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嵐の予感

右腕と秘書 — www.pixiv.net · All chapters

嵐の予感

「え、家光さん帰ってくるの?」

通学路。ツナが教えてくれた話に私は驚いた。

家光さんこと、沢田家光。

言わずもがな、それはツナのお父さんである。家を留守にしがちな人で、もう何年会っていないだろう?少なくとも中学に上がってからは会っていないはずだ。となると2年くらいか?そんな人がもうすぐ帰ってくるという知らせ。

「へー、良かったじゃねーか。親父さん、帰ってくるなんて」

「……うん…ま…まあ…」

山本に良かったなと言われツナは頷くも、その表情はあまり晴れやかではない。

獄寺と山本も一緒に登校し、今の話を聞いていた。中学生になってから一度も家に帰っていないのであれば、中学校で交流するようになったこのふたりは当然家光さんとは面識がないことになる。というか今まで気にしたことなかったけど話題にすら上がったことがない気がする。

「10代目のお父様がご健在だったとは…帰ってこられた暁にはご挨拶に伺います!!」

獄寺は母親である奈々さんへの対応と同様、妙な張り切りを見せていた。そんな獄寺をツナは慌てて止める。

「いやいや、いーよ!あんなでたらめな奴に…」

でたらめな奴…。そりゃ何ともな言い草である。それを聞いた山本は笑い出す。

「ハハハ!何だよ、でたらめって」

「昔から言うことやることムチャクチャでさ…。俺が小さい時からほとんど家にいないから、何の仕事してるのか聞いたことあるんだけど…世界中を飛び回って工事現場の交通整理をしてるのさ、って」

…ああ、家光さんなら言いそうだ。そんな風に言っている家光さんの姿が私には簡単に想像出来る。それを聞いて私は「おもしろーい!」ってけらけら笑うだけだったけど、まあツナが尋ねた質問の答えとしては十中八九、嘘だよね。

「世界中…スか?」

「ワ…ワイルドだな…」

「怪しいでしょ…?」

「そ…そんなことは…」

誰が聞いても嘘だとわかる。流石の獄寺と山本も今回はフォロー出来ないようだった。すると山本が私に話を振ってくる。

「ナマエは会ったことあるんだよな?ツナの親父さん」

「あー、うん。私は好きだけどね、家光さん…。面白い人だし、優しいよ。でもまあ、なんというか…豪快っていうか、思い切りのいい人であるかなあ」

ツナはビビりでどちらかというと慎重なタイプだから、まあ真逆ではあるんだろうな。それにあくまで私にとっては幼馴染みのお父さんでしかないのだ。実際に息子であるツナとは距離感が違う。家を留守にしがちな父親…。ツナからすれば色々と思うこともあるのだろう。

「小さいときはわからなかったけど、今考えるとおかしいことばっかりでさ、だいたい2年間一度も帰ってこないなんてあり得ないよ!あんな父親…今更帰ってこられても…。はーっ…」

俯いて、重たい溜め息をつくツナ。憂鬱。多分帰ってくると知ってから、ずーっとモヤモヤしているのだろう。気持ちはわからなくもないけど。

すると、山本がニカッと笑ってひとつ提案してくれた。

「んー…なあ、このまま遊びに行かね?」

「え!?」

ツナは驚いて顔を上げた。ああでも悪くないかもそれ。いつも山本に突っかかる獄寺も今回は素直にそう思ったらしい。

「ナイス野球バカ!そうしましょう、10代目!あんま家庭の事とか考えすぎない方がいいッスよ」

「ご…獄寺くん…」

「俺んちなんか、もっとドロドロのグチャグチャですしね!!」

ぐっと親指を立ててニッと笑いながらそんなことを言い出す獄寺。…良い笑顔で何を言ってるんだ、こいつは。まあビアンキさんとも腹違いだって聞いてるし、多分こいつも色々あるんだろうなぁとは思ってたけど…。

「でも学校…」

「どーせ今日補習だけだろ?ああでも、ナマエは忘れ物取りに行くんだったか?」

「んなもん、取りに行かなくていーだろ別に」

「いやなんで獄寺が決めるんだ。でも、まあうん…いっか。みんなが補習で行くならついでに取りに行こうと思っただけだし。まだ提出先のだから」

今日は日曜日。補習なのはこいつらだけで、私は机の中に忘れた課題を取りに行くことだけが目的だった。山本はそこを気にしてくれて、テキトー獄寺に若干イラッ。でも今言った通り、みんなが学校に行くと聞いたから一緒に取りに行こうかと思っただけで、提出にはまだ猶予がある。ついでに休み中にやっちゃおうかとも考えてたけど…それはまあいいや。

「よし、じゃあ、遊びに行っちゃいます?綱吉くん♪」

「ナマエ…」

私も笑いかけた。こういう時に付き合ってあげられるのが友達だろうしね。

「世の中に日曜ですし、たまには息抜きも必要っス」

「そっか、日曜ならみんな呼ぶか」

「あ、賛成~。呼ぼ呼ぼ」

「アホは呼ぶなよ、アホは」

獄寺や山本と話を進める。他の人も誘おう、どこへ行こう。ツナも自分を気遣ってくれてというのはわかっただろう。その気持ちは嬉しかったようで、憂鬱そうだった表情が少し和らいだのが見えた。

こうして私たちは他のみんなにも連絡を取り、待ち合わせて街に遊びに出かけた。

「…アホ共は呼ぶなって言ったのに」

「誰の事ですか!!?」

「…獄寺」

隣を歩く獄寺が不満げな顔で呟く。聞き逃さなかったハルが振り返り、私は頭を抱える。

合流したのは、リボーン、京子、ハル、ランボ、イーピン、フゥ太。数えるとなかなかの大所帯。ぞろぞろと随分賑やかになった。でもこれが良いんだよね。この中に自分も入っているという感覚が嬉しくて、楽しい。

「おい、ツナ。さぼった分の補習の勉強は帰ったらネッチョリやるからな」

「ネッチョリやだーー!!!」

京子も来てくれて幸せそうにしていたツナは家庭教師の先生に若干現実に引き戻されていた。でもサボリを許してくれている時点で今回は寛大のような気もする。

「ねえねえ、ナマエ姉!僕、ゲームセンター行きたい!」

「あ、いいね、私も行きたい」

「おっ、勝負すっか?」

「負けねーぞコラ!!」

抱き着いてきたフゥ太はゲーセンをご希望の様子。私も賛成して、山本や獄寺も乗り気だ。

その一方、はしゃぎ倒して喉が渇いたと騒ぐランボに付き合いツナは別行動をとることに。でもイーピンを連れて京子もツナを追いかけて行ったから、多分これはツナにとっては思わぬラッキーだろう。それならしばらくはこのままで。

「勝ったぁ~!」

「わぁ~!ナマエ姉強いね!」

「本当やるな、ナマエ!」

「ちくしょう、なんで勝てねぇ…!!」

選んだ対戦ゲーム。獄寺と勝負して見事勝利したのは私。フゥ太と山本が褒めてくれて、悔しそうな獄寺の顔になんだか満足感。ふふん、いい顔だわ。

「よし!獄寺、自販機行くぞ!」

「…チッ」

ぱしぱし獄寺の肩を叩いて私は自販機に向かう。獄寺も舌打ちしながらついてきた。勝負する前、敗者が勝者にジュース1本と決めていた。飲み物を選び、カシャンと出て来たそれを取り出すと私は獄寺を見上げて笑う。

「へへへ、ごちそーさま、獄寺」

「ケッ…次はぜってー俺が勝つからな。覚悟しとけよ」

「お、次も返り討ちにしてやりますよー」

「…てめえ」

おちょくると想像通りの反応してくれるよなあ獄寺。睨まれる。別に怖くないけど。だからまた「ふふっ」と笑えば、獄寺も「へっ…」と小さく笑う。こういう空気、結構好きなんだよなあ…。こくん…と貰った飲み物を飲みながら、そんなことを思う。

しかしそんな穏やかで楽しい時間も唐突に終わりを告げる。

ドカーンッ!!!!!!

「え!?」

「何だ!?」

突然外から聞こえた只事ではない大きな音。建物も揺れたような気がする。というか外ってツナや京子がいるはず!!

「獄寺!山本も!」

「ああ!10代目のとこ行くぞ!」

「おう!」

呼びかければすぐに頷いてくれた獄寺と山本。考えていることは同じだ。私たちは急いで外の様子を見に走った。

「ツナ!京子!」

「10代目ー!!」

「大丈夫かツナ!!」

ゲームセンターの外に出てツナたちを探すと、自販機前の休憩スペースにその姿を見つけた。ツナは倒れこんでいる。そしてその傍には京子と見知らぬ男の子。誰だろう?多分年齢は私たちと近い。彼は倒れたツナの肩に触れ、その体を起こそうとしてくれていた。

「あいたた…」

起き上がったツナは体をさすっていた。倒れていたからびっくりしたけど、どうやら大事はないらしい。

だけど傍まで駆け寄って、気が付いた。ツナと京子の傍にいたこの見知らぬ男の子。その額には、炎が灯り揺らめいている。

額に炎って…これってまさか死ぬ気の炎!?

ただ色は青かった。ツナの時はオレンジ色なのに…。ツナを助けようとしてくれていたから、多分敵とかではない…とは思うんだけど。その頬には血が滲んでる。まるで誰かと戦っていたかのような。そしてそんな彼と私はパチッと目が合った。

「あっ!あなたは…!」

「えっ?」

その瞬間、彼は目を見開いた。えっ…知り合い?どこかで会ったことあったっけ…?まったく心当たりが無くてこちらは困惑する。しかしそれを確かめる暇もなく、今度は上の方から大声が聞こえて来た。

「う゛お゛ぉい!!!なんだぁ?外野がゾロゾロとぉ」

物凄く大きな声。顔を上げると、建物の屋根の上からひとりの男がこちらを見下ろしていた。腰にまで掛かるほどの長い銀色の髪の男。なんで屋根の上に。それによく見ると建物は壊されていて、辺りには瓦礫が散らばっていた。

「邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!!!」

こちらを見下ろしたまま叫んでくる男。たたっ斬るって…。確かにその手にはきらりと長い剣が握られていた。…いや、握ってるんじゃなくて、腕に固定してある?なんにせよ、刃物を持っていることに違いはない。なんで街中でそんな危険人物が…。

全身真っ黒な服に身を包んで、なんだか異様な雰囲気。これって一体どういう状況?何にもわからなくて、私は戸惑ったまま。いや、私だけじゃなく、みんなも同じ。

「嵐の予感だな」

そんな心を代弁するかのように、リボーンは小さく呟いた。

To be continued