LNCrawler

エルフの里②

蜘蛛ですが、なにか? — ncode.syosetu.com · All chapters

エルフの里②

思ったより長引きそうなので、前話のタイトルを変更しました

翌日、俺とカティアは先生に引き連れられて、エルフの里のとある場所に向かっていた。

本当なら今の状態でアナと離れるのは良くないんだけど、ハイリンスさんが「任せろ」と言ってくれたので、その厚意に甘えることにした。

できれば、これから向かう場所には、俺とカティアだけで行きたかった。

今向かっているのは、転生者を保護している場所だった。

同じような木々が生い茂るせいで、代わり映えのしないような景色が続く。

「随分歩くんですね」

「ええ。エルフの里は広いですからね。このガラム大森林と呼ばれる森の中央付近、広さ的には東京23区と同じくらいの広さがありますから」

「そんなに!?」

「はい。もっとも、農業区なんかもあるので、人口密度はそんなに高くありませんけどね」

「里というよりも、国ですね」

「ですです。ここは大森林という自然の要塞と、結界という二重の守りで長い間難攻不落を誇ってきました。エルフがちょっと排他的なことを除けば、世界で一番安全で過ごしやすい場所だと思います。思っていました」

先生がため息を吐く。

「結界が本当に破壊されれば、その安全も保証できなくなります。結界の外周から里までは距離があるので、結界が壊れる、即、里の危機というわけではありませんが、厳しい戦いになるでしょう」

「先生は、結界が壊れると思っているんですか?」

「可能性の話です。今まで1度も壊れたことがないからといって、これからも壊れないとは言い切れません。過信は禁物です」

「結界、壊れたことないんですね。ちなみに、どれくら前から結界は張られているんですか?」

「わかりません。ポティマス以外の最年長のエルフでも、生まれた時にはもう結界はあったと言っていましたね」

「ちなみに、その方の年齢は?」

「480くらいだったと思います」

「スケールが違いますわね」

そう話しているうちに、目的地に到着した。

小さな畑と家畜の囲い、そこで畑を耕し、家畜の世話をする人たち。

そのうちの1人が、俺たちに気づく。

「先生、お帰り」

「はい、ただ今戻りました」

素っ気ない挨拶。

心なしか先生の表情も硬い。

近寄ってきたのは1人の少女だった。

歳は多分俺と同じ。

それは、彼女の話す言葉が、日本語であることからもわかる。

彼女は転生者だ。

「それで? そっちの2人は新しい犠牲者ですか?」

「犠牲者じゃありません」

「それは意識の違いでしょうね。少なくとも私はあなたのことを加害者だと思っていますけど? まあ、いいです。それで、あなたたちの名前は? ああ、今の名前じゃなくて、昔の名前ね」

険悪な雰囲気のまま、少女はこちらに視線を向ける。

「俺は、山田俊輔」

「大島叶多だ」

「え? 大島君?」

「そうだよ」

「うわ」

「なんだよそのリアクション。そういうそっちは誰なんだよ?」

「私は 工藤沙智 ( クドウサチ ) 。まあ、拉致られた者同士、仲良くしましょ」

工藤沙智。

クラスの委員長をしていた女子だ。

そこまで仲は良くなかったけど、ハッキリものを言う性格で敵も多かったけど、味方も多い子だった。

その性格もあって、ユーゴーとは何度かぶつかっていたりもした。

けど、俺が気になるのはさっきから工藤さんの先生に対する態度と、不穏な単語の数々だ。

工藤は委員長という立場上、先生と触れ合う機会も多く、仲はそれなりに良かったはずだ。

それが、まるで親の敵を見るかのような目で睨みつけている。

理由は、彼女の口から出た拉致という単語だろう。

「先生、拉致ってどういうことですか?」

「山田君たちは先生に拉致されてきたんじゃないの?」

「俺たちは夏目を止めにここまで来たんだ」

「夏目君? あいつもいるの?」

工藤さんが眉をひそめる。

その様子に、俺の方も眉をひそめた。

この様子だと、工藤さんはユーゴーがエルフの里に攻め込んできていることを知らない?

どういうことかと先生を見る。

先生は無言で首を横に振った。

余計なことは言うなと、そういうことか?

「工藤さん、夏目は今軍隊を率いてここに攻め込もうとしてんだよ」

「は?」

カティアが真実を告げる。

先生の視線を無視して。

「先生、ごめん。やっぱここのこんな状態見たあとじゃ、俺は先生のこと信用できねーよ」

腕を組み、ため息混じりにそうこぼすカティア。

「工藤さんの話聞く限り、ここにいる連中って拉致同然に連れてこられたってことだろ? しかも、連れてきたあとは自活しろって感じでほっぽって」

「違います!」

「違わないわよ。私はまだ幼い時にこっちの世界の両親と引き離されてここに連れてこられたし、他のみんなもだいたいそんな感じ」

「だってよ? しかも、情報もろくに行き渡らないように隔離してたんだろ?」

「そうね。ここでの生活はほぼ自給自足。足りない分は頼めばエルフが持ってきてくれるけど、それも最低限だけ。朝起きて畑耕して収穫して、家畜の世話して、料理して食べる。それで1日終わり。エルフの監視もあるから脱走もできないし、エルフは余計なことは話さないから外のことなんか何もわからない」

「違、自給自足は自活力を養うためで!」

「ここから出られもしないのに? こんな飼い殺しの状態で自活力なんて必要あるの?」

「それは」

先生が言い淀む。

その様子を、作業の手を止めてみんなが見ていた。

「山田君と大島君はこっちに来て。いろいろ聞きたいから」

沈黙する先生を置き去りにして、工藤さんが歩き始める。

カティアはそれに迷わず付いていく。

俺も、1度先生をチラッと見て、直ぐにその背中を追った。

先生は泣き出しそうな顔で俯いていた。