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約束したこと

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

約束したこと

ヘンタイ男が飼っていた鳥が飛び去っていた建物。きっとそこが敵の本拠地のはず。私たちは建物の入口を探し、遂にその中へと乗り込んだ。

「ツナ、パンツ一丁で乗り込むことにならなくて良かったじゃん」

「うん…確かに」

「でもあれお気に入りだったやつでしょ」

「そーなんだよね…はあ…」

私は歩きながらツナの肩をぱしっと叩いた。

死ぬ気になり服がなくなってしまったツナ。ビアンキさんが替えの服を持っていたおかげでことなきを得たけど、今日着て来たアレはお気に入りのヤツだったはず。気合入れる為に着たんだろうけど失敗だったね。ちょっと憐れ…なーんて。

そんな会話はツナの緊張を解きほぐすためとかこつけて、本当は私自身の緊張を解くためだったかもしれない。

「ここもだわ。階段が壊されてる…」

ビアンキさんが上の階を見上げながら言った。この建物に入ってから、何か所か階段を見つけた。しかしそのどれもが途中から壊されており、上に上ることが出来なくされていた。

「骸は多分上の階だな。どこかに一つだけ生きてる階段があるはずだぞ。こちらの移動ルートを絞った方が守りやすいだろ?逆に言えば自分の退路を絶ったんだ。勝つ気満々って事だな」

「なーるほど…」

リボーンの説明に私は納得した。凄い…ちょっと勉強になるかも。いやそんな知識別にいらないんだけど。でもなんとなくひとつ賢くなった感じ。リボーンって本当なんでこういうこと詳しいのやら…赤ん坊のくせに。

「ん?ケータイが落ちてる…壊れてら」

その時、獄寺が床に落ちていたケータイを拾い上げた。壊れたケータイ…。過去、ここに来た人の忘れ物とか?そんなことを一瞬考えたけど、見せてもらったところ劣化している様子もなく落ちたのは最近のようだった。するとツナはその持ち主に心当たりがあるらしい。

「あ!もしかして雲雀さんのかも!雲雀さん…ケータイの着うた、うちの校歌なんだよね」

「え。みーどりーたなーびくー…って?」

「なぁ!?ダッセー!!」

まさかの着信が校歌…。獄寺のダッセー発言を正直否定出来ない…。雲雀さんの並中愛が凄いのは知ってたけど、もしかしたら予想のはるか上をいっているのかもしれない。

でも雲雀さんもこの建物のどこかに居たりするんだろうか。ツナがフゥ太を追いかけた時にたまたま出会った黒曜生によると、どこかの建物に幽閉されてるらしいけど。…ていうか黒曜生の人質とかいるのか。

なんにせよ、雲雀さんの行方は気になるところだ。

「…雲雀さん、どこにいるんだろう」

「さあな。つか、ぼさっとしてんじゃねーよ。ほら、行くぞ」

「うん…」

なんとなく辺りを見渡しながら呟けば、獄寺にパシッと軽く叩かれる。まあ…進むしかないよね。私は頷き、みんなと足を動かし始めた。

そうして色々な部屋を見て回ったのち、やっと上に行く手段を発見した。残されていたのは階段ではなく非常用の梯子だった。

しかしそれを見つけた瞬間、パシッ…シュルル…という聞き覚えのある音が聞こえた。

「でた!ヨーヨー使い!!」

ツナが怯えた声で叫んだ。

梯子があるそのフロアで待ち構えていたのはあのメガネのヨーヨー使いだった。確か名前は柿本千種。こいつを倒せばランチアさんを救えるかもしれない。それに獄寺を傷つけたことも忘れてない。正直色々因縁がある相手だよね…。

緊張が走ったその時、バッと宙にダイナマイトが放たれた。そんなことする奴はひとりしかない。先手必勝ってこと…?しかしその筒は爆発せず、中から白い煙を噴き出し始めた。…これって、煙幕?

「10代目、ここ俺に任せて先に行ってください」

「獄寺くん!!」

「…獄寺」

辺りを包んでいく煙。その中で獄寺はひとり前に出た。さっきヨーヨー使いは自分が倒すとは言ってたけど…ひとりで戦うつもりだったってこと?

「隼人、聞いて!あなたは前やられた時、シャマルのトライデントモスキートで命を取り留めたの」

「なっ!よりによってあいつに…!!」

「ナマエがシャマルに頼んでくれたのよ」

「……ナマエに感謝しろって、そーゆー意味かよ」

ビアンキさんは獄寺にトライデントモスキートで治療した話を告げた。そして獄寺も気が付く。保健室を出る時、シャマルが言っていた「ナマエちゃんに感謝しろよ」の意味。獄寺はこちらに振り向いた。目が合った時、私は小さく苦笑した。少し…照れくささもあったかな。でも、頼んでその詳細を聞いたからこそ、心配する気持ちがある。

「かけられた病気が完成するまでには副作用が起こるの。また激痛を伴う発作が襲うわ。それでもやる気?」

「あたりめーだ。その為に俺はいる」

ビアンキさんは副作用の話を伝えた。ランチアさんと戦った時に起こったような発作がきっとまた起こる。だけど、それでも獄寺はここで戦うと迷いなく言い切る。それを聞いたビアンキさんは私とツナの肩を叩いて先に進みだす。

「行きましょ。ナマエ、ツナ」

「え…でも…」

「…ビアンキさん」

弟を信じたビアンキさん。すると獄寺もまた振り返る。

「行ってください。10代目は骸を!」

「そりゃそーだけど…」

「ナマエ、10代目の事は任せたからな」

「…獄寺」

私たちにそう声を掛けてくる獄寺。そしてニカッとツナに笑いかける。

「終わったら、またみんなで遊びに行きましょう」

「!…そ…そーだよね、いけるよね」

「もちっス!」

終わったら、また…。その言葉にツナは少しほっとしたようだった。…口から出まかせじゃ、ないよね?ちゃんと、思ってるよね?ツナが自分の事を友達として大切にしてくれてるって…獄寺はちゃんと知ったはずだから。

…私との、約束も…。

「わかった!いくね!」

ツナは先に行ったビアンキさんを追い、梯子に走り出した。私は…ぎゅっと手を握る。それから、その背中に向かって叫んだ。

「獄寺!約束!破ったら殴るから!」

「なんで殴んだよ…バカかてめぇ…」

「破んなきゃいい話」

「……んなもん、お前こそだろ」

「当たり前。お互いに、ね」

「……わーったから、早く行け」

ひらっと軽く手を払うような仕草を見る。…心配だし、なんとなく離れがたい気持ちはある。帰ったら誕生日のお祝いをしよう。だからお互い無茶しないこと。…わかったって、聞いたからね。その言葉を信じ、私もビアンキさんとツナを追いかけ上へと続く梯子へと向かった。

「3階は映画館だったんだ…」

「このへんは全然記憶ないけど、本当に色々入ってたんだね、ここ」

先に進んだツナ、リボーン、ビアンキさん、私。この施設、2階はボウリング場で3階は映画館になっていた。どこももう瓦礫にまみれて酷い有様だけど、かなり大きい施設だったんだなと改めて実感する。そして映画館の奥へと進んだ時…不自然に用意されたソファの上に座るひとりの少年の姿があった。

「また会えて嬉しいですよ」

フロアに足を踏み入れた瞬間、こちらに気が付いた少年は穏やかな声でそう口にした。また、会えて嬉しい…?それを聞いて反応したのはツナだった。

「ああ!君は!!もしかしてここに捕まってんの!?あっ、あの人はさっき森であった黒曜生の人質なんだよ」

彼が何者であるのか、私たちにも説明してくれたツナ。それって、雲雀さんがどこかに幽閉されてることを教えてくれたって言う…あの?

「ゆっくりしていってください。君とは永い付き合いになる。ボンゴレ10代目」

「え?なんで俺がボンゴレって…」

…!

ツナをボンゴレ10代目と呼んだ彼。ツナは寝ぼけたこと言ってるけど、今のその言葉で確信した。いや…向こうもわからせるつもりで言ったはず。

「違うわ、ツナ。こいつ…!」

「ツナ、下がって。近づいちゃダメ…」

「え…」

勘づいたビアンキさんとふたりでツナを止める。私はツナの腕を掴んで引いた。すると少年はふっと微笑んで見せた。

「そう、僕が本物の六道骸です」

「な…はあーーー!?」

驚きで声を上げるツナ。この人が…本物の六道骸。でも、最初ツナが騙されてしまったのもわかる気がした。空気感だけなら穏やかで、口調だってそうだ。だけど自分が六道骸だと隠すのをやめた彼は、その底知れぬ野望や闇…そんなものを隠すのもやめたような。

その時、私たちの背後でバタンと扉が閉まる音がした。

「フゥ太!」

ツナが呼ぶ。振り向くとそこにたのはフゥ太だった。

「お…驚かすなよ」

「無事みたいね」

「あの後随分探したんだぞ」

「危険だから下がってなさい」

ツナとビアンキさんはフゥ太に近づき優しく声を掛けていた。でもその一方、私はもう一度六道骸に振り返った。なんとなく…目を離してはいけないような気がして。すると彼はフゥ太に接するその様子を薄い笑みを浮かべて眺めていた。

…なんだろう、あの表情。

そう思って見ていれば、ふいにその視線がこちらに向く。ぱちっと視線が合ってしまった。六道骸は私に向かって微笑む。そして私にもフゥ太の様子を見るようにと視線で誘導してきた。一体何を…。そうしてフゥ太に目を向けた瞬間、フゥ太はビアンキさんの腹部に鋭利な何かを突き刺していた。…えっ!?

「ビアンキ!」

「ビアンキさん!!」

血を流し、倒れこむビアンキさん。ツナと私は慌てて駆け寄った。

「ビアンキしっかりして!フゥ太何やってんだよ!!」

「…フゥ太」

フゥ太の手に握られていたのは三叉の鋭利な武器だった。突き刺すのに特化したような形状。槍の先につけるような。フゥ太はまた武器を振り回し、今度はツナに襲い掛かった。

「わっ、コラ、フゥ太!おい…どうしたんだよ、そんな物騒なもん仕舞えよ!」

「ううう…」

ツナは距離を取って逃げながらフゥ太に声を掛ける。でもフゥ太は武器を手放さず、唸りながらじりじりとツナに向かって行く。

「マインドコントロールされてるみてーだな」

ビアンキさんの手当てをしながらリボーンは言った。マインドコントロールって…。

「そ…そんな!目を覚ませ!フゥ太!ナマエ!た、助けて!!」

「いや、そりゃ、助けたいけど…っ!」

リボーンを手伝いビアンキさんの手当てをしていた私は後をリボーンに任せ、棒を握って立ち上がる。だけど、フゥ太相手になんてどうしたら…!

そう迷っていると、リボーンがツナに向かって何かを放った。それはツナの首に巻きつき、引っ張られたツナはドタッと尻もちをつく。

「前にディーノに貰った鞭を持ってきてやったぞ」

「んなーーっ!?こんなものわたされてどーすんだよ!!」

まさかのディーノさんのお下がりの鞭…。鞭って、結構扱い難しいんじゃないかな…。私自身は使ったことないけど多分…。そもそもツナだってフゥ太相手に攻撃することは出来ない。しかしそれならと、ツナは骸を直接狙うことを思いついたらしい。

「ほう…」

鞭を握り、骸に向かって走り出したツナ。自分に向かってくるボンゴレ10代目を見て骸は涼しい顔をしている。…って、フゥ太までツナを追いかけはじめた!?

「あっ、ちょ、フゥ太!!ツナ!!」

「え!?来んなよ、フゥ太!!…っやるしか!」

私の声でフゥ太が自分を追っていることに気が付いたツナ。それでも一か八かやるしかない。ツナはビュッと鞭を振るった。…が、しかし、やっぱり案の定だった。

「ギャッ!んわ!!あいたー!!」

まずは己の顔面にヒット。それから自分の足に巻きついて転んで…。これは…部下がいない時のディーノさんに匹敵するドジっぷり…。はあ…と、私は頭を抱えた。でもそのドジっぷり、今回はちょっと功を奏していた。

「クハハハハ、君にはいつも驚かされる。ほらほら、後ろ…危ないですよ」

「ひいい!!フゥ太まで絡んでる!!」

骸に笑われる。ツナが放った鞭は後ろについてきていたフゥ太にまで絡まっていた。それにより転んだ際、フゥ太の手から武器が離れた。それなら今がチャンス!

「ツナ!武器、払って!フゥ太の手が届かないように!!」

「っあ!わっ、わっ!フゥ太!やめろ!」

鞭が絡まりながらも転がってしまった武器に手を伸ばそうとしていたフゥ太。私はツナに武器を払う様に叫び、ふたりの元に走った。

「フゥ太…っ!!」

そして暴れるフゥ太を抑え込むように後ろから抱き締める。フゥ太は私の腕の中でもがいていた。抑え込めはしたけど、でもここからどうしたら…!そう考えていると、ツナがフゥ太に優しく声を掛けた。

「お前は悪くないぞ。全然、お前は悪くないんだ。みんなフゥ太の味方だぞ。安心して帰ってこいよ」

「…っ!」

ツナがそう言った瞬間、暴れていたフゥ太の力が緩んだ。もしかして…ランチアさんと同じ?フゥ太も骸に何かさせられて、罪の意識で帰れないって言ってたってこと?それなら…。私はフゥ太をギュッと抱き締める。今度は押さえ込むためじゃなくて、優しく…包むように。

「フゥ太…大丈夫だよ。私たち、フゥ太のこと大好きだから…だから、一緒に帰ろう」

「…………、ツナ…兄……ナマエ…姉……」

フゥ太は私たちの名前を呼んだ。マインドコントロール…解けた?でもその瞬間、フゥ太の体からガクッと力が抜けた。まるで意識を手放してしまったみたいに。そして鼻から血が流れ出す。え、これって…!

「君たちが余計な事するから、彼、クラッシュしちゃったみたいですね」

…クラッシュ。骸が言うには、フゥ太はこの10日間ほとんど眠っていなかったらしい。そして骸たちからすると、最初から手のかかる子であったと。

「我々はボンゴレ10代目の所在のあたりをつけて日本に来たのですが、特定には至らなかった。そこで10代目と顔見知りと噂のフゥ太くんに来てもらったのですが…沈黙の掟を貫き通してだんまりでしてねぇ。さらには心を閉ざしてランキング能力まで失ってしまった」

沈黙の掟…オメルタ。それは組織の秘密を絶対に外部に漏らさないというマフィア界の掟。フゥ太のランキングは業界全体の最高機密であるという。フゥ太はそれを守り抜いた…。その結果…ランキングの能力を…。そこまで聞けば、リボーンはその後に骸が何をしたかを言い当てる。

「それで仕方なく以前に作られた並盛の喧嘩ランキングを使い、ツナとファミリーをあぶり出そうとしたんだな」

「目論見は大成功でしたよ。現に今、ボンゴレはここにいる。そちらのお嬢さんは…もしやボンゴレ10代目の秘書でしょうか」

「……え」

「聞いた事がありますよ。ボンゴレには代々続く秘書の家系があるとか。クフフ…お目に掛かれて光栄ですよ」

「……そりゃ、どーも」

「…なかなか良い目をしますね」

私に目を向けてきた骸。口調も丁寧に、穏やかに笑い掛けてくるけど…こんなに冷たい笑みは見たことがない。物怖じはしたくなくて、私は毅然と返す。すると骸はまた小さく笑ってた。

「……罪のないフゥ太をこんなにして…六道骸、人を何だと思ってるんだよ!!」

「おもちゃ…ですかね」

「くっ…ふざけんな!!!」

「あ!ツナ!!」

鼻だけでなく、耳からも血が流れだしたフゥ太。そしてあろうことか、骸は人をおもちゃだと悪びれもせず言い放つ。そんな姿を目の当たりにしたツナは怒りを爆発させて骸に向かって行った。骸はそれを迎えるように立ち上がる。そしてふたりがすれ違った直後、ツナに異変が起きた。

「いて…いででで!!痛いー!!!」

「ツナ…っ!」

「…すれ違いざま、すさまじい攻撃を浴びせたんだぞ」

ツナは体中に細かい切り傷を負った。服も少し破れ、至る所から血が滲みだす。リボーンが言うにはすれ違いざまの攻撃…。私も少し見えたけど、とんでもない速さだった。

「流石アルコバレーノ。その通りです」

骸はフゥ太の傍に落ちていたあの武器を拾うと、今自分が持っているロッドの先に装着した。…三叉の槍。そしてその右目には死ぬ気の炎のようなものが灯っていた。

「目から…死ぬ気の炎!?」

「でも色…藍色だよ」

「ほう、おふたりとも見えますか?このオーラこそ、第四の道、修羅道で身に着けた格闘能力の闘気。六道輪廻という言葉をご存知ですか?」

ツナにも私にも見えた。でもあれは…死ぬ気の炎じゃなくて、オーラなの…?

そして六道輪廻。それは人は死ぬと生まれ変わり、地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天界道のいずれかにいくという考え方。骸の体には前世に六道すべての冥界を廻った記憶が刻まれており、6つの戦闘能力を授かっているという…。な、何言ってるのかよくわかんないんだけど…。

「それが本当なら、オメーはバケモンだな」

「君に言われたくありませんよ、呪われた赤ん坊アルコバレーノ」

呪われた赤ん坊…。骸はリボーンをそう呼んだ。それってどういう意味なんだろう…?でも今はとてもじゃないけどそれを聞くような雰囲気でもないし、そんな暇もない。

「さあ、次のスキルをお見せしましょう」

骸はそう言って、不敵な笑みを浮かべた。

To be continued