届けられたリング
届けられたリング
バジルくん、ロン毛の剣士、そして…ボンゴレリング。
あの騒ぎの翌日である月曜の朝、私はいつもの通りに目を覚ました。欠伸をしながら自室を出ると、こんな朝早くから私にお客さんが来ているという。いや…誰。ていうかまだパジャマなんですけど…。そう思いながら玄関に向かうと、そこにいた人物を見て私の目は覚めた。
「いや~ぁ!ナマエちゃん!久しぶりだなぁ!」
「えっ、い、家光さん!?」
手を上げながら私に笑顔を向けてきたその人は…私の幼馴染みである沢田綱吉の父、沢田家光さんであった。
…え!?いや、ツナから帰ってくるらしいとは聞いていたけど…なぜこんな朝早くからうちに!?とりあえず、ぺこっと頭は下げておく。
「お、お久しぶりです…。ツナから帰ってくるって話は聞いてましたけど…」
「おー!変わらずツナと仲良くしてくれてありがとなぁー!しっかしナマエちゃん、しばらく見ない間に美人さんになっちゃってなあ!こりゃあれだろ、周りの男連中が放っておかないだろ!」
「いえ…全然そんなことは…」
朝からなかなかのテンション。驚きで目は覚めたけど、寝起きには変わりないので寝ぼけた頭にはなかなか響く…。
美人になったって…今寝ぐせ全開のパジャマ姿なんですが…。お世辞とはいえ褒めて貰って悪い気はしないが。そういえば奈々さんも前に似たようなこと言ってくれたから似たもの夫婦なのかもしれない。おふたりは仲が良い。
…というか、家光さんがうちの用があるとすればそれは私の親の方なのではないだろうか。
「あ、私より、父か母…呼んできましょうか?」
「あー、いいんだいいんだ。今日用があるのはナマエちゃんだからな!」
「え…?」
しかし家光さんは私に用があるという。どういうことだ。寝起きで頭が回らん。家光さんが私をわざわざ訪ねてくるような理由なんてある…?
「今日はこれをナマエちゃんに渡しに来たんだ」
「これ?」
そう言って家光さんは小さな何かを私に差し出した。私も手を出すと、それはコロン…と掌の上に転がった。
「指輪…ですか?」
それは細かな装飾の施された美しい指輪だった。石がひとつついている。でも指輪って…なんか昨日の件があったからか、なんとなく印象が悪い。この指輪に罪はないのだけれど。って、それ以前に家光さんが私に指輪渡してくるってどういうこと。これ、なんだ。
「あの…これは?」
「それはなぁ、時期ボンゴレボスファミリーの秘書の証さ!ツナがボスならやっぱり秘書はナマエちゃんしかいないよなぁー!!」
「…へっ」
何を言われてるのか一瞬わからなかった。
時期、ボンゴレボスファミリーの秘書の証…。
ボンゴレ、ボス…!?秘書…え!?は!?この指輪が!?その証!?
ていうかなんで家光さんがそれを私に渡す!?
「え!?あのっ、家光さん!?」
「あー、悪いんだがツナたちにはそれ俺が渡しに来たってことは、とりあえず黙っててもらえるかい?いやー、言う準備は出来てるんだがなかなか上手くいかなくてね~。でもやっぱり自分の口から言うべきなのかねえ…ってなあ。ナマエちゃんどう思う?」
「いやどう思うって言うか…いやそれよりこれって!」
「んじゃ、朝早くから悪かったな!それじゃーまたな!」
「え!?ちょ、家光さんー!?」
ひらっと手を振り、自分の言いたいことだけ言ってうちから出て行ってしまった家光さん。じ、自由すぎます、家光さん…。
そして残されたのは手の中で輝くひとつの指輪。これが…秘書の証?ボンゴレの?じゃあ昨日のボンゴレリングとも何か関係があるってこと?昨日見せてもらった指輪の中にはこんな石がついたものは入ってなかったような気がするけど…。
ていうかなんで家光さんがそんなもの持ってるの…。いや、ツナが初代ボンゴレの血筋だっていうなら家光さんだってそうなわけだし、ボンゴレ関係者でもおかしくないのかもしれないけど。え…もしかして留守にしがちなのってボンゴレ関係だったりするの…?
「……。」
どうしよう。ひとりで考えても仕方ないんだけど…。
相談しようにもうちの家族と言えばボンゴレに対する認識って私と一緒で親戚にマフィア関係の人がいるのは知ってるけどうちはそれ程…って考え方のはず。だからこれも多分聞くだけ無駄だ。そういう家だから私も無関係だって考えてたわけだし。
しかし私が秘書にされそうになっている件については放任主義というか…それを話した時は私の好きにすればいいみたいなスタンスだった。マフィアなのにいいのかそれで…。
まあとにかくうちの家族はダメだ。となると…他に話を聞けそうな人と言えば…。
「リボーンか、ディーノさん…」
そうだ。ディーノさんなら昨日のあの病院にまだいるかも。あそこならディーノさんが手配したわけだし、学校とかと違って人目も気にせず話も出来るはず。それなら学校に行く前にちょっと寄ってみようか。昨日はちゃんと話が聞けなかったけど、ボンゴレリングやあの剣士についても色々聞くべきだと思うし…。
そうと決まれば急げ。
私は急いで支度をして、いつもより早めに家を出た。目指すは昨日の中山外科医院。ディーノさん、いてくれたらいいんだけど。いなくてもバジルくんの容態も気になるし、とりあえず行って損はないよね。
速足で向かい、もうすぐ着くというあたり。そこでちょうどツナと出くわした。
「あれ、ツナ?おはよ」
「ナマエ…おはよ…」
「もしかして…ツナも病院行くの?」
「てことはナマエも?つーか、ねえ、ナマエ!やばいんだよ、この指輪!これ、時期ボンゴレボスの証だとか言われてさ!」
「ああ…やっぱりそういう感じなんだ…。ボンゴレの家宝とかいうから、ちょっとそんな気もしてたんだけど」
私に昨日の指輪を見せながら青白い顔でひいいっと怯えているツナ。ボンゴレリングは時期ボンゴレボスの証。昨日は聞きそびれてしまったけど、わざわざツナに渡すということはそういうことなのかなとなんとなく思っていた。
「そんなの冗談じゃないよ…!だからディーノさんに返そうと思ってさ!」
「ていうかツナ、昨日それ貰わないで逃げてたじゃん。なんで持ってんの?」
「知らないよ!朝起きたら首に掛けられてて!あ~~!もう~~!誰だよこんなの首に掛けたやつ~~!!リボーンじゃないって言うしさあ…!!」
「……。」
リボーンじゃないのなら、それは君のお父さんでは…。私の頭にはそんな予想が浮かんだ。でも家光さんにとりあえずツナには黙っててって言われたしなあ…。
「ナマエは?どうして病院に?制服着てるなら学校行くんだよな?」
「ああ…うん、行く前にちょっと寄ろうかと思って。昨日の事やっぱ気になるし、それにほら、バジルくん、どうかなって」
「ああ…」
バジルくんの名前を出すと、ツナの顔色も少し変わった。自分たちを庇って戦ってくれたのだから当然だろう。それを言うなら獄寺や山本もだけど…。ふたりは学校で会えるかな。そんなことを考えがら私たちは病院の入口へ向かう。
「ディーノさん、いますか?」
ツナがゆっくり扉を開き、私もその後ろから中を覗く。すると扉を開けてすぐのロビー部分にふたりの人物が待っていた。
「よお、ツナ!ナマエ!」
「10代目!!おはよーございます!!…と、ナマエもいんのかよ」
「ふたりとも!!」
「おはよ、山本…と、獄寺はなんか文句でもあるのか」
病院にいた獄寺と山本。山本は普通に挨拶してくれたけど獄寺は何なの。いんのかよって何だ。いたら悪いかこの野郎。じと~っとちょっと睨んでおく。獄寺は「へっ」て何食わぬ顔してたけど。でもその時…気が付いた。獄寺の額に小さな傷があったこと。多分…昨日の、戦った時の傷。
「昨日はごめん!助けてもらったのに…」
「あ…いや…」
「……。」
「……。」
ツナは昨日、リボーンに引っ張られてふたりを置いて帰ることになってしまった件を謝った。獄寺は何か返そうとしたけど結局上手い言葉が見つからず、山本も気まずそうなまま。私も言葉を探したけど何と言ったらいいかわからなくて、結局は黙ってた。
なんとなくその場に気まずい空気が流れる。すると山本が話を変えてくれた。
「んなことより、妙なことがあってさ」
「そーなんスよ!」
「「?」」
山本が出した話題に珍しく獄寺も乗っかった。どうやらふたりして同じ話があるらしい。妙なこととは一体。私やツナが首を傾げると、ふたりはそれぞれポケットから小さな何かを取り出して見せた。
「ポストにこんなもんが入っててさ」
「もしかして昨日の奴絡みかと思いまして。跳ね馬にここの場所は聞いてたんで」
ふたりが取り出したのは指輪だった。それを見て私とツナはピンとくる。それは紛れもなく、昨日見せてもらったあの指輪と同じものだった。
「それって…」
「ああ~~!!そのリングってまさか~~!!」
「なんだツナ、ナマエ、知ってたのかコレ」
「やっぱ10代目も持ってるんですね!」
「やばいって!!それ持ってると狙われるんだよ!つーか何で!?何で獄寺くんと山本にも…!?」
慌てふためくツナ。いやまあ気持ちはわかるけど…。ふたりの指輪を見て私も疑問が増えた。
そういえばボンゴレリングってひとつじゃなかった。後継者の証だってツナは言ってたけど、それならどうして何個もあるんだろう?それに獄寺と山本が持ってる意味…。これも、家光さんが渡したってこと?でもポストに入ってたって言ってたから、私みたく直接渡されたわけではなさそうだ。
「選ばれたからだぞ」
するとどこからか声がした。はっと振り向けば、そこにいたのはリボーンとディーノさん。今の声もリボーン。リボーンは私たちにその詳細を説明し出す。
「ボンゴレリングは全部で7つあるんだ。そして7人のファミリーが持って、はじめて意味を持つもんだからな。それからもうひとつ、秘書にも別のリングがひとつ与えられる」
ぴくっと反応してしまった。ボンゴレリングは7人のファミリーが持って初めて意味を持つ。そして、それとは別にもうひとつ秘書にも与えられるリングがある。私はポケットに手を入れ、忍ばせていたそれにそっと触れた。
この話はツナも聞かされていなかったらしい。顔を見るとその動揺がよく見て取れる。リボーンはツナの目を見て言った。
「お前以外の6つのリングと、もうひとつのリングは…時期ボンゴレボス沢田綱吉を守護するにふさわしい6名と、それを支える秘書に届けられたぞ」
To be continued