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英一の腕の中でうとうとしていると、俺のスマホが鳴った。電話だ。 確認すると、ディスプレイに元義母である蔵乃の名前が表示されている。 隣の英一にも画面が見えたようで、顔をしかめていた。 仕方なくベッドから出る。英一に気を使わせたくなくて、リビングに向かおうとする。「無視しちゃいなよ」「そういうわけには……いかないんです」「じゃあ、ここで出て。廊下は寒いし」 振り返ると、英一が布団をぽんぽんと叩いて俺を呼び戻そうとしていた。「……わかりました」 一人で対応するのが心細かったのは事実だ。 ベッドのふちに腰掛け、未だ鳴り続けるスマホの画面に触れる。『お元気?』「射場さん、ご無沙汰しています」『なかなかそちらからは連絡してくれないのね。さみしいわ。忙しいのかしら?』「そ、……うですね。こちらにも……家庭があるので……」 少し強気に出る。 そばに英一がいると思えば声を絞り出せた。『あら。あなた、再婚して変わったわね。お金持ちになると礼節を忘れるのかしら。かわいそうに、そんなことでは幸日と同じところへは行けないわよ』「……やめてください。き……傷付くんです。そういうふうに言われると」『私のほうがもっと傷付いてるわよ。ずうずうしいわね』「……すみません、ご用件は何でしたか」『いつもそれね。心配してあげてるのよ。あーあ、損した。いいわ、もう電話してこないでちょうだい』 かけてくるのはそっちじゃないか。ぐっとこらえていると、向こうからガチャッと切られた。 金の無心をするつもりでかけたが、癇癪のままに切ってしまったに違いない。目的を果たしていないから、あんな口ぶりでもまたかかってくるだろう。 今日の楽しい思いはどこへやら。途端に憂鬱だ。英一にも申し訳ない。「大丈夫だよ。気を取り直して寝てしまおう」 布団の中へいざなわれ、英一の腕の中に収まる。 ……彼に守られて感じることが、頼もしさだけなら良かったのに。