツナが彼女の存在を聞くと、さらっと破局を伝えるロンシャン。

また別れたんですか…。もう驚きもしないけど。

「だからミョウジちんには悪いんだけどさー!ちょっとおふたり借りてもいいー!?」

「あー…いや、私は別になんでもいいけど」

ロンシャンは一応私にも気を遣ってくれた。意外とその辺はちゃんとしてるのね…。でも今日は別にただ一緒に歩いてただけだし、何かしていたわけでもない。だからもしふたりが行くというならそれは、ねえ。

例えばさっきの話みたく、獄寺かツナと付き合ってるって言うならダメだの嫌だの言うこともあるだろうが、そういうこともないし。

私はどうするのかと、ふたりの顔をちらっと見た。

「わ…悪いけど、俺はパスかな…」

「ひとりでやってろ!」

ふたりは断っていた。まあでも案の定かな…。獄寺はこーゆーの面倒くさそうってか嫌いそうだし、ツナは京子ちゃんに隠れて他の女の子と遊ぶなんて…とかしなくていい心配をしている気がする。

「やってやればいいだろ?」

しかしそこに突然現れたリボーンの声。ちょっとビクッとした。塀の上。いつからそこに。

「マフィアってのは他のファミリーに貸しを作って傘下におさめて勢力を拡大するもんなんだ。これはチャンスだぞ」

そんなことを言ってくる赤ん坊。合コン参加で貸し作るんですか…。また相変わらずこっちもぶっ飛んだ提案をしてくるものだ…。

「何言ってんだよ!だいたい俺はマフィアじゃ…!」

まあツナの考えは変わらなかった。そりゃそうだろう。マフィアなんて聞いたら余計にだろうし。しかし、この男が違った。

「10代目!行きましょう!!勢力拡大のためっス!」

ご、獄寺の考え方が変わったー…!

リボーンの考えを聞いて180度回転。一気に乗り気になった獄寺。それを聞きロンシャンは飛び上がって喜んだ。

「ひゃっほっほーっ!やりぃ~!!ありがとう沢田ちゃん!獄ちゃん!!」

「その呼び方はやめやがれ!!」

OKはしたものの、呼び方にはキレてる獄寺。その一方でツナは「いや…でも…」と後ろ向きのまま。

「心配するな。京子はこれっぽっちもお前のこと気にしてねーから」

「わかってるよ!!!」

あーあ…折角言わないであげたことをさらっと言うリボーン。ツナも人に言われるとムカつくみたいだけど、自覚はあるので言い返せない。そんなこんなで、ロンシャン、ツナ、獄寺の合コンが決定した。

「ナマエ…!絶対絶対、京子ちゃんには言うなよな~っ…!!」

「言わないって…」

ツナに小声で口止めされた。んなこといちいち言わんがな…。はあ…と息をつく。すると獄寺がこちらを見ていることに気が付いた。

「ん?獄寺、どしたの?」

「…別に」

ふいっと顔を背けられた。いや何だ。それからロンシャンに「ミョウジちーん!ごめんねー!バイバーイ!」と手を振られ、私はみんなと別れた。さて。

「ふーん、3対3の合コンねえ…」

「なんだ、気になるのか」

「そりゃ気になるでしょ、ツナと獄寺が合コンだよ?」

「まーな」

もうひとりその場に残っているリボーン。今、口にして思ったけど、面白すぎるだろこの展開。

「え、こっそりついて行こうかな?こっそり覗いてもいいかな!?すっごい面白そーなんだけど!」

「好きにしたらいーじゃねーか。なんなら俺の変装グッズ貸してやるぞ」

「変装グッズ?」

「ウィッグ、メガネ、衣装、何でもあるぞ」

「いや衣装入らないでしょ…うーん、じゃメガネ貸して。髪型は適当にいじるよ」

別にそこまでがっつりやらなくてもいいでしょ。バレたらバレたでそれでもいいし。服は制服だから鞄に入れてあるカーディガン着て、普段はしない髪型にすれば案外バレない気もする。

「ナマエ。お前、覗きたいのは面白そうだからってだけか?」

「え?」

髪を結んでいるとリボーンにそう言われた。だけって…。

「どーゆーこと…?」

「いや、別にいーけどな。あいつがもちっと押せばいい話だしな」

「は?」

「んじゃ、俺は行くぞ」

「あ、うん。メガネありがと」

とてとて歩いて行くリボーン。何言ってるかよくわからないけどメガネを掛けてお礼を言う。うーん、まあとりあえず変装は完了?それじゃあいざ、私もボウリング場へ行きますか。

「まだかなまだかな、あー楽しみ!」

ボウリング場につくと、男3人は女の子の到着を待っているようだった。と言っても浮ついてるのはロンシャンだけだけど。…獄寺、自分から行くって言ったくせに不機嫌な顔してるの何なんだ。私は飲み物だけ買い、少し離れた所からその様子を伺っていた。

「ちなみに今日来る子たち超カワイイらしい!超ね、超!」

「へ、へえ…」

超超連呼するロンシャン。そこまで言われるとツナも少し気になる様子。うーん、まあ確かにどんな感じの子たちなんだろう。それは普通に私も気になる。するとロンシャンはハッと指をさした。

「あ!あれじゃないかな、リコピン!」

…トマトかな?

いやリコピン言われたら浮かぶだろトマト!ツナと獄寺もあだ名を聞いて「!?」って顔していた。でもその指さす先にいたのは、黒髪ショートの可愛らしい女の子。

「「おおっ!」」

…おお。ツナと獄寺も反応した。え、ツナはともかく獄寺のあの反応は珍しい…。へえ、ああいう子が好みなのかなぁ?でも超の意味はわかったかも。確かにレベルは高いかもしれない。

しかしその直後、事件は起こる。

「じゃま」

「キャ!!」

今ふたりが見惚れてた女の子が後ろから突き飛ばされた。へ!?

その突き飛ばした人物…それは黒髪の女の子の数倍体が大きく、MATCHと書かれた独特のTシャツを着たパンチパーマの、女の子…?多分。いや失礼か!ごめんなさい女の子!…きっと!

「マッチ棒のTシャツ!やっぱリコピンだー!!」

「「あっちーー!!?」」

ツナと獄寺が絶叫する。でも離れているけど私も心はひとつだった。あ、あっちーー!?

そしてロンシャンはひとりハイテンションで「やっべカワイイ!リコピン超カワイイ!!」とはしゃいでいる…。そうでした…ロンシャンの好み、結構独特なんだった…。

となると多分、他の女の子も…。

「あ!あそこのミニスカート!まゆまゆだ!」

「「!?」」

ツナと獄寺はビクリと反応した。多分ふたりも察したからであろう。次に目を向けた先…そこにいたのは「プシュープシュー」と言いながらパントマイムでやってくるこれまた…ええと、…ど、独特な子。

「っかー!!甲乙つけがてー!!」

確かにー!!!

ロンシャンの言葉に同意。ある意味。ツナと獄寺も多分同じ。

あのふたり、もはや顔色真っ青じゃん…。

そして3人目。最後のひとりは…。

「あ!気付かなかった!!もうひとり来てる!!りさ子ちゃん?」

「リボ子よ!なめないで!」

「お前かーーー!!!!!」

ツナが叫ぶ。リボ子…それはカツラを被って髪をむしゃむしゃ食べてるリボーン。それどういうキャラなの…。他のふたりに合わせてるの?ていうかリボーンも噛んでたのか、この合コン…。女性陣、並ぶとパンチが強すぎて色々物凄い…。

そして全員揃ったところで女性陣から1番人気だったのは…。

「フォホッ、おまえタイプ」

「プシュ」

「!」

リコピンとまゆまゆから指をさされた獄寺。びくりと肩が跳ねとる…。

「名はなんてーの?」

「な…?」

「獄寺隼人くんで-す!!」

困惑獄寺に代わり答えるロンシャン。名前を聞くと、頬を赤らめたリコピンとまゆまゆが暴走した。

「ストラップにするー!!!」

「プシュプシュ!!!」

「骨が~~ッ!!!」

ご、獄寺ーーーっ!!!!

物凄い力で抱き着かれた獄寺。あまりの圧力に体を潰されかけている。…いやマジで潰れる…。本人も骨がヤバイと。み、見ているこっちも痛くなってくるレベル。ていうかストラップとは一体…。

「てめ!放せこのやろ!!」

必死で抵抗する獄寺はなんとか突き飛ばして離れることに成功する。これ多分ブチギレるぞ…。そして案の定、奴はダイナマイトを取り出した。

「死にやがれ!!」

「ダメだよ獄寺くん!!相手は女の子だし!!」

「しかし…!!」

ツナは必死に止めた。それにより何とか踏みとどまる獄寺。

でも女性陣の方の暴走が止まらない。

「フォホッ、こっちゃ来い、コレ付けろ」

そう言ってリコピンが取り出したのは紐がついたヒートン。あれ頭に刺せってか…。ストラップってまじでストラップなんですか…。

その言動により、折角一旦は沈めた獄寺の怒りが再び頂点に。

「やはり爆破します!!」

「ダメだって!!」

「心配いりません!!何も残さないので!!」

「そーゆー問題じゃ!!!わかった!!獄寺くん落ち着いて!!どーしてもなら帰っていいから!!」

必死になだめるツナは遂に帰っていいと口にした。それを聞いた獄寺はグッと目をつぶる。多分10代目を置いてなんて…!とか考えてると思うけど、今回は逃げ出したい気持ちが勝ったらしい。

「くうっ…、すいません、10代目!!帰らせてもらいます!!この埋め合わせは必ず!!」

ツナに謝った獄寺は凄い勢いでその場から逃げ出した。あーあ…。でもツナを置いて逃げるってことは相当限界だったらしい。まあ、気持ちはわからなくもないけど…。

「おにーさん、骨は折れませんでしたか?」

「…あ?」

獄寺が横を通り過ぎようとした瞬間、私は声を掛けた。すると足を止め、こちらに振り返る。眼鏡と髪型のおかげかすっごい顔しかめて凝視されたけど、まあこの程度の変装ならすぐに気が付く。私に気がづいた獄寺はビックリして目を見開いた。

「な!?ナマエ!?」

「はは…とりあえず出よっか…。見つかりたくないでしょ」

「お、おう…」

流石にここまで来て捕まったら獄寺が可哀そうだ。ツナの事は気になるけど、まあ…何とかなるだろう。好みとしてロックオンはされなかったみたいだし。リボーンもいるからいざとなれば死ぬ気という切り札もある。

ということでとりあえず、私は獄寺と一緒にボウリング場を後にした。

「お前…なんだよ、そのカッコ」

「んー、プチ変装。へへへ、似合う?」

「っ、知るか」

「えー、わりと雰囲気変わるでしょ」

にひーっと笑って聞いたらふんっと顔を逸らされた。個人的にはなかなかしないカッコするのも楽しかったけど。まったくつまらん男め。

「つ…つか、何してたんだよ」

「んー、覗き?だって獄寺とツナの合コンとかどう考えても面白いでしょそれ。これは見るしかない!…と」

「面白いってオメーな…」

はあ…と頭を抱えて溜め息をついた獄寺。覇気がないな。流石に今回は疲れたのかな。

「まあ想像してたのと全然違ったけど…いやあ、凄かった」

「お前…いつから見てたんだよ」

「うーん、最初じゃない?相手が来る前…獄寺たちがリコピン勘違いして鼻の下伸ばしてた辺りは見てたよ」

「なん…!?はあ!?伸ばしてねえよ!!」

「いやいや、おおっ!て言ってたじゃん。ふーん、ああいう感じの子が好みなんだねー」

「ば…っ、ちげえよアホ!!俺の好みは…っ!!」

「えっ?」

俺の好みは…?ムキになるような、どこか慌てて否定するかのように言いかけた獄寺。でも全部言う前に我に返ったらしい。

「もうお前ほんと黙れ…なんも喋んな…」

「いやいつから見てたって聞いてきたの自分じゃん…」

はあー…とさっきより深い溜め息をつかれる。

俺の好み…。黒髪のあの子じゃなくて?何を言おうとしたんだろう。そこまで否定する?可愛いと思ったのは事実だろうに。

「じゃあ獄寺の好み、どんな子?」

「……聞いてどーすんだよ」

「興味本位」

「…ぜってー言わねえ。誰が言うかアホ」

アホとは失礼な。そしてまたそっぽを向く獄寺。学校ではあれだけモテてるわけだし、そんな男の好みの子とか面白そうじゃないか。

でももし、あの子が本当に3人の中のひとりだったらどうなっていただろう?もしくは本当に超カワイイ子3人だったとしたら?もしかしたら…なんてこともあったのだろうか。

…ていうか、それが見たくて行ったわけだよね私。で、人違いとはいえ面白い反応は見られた。

でも何だか思ったより…面白く無かった気がする。

…うーん?

胸に触れる。

なんとなく、少しだけもやもやした。

To be continued