245 とりあえず正座
245 とりあえず正座
いつからだ?
いつから今日の投稿が一つだけだと錯覚していた?
おイタをした子には正座。
これ日本人なら誰でも知ってる常識。
え?
違う?
異論は認めない。
ちなみに私は生まれてこのかた正座をしたことがないということに今気づいた。
今度日本に転移して、お茶入れながら正座してみよう。
ワビサビ!
というわけで、現在妹ちゃんは正座中です。
後ろ手に糸で手を縛って、足も縛って無理矢理正座させ、その足の上に適当な石を乗せてるけど。
これぞ、オシオキ!
妹ちゃんは泣きそう、ていうか泣いてる。
そりゃ、仮にも王族なんだから、こんな目にあったことはなかろうよ。
初めてーのー 重 ( じゅう ) ー。
いい感じに足がビリビリいってるだろうし、チョンチョンとつついてみる。
ビクン、ビクン!
やばい、面白い。
何これ、新手の玩具?
つつくと喘ぐ、原寸大妹型フィギュア。
お値段プライスレス。
やばい、買いが殺到しそうだわ。
今私たちがいるのは、私が作り上げた異空間。
ここならどれだけ騒がしくしても誰も来ない。
夏目くんの部屋だと、そのうち騒ぎを聞きつけて誰か来そうだったしね。
ここでならじっくりとOHANASHIができるってもんよ。
黒を封印した異空間ほどじゃないけど、時間の流れも現世と変えてるし。
アーグナーに説明するのに半日も要したこの私のコミュ力の低さを甘く見てはならない。
絶対時間かかる。
というわけで、現在私ができる最大の時間操作を施しております。
これで、逆浦島太郎状態。
さあ、妹ちゃん、思う存分足の痺れを堪能してくれたまえ!
あ、違った。
趣旨はそっちじゃない。
「ひっく! うぅ、あなた、ふぅ、なんなの?」
泣きながら、呻きながら聞いてくる妹ちゃん。
蜘蛛ですが、なにか?
うん。
そういうこと聞きたいんじゃないよね。
んー。
どう答えようか?
「邪神」
我こそは邪神なり。
あながち間違ってないし、嘘は言ってない。
我ながらやってることはまんま邪神だし。
世界滅ぼそうとする神、人、それを邪神と呼ぶ!
あのDと同じ肩書きを名乗るのは無性に嫌な感じだけど。
魔王って名乗っても良かったんだけど、どっかからバレてこの子の兄を引き寄せても困るし。
山田くんじゃない方の兄ね。
その中の勇者。
別に殺すのは簡単だけど、今殺すのはいろいろまずい。
この件に関しては慎重に進めないと、私の計画が根元から崩れる可能性すらある。
あくまで可能性の話で、その確率は相当低いけど。
それでも、0%じゃない限り、危ない橋を渡るべきじゃない。
石橋は叩いて渡らないと。
勢い余って石橋を叩き割らないようにしながらね。
「邪神っ!」
妹ちゃんが息を飲むのがわかった。
あ、そういえば、この世界には邪神と呼ばれてるのは一柱だけか。
昔々、人々を戦いに駆り立てた邪神がいた。
邪神の瘴気に当てられた人々は、隣人同士で殺し合いを続けていた。
人々は女神の呼びかけによって正気を取り戻し、その邪神を一致団結して滅ぼした。
人々は女神の加護の下、平和を取り戻したのだ。
めでたしめでたし。
下らない昔ばなし。
下らなすぎて反吐が出る。
人々を戦いに駆り立てる邪神。
私にピッタリじゃん。
さしずめ、私は神話の時代から蘇った、古の邪神ってところかな?
いもしなかったその邪神の役を、私が引き継ぐ。
皮肉が効いてていいかもね。
妹ちゃんは妙に納得した様子。
て、納得しちゃうんかい。
そうかー。
私、邪神認定されちゃうかー。
イタい人を見る目で見られるのと、どっちがマシだったかなー?
とりあえず脅しはこれくらいで十分かな。
本題に入ろう。
「あれ、殺すの、ダメ」
やばい、夏目くんのこっちでの名前忘れた。
というか、私って人の顔と名前が覚えられないタイプだったわ。
転生者だったらわかるんだけどねー。
若葉姫色としての記憶があるおかげで。
でも、こっちの人間とか、転生者のこっちでの名前とかはいちいち覚えてないわ。
よっぽど印象にでも残ってなければ。
その理論から言うと、この妹ちゃんはかなり印象に残ってるってことか。
まあ、ねえ?
「なぜ? ひぅ! 邪神である、あなたが、ぅぅ、あの男を?」
ええーと、要約すると、なんで私が夏目くんを庇うんだと、そういうことかな?
いちいち色っぽい声出さなくていいから。
あんまやってると、お姉さん新しい扉開いちゃうよ?
イヤ、ないけど。
「あれはまだ使える」
用途は教えません。
そんでもって、使い捨てであることも教えない。
教えたらなんか変な期待を持ちそうで怖い。
「あなたは、っ、戦乱を起こすの?」
首肯。
ん?
妹ちゃんが複雑そうな顔をしている?
んー。
攻略の糸口か?
思い出せ、この子のキャラを。
どうやれば釣れるのか。
今、何を考えてこんな顔をしてるのか。
考えろー。
考えるまでもなくね?
私の中でのこのこのイメージって、兄様ラブ! しかないんだけど。
しかも異常な程の。
この顔はあれだ。
戦争起これば敬愛するウルトラパーフェクトな兄様が大活躍して一躍時の人となり、世界の頂点に君臨する手助けになる。
ああ、けど、目の前の邪神にはさすがの兄様でも敵わないんじゃないか?
だとしたら、兄様が危ない!
兄様ほどの偉人オーラを放っている人をこの邪神が放っておくはずがない!
きっとこの邪神は兄様が力をつけることを恐れて今のうちに殺してしまおうと画策してるに違いない!
けど、兄様なら! 兄様ならきっと邪神にも勝てる!
そのためには、今この邪神に兄様へ手出しさせるわけにはいかない。
兄様、私兄様のために時間を稼ぎます!
…………うん、こんな感じじゃないかなー。
さっきまでの悲壮感が嘘みたいに消えて、キッと私を睨みつけている感じが、ものすごく私のイメージ通りに思考が変遷してったのを物語ってるように見える。
あくまで私のイメージをもとに心の声を代弁したものだけど、当たらずとも遠からずな気がする。
なら、悪魔の囁き、ならぬ、邪神の囁き。
「お兄さん、見逃してあげようか?」
今晩はこれで最後です