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襲撃

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

襲撃

朝、登校すると学校の空気がピリピリしているように感じた。一体何だろう。そう思いながらも校門をくぐろうとしたその時、ある人に呼び止められた。

「ミョウジナマエ」

「えっ、雲雀さん…!?お、おはようございます…」

振り向いてそこにいたのは雲雀さん。思わずビクつくもとりあえず挨拶する。え、なんで雲雀さん。私何かしたっけか。特に身に覚えもないのですけど…。

「この土日、並中風紀委員8人が重傷で発見されてね」

「へ…?」

あ、どうやら私が何かやらかしたとかそういう感じではないらしい。よかった。ちょっとホッとした。いやでも並中風紀委員8人が重傷で発見って…なんかそれはそれでとんでもない話だな…?

「え、それ大丈夫なんですか…」

「身に覚えの悪戯だよ」

「悪戯の範疇越えてる気もしますが…」

「一応忠告しておくよ。まあ、君なら、やられはしないだろうけどね」

「は、はあ…。うーん…まあでも、ご忠告は感謝します」

「うん」

雲雀さんはそれだけ言うとその場を離れていった。そして私は教えて貰った今の話を少し考える。この土日、風紀委員が8人重傷で発見…。あ、だから学校がなんとなくピリピリしてるってこと?いやでもよく考えたら忠告て…。まさか君も風紀委員だろう的なアレですか…。いやいや私、風紀委員になった覚えないですから。雲雀さんが勝手に言ってるだけだと思いたい。でも、気を付けるに越したことはなさそうだ。

「って、遅刻する…」

校舎の時計を見てハッとした。こんな所でボーっとしてる場合じゃない。そろそろ予鈴が鳴ってしまう。私は慌てて校舎へと走って教室に向かった。

正直、まだこの時はなんだか物騒な話だなあ…くらいにしか思っていなかった。不良同士の喧嘩とか、その程度の話なんじゃないかって。だけど、教室についてからもそのピリピリムードは続いていた。

「……。」

黒板にチョークの音が響く。退屈な授業。私はぼんやりと黒板を眺めながら、いつもと違う教室の景色も見ていた。騒ぎのせいか、今日は欠席者が多かった。ところどころ空いた席。半数くらいしか人数がいない状態。

ツナや、京子もいない。獄寺はさっき堂々と遅刻してきて、山本は…爆睡してるけど。

獄寺と山本は風紀委員が襲われた話は聞いているのだろうか。一応、休み時間になったらさっき雲雀さんに聞いたことふたりには話しておこうかな…。ノートを取りながら、頭の隅でそんな事を考える。

しかしその時、静かな教室にガタンッと誰かが席を立つ音が響いた。

「ケータイの電池切れたから帰ります」

「コラ獄寺!!貴様遅刻してきて今来たばっかりだろー!!!」

立ち上がったのは獄寺。教師の怒りの声が響く。

先生の言葉がド正論すぎる…。あんた本当今来たばっかじゃん…ケータイの電池切れたて…。

止める声など聞いちゃいない。獄寺はそのまま教室を出て本当に帰ってしまった。…ダメだあいつ。まあ、ツナも来てないしなあ。ついでに、山本は今の騒ぎで目を覚ましたようだった。大概みんな自由なのである。

でも、獄寺帰るのか…。

私は黒板の端に目を向け、書かれているその日付を見た。9月9日。

結局、その日は欠席者が多すぎるということで授業は半日だけになった。

「ナマエ、一緒に帰んね?」

「山本…」

帰り支度をしていると、山本が席まで来てくれた。私は「うん」と頷き、鞄のチャックを閉めながら席を立ちあがる。この騒ぎじゃ部活もないもんね。私は山本と一緒に教室を出て帰ることにした。

「ああ、野球部、大会近いんだっけ?」

「おう。秋の大会なー」

「そっか。あ、そうだ、ねえ、応援行くのってあり?山本が良ければ。みんなにも声掛けてさ」

「え、本当か?それ嬉しいな、来てくれよ!こりゃ気合い入るな!」

帰り道、山本から野球の秋の大会が近い話を聞いた。そういやそんな時期だったよね。応援どうかな?と言えば笑って喜んでくれる山本。そんな反応されるとこっちも嬉しくなる。これは応援する側も気合いが入るというものね!あとでみんなにも予定を聞いてみよう。

…獄寺はなんで俺が野球バカの応援しなきゃなんねーんだよとか言うかな。言いそうだ。てゆーか絶対言う。でもツナは行くだろうし、だったら来るでしょ。あとは京子やハルにも聞いてみて…なんて考えたらかなり楽しくなってきた。

…まあでも、そんな和やかな話もするけれど、やっぱり今はどうしてもこの騒ぎが気掛かりではあって。

「結局、ツナも来なかったな。獄寺はとりあえずは来たんだっけ?」

「うん。山本が爆睡してた時ねー。来て、速攻帰った」

「ハハハ!ま、らしいっちゃらしいよな。けど、本当どーしたんだろうな、この騒ぎ」

「うーん…狙われてるの、風紀委員だけなのかな?雲雀さんは、身に覚えのない悪戯って言ってたけど」

「ナマエ、雲雀に気に入られてるよな」

「……どーなんでしょ」

それから私は雲雀さんに聞いた話を山本と共有した。雲雀さんに気に入られてるかは…知らない。まあでも半日で帰れてラッキー…とか、そんなあまっちょろい事言ってる場合でもないような気がしてきてる。

そんな時、道行く人たちの噂で並中生が並盛商店街で喧嘩をしているという話が聞こえた。

「…並中生が喧嘩て」

「獄寺じゃねーの?」

「私もそれ思った…」

「様子、見に行ってみっか?」

喧嘩と言われると、私たちの頭に共通して真っ先に浮かぶのは獄寺だ。あいついっつも喧嘩してるんだもん…。もしかしたら風紀委員の可能性もあるかもしれないけど…。とりあえず気になった私たちはその様子を見に行ってみることにした。

だけど、向かったその先に広がっていた光景に…私は震えることになる。

「え…」

向かった先、そこにはゆらりと微かな黒煙が上がっていた。もしかして、獄寺のダイナマイトの残り…?それだけなら良かった。でも、その煙の中に立っている血まみれでボロボロの他校の男の人。あの制服って…確か、隣町の黒曜中?その人は重傷に見えた。でも、心配より先に立った気持ちはなぜか恐怖心。なんだろう…なんだか、その立ち姿ひとつとっても戦闘慣れしているような、普通とは少し違う感覚。

そして彼が見つめる先…そこには、腰が引けて後ずさるツナと、その前に倒れて気を失っている獄寺がいた。獄寺の胸元からは、血だまりが広がっている。

え…なに…これ。

その時、私は目の前の光景を拒否するように頭がズキリと痛んだのを感じた。

「早く済まそう」

黒曜生がボソッと呟いた。その手にはシュルルル…パシッと音を立て、何か武器が握られている。あれ、ヨーヨー?何か仕込んであるの?彼はヨーヨーをツナへ向かって放つ。腰が引けて怯えてしまっているツナは、立ち向かうどころか逃げる事すら出来ない。

「うわあああ!!!!…い゛っ!?」

悲鳴を上げたツナ。しかしそんな彼に飛び掛かり、助けてくれた手があった。

「フーッ、滑り込みセーフってとこだな!」

「山本ぉ!!ナマエも!!」

「ツナ…」

流石の足の速さ。ツナを助けた山本はニカっと笑顔を向ける。私も少し遅れて駆け寄り、その傍にしゃがんだ。私と山本の顔を見たツナは少しだけその表情の緊張を和らげる。私はツナの様子をじっと見た。とりあえず、ツナは怪我とかしてないみたい。それには心底ホッとした。でも…。

「獄寺…」

それから…傍に倒れている獄寺に目を向けた。胸元にいくつも刺さった針。これ…さっき、あの黒曜生がツナに向かって放ったヨーヨーから飛び出していたものと同じ?ちらっとツナが立っていたあたりの地面を見れば、そこには同じ針が刺さっていた。

「結局学校半日で終わってさ、ナマエと通りかかったら並中生が喧嘩してるっつーだろ?獄寺かと思ってよ」

「そーだ!獄寺くんが!!」

「ああ、わかってる…」

山本はツナにこちらの経緯を説明した。最初こそツナを安心させるように笑っていたけど、だんだんとその声のトーンには怒りが滲んでいく。でも、それは私も同じだ。

「こいつぁ…穏やかじゃねーな」

「……。」

めったに怒らない山本の低い声。私も、黙ったままその声に頷いて振り返る。手は、棒に伸ばしていた。あの黒曜生…あいつが獄寺を…。

怒りではらわたが煮えくり返るって、こういうことを言うんだろうなって思った。

「邪魔だ」

黒曜生は両手でヨーヨーを放ってきた。私と山本、それぞれに迫ってくる。でも、大丈夫。見切れる。

キンッ…!

私は棒でヨーヨーを弾いた。山本は、山本のバッドを取り出し素早く糸を切って見せた。多分、これは十分な牽制になったと思う。2対1。相手に分が悪いと知らしめられたはず。

「そうか…お前は並盛中学2-A、出席番号15番、山本武…」

「だったら何だ」

「そっちの女子は…情報がない。…めんどい」

「…情報?」

黒曜生は眼鏡を掛けながら山本と私を見てくる。山本の事、知ってる…?私の情報はないってなんだろう。

でもその時、辺りがザワザワとしてきた。「お巡りさん、こっちです!」という声もする。どうやら騒ぎを聞いた誰かが通報したようだ。

「お前は犬の獲物…もめるのめんどい…」

彼は山本に視線を向けてそう告げると、「シャワー浴びたい…」と呟きながらズルズル傷だらけの体を引きずって去って行った。

行った…。とりあえずもうこの場で戦うつもりはないらしい。それならもういい。こっちだって深追いはしない。だってそれより今は…!

「獄寺…、ねえ、獄寺…っ」

私は獄寺の前に膝をつき、そっとその肩に触れた。でも呼び掛けても目を覚まさない。

「獄寺くん、大丈夫!?」

「しっかりしろ!獄寺!?」

ツナや山本も呼びかけるけど、意識を失ったまま。

ツナの話によると、獄寺はツナの事を庇ったらしい。

早退した獄寺はここで最初にあの黒曜生と戦った。しかし倒しきれておらず、そこにツナが駆け付け、襲われた…と。

どうして黒曜生がツナや獄寺を襲ったんだろう?山本の事を知っていたんだろう?それに、きっとただモノじゃなかった。あの人は一体何…?風紀委員の事件とも関係があるの?

気になることは山ほどある。だけど今はとにかく、一刻も早く獄寺を治療しなくちゃならない。

話を聞いたリボーンは、病院ではなく並中の保健室に獄寺を運べと言ってきた。私たちは急いで、獄寺を並盛中学校へと運んだのだった。

To be continued