頼りになる味方
頼りになる味方
「こここここれくらい~~!!!」
京子とハルを人質に取られ、声を震わせながら自らにナイフを振り下ろそうとしたツナ。それを見てもうダメだと思った。思わず目を逸らしてぎゅっと瞑ったその時…モニターの中に異変が起きた。
『ギギィィ!!!』
急に聞こえた悲鳴。でも、京子でも花でもハルでもない。ハッと顔を上げると、京子の方のモニターの中に倒れた殺人鬼が映し出されていた。
『おめーみたいなのがロリコンの印象悪くすんだよ。ハーイ、京子ちゃん助けに来ちゃったよ。おじさんカワイコちゃんの為なら、次の日の筋肉痛もいとわないぜ』
そして聞こえた軟派な声。
ゆらっと風になびいた白衣。…あっ!!!
「Dr.シャマル!!」
「な、なにぃー!!?」
間一髪のところでシャマルに気付き、ナイフを突き刺す手を止めたツナ。バーズは酷く動揺して狼狽えている。
シャマルが…助けに来てくれた…。
「やるな!保健のおっさん!」
「うん…これで京子と花は大丈夫だよね…!」
「おせーんだよ!ヘンタイヤブ医者が!!!」
山本と私は素直にその助けを喜んだけど獄寺だけは相変わらず毒づいていた。だけどそれはほんの少しだけ余裕が出来たからでもある。ただ、まだ向こうにはカードがひとつ残ってる…。
「まーまー、みなさん、落ち着いてください。こっちにはもうひとりいるんですからね。ほーら、次はこの顔が潰れる危機ですよ、ウジュ。嫌なら続けてもらましょーか、ボンゴレ10代目」
「ハル!!」
もうひとりの人質…。ツナが叫ぶ。ハル、イヤホンしてるから全然後ろに気付かない…。だけどハルの傍にも救世主の姿はあった。
『哈っ!!!』
『ギギャ!!!』
女の子の力強い掛け声。そしてまた聞こえた悲鳴。
『ハルさん!怪我ありません?許せないな、女性を狙うなんて!』
『やれやれ。ハルさん、ここは俺たちに任せてください』
モニターの中で、ハルを守る様に立つ二人組。それは拳法着姿の女の子と牛柄シャツの男。10年後のイーピンとランボ…!!
「バカな!!次から次へと!!このことは誰にも知られていないはずだ!!」
更なるこちらの援軍にバーズは狼狽える。するとモニターの中のイーピンとシャマルが言う。
『言われた通り、ハルさんを見張っててよかった』
『奴の読みはどんぴしゃりだったな』
言われた通り…奴の読み。誰かがこの展開を予見していた?それってまさか…。
「ゴホン」
「リボーン!!お…お前…」
「よかったな、困った時に助けてくれるファミリーがいて」
「うん…、ん…ファミリーじゃないだろ!!」
わざとらしい咳払いをした赤ん坊。リボーンが、この展開を読んでいて…シャマルやイーピン、ランボに声を掛けていた。ツナは涙ぐむ。ファミリーじゃないと怒りながら、でも、助けてくれる仲間がいたのは事実。
「さあ、こっちの番だぞ」
「うわわわ!!」
リボーンはツナを蹴り飛ばした。その勢いでよたったツナ。しかしその先にいたのはバーズ。その勢いのまま、ツナの拳がバーズの顔面にクリティカルヒットした。
「んぎゃー!!おーいて、おーいて!おのれ許さんぞー!ガキの分際で~!!ヂヂ&ジジ!!何をしている!!こうなればみんな殺してしまえ!!」
ヤケクソになったおじさん…。皆殺し。双子に殺害の許可を出す。なんて奴だ…。でもこっちの援軍は頼もしいばかりだった。
『今日はすみやかに帰ることをお勧めするよ、レディ達。俺の戦いっぷりを見たら惚れて眠れなくなっちまうぜ』
シャマルは京子と花にまた浮ついた言葉を掛けていた。獄寺をはじめ男子3人は何言ってんだあのエロオヤジってドン引きした顔してる。いや私も思ってる。『やばいよ!こいつ変態だって!いこいこ!』って京子の手を引いてる花ナイスだ。
…でも今は、チューしようだの麗しの子猫ちゃんだの、いつものその軽いテンションがなんだかちょっと安心に変わる気がする。
『フフン♪さー、やろーか?にしてもつくづくお前、乙女達には刺激が強すぎる野郎だな』
京子と花が行ったのを見送ったシャマルは殺人鬼と向き合う。でもその表情は余裕そのもの。焦りなど欠片もない。一方で殺人鬼の方は邪魔をされて怒り狂っている様子。
『ああ、一応医者として言っとくが、お前は振動症候群に掛かっちまった。あまり激しく動かん方がいいぞ…つってももう遅かったか。……発病だ』
殺人鬼はシャマルに襲い掛かろうとした瞬間、その全身からブシャッと血を吹き出した。かなりエグイ…あんなの京子たちにはとても見せられない。でも…凄い。振動症候群…あれもトライデントモスキート。いつもがあんな風だけど、シャマルってこういうスマートな戦い方するんだ…。惚れて眠れなくなるってのもあながち嘘じゃないのかも。
「…私、はじめてシャマルのことカッコいいと思ったかも」
「なあっ!?」
ぽつっと呟いたら隣で獄寺がどでかい声上げて振り向いた。思わずビクッ。な、なんだ…ビックリした。
「て、てめ…何趣味の悪いこと言ってやがる…」
「え?いや…別に本当に惚れるとかはないけどさ…」
ただ、あの人がトライデントシャマルって言う名を馳せる殺し屋だっていうその意味はわかった気がする。というか獄寺って小さい頃からシャマルのこと知ってるんだし、こういうのってわかってるんじゃないかな。そんなこと絶対口にはしなさそうだけど。
でもともかく、これで京子と花の方は片が付いた。あとはハルの方だ。
「おのれシャマル!!こうなればもう一方だけでもぶっ殺せ!!」
当然今の光景を見たバーズもハルの方に攻撃を仕掛けようとする。しかし、ハルの方の援軍だって侮ってはいけない。
『はひー!なんの騒ぎですか?』
『俺たちが来たからもう大丈夫ですよ』
『ランボ、ハルさんお願いね』
『オーケー。さあハルさん、ここはイーピンに任せて安全な場所へ』
前に出たイーピン。ランボはハルの肩を抱き、その場から離れていく。あ…ランボは戦わないのね。でもエグイ殺人鬼の姿なんてハルが目にする必要ないしこれでいいのかもね。
殺人鬼は構えを取ったイーピンに襲い掛かってくる。しかしイーピンはいとも簡単にそれを避け、逆に殺人鬼に飛び掛かる。
『白!撥!中!高三元!!!』
イーピンは殺人鬼の関節を締め、華麗にゴギャッと技を決めた。イーピンすげえ…。イーピンは今だって凄く強い。確か将来有望ランキングベスト3だったはず。その10年後…強いに決まってるよね。
「バ…バカな!!奴らは双子の悪魔と呼ばれた連続殺人鬼だぞ!こんなことが……やっぱ六道さんのミッションはレベルが高い…。くわばらくわばら」
青ざめたバーズはそそくさとその場から逃げようとする。あ!あんにゃろ…!でもそれをちゃんと見ていた獄寺が先回りしてドカッと腹部にケリを入れた。
「どこへいくんだ」
「ひげっ!!」
間抜けな声を上げたバーズ。するとドサッと倒れていとも簡単に泡を吹く。…え、弱。見てたこっちもそう思ったけど、蹴った本人である獄寺もそのあっけなさに驚いていた。
「げ…一発でのしちまった」
「命令する本人は大したことねーのな…」
「でもま、スッキリしたよ!獄寺ナイス!」
山本も苦笑。最後はあっけなかったけど、一発決めてくれて私はスッキリした。散々好き勝手なこと言ってくれたもんね。ニッと笑って獄寺にピースすると「おー…」と言いながら獄寺も軽くピースし返してくれた。
「っていうか、このおっさんといい双子といいさっきの楽器の女子といい…一体何なの!?こんな刺客聞いてないぞー!?」
一方、ツナはリボーンに何がどうなっているのかと聞いていた。確かに六道骸の一味は3人組だったはずのなのに。これじゃ話と違うよね。リボーンは答える。
「こいつらは骸と一緒に脱獄した連中だな」
「え!?ちょっと待てよ!骸たち3人以外にも脱獄囚いたのー!?」
「ディーノの情報によると脱獄は結束の固い3人組にM・M、バーズ、双子が加わる7人で行われたんだ。3人組以外の消息は途絶えていたんだがまさか骸のもとに来ていたとはな」
「まさかじゃないよ!!」
「だってだって、ディーノがこいつらは関係ねーなって言ったんだもんっ」
「キャラ変えて誤魔化すな!!」
ぷくーっと頬を膨らませるリボーンにツナは怒る。いや本当…そのキャラ何。でもまあ…一応情報は掴んでたのね。ていうか情報提供してくれてたのディーノさんだったのか。7人で脱獄したというなら、もうこれ以上はいないって考えていいのかな。
「もーいないよな!?」
「いるわ」
ツナももういないかとリボーンに聞く。しかしその返事をしたのはビアンキさんだった。…しかも、まだ…いる?
「隠れてないで出てきたら?そこにいるのはわかってるのよ。来ないのならこちらから行くわよ」
傍にある茂みを睨みポイズンクッキングを構えるビアンキさん。そこに…誰かいる?
「ま…待って、僕だよ」
すると木の影から小さな姿が覗いた。その姿を見て私たちは目を見開く。
「フゥ太!」
ツナが呼ぶ。そこにいたのはフゥ太だった。もしかして…人質ってフゥ太だったってこと?
「よかったー!元気そーじゃんか!みんないるからもう大丈夫だぞ!!さあ一緒に帰ろーぜ!!」
「来ないで、ツナ兄…」
ツナは笑ってフゥ太に駆け寄ろうとした。しかしフゥ太はそれを拒否する。
「僕…もう、みんなのところには戻れない。僕…骸さんについていく…」
「な…何言ってんだ…?」
「フゥ太、どうしたの…?」
「ナマエ姉…」
ツナに続いて私も声を掛ける。するとフゥ太はその瞳をこちらにも向けてくれた。でもすぐにギュッと瞑り、くるっと背中を向けてしまう。
「さよなら…」
「ちょ!待てよフゥ太!!フゥ太!おい、待てって!!」
フゥ太は茂みの奥に走り去ってしまう。それを見たツナは慌てて追いかける。
「10代目!!深追いは危険です!!」
「どーなってんだ?」
「骸さんについていくって…なんで」
慌ててツナを止めようとする獄寺。困惑する山本。私はフゥ太が言っていた言葉の意味を考えようとしていた。みんなのところには戻れない…骸についていくって一体。でもとにかくフゥ太の事もツナの事も放ってはおけない。私たちも急いでふたりを追いかけようとした。しかしその瞬間、それを邪魔するように何かが私たちのすぐ横を吹っ飛んでいった。
ドゴッ!!!
質量のある音。私たちの横を飛んだのは鉄柱だった。な…なんであんなもの…。そして聞こえて来たひとつの足音にハッとする。また、次の刺客…!
私、獄寺、山本、ビアンキさんは身構えた。次は一体どんな奴が…。早くフゥ太やツナを追いたいのに…。
そこにゆっくりと現れたのは、帽子を深く被った背の高い男だった。
To be continued