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血22 魔族って……

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血22 魔族って……

本日2話目

魔族領入りを果たした。

それはもう、あっさりと。

もちろんバカ正直に真正面から国境を通過したわけじゃない。

魔族領は帝国と接しており、帝国の砦が各所に並べられており、人が通行できる場所ではない。

人族領から魔族領に入るには、人口の砦を避けて、普通は通行ができないような自然という天然の要塞を通過する必要がある。

私たちが通過したのは、魔の山脈と呼ばれる険しい山脈だった。

雲よりもはるかに高い位置に山頂があるような山々である。

それをちょっとそこまでハイキングに行くくらいの軽いノリで踏破しようとするのはやめて欲しい。

いや、本当に。

途中、廃棄されて数年経ったと思われる村の残骸で野宿をしたり、山の主的な龍がやってきてアリエルさんが交渉したり、変な猿を相手に珍しくアリエルさんもご主人様も逃げの一手を選んだり。

そんなハプニング満載の魔の山脈を越えると、そこはもう魔族領だった。

正直、道中が過酷すぎてあんまり実感がない。

加えて言えば、見える景色が人族領とさほど変わっていないのも、拍子抜けした理由かもしれない。

だって、魔族領なんて言われると、どうしても年中厚い雲に覆われていて、草木も生えないおどろおどろしい雰囲気の、地獄のような光景を想像しちゃって。

実際には空は青いし、草木は緑色に生い茂っているし、空気は澄み渡っている。

人族領とさして変わらない雄大な自然の景色。

これなら魔の山脈の方がよっぽど魔境だったわ。

魔族領にも人族領のように、人族の侵入を防ぐための砦があるそうだ。

魔族の砦と、人族の砦との間の空白地帯は、度々戦場になっていて、ある意味世界で最も危険なエリアなのだとか。

不審人物が歩いていると、それだけで襲われて、しかもその戦闘が戦争レベルにまで発展するなんて、日常茶飯事だそうだ。

それを聞いたご主人様が鼻白んでいたけど。

ご主人様はエルロー大迷宮のほうが危険だとでも思っていそう。

実際ご主人様の過去バナを聞いていると、そっちのほうが危険に思えてくるのだから仕方がない。

鑑定を覚えてから、アリエルさんに止められていたので今まで他人に対して鑑定を使用したことはないけれど、ご主人様やアリエルさんの話を聞く限り、人族のステータスは高くても1000に届くかどうかというところ。

その数倍のステータスの魔物が跋扈しているような迷宮のほうが、危険に思えてしまうのも頷けるというもの。

実際にどっちが危険かは、実戦経験もないし、どっちも見たことがない私には判断がつかない。

魔の山脈を超えて来た私たちの現在位置は、魔族領の砦の先にもう出ているそうで、そんな危険地帯を通ることはない。

ご主人様なら突撃しかねないとか思っていたけれど、そんな様子もないので一安心。

まあ、そんな危険地帯は通らなくても、道なき道を行くことになるんだけどね!

人族領でも魔族領でも景色が変わらない最大の理由は、DIE自然の中に埋もれながら進んでいるからだと思うの。

ちっぽけな人間の視野では、大いなる自然の姿は似たように見えてしまうのね。

実際アリエルさんとご主人様が迷わず突き進んでくれているから、そのあとを追っかけるだけで迷わずに済んでいるけど、私とメラゾフィスの2人だけでこの自然の中を突っ切れと言われると、迷わずに進める自信がない。

千里眼とか空間起動を併用して現在位置と目的地を常に確認しながらじゃないと、すぐに迷いそうだわ。

それに、迷わなくても、アリエルさんがいなくなると魔物も寄ってくるだろうし。

今はアリエルさんの威圧で寄ってこない野生の魔物だけど、当然アリエルさんがいなくなればその効果はなくなる。

そして寄ってきた魔物を私とメラゾフィスの2人で捌けるかと言われると、あんまり自信がない。

魔物はご主人様でさえ死の危険を伴う相手。

ご主人様に手も足も出ない、あ、いや、手も足も食われるような私じゃ、魔物と戦っても勝てない。

まあ、ご主人様が苦戦するような上位の魔物がそう頻繁にいるとも思えないし、雑魚くらいなら私にもどうにかできるかもしれないけど。

けど、今まで見てきた魔物って、どれもこれもステータスが高いのよね。

鑑定する前にアリエルさんが倒しちゃうこともあるから、全部を把握してるわけじゃないけど、私よりも強いのばっかり。

この世界の魔物ってバランス悪いくらい強いわよね。

よく人族は魔物に滅ぼされないなって感心するわ。

魔族はどうなんだろう?

これから魔族の街にも入ることになるわけだけど、人族よりも強いっていうのはどの程度なのかしら?

魔族って言うからにはやっぱり悪魔っぽい外見なのかな?

翼とか生えてたりして。

それで肌は青くて、牙が私たち吸血鬼並みに長かったり。

見るのが怖い反面、ちょっと好奇心があるわ。

そうして魔族の姿を妄想しながら、旅は順調に進んだ。

周りの景色が人の手が加えられていない大自然から、畑のそれへと変わる。

ちゃんとした道があり、その上を進む。

ああ、何度経験しても道っていいわ。

歩くだけでHPが減るようなDIE自然じゃないって素晴らしい。

畑の収穫をする人々が目に映る。

あら?

人?

「アリエルさん、人族がいるのですけど、ここってもう魔族領なんですよね?」

あれかしら?

戦争で捕まえた人族を奴隷として農作業に従事させているとか。

「ん?人族?」

アリエルさんは一瞬私の言っている言葉の意味がわからない、という顔をしてから、周りを見渡し、そこで合点がいったという顔になった。

「ああ。そっかそっか。転生者には魔族って、言葉の感じ的に悪魔っぽい外見とか想像するものなのか。なるほどなるほどー」

1人で納得するアリエルさん。

あの、そろそろ解説が欲しいんですが?

「あそこにいるのは全部魔族だよ」

アリエルさんが畑で作業をする人々を指さしながら言う。

え?

けど、どう見ても人族にしか見えないけれど。

「人族も魔族も、外見だけじゃ判断ができない。なんせ姿形は全く同じだからね」

え、ええー。

なにそれ?

なんだかすごいガッカリだわ。

これじゃ、本当に人族領と変わらないじゃない。

人族も魔族も、大差ないじゃない。

たまにやってくる魔物=魔王様の威圧を突破してきた猛者