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運命じゃないけれど。 — fujossy.jp · All chapters

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通話が切れてすぐ、メッセージアプリに画像が送られてきた。週刊誌の一ページを撮ったものらしい。 記事の写真が真っ先に目に入って、血の気が引いた。──モノクロ写真に映っているのはどう見ても俺と英一だ。顔にモザイクがあっても、服装や体型でわかる。背景も紫環崎の住宅地。朝の散歩を盗撮されている。 記事の文章を拡大して読む。[ 財産を奪われた──後妻業のオメガは実在する!?70代の母、斉藤米さん(仮)の息子は30代で夭折した。財産がほとんど残されていないことに気付いた米さんは、初めて嫁を怪しんだという。息子の結婚生活はおかしなものだった。嫁と共に遠くへ移り住んだ息子はみるみる弱って寝たきりになった。電話の取り次ぎも嫁は許してくれず、治療のため実家に戻ることも拒否。それでも米さんは信じていた。まさかオメガが家庭内DVをする可能性なんて普通は考えない。息子からのSOSに気付けなかったと後悔したのは最期のときだった。息子は嫁の手を振り払い、悲しみの表情で事切れたのだ。そして今年、息子を養分にした嫁が次のステップへ進んだことを知った。籍を抜いて再婚するという連絡によって。再婚相手は超高級住宅地に豪邸を構えるアルファだった。歳の差はなんと15歳。米さんの頭によぎる「後妻業」の文字。思えば、息子とも身体が弱いから結婚したのかもしれない。家政婦から 男妻 ( つま ) へ一年ほどでのスピード昇格。コツは「ご奉仕」だろうか。その手首には早くも高級時計が輝いており、服装もブランド品ばかり。どうやらさまざまなお高い買い物を楽しんでいる。良妻の皮を被った毒蜘蛛オメガに騙されたアルファの親として、米さんは豪邸持ちの彼が第二の餌食となってしまうのではないかと心配している。予想されるその遺産総額は…… ]「……なんだ、これ」 名前は伏せられているが、明らかに俺や幸日、英一のことが書かれている。『70代の母』とは元義母である蔵乃としか思えなかった。 蔵乃が俺たちを売ったのか? なぜ、こんな残酷なことができる? どうしようもなく気持ち悪く感じて、吐き気をこらえる。 週刊誌も週刊誌だ。こんな根も葉もない記事を載せるなんて。よっぽどネタがなくて困っていたのか。 篠は俺以外には連絡していないと言っていた。だが、彼が言わなくても、誰かが気付いて英一に連絡するかもしれない。 こんな記事を読んだら、英一はなんて思うだろう。 今から彼女に苦情を言っても、誰に助けを求めても、いったん世に出てしまったあの記事は消えない。 憂鬱だ。 動く気力も萎えて洗濯物の中で横たわっていた。 そのうちにまぶたが重くなってくる。 現実から逃げるように、眠りに落ちた。   ■ ふわりと意識が眠りから覚めた。目を閉じたまままどろんでいると、声が聞こえる。「こんなに気持ち良さそうに寝てるのに、起こすのかい?」「だって、伝えないと。てか 義親 ( おや ) の《巣作り》見ちゃうの複雑な気持ちになるから、早く起こして。……父さんも嬉しそうにしてないで!」 英一とナツメの声だった。どうして二人が家に? ……いま何時だ?