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9月9日

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

9月9日

「なぜ?どーして隼人が入院してるのがここなのよ!」

並盛中学の保健室。怒れるビアンキさんの手には毒々しい果物の入ったカゴが握られていた。

「ビアンキちゅわーん!」

「寄るな!!」

飛びついてこようとしたDr.シャマルの顔面に思いっきりケリを食らわせるビアンキさん。…お強い。

あまりの容赦のなさにツナや山本の顔も引きつっている。シャマルに容赦ないのは姉弟揃って同じだなあ。まあ、気持ちはよくわかるけど。

「なんだよー、病院は危険だからってリボーンが保健室に連れて来たんだぜー。男の診察はしねーけどベッド貸してんだしさー、いーじゃん、おじさんと遊ぼーぜ。ナマエちゃんも隼人なんかほっといてこっちおいでー。おじさんとチューしよう!」

「ええ…」

うわ、標的がこっちになった。両手を広げてウェルカム!とでも言いたげな顔のシャマル。しかしその瞬間ビアンキさんの右ストレートが思いっきりシャマルの頬に入り、シャマルは「ボヘッ!」と凄い声を上げて吹っ飛んだ。

「シャマル…。ナマエに手ぇ出したら本気で殺すわよ…」

ビアンキさんの背後にどす黒い何かが見えた気がする。あ、本気でキレてらっしゃる…。ていうか口に出てはいないのに『私の義妹』という単語も聞こえた気が…。

「隼人の看病は私が付きっきりでするわ!!邪魔するのなら出てって!!」

そしてビアンキさんはそう言って怒った。その言葉は至極真っ当だ。弟を大切に想う姉ゆえの言葉。でも、事この姉弟に関してはそれをするとエライことになるわけで…。

「んなことしたら、治るもんも治らんぞ」

シャマルの冷静なツッコミ。…悲しかな、実はこっちの方が至極真っ当なご意見だったりしてしまうのが何とも。私はちらっと、ベッドに眠るその顔に目を向けた。

「……。」

私はベッドのすぐ傍に椅子を持ってきて、その様子を見ていた。…いまだ意識が戻らない獄寺。私は小さく息をつき、すっと手を挙げた。

「あの、ビアンキさん、ええと、看病なら私…しようと思うんですけど」

「ナマエ…。そうね、ナマエになら任せられるわ。隼人のこと、お願いね、ナマエ」

「あ、あはは」

こちらに来て、ぎゅっと手を握ってきたビアンキさん。私は苦笑いした。…ううん、相変わらず勘違い進行中。でもまあいい。ていうか今はそれを利用したところもある。いや、私が言えばビアンキさんも納得してくれるかなー…と。流石に獄寺の命には代えられない。

「獄寺…」

ひとまず、一度その場で解散することになり、私は宣言通り獄寺の看病をする為に保健室に残った。ちなみに養護教諭であるはずのシャマルは「俺は男は診たくねーからな」と出て行ってしまった。ダメ保健医…。とはいっても「このまま寝かせておけば大丈夫」という助言だけは残してくれたけど。

今回、獄寺とツナが襲われた事と、風紀委員の事件の犯人はイコールだった。全てはボンゴレ10代目たるツナを炙り出すため。

襲われていたのはフゥ太が作った並盛中の喧嘩の強さランキングの上位者らしい。敵はランキング上位者を襲い、その歯を抜く事でカウントダウンをしていた。ちなみにその中には笹川先輩も含まれていて、京子が今日学校にいなかったのはそのお見舞いに行っていたからとのこと。

そして獄寺。獄寺はランキング3位だった。4位が襲われた時点で次は獄寺が狙われると知ったツナは獄寺を探しに行った。その後は、私と山本が駆け付けたあの場面に繋がると。

ついでに残りのランキング上位者は2位は山本、1位は言わずもがな雲雀さんらしい。まあ1位は納得だよね。そりゃそーだって感じ。でも山本は…なんか納得する気持ちとビックリが入り混じってるような。山本、やっぱなんか色々凄いわ…。

そして、余談で私。リボーンによると、このランキングは男子生徒のみで構成されたものらしい。つまり、だから私は除外されていたと。あの黒曜生が言っていた情報がないってのはそう言う事のようだ。

…一応、リボーンの見立てでは2位3位あたりだろうと言われたけど。まあでも、情報が洩れてなかったのは不幸中の幸いというかなんというか…。今回の件で顔はバレたと思うけど。

「ん…」

「あっ!」

その時、ぴくっと獄寺に反応があった。気がついた?私はじっとその様子を伺う。するとゆっくり獄寺はその瞼を開いてくれた。

「獄寺…!」

「う…ナマエ…?」

「あ、無理して起きなくていいから!ツナも無事だし、大丈夫だから」

体を起こそうとした獄寺に慌ててそう声を掛ける。獄寺はツナを庇って意識を失ったわけだし、目が覚めてまず一番に気にすることはそこだろうと思ったから。といっても…上半身起こしちゃったけど。そして獄寺は辺りを見渡し始めた。

「ここは…保健室か?10代目は無事なんだな…?てか、お前は何してんだよ」

「あー…うん、ちゃんと説明するよ。まず、リボーンが病院は危険だって言うからここに運んだの。さっきも言ったけど、ツナは無事。獄寺、あのヨーヨーの黒曜生からツナのこと守ったんだよね?多分獄寺が倒れた直後くらいだと思うけど、私と山本もあの場に駆けつけて、ちょっとだけ戦ったの」

「なっ、は!?お前…あいつと戦たのか…!?怪我は…!?」

「してないって。山本とふたりで一度だけヨーヨー弾いてそれで終わり。誰もなにも食らってないから平気」

「…そうか」

誰も何も怪我をしていない。それを聞いた獄寺は安心したようにほっと表情を緩めた。…多分獄寺は私たちとは違い、あのヨーヨーの人と本気でぶつかったのだろう。ヨーヨー使いが負っていたダメージはダイナマイトによるものだったから。だからこそきっと、あの人が戦闘慣れした人…そう、プロの殺し屋だっていうのは獄寺も気付いたはず。

「まあ…それで一度、今はとりあえず解散したって感じ。私は君の看病に残ったんだけど」

「…看病?お前が?」

「うん。ビアンキさんの方がよかった?」

「は!?」

「ビアンキさん、私が付きっきりで看病する!!って凄い心配してたよ。でも、それをされちゃうと…」

「死ぬっ…確実に死ぬ…!!」

「…と思ったから、私がやりますって言ったのさ。ご理解いただけました?」

「…あー…まあ、礼は言っとく」

「ふふふっ、よろしいです」

ビアンキさんが付きっきりで看病と聞いた獄寺は顔を真っ青にしていてちょっと笑えた。ま、そうなるよね。それなら私の方がマシでしょ?ってね。うん、でも獄寺の意識が戻って、ほっとして。…だけど、やっぱり。

「…ていうか、こっちの心配より今は自分の心配しなよ」

「へっ、こんなのどってことねーよ」

「今の今まで意識無かったくせに何言ってんの……こっちに気も知らないで」

「あ?」

「……獄寺が倒れてるの見て、びっくりした…。それに、怖かった…」

「ナマエ…?」

そう。怖かった。

倒れていた獄寺。胸から広がる血だまり…。あの瞬間、ドクッと心臓が大きく波打って…体が震えた。呼びかけても肩を揺らしてもちっとも反応しなくて…もしかしたら、死んじゃうかもしれないとさえ思った。

「お、おい…ナマエ…」

あ、まずい…ちょっと俯いていた。すると、そんな私を見た獄寺の方がタジタジしはじめた。…ちょっと面白い。まあ、我ながらそこそこ図太い方だとは思うので、あんまり普段しゅんとすることも無いしね。ただ、ビックリしたし、もう二度とあんなのは見たくない。

「おめーら、何いちゃついてんだ」

「「!」」

そんな時、リボーンの声がした。パッと見れば窓から飛び込んできた赤ん坊。いちゃついて…って。

「…リボーン何言ってんの。そんな事象を起きるわけないじゃん」

「そーか?獄寺、その手は何しようとしてたんだ?」

「なあっ…!?い、いや、何もしようとしてません!!」

何故かあたふたし始める獄寺。いや、なに慌ててんの…。

リボーンはてくてくとベッドに向かってくる。そしてぴょんっとその上に飛び乗ると、腰を下ろして私たちを見上げた。

「ま、なんでもいーけどな。それより、獄寺の目も覚めたならちょうどいい。お前たちに話がある。この一件の首謀者の話だ」

一件の首謀者…。

その言葉で、その場の空気がピリッと少し変わった気がした。

「首謀者の名前は、六道骸」

リボーンは話し始めた。

2週間前、大罪を犯した凶悪なマフィアばかりを収容している監獄で脱獄事件が起きた。脱獄の主犯はムクロという少年。彼は看守や他の囚人を皆殺しにしたのち、部下ふたりを連れて日本に向かったという。そして黒曜中に3人の帰国子女が転入し、あっという間に不良をしめたのが10日前の事。そのリーダーの名前が六道骸。つまり、同一人物。

また、その件に関し、ボンゴレ9代目からツナへと指令の手紙が来たという。その内容とは、12時間以内に六道骸以下脱獄囚を捕獲、そして捕らえられた人質を救出せよ…と。

「12時間以内に脱獄囚を捕まえろって…!?なにそれ、そんな無茶苦茶な…」

「俺も行きます!次こそぜってーあの眼鏡ヤローは俺が倒しますから!」

話を聞いた獄寺は自分も行く気満々だった。まあ…そりゃツナ絡みならそうなるとは思ったけど。ていうかツナは多分乗り気じゃないはずだけど、でも…もうツナがボンゴレ10代目だとバレてるだろうし、ここまで周りを巻き込んだ大事となれば、流石に無視は出来ない…か。

「雲雀も帰ってきてねーところを見ると強敵だろうけどな。話は伝えたぞ。じゃーな」

リボーンはそう言ってベッドから飛び降り、一足先に保健室を後にしていった。

雲雀さんも黒曜に向かって…でも、帰ってきていない。私は「はあ…」と息をつく。そして一応、獄寺に確認した。

「…本当に行くの?」

「たりめーだろうが!10代目が行くのに俺が行かないわけがねーだろ!」

「…まあ、そうだよね…。そう言うよね、獄寺は…」

愚問だった。それは自分でも思う。怪我してようが何だろうが、獄寺なら絶対にツナについていくだろう。だとしたら、私は…。

「…私も行く」

「なっ…、お、お前も…?」

「うん。じっと待ってるなんて性に合わないもん。だから、私も行く」

覚悟、決めた。

ツナや獄寺が行くなら、私も行く。ただ待ってるなんて、とても出来そうにない。

それに、私だって腹は立ってるから。大切な日常、大切な人…傷つけられれば、腹も立つ。

そうと決まれば、今、獄寺に言わなきゃ。

「じゃあ、今のうちに言っておかないとね」

「は?何をだよ」

「お誕生日、おめでとう、獄寺」

「……は?」

私はそう言って笑った。すると獄寺は面を食らったような顔をした。

「ん?だって今日、誕生日だよね?9月9日」

「……今、このタイミングで言うことかよ」

「いや私だって普通に言うつもりだったけど…でもあんた遅刻してくるし、来たと思ったら速攻で帰るし。そしたらぶっ倒れてこの騒ぎでしょ。戦いに行ったら余計に言う暇ないだろうし、今しかないじゃん」

朝、なんだ来てないのかって思った。遅刻してきて、あ、来たなーって思った。なのに授業中にそのまま帰っちゃうんだもん。私、悪くないぞ。

「まあ、プレゼントはてきとーに購買で買ってあげようかなーとか思ってたんだけど」

「安いなオイ」

「贅沢言うな。でも、もうそうもいかないし、どうしようね」

獄寺の欲しいものとかよくわからないし、だったら購買でお昼好きなもの買ってあげようかなーとか思ってたわけ。まあ、帰りに商店街寄ってとか、その辺は何でもよかったけど。だけどもう、この騒ぎじゃどうにもならないわけで。

すると獄寺は息をつき、静かにこう告げてきた。

「…なら、無茶すんな」

「え?」

「行くってんなら…止めねーよ。お前も戦力なのは、認めるからな。でも、無事にここにちゃんと帰ってこい。…それでいい」

「……それ、プレゼントになるの?」

「…俺がそれでいいって言ってんだから、なるに決まってんだろ」

「……わかった」

「よし」

私が頷くと、獄寺は満足そうに笑った。心配…してくれてる。それはわかった。でもやっぱり今は、こっちより自分の心配して欲しいんだけど…。

「…獄寺も、無茶しないでよ」

「お前は誕生日じゃねーだろ」

「え、そこ重要?……じゃあ、その誕生日プレゼントやっぱやめる」

「は!?」

「帰って来たら、ちゃんとお祝いしよう。だから、私も獄寺も無茶しないってことで」

「………本当バカだな、お前」

「いやどこがだ、失礼な」

なんだバカってこの野郎。

まあでも、こんな軽口が楽しいから。

だから、一緒に行く。

大事な人…傍にいて、守りたい。助けたい。そう、思ったから。

To be continued