そのまっすぐさを知っているから
そのまっすぐさを知っているから
「…こんな酷い奴に…負けたくない…。こいつにだけは、勝ちたいんだ!!」
ツナは吐き出した。自分の強い強い気持ちを。その瞬間、カッと眩い輝きを放たれ、辺り一面に何かが張り巡らされた。それは私たちの体や壁にビッと張り付く。な、なに…?
「ああっ、レオン!?」
「レオン…!?」
ツナと天井を見上げると、そこには輝くレオンの姿があった。張り巡らされているのはレオンの体から放たれたマユの糸。レオン、ここに来るまでずっと丸いマユのままだったけど…。
「遂に羽化したな。あの時と一緒だ。ディーノが跳ね馬になった時とな」
二ッと笑うリボーン。ディーノさんが跳ね馬になった時。じゃあ今この瞬間、ツナにとっても何か転機になる?
骸は自分達の体にも張り付くレオンの糸を鬱陶しそうに取りながらリボーンを見る。
「そうか…アルコバレーノ、君の仕業だな」
「ちげーぞ。こいつは形状記憶カメレオンのレオン。俺の生徒が成長すると羽化する俺の相棒だぞ。どういうわけか生徒に試練が訪れるのを予知するとマユになるんだ」
生徒の成長…。ツナは気持ちを吐き出したあの瞬間、多分またちょっと変われた。骸に勝ちたいって、強い気持ちを持った。レオンはその気持ちに応えるように羽化した。でも…ここから何が起こるんだろう?見ていればレオンはどんどんと膨らんでいた。
「ニューアイテムを吐き出すぞ。俺の生徒であるお前専用のな。ディーノん時は跳ね馬の鞭とエンツィオを吐き出したんだ」
「えーー!?エンツィオってレオンの子だったの~~~!?」
「カメレオンからカメ…。でも跳ね馬の鞭って…じゃあ、ツナにも武器が出てくるの?」
驚きの告白。まさかのエンツィオ、レオンの子だった。でもツナ専用のアイテムを吐き出してくれたとしたら、ツナも戦える?それとエンツィオみたいな味方が出来たら…それこそ心強い。しかし骸がそれを大人しく見ていてくれるはずもない。
「いつまでも君たちの遊びに付き合っていられません。小休止はこれくらいにして、仕上げです。では目障りな…こちらから」
三叉の剣を持ち、城島犬の体でこちらに突っ込んできた骸。当然私たちは避けるから、まず狙われたのは天井で輝いているレオン。レオンの体は真っ二つに割かれてしまう。でもリボーンによれば特に問題はないらしい。
「心配ねーぞ。レオンは形状記憶カメレオンだからな。それより上に何か弾かれたぞ」
「「!」」
地面に落ちて、割かれた体をくっつけて再生していくレオン。その姿に安心しつつ、私たちはさっきまでレオンがいた天井を見上げた。何か…ある。それはゆっくり落ちてきて、ぽふっと柔らかくツナの顔に落ちた。
「え…?あれ…?こ…これって…毛糸の手袋~~!!?」
「え…」
ツナの上に落ちてきたのは白地に赤い糸で27と書かれた毛糸の手袋だった。…な、何故に毛糸の手袋…。
「こんなんでどーやって戦うんだよ!?エンツィオとか武器出るんじゃないのかよ!?手の血行良くしてどーすんだよ!!」
「さーな。とりあえずつけとけ」
「なっ!?」
リボーンにつけろと言われたので、ひとまずは大人しく毛糸の手袋をはめるツナ。しかしそこに城島犬が襲い掛かってくる。
「最後まで面白かったですよ、君たちは」
「ひいっ!!」
「ツナ!!」
私は手を伸ばした。でも動物の能力じゃやっぱり早い!三叉の剣はツナに一直線に向かう。ツナは咄嗟に手袋をはめた手でその身を庇った。
ガキッ!!!!
その時、とても毛糸の手袋からするはずもない音がしてツナの体は弾かれた。私は走り、ツナから城島犬を離すように棒を振るう。避けられたけど、離すことが目的だから構わない。それよりも今、まるで金属同士がぶつかったような音がした。私は城島犬を警戒しながらツナの様子を伺う。…多分、手袋の中に何かがあって、ツナの手に剣は刺さらなかった。ツナは弾かれた体を起こし、今の音の正体を探るべく手袋を外した。すると中からポロっと落ちたひとつの銃の弾。あれ…まさか特殊弾!?
「そいつだな…、よこせツナ」
「えっ!」
リボーンはニッと笑い、ツナの元に走った。
「撃たせるわけにはいきませんよ」
得体のしれない特殊弾は厄介だろう。骸は使用を阻止するためにリボーンに襲い掛かる。でもリボーンはまたも軽くその攻撃を避けてツナの手から特殊弾を奪った。
「ゲット。見たことねー弾だな。ぶっつけで試すしかねーな」
「えーーー!!?ぶっ…ぶっつけー!!?」
効果のわからない弾。ぶっつけで試すと言われたツナは怯える。
「させませんよ。君の体を無傷で手に入れるのは、諦めました」
獄寺の声。気付くと大量のダイナマイトがばら撒かれていた。今までは直撃を避けて投げているように見えた。でも今回は完全に当てるつもりでツナの上に降り注ぐ。私は慌てて走った。でも、ダメだ、間に合わない…!
「ツナッ!!」
「ナマエ…っ!そんな!!うわあああ!!」
飛び掛かった。ツナの体を守る様に。そして起きた…大爆発。
ドォン!!!
熱気…熱風…ぶわっと体に降りかかる。…体中、痛い…。黒い煙が薄れていく中、ゆっくりと瞼だけを開く。目の前に映ったツナの顔。庇おうとしたけど…上手くいかなかった。直撃くらいは、避けられたかも知れないけど…。だけどツナも、食らってしまった。私は悔しさを感じながら、また瞼を閉じる。
「…ナマエ…なんで…」
掠れたツナの声が聞こえた。…なんで庇ったかって…?さあ…なんでかなあ…。でも、どうしても…嫌だと思った。
「…獄寺の…技で…、体で…、ツナを、傷つけさせたくは…ないなぁ…って…」
「……ナマエ」
「…そんなの、あいつ…絶対、望まないでしょ…」
…私の声も掠れてる。
バカで、思い込み激しくて、いつもから回ってる。でも獄寺は心からツナを慕ってる。その気持ちに嘘偽りなんてなくて、それがどんなにまっすぐかは…知ってるから。いつも一生懸命で、実は結構努力家で…。そういう姿、私はバカだなぁって思って見てるけど…だけど、だからたまに、ちょっと、ちょっとだけ…。
頑張れ、って言いたくなる。
…獄寺が、あんなこと言うからかな。俺が右腕として一緒に10代目を支える秘書は、お前がいい…。獄寺が守れない代わりにも…って、ちょっと…思っちゃった、のかも?
するとその時…ぎゅっと手を握られた。
「…バカだな…。獄寺くんは、自分の体でナマエを傷つけることだって…絶対に望まないに決まってるよ…」
…そうかな。そうなのかな。
ツナの言葉が、すっと心に落ちていく。獄寺は私のこと、どーでもいいなんて思ってないって言ってくれた。それは秘書としてだけじゃないって。
ああ…無茶するなって…約束してた。でもこれは…ちょっと無茶、したかな。私もさっき獄寺に怒ったのに…。獄寺は、怒るのかなあ…。
《んまあ、この服っ!!》
そんな時、頭の中で声が聞こえた。…ツナに握られた手から、伝わる…?この声…奈々さん…?
《ツナったらまた散らかしたまま出掛けて~っ!自分の事は自分でしなさいって言ってるのに~!》
部屋の掃除…?だらしないツナに、怒ってる…。なんだろう、これ…。するとまた、今度は別の声。
《なんだよこれ?日直日誌に沢田のテスト紛れてんじゃん!しかも…2点!!!》
今度は花だった。…ていうか2点て、ツナ…。
《あいつマジでダメツナだな~っ、京子モノにしたいならもーちょっとしっかりしろよ~っ》
頭を抱えて呆れてる感じ。でも…京子とのこと、反対はしてないよね。多分このテストも京子の目に触れる前に隠してくれるだろう。ツナはそれに気付いて無いだろうけど…。
「なんで黒川の悪口が…」
目の前のツナはぼそりと呟いて落ち込む。…これ、ツナにも聞こえてるんだ。というより…ツナに聞こえているものが私にも聞こえてるって言った方が正しいのかな。
「特殊弾の効果みてーだな。お前が感じてるのはリアルタイムで届くみんなからお前への小言だ」
今度はリボーン。少しだけ顔を上げると、リボーンはこちらを見てる。…小言って、なんでまた。でもさっきの特殊弾、リボーンは撃っていて、あの爆発の中でもちゃんとツナに当たったんだ。私が飛び掛かったのも見越して命中させるとか、凄いな…。
《はひー!!何やってるんですか!?犯人のアジトに乗り込むなんて正気じゃありません!》
《ガハハ!ハル、泣いてるもんね!》
《な…泣いてません!!ハルはマフィアのボスの妻になるんです。こんなことで泣きませんよ。ツナさん、頑張ってください!》
今度はハル。ランボやイーピンも傍にいるみたい。そうか…あの双子の殺人鬼を倒した後だもんね。
《落ち着け、京子》
《だって…シャマル先生がツナくんたちが乗り込んだって…》
《心配するな》
《…でも》
《あいつは俺が手を合わせた中で最も強い男だ。負けて帰ってきたら俺が許さん》
《そうだよね…大丈夫だよね…ツナくん、元気で帰ってきてね》
次は笹川先輩と、京子。京子はシャマルが助けて花と別れた後、また笹川先輩のところに戻ったのか…。心配して、でも信じて待ってくれている言葉。
《俺と同じ過ちを繰り返すな。仲間を守れ…お前がその手で、ファミリーを守るんだ》
…今度は、この声は…ランチアさん。ランチアさん…私たちの事、案じてくれてるんだ。
リアルタイムの小言。
今、みんながツナに対して想うこと。…それなら、私は…。
「…ツナ」
私の、ツナへの小言は…。
私は小さい頃、綱吉君を守ってあげるのよって親に言われた。なんだそれって思った。でも…心の奥底では、いつだって思ってるよ。この頼りない男の子は、誰より優しく…そして周りを大切にする。だから私は、ツナを助けるし、守るよ。
マフィアのボスの秘書とか…よくわからないけど。でも、これだけは言える。私は…ツナの支えになる。
「…ツナ、帰ろ…みんなで」
力を込める。
今、握ってくれているツナの手を私も握り返す。
「俺の小言は、言うまでもねーな」
そしてリボーン。その声が聞こえた瞬間、カッとツナの瞳が力強く開かれた。見据えるのは、六道骸。自分に向けられたその瞳に骸は感心する。
「ほう…この期に及んでそんな目をしますか。ですが、もう幕引きにしましょう。ここで死なれても困りますからね」
柿本千種の体で三叉の剣を振り下ろす骸。しかしその刃を掴んで受け止めた手があった。27と書かれた毛糸の手袋。それは光を放ち、その形を変えていく…。Xのエンブレムの、黒いグローブへ。
「骸…お前を倒さなければ…死んでも死に切れねえ」
三叉の剣の刃を一本折ったツナ。その額には、オレンジの美しい死ぬ気の炎が揺れていた。
To be continued