不覚にも
不覚にも
(※獄寺視点)
姉貴と再会して、久しぶりに喰らったトラウマ。
ナマエに飲み物を貰って休んでいた並盛神社の境内。気分もだいぶ落ち着いた。日も暮れはじめ、そろそろ帰るかという話になった。
「気分、落ち着いた?日も落ちそうだし、そろそろ帰る?」
「ああ…だいぶ楽になった。お前、家どこだ?」
「ん?」
「…一応、送ってやる」
木に寄りかかっていた背を離しながら、俺はナマエにそう言った。
まあ、一応、こいつも女だしな。今回は飲み物を買ってきて貰ったり、感謝してないこともねえ。
しかしそんな俺の言葉を聞いたナマエは心底不思議そうな顔をした。
「え?それむしろこっちの台詞では?」
「……。」
病人はお前だろう。むしろ付き添うならこちらだ。
そう言いたげな顔をされ、言葉に詰まる。
「~~っ、うるせえ!いいから行くぞ!」
「え」
俺は返事を誤魔化し、先に神社の外に向かって歩き出した。そうすればナマエも合わせてついてくる。…が、胸にはモゾモゾとした感覚が残ったまま。
カッコつけそびれたじゃねぇかよ…!!
大人しく送られとけこの女…!!
理不尽な怒りであろう自覚はあるが、同時に抱いてしまったダセェ…というもうひとつの自覚を何とか早く消し去りたい。
意地になっているような気もするが、でも、送ってやりたいと思ったことも嘘ではなかった。
「んで、どっちだよ」
「いいのに。あっち。ツナの家と近いよ。幼馴染みだし」
「10代目の家の方か…」
ナマエは10代目の幼馴染み。ボンゴレ10代目の秘書となる女。だがしかし、いつも私は秘書じゃないとかふざけた事抜かしている。しっかりと自覚を持てっつーんだよ。俺は10代目の右腕になる。右腕と秘書。俺たちふたりがしっかりしていれば、10代目も安泰だからな。
「ねえ、ビアンキさん美人だったよね」
「ああ?知らねーよ。つか、どーでもいい。…血も、半分しか繋がってねーしな」
「あー、それはさっきちょこっとだけ」
「さっさとこの町から出て行ってくれることを願うばかりだぜ…」
「ははは…ポインズクッキングねえ。ちょーっとどんなんか興味はあるけど」
「食うんじゃねーぞ。死ぬぞ」
「うん、食うつもりはない」
歩きながらも適当に話す。
言い返してくるし、わりと物怖じしねーし、何かと言い争うことも多い。…けど、こうしている時間は、嫌いじゃねえ…気がする。
ナマエといること。話すこと。
それは…なんとなく、居心地は悪くないというか…。
多分、誰とでもそれなりに上手くやれる奴なのだろうとは思う。
でも、その中でもよく話す方…だよな?俺。例えばあの野球バカ。あいつより俺の方がよく話すって言ってたしな。………いや、だから何だというのか。最近、自分の思考がよくわからない。どうでもいいだろ、そんなの。
自分でそう思う。何考えてんだ。バカだろって。だけど、どうにも胸の中がもやもやする。
ダイナマイトの仕入れで少し留守にしていた間に、山本のヤローはナマエの事を下の名前で呼んでいた。それを見た時、何故だか面白くないと思った。
だけどその後、俺の方がよく話すとナマエに言われて…なんとなく優越感を覚えた。
「あ、そこだよ。うち」
「ミョウジ…ここか」
しばらく歩き、ナマエが指をさす。表札の文字を見て、確かにその苗字が書かれていた。言っていた通り、10代目の家と近い場所だった。
「ほーんと、無駄な遠回りしちゃって」
「てめっ…」
玄関に歩いていくナマエ。その口からは余計な一言。
っとに、可愛げねーな!こいつ!…しかし、そう思うと同時に。
ナマエは扉の前で、くるりと振り返る。
「へへ、獄寺、ありがと」
最後にそう笑った顔は、不覚にも可愛いと思った。
To be continued