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君の事なら信じられる

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

君の事なら信じられる

「第二の道、餓鬼道は…技を奪いとるスキル」

獄寺の声で語り、獄寺の体でダイナマイトを放った骸。

「ひいいいい!!!」

「っ…」

ツナと私は爆発の直撃を避ける。だけど強い爆風が吹きつけてくる。骸は他人の体を乗っ取った上にで、前世に刻まれたという能力も使えるらしい。つまり、他の能力も発動出来る。

「え!?うわあぁあ!!助けてー!!!」

「火柱…!」

私たちが逃げた先で、床からいくつもの火柱が噴き出しはじめた。熱い…!ツナは頭を抱えて怯えるばかり。

「出来れば君は無傷で手に入れたい」

「降伏してくれていいんですよ」

こちらに歩み寄りながら城島犬と柿本千種の口で語り掛けてくる骸。だけど、こんなところに火柱なんか起きるわけがない。触れて確かめるには勇気がいるけど、多分この火柱は幻覚なのだろう。

「ひいいい!!もーダメだあ!!」

「ツナ!これ、きっと本物じゃないよ!」

「学習しねー奴だな。ナマエの言う通り、これは幻覚だぞ」

リボーンも肯定してくれた。それでちゃんと確信出来る。しかしリボーンは私たちとは少し離れたところにいた。そんなリボーンにもダイナマイトが襲い掛かる。

「おっと、君は…自分の心配をした方がいい」

獄寺の声…。そして巻き起こった爆発。でもリボーンはやられない。すぐさま黒い煙の中から小さな影が飛び出してくる。そこを狙ってあの三叉の剣を頭から突き刺されたけど、それは帽子だけの囮。リボーンは素早い動きで帽子を取り返すとパンパンと軽く埃を払った。

…リボーン、凄い動き。まるで先読みでもしてるみたいな。いままでも何度も思ったことはあるけど…リボーンって、何なんだろう。赤ん坊なのに、私たちよりずっとずっと色んな経験をしているかのような。

「久々に感じる実践の空気だな。俺は手ェ出せねーんだ。ツナ、早くナマエとなんとかしやがれ」

そして軽くそんなことを言ってくる。ツナと…私で何とかする…。そう…、そうするしかない。私はキュッと棒を握る手を強める。…それは今まともに戦えるのは自分しかいないという小さな責任感だろうか?だって死ぬ気なれないツナが戦えるはずなくて。そんなツナを守らなきゃっていう…そんな気持ち?

「無茶言うなよ!!ひいいっ!!俺のなんとか出来るレベル越えてるよ!!」

「俺の教え子なら越えられるはずだぞ」

「そんなムチャクチャな理屈ってあるかよ!?」

逃げ回りながらリボーンに文句を言うツナ。その様子を見て骸は笑う。今度はビアンキさんの体。

「クフフフ、焦っているんですよ、先生は。生徒の絶体絶命の危機に…支離滅裂になっている」

「嘘じゃねーぞ。お前の兄貴分のディーノも超えてきた道だぞ」

…ディーノさんも?ディーノさんもリボーンの生徒だった時、絶体絶命のピンチがあった。だけどそれを乗り越えた時、へなちょこディーノから跳ね馬ディーノになった。

リボーンはツナならこの危機を乗り越えられるって本気で信じてる。いや、そんな未来がリボーンには見えている?ひとつも疑っていないかのような。

その瞬間またダイナマイトが放たれて、爆風でツナの足がもつれる。

「さあ、お喋りはこれぐらいにして終わりにしましょう」

それを好機と捉えた骸は柿本千種に三叉の剣を握らせツナに向かって走り出した。やばっ…!

「ツナ!!」

「ひいい!!ナマエ!!きたあぁ!」

私も咄嗟に駆け出す。だけど、柿本千種の体はガクッと体勢を崩してツナに届く前に倒れ込んでしまった。転ぶような理由、何もなかったのに。その拍子に三叉の剣は転がる。それを拾い上げた城島犬の体で骸は平然と言った。

「なあに、よくある事です。いくら乗っ取って全身を支配したといっても、肉体が壊れてしまっていては動きませんからねぇ」

それを聞いて、ぞわっとした。こいつ…何言ってんの…?

「…それって…怪我で動かない体を無理矢理に動かしてるって事…?」

ツナの顔も青ざめる。最初の一度のみ、あれから雲雀さんに憑依しないのもそういうこと…。

「千種はもう少し…いけそうですね」

骸は柿本千種の体を起こした。無理に力を込めて、傷口からドバッと血が溢れ出す。

「えっ、ちょ…!」

「ああ…っ、無理矢理起こしたら…怪我が…!!」

「クフフフ、平気ですよ。僕は痛みを感じませんからね」

「「!」」

私とツナは骸のその言い分に絶句した。

「あんたが痛みを感じないからって…その人は…!」

「何言ってんの!?仲間の体なんだろ!?」

「違いますよ。憑依したら僕の体です。壊れようが息絶えようが、僕の勝手だ」

私やツナが叫んだところで、骸には響かない。多分、根本的な考え方がこいつとは違うんだ…。

「他人の心配をしている暇があるんですか?自分がやられるという時に」

「君は面白い男だが、マフィア向きではありませんね」

「あ…っ」

「獄寺…ビアンキさん…」

そしてまた背後に気配。今度は獄寺とビアンキさん。今の話を聞いて、余計に目につく。獄寺の胸…ビアンキさんの腹部…。普通は傷があれば、そこを庇うようにして動くし、安静にする。でも今はそんな事も気にせず、ふたりも無理矢理体を動かされているから、傷が悪化してどんどん血が溢れてる…。

獄寺のシャツ…。さっきより、色が濃く…広がって…。さっき駆け寄って傍で確かめたからこそ、今どれだけ血を流しているのかがわかってしまう。

「頼む!!やめてくれ!!このままじゃ死んじゃうよ!!」

「ツナ…」

ツナはまた叫んだ。でも、その叫びは…骸に私たちの弱点を知らせていることにもなる。骸は獄寺の体で薄く笑った。

「クフフフ、思い出しましたよ。君はバーズとの戦いでガールフレンドのために自分にナイフを突き立てようとしたんでしたね。それでいきましょう。君はその甘さゆえ、僕に乗っ取られる。いいですか?君の仲間をこれ以上傷つけられたくなければ、逃げずに大人しく契約してください」

…やっぱり、そうなる。獄寺やビアンキさんは今、人質にも等しい。そして今もなお、ボタボタと傷口から血が滴り落ち続けている。

「そ…そんな…」

「やはり迷うのですね。どのみち君のような人間はこの世界では生き残れない。ボンゴレの10代目には不適格です。さあ、体を明け渡してもらいましょう」

三叉の剣を持った城島犬が近づいてくる。それを見たツナは震えあがって私やリボーンに助けを求めた。

「ナマエ…っ、どうしよう…!リボーン!どうしよう!!」

「…どう、って」

私は…、私だって…どうしたらいいかなんてわからない…。ずっとぐるぐる頭で考えてる。でも、私ひとりでこの状況をどうにか出来るとは到底思えない…。でもこれ以上、獄寺やビアンキさんの体が傷つくのを見ていたくなくて、溢れる血を見るたびに胸が締め付けられる…。

「俺は何もしてやれねーぞ。自分でなんとかしろ」

リボーンは助けてくれない。掟に従い、最初からそのスタンスを崩すことがない。ツナはわっと嘆いた。

「そんなぁ…いつも助けてくれるじゃないか!!見捨てないでよリボーン!!」

「情けねえ声出すな」

「ブフッ!!」

「り、リボーン…」

リボーンは思いっきりツナの顎を蹴り飛ばした。う…痛そう。でもリボーンはツナを突き放しているわけじゃない。リボーンはぐいっとツナの胸倉を掴んだ。

「いいか、ツナ。お前は誰よりもボンゴレ10代目なんだ」

「!?」

「お前が気持ちを吐き出せば、それがボンゴレの答えだ」

「お…俺の…気持ち?」

「そしてナマエは、そのお前の気持ちを必ず尊重してくれるぞ。そんなもん、お前が一番わかってんだろ」

…!

ぴくっと反応して、ツナと目が合う。…私?

ツナが、どうしたいか。ツナの一番の気持ちを、尊重する…。今、ツナは何を思うだろう?

気付いた時には隣にいた、私の幼馴染み。運動もダメだし、成績も悪い。ダメダメのダメツナ。でも…私は、ツナの事が好き。ダメなところもいっぱい知ってる。でもね、いいところだって私はたくさん知ってる。

…君は、誰より優しい。誰よりも、人を思いやる…優しい男の子。

みんな、ダメなところばかりに目がいきがちでなかなか気づかないけれど。ううん、だから最近、ツナの周りに誰かがいることが増えて…私はちょっと嬉しい。ツナのいいところ、気付いてくれる人が増えたこと。獄寺や、山本。ハル、それに…京子も。

でも、きっと、それはツナもそれをちゃんと前に出せるようになったから。変わったんだよね…ツナも。

だけど、あたたかな根っこの部分は…昔から変わらない。

…うん、そうかも。ツナが心の底から望む気持ちなら…私は、いつだって必ず尊重する。

「…ツナ。私は、ツナの味方だよ。私は、ツナのことなら信じられる。うーんと昔から、ずっと」

「…ナマエ」

私はツナに伝えた。自分の気持ち。こんなこと真面目な顔して言うのは少し照れくさいけど。でもきっと、相応しい言葉はそれだから。

するとツナの瞳の中に光が見えた。ツナは俯く。何か…自分の気持ちを確かめるように。それを見た骸は勘違いをしたようだった。

「クフフフ、家庭教師も匙を投げましたか。彼の気持ちは逃げ出したいですよ。それとも仲間の為に逃げられない…かな?」

…言ってろ。なにもわかっちゃいない。

そしてツナはその想いを口にする。

「……ちたい…、骸に…勝ちたい…」

小さい声だった。でも、ここにいる全員の耳に確かに届いた。

「ほう。これは意外ですね。だが続きは乗っ取った後にゆっくり聞きましょう。君の手で仲間を葬ったあとにね」

「…こんな酷い奴に…負けたくない…。こいつにだけは、勝ちたいんだ!!」

ツナは気持ちを吐き出した。自分の、強い強い気持ちを。

その瞬間、まるでその気持ちに応えるかのように、カッと何かがまばゆい光を放った。

To be continued