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みんなで見た花火

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みんなで見た花火

今日は夏祭りと花火大会の日。

きゅっと締めた帯と履き慣れない下駄は少し歩きづらいけど、こんな日しか着られない浴衣を着るのはなんだか楽しい。頭につけた簪を揺らしながら、屋台の並ぶ道を歩く。すると聞いていた場所に見つけた例の屋台。私は少し足を早めてそこに駆け寄った。

「獄寺、山本、おまたせ」

「お、ナマエも来たか」

「おせーんだよバカ」

チョコバナナの屋台。声を掛ければ準備をしていたふたりが振り返る。今日の夏祭り、私たちはお客さんではなく…出店する側だった。

以前、公民館で地域交流の七夕大会を行った。その時各々が出し物を披露することになって、山本はジャグリングを見せてくれた。しかしそれを妨害する為に獄寺が「パス」と声を掛けて…その結果、野球フォームに入ると加減が出来ない山本は公民館の壁に穴を開けてしまった。

今回はその修理費を稼ぐ為に長老から店を出す権利を貰ったとの事。

その話を聞かされた時「ナマエも手伝ってくんね?」と山本に軽く聞かれ、もともと夏祭りには行くつもりだったし、私も「別にいーよ」と安請け合いしてしまった。

……あとで京子とハルに一緒に行こうと誘われて失敗したー!!!!ってすんごい後悔したけど。

まあ一度した約束はちゃんと守ります。それは破ったりしない。というわけで、私もこのチョコバナナの屋台を手伝いに来たのだった。

「へー、ナマエ、浴衣着て来たんだな。いいよな、やっぱ雰囲気出るし。綺麗な柄だな、それ」

「うん。やっぱ折角なら着たいよね。へへ、親のお下がりなんだけど私もこの柄気に入ってるんだ。ありがとー」

浴衣姿を見た山本はコメントをくれた。やっぱり反応を貰えるのは嬉しいものである。へらっと笑って和やかムード。しかしそんな山本の隣で銀髪の爆弾男はすんごいしかめっ面をしている。…いや、なんでだよ。

まあとりあえず、お祭りが本格化する前に準備はしないとね。私も屋台の中に入り、販売の準備に取り掛かった。

「1本ください」

やっぱりチョコバナナは定番だし、はじめるとちょこちょこ売れた。今もまたひとり。私は今お釣りの整理をしてたから、対応は獄寺と山本がやってくれた。

「あいよ!うちは頼まれてからフランス製のチョコを塗るからね!」

「ベルギー製だっつってんだろ!!」

山本テキトーすぎる…。獄寺もお客さんの前で怒鳴るな…。やれやれと思いながら私は金庫を閉める。そして振り向くとちょうど獄寺がチョコバナナを渡そうとしているところ。

「おらよ」

「獄寺くんと山本ーーー!!!ってナマエも!!?」

すごい聞き覚えのある叫び声。お客さんの顔をよく見たらそこにいたのはツナだった。何だツナか。獄寺と山本も今気が付いたらしい。

「じゅ、10代目~!!!」

「よぉ、ツナ」

「脅かしっこなしですよ!」

「それはこっちのセリフだよ~!!何してんの!?」

ツナは今回の件を知らなかったようだ。てっきり知ってると思ってたけど。だって請求書の名前ツナだし。まあそれはリボーンが勝手にやったってところかな。ツナはここにきて初めて公民館の修理費の話を聞くことに。

「目標は売り上げバナナ500本です。頑張りましょう、10代目!」

「え…!俺も~!?」

俺もなの!?と驚くツナ。まあ請求書の名前はともかくツナは別に悪いことしてないしね。…って、それを言うと私だって何もしてないが。手伝ってるのは善意ですよ善意。

まあでも獄寺や山本がいて自分がやらないという選択肢はツナの中には無いのだろう。ここからはツナも交えてチョコバナナを売ることになった。

そして4人になってからしばらくすると、何となく辺りが騒がしくなって来た。どうやら例のショバ代の徴収が来たらしい。

なんでもここら辺を取り締まっている人たちにお金を払うのが並盛の伝統だとか。よくわからないけどこういうのは従っておいた方がいいだろうという判断。そして私たちの出店の前にも徴収の人がやって来た。

でも、その人の顔を見て私たちは目を見開いた。

「5万」

「「雲雀さんーーー!!?」」

「てめー!何しに来やがった!!」

あかん!ツナと声を重ねて叫んでしまった。獄寺はガターン!と備品を揺らす勢いでキレる。

現れたのはまさかの雲雀さん。え…てことはもしかしてショバ代と言うのは風紀委員に…?

「活動費だよ。払えないなら、屋台を潰す」

しれっと怖いこと言い放つ雲雀さん。近くでは5万を払わなかったらしい出店が風化委員の人たちにバッキバキに壊されていた。文字通りガチで潰すんですね…。これはさっさと渡すに限る。私は金庫から5万を取り出して雲雀さんに差し出した。

「雲雀さん、5万です。お納めください」

「ミョウジナマエ?なに君、出店やってたのかい」

「えっ…あ、はい。ちょっと成り行きで」

「ふぅん、浴衣着てるんだ」

「へ?」

「いいんじゃない。そう言う風流なのは嫌いじゃ無いよ」

「え…あ、ありがとう…ございます?」

え、浴衣…褒められた?あの雲雀さんに?一瞬ぽかんとしてしまう。すると雲雀さんは5万を数え「確かに」と頷き、その場を去っていった。

「……何ボケっとしたツラしてんだよ」

「え、ああ、いや、ちょっとビックリして…」

獄寺に声を掛けられてハッとした。本当にぼんやりしてた。いや…するよね!?ああでも、雲雀さんってお花見とかもしてたし、こういう季節のものって嫌いじゃないのかも。本人も今風流って言ってたし。

…夏でただでさえ暑いのに、こっちは余計に熱くなった気がするけど。ぱたぱたと軽く手で顔を仰いだ。

「……んだよ、どいつもこいつも」

「獄寺…?」

その時獄寺は何かをボソッと呟いた。小さくて全然聞こえなかったけど。どしたのって聞き返しても何も言わない。

すると次に、明るいふたりの女の子の声が聞こえた。

「「チョコバナナくださーい♪」」

「あ、京子、ハル!」

揃った声は京子とハルのものだった。私が気付くとふたりも笑って返してくれる。

「ナマエちゃん、チョコバナナのお店手伝うって言ってましたから、何処だろうって話になって」

「うん、ふたりで探してたんだ」

「そっか!ありがとー!あ、山本、ふたつお願い」

「おう、任せとけ」

ふたりにはお誘いを断った時にチョコバナナのお店を手伝うことは言ってあった。だからそれを思い出して探しに来てくれたらしい。うーん、友達って良いなぁ。

ツナは浴衣姿の京子に鼻の下が伸びていた。…少しは引き締めた方がいいぞ、ツナくん。

「でもちょっと残念です。みんなで花火見ようって言ってたんで…」

「そーだね」

「なあ!?」

眉を下げて笑うハルと京子。それを聞いたツナは声を上げていた。京子ちゃんと花火!!…ってか。まあでもそれは私も思ってた。折角みんないるんだし、一緒に花火見たいなって。

「じゃあ頑張ってください」

「またね」

出来上がったチョコバナナを受け取ったふたりは手を振ってまたお祭りの中に消えていった。

うーん…でも花火。私はちらっと後ろにあるバナナのダンボールに目を向けた。

「ねえ、あと残りどれくらい?」

「お、ナマエも思った?俺も、全部売っちまえば俺たちと花火行けんじゃん?って思ってさ」

「んー、まーな」

どうやら山本も私と同じ事を考えたらしい。花火までに全部売り切れば、私たちも花火を見られる。獄寺もそれはそうだろうと頷いた。

それを聞けば、ツナもハッとやる気が出たらしい。

「が、頑張って…早く終わらせちゃわない?」

「10代目のお望みとあらば!!」

「あー、そーだな!」

「うん、私たちも花火見よ!」

こうして私たちは呼び込みも頑張りつつ、少しペースを上げていくことに。

でも、山本は流石の愛想の良さなんだけど、獄寺はガラが悪いからお客さんが寄ってこない…。んで、私はなんかお腹減ってきたし…。

「ねー、売り上げ貢献するからひとつ食べてもいい?」

私はひとつ買って食べる事にした。やっぱ目の前にあると食べたくもなってくるし。

でもこれが意外と悪くなかった。やっぱお店の前で食べてるとそれを見た人が「おいしそー」となるわけで、少し集客に役立った気がする。

「ナマエさん、こんちは!」

「えっ、あ、イーピン!?」

もぐもぐしてると声を掛けられた。それはまさかの大人イーピンだった。いつのまに10年バズーカを…?でも10年後もお祭りなのかイーピンも浴衣を着ている。可愛い。

「イーピンも浴衣なんだね!可愛い!」

「ありがとうございます!大家さんの娘さんのお下がりなんですけどね。ナマエさんも素敵です!これは、あの人も放っておけませんねー」

「あの人…?」

何の話…?首を傾げると、ふふっと楽しそうに笑うイーピン。そしてどうやら彼女は私たちの商売の様子が気になるらしい。

「それよか、いくら生チョコ塗るからって何も塗ってないバナナ並んでたら勿体無いですよ。チョコ塗ったのも展示しましょうよ。商品は見た目も大事ですから。今、ナマエさんが食べてるの見て買ってったお客さんいたでしょ?あーゆーの、大事ですよ。あとは風水かなー」

……この子、めっちゃ商才あるじゃないか。拳法に語学に多彩だなイーピン。最後だけ中華っぽかったけど、でも案外そーゆーのもバカには出来ないのかもね。

何はともあれ、イーピンのアドバイスのおかげで売れ行きは好調。かなりハイペースで売れて、バナナの残りもあと一箱というところまできた。これなら十分花火には間に合うだろう。

「ワリーんだけどさあ、5分ほど外して良いか?毎年、屋台のボール的当てしてんだけど、それやらねーと祭りに来たって感じがしなくてさ」

余裕が見えて来たそのタイミングで、山本が少しだけ外したいと口にした。この人多分、屋台泣かせなんだろうなぁという想像には容易い気がする。

「いいよ、今みんな神輿見に行ってて人少ないから」

「景品持ってくっからな」

確かに今はお神輿の影響で人通りが少ない。タイミングとしては打って付けだろう。ツナが了承すれば、山本は軽く手を振って走っていく。

すると獄寺もカタンと椅子から立ち上がった。

「10代目、自分もトイレ行って来ます」

「あー、今ならお神輿でそっちも空いてそうだよね。私も行こうかな。リップとか塗り直したいし。ああ、でも流石にツナひとりはアレか」

花火が見れそうなら今のうちに行っておきたい気もする。軽く化粧してるからそっちも見たい。さっきチョコバナナかじりついたしね。でも流石にひとりはマズイかと思い直すもツナは別に良いと言ってくれた。

「いーよ、別に。神輿終わった後の方が大変だろうし」

「そ?」

いいならじゃあお言葉に甘えて。こうして私たちはツナにしばし店番を任せ、少し席を外す事にした。

「あれ?獄寺、先戻らなかったの?」

「あー…」

別れる時、少し化粧も直すから先に戻ってて良いよと獄寺には伝えた。10代目ひとりだし。でも待っててくれたらしい獄寺。まあでもツナを待たせてるのは変わらないので早く戻ろうとはなる。

「なあ…」

「うん?」

「……何でもねーよ」

「はい?言いかけてやめるってどーなの」

歩きながら、何か言い掛けた獄寺。どうしたのと顔を見るも、結局何も言わない。意味がわからんのですが。

しかし、それをあまり突っ込む事もなかった。何故なら、屋台が見えて来たところで私は異変に気がついたから。

「ねえ、獄寺…。ツナがいない…」

「なあ!?」

戻って来たチョコバナナの屋台には誰もいなかった。え、何でツナいないの?するとそこに景品の入った袋を抱えた山本も戻ってきた。

「ナマエ、獄寺ー。あれ?ツナは?」

「いないんだけど…」

呆然と山本にも伝える。え、あいつお店ほっぽり出して何処行ったの。でも流石にツナはそんな無責任な奴じゃないよな。何かあった…?

「そこの男の子なら、今売り上げひったくられて慌てて追いかけていったよ」

「え!?」

すると近くの出店の店主がそう教えてくれた。ひったくり!?

詳しい話を聞くと、犯人が逃げていったのは階段を上った先にある神社の本殿の方だと言う。そうとわかればこんなところでボケッとしてるわけにはいかない。私たちも急いでひったくり犯とツナが向かったという階段の先へと急いだ。

「え…あの人たちって」

階段を上った先には、大勢のガラの悪い男の人がいた。そしてその中心的人物は見たことがある。あの人…海で会ったライフセイバーの先輩達だ。ひったくりにも絡んでるのか…正真正銘のクズじゃん…。もしかしたら私たちの売り上げ金を狙ったのも海の時の私怨なのかもしれない。

そしてそこに退治するのは死ぬ気になったツナと、まさかの雲雀さん。…なぜ雲雀さんまで。

「10代目!!」

「助っ人とーじょー!」

ともかくツナが戦っているなら私の両サイドにいるこのふたりが黙って見ているわけがない。獄寺はあいさつ代わりにダイナマイトを投げ、大人数を吹っ飛ばす。山本はいつの間にか山本のバットを携えていた。…なんか山本もすっかり戦闘慣れしてきてるような。

「はあ…浴衣だし、私戦いたくないんだけどな…」

私は息をついた。一応棒は持ってるけど、浴衣で暴れたら帯とか緩みそうだし…。下手したらはだけて目も当てられないなんてことになるのは勘弁すぎる…。

「だったら俺の傍から離れんな」

「え?」

「…お前には、近づけさせねーよ。気に入ってんだろ、それ」

「獄寺…?」

溜め息を聞いた獄寺はそう言って私の前に出てくれた。え、急にどうした。なんだからしからぬ言葉にちょっとだけドキリとした。

「雲雀と初の共同戦線だな」

いつの間にかその場にいたリボーンはそんな恐ろしいことを言ってのけた。それ、群れるの嫌いな雲雀さん絶対嫌がるやつ…。現に雲雀さんはその言葉をすぐに拒否した。

「冗談じゃない。ひったくった金は僕が貰う」

あ、雲雀さんがここにいる目的ってそれなんですね…。そしてつまりそれは私たちが頑張ってチョコバナナを売った分も含まれているわけで…それはこっちも冗談じゃない話である。

「なぁ?」

「やらん!」

「当然ッス」

雲雀さんの目的に驚く山本。断固拒否な死ぬ気ツナ。獄寺もツナに同意。

まあでもこの3人に加えて雲雀さんもいて…こんなクズに負けるわけもないよね。それならお言葉に甘えて、今回は見学させていただこうかな…。

そしてみんなは見事、クズの先輩たちを叩きのめした。

というか正直問題だったのは、その後の雲雀さんからお金を死守することの方だったり。でも私たちは自分たちの分のお金だけは何とか死守し、急いで雲雀さんから逃げきった。

「なんとか俺たちの金は雲雀から守ったが…」

「ボロボロだなぁ~」

「も~花火間に合わないね…」

「アハハ…みんな、お疲れ様でした…」

金庫を手に息をつく獄寺。山本はボロボロの自分の格好を見て笑い、ツナは念願だった花火を諦めて苦笑していた。私はそんなみんなの姿に労いの言葉。いや、おかげで私はきちっとしたままだし。そんなことを考えていると、パタパタとふたつ足音が聞こえて来た。

「おーい!」

「ツナさーん!ナマエちゃーん!」

それは手を大きく振りながらこちらに走ってくる京子とハルだった。

突然のふたりの登場にツナは目を丸くする。

「京子ちゃん!ハル!なんでこんなところに?」

「俺が呼んだんだぞ」

「リ、リボーン、お前…っ」

「勘違いするなよ。ここは花火の隠れスポットなんだ」

ふたりを呼んだのはリボーンだと言う。ツナは最初自分の為かと感動したみたいだったけど、そう言うわけではないと。…花火の隠れスポット?

その瞬間、ドォン…と目の前に大きな花が咲いた。

「わ…」

思わず漏れた声。遮る人も、物も、何もない。

ただそこに見えるのは、夜空に大きく広がる光の花だけ。

みんな見入って、自然とその場に座って空を見上げる。

私は、そっと獄寺の隣に腰を下ろした。

「獄寺、守ってくれてありがと」

「…別に、あの程度大したことじゃねーよ」

「まあ、私がお礼言いたいだけだから黙って聞き入れとけばいーじゃん」

隣に座ったのは、お礼を言いたかったから。…さっき、獄寺は本当に守るみたいに戦ってくれたから。まあ、ひねくれた返事が来るだろうとは思ってたけど。

「ナマエ…」

「うん…?」

「………。」

「…なーに、獄寺?」

名前を呼ばれた。膝を抱えて座って、花火じゃなくて獄寺の顔を見つめる。

獄寺、さっきも何か言い掛けてた。私に何か話したいって思ってくれてる事があるなら、ちゃんと聞きたいなって。

「…………」

「え?」

獄寺の口が動いた。でも、花火の音に紛れてよく聞こえない。

「なに?」

「もう言わねーよ」

「はあ…!?」

こいつ、わざと小声で言った…!?聞き返す私に「へっ」と笑う獄寺。いや意味わからんのですが。言いたいことあったんじゃ無いのか。私に届いてなきゃ意味ないだろ。

「モヤモヤしてろ、バーカ」

「いや意味わかんないんだけど…」

モヤモヤしてる。してますよ凄く。結局イジワルなだけ?なんて奴だ。

まあ…でも。

「綺麗…」

「…そーだな」

見上げた光に思わず呟く。その声には獄寺も頷いてくれた。そういやこいつ耳いいんだっけ。

ああでも…本当に綺麗で、楽しくて。

多分、みんなも思ってるんじゃないかな。今日見たこの花火は、最高に綺麗だった。

To be continued