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第9話 クロエとお話

転生七女ではじめる異世界ライフ 〜万能魔力があれば貴族社会も余裕で生きられると聞いたのですが?!〜 — kakuyomu.jp · All chapters

第9話 クロエとお話

服飾店CEREUに行った夜、夕食を食べながらミーリアはクロエに報告をしていた。

「――という感じでね、領地のブランドを作ることになったよ」

「ああ、ミーリアを自由にさせると半日で一商会レベルの商談が進むのね」

クロエが持っていたフォークを丁寧に置いて、手を頭に添えた。

「大丈夫だよ。お金も金貨千枚渡してきただけだし、最初は私たちで着れればいいからさ」

金貨千枚――日本円換算で一億円である。

「一着金貨三枚で、それを三百着。あとはロビンの迷惑料も込めて多めに渡しておいたよ」

しっかり計算ができているのであまり咎める余地はない。

最近はクロエ、アリア、ジャスミンに準備金を渡していることもあって、ミーリアの金銭感覚が麻痺してきていた。

「でも服のブランド化は悪くないわね。どのみち洋服店を誘致するなら、こちら主導でやってしまったほうがいいわ」

「ちなみにブランド名は“ドラゴミリア”になったよ。不服ながらね……」

「ドラゴンスレイヤーとミーリアをかけたのね。素晴らしいわ」

渋い顔をするミーリアだが、クロエは満面の笑みを作った。

「もし販売することになったらお姉ちゃんの商会でやるって言ってきたけど大丈夫そう?」

ほぼクロエに丸投げなので、心配になってくる。

「ええ、問題ないわ。新しい収入源になる可能性を秘めているから、積極的に展開していきましょう」

「よかった……。もうお姉ちゃんがいないと生きていけないよ」

ミーリアがウサちゃん学院長にもらった粉末唐辛子をパスタにかけながら、息を吐いた。

「ええ、ええ、お姉ちゃんもあなたがいないと生きていけないから同じ考えだったわね素晴らしいわ素敵だわ」

早口に言って何度もうなずくクロエ。

どれだけ有能でもミーリア好きの一面は変わっていない。

「うーん、ピリ辛で美味しいっ」

パスタを食べるミーリアが首を振った。

もらった粉末唐辛子はほどほどの刺激でパスタに割と合う。

美味しそうにパスタを頬張るミーリアを見てクロエが微笑み、そういえばと、何度かまばたきをした。

「ミーリアが言っていた和食について、ジャスミン姉さまが頑張っているわよ」

「嬉しい!」

ミーリアは立ち上がらんばかりの勢いで声を上げる。

「和食文化を広げて……領地で和食を食べられるようにするんだ……うぇへへ……」

フォーク片手に寿司、すき焼き、しゃぶしゃぶ、カツ丼、天ぷらそばなどを思い浮かべて、だらしない顔を作る。

「和食が食べられるようになれば、焼き肉食べ放題も夢じゃないよね。焼き肉店が最終形態といえる……うむ……」

さらに妄想を膨らませ、タレをたっぷりつけたカルビを白米と一緒に口へかきこむ想像をして、思わずよだれが出そうになった。

「コメという食べ物についてはダレリアス家の人間が調査を始めたわ。料理に特化した家だから、こちらでどうこうせず報告を待つほうがいいでしょうね」

「お米……やっぱり簡単には見つからないか……うーん……」

「ミーリアが夢で見た食べ物でしょう? お姉ちゃんは存在していると信じるわ」

「何の根拠もないことを信じてくれてありがとう。クロエお姉ちゃん、好き」

米の存在については「夢で見た」と言っている。

クロエは何も言わずに信じて協力してくれるので、本当にありがたかった。

にかりと笑ってみせたミーリアを見て、クロエが頬をさっと赤くした。

「ええ、ええ、お姉ちゃんにすべてまかせないさい。それにミーリアが本気で思っていることなら何だって協力するんだからだってそれが家族でしょう? あとお姉ちゃんもこの胸が張り裂けて光となって消滅してしまうくらいに大好きだからそこのところは忘れないでね」

「忘れないよ〜!」

「ふふっ」

互いに笑い合う姉妹。

しばらく食事を楽しみつつ、ジャスミンの話になった。

「ジャスミン姉さま、かなりダレリアス家に溶け込んでいるみたいだね」

ミーリアが聞くと、クロエが苦笑した。

「ほら、婚約者さまが姉さまにべた惚れみたいでね。大変に仲睦まじいそうよ」

「結婚式はいつ挙げるのかな?」

「アトウッド新領地へ行くまでには挙げるそうよ。結婚式用のドレスを発注しておかないとね」

クロエがデザートのアップルを食べ、にこやかに笑う。

ジャスミンは未来の旦那と一緒に、ダレリアス家の和食関係の本部をアトウッド新領地に置くつもりらしい。もっとも、クロエの勧めもあってのことだが。

「楽しみだね〜」

「そうねぇ。ダレリアス家は出世株だから来訪者も多いでしょうね」

「私の養子のジャスミン姉さまが婚約者になったから?」

さすがのミーリアでも自分の影響力は理解している。

他の貴族たちは、ドラゴンスレイヤーと親戚になるダレリアス家にもたらされる経済効果は大きいと考えているようだ。

「そのとおりよ」

クロエがうなずいた。

その後、ジャスミンと婚約者の話で盛り上がり、食事が終わった。

メイドたちが料理を下げてくれたので、二人で談話室に移動する。

話題はクロエの商会に移った。

「お姉ちゃん、商会はどうなりそう?」

「商会に関しては問題ないわ。新領地の商品を一手に引き受ける予定よ。他領地との取引は特産品ができるまでしばらくラベンダー売りの商会になりそうだけどね」

「旧アトウッド家がやってたことだね」

二人の間では、新領地、旧アトウッド家、という呼び方になっている。

「あの人たちにはラベンダーの管理をしてもらいましょう。女王陛下のお力をお借りしてまで島流しにするのは心苦しいわ。あまり借りを作るのもよくないし」

クロエが家族の顔を思い出したのか、無表情に言う。

「すんごい文句言ってきそうだけどね……」

(全部俺たちのもんだぁ、とか叫んできそうだよ)

脳筋アーロンと対面するのは想像するだけで苦痛である。

ひとまず先のことなのであまり考えないことにした。

「あと、運送事業はどうなりそう?」

「計画は問題ないんだけど、やはりグリフォンを集めと調教が最大の課題ね。しばらくは大ガラスとスレイプニルの運用を新領地で試して、業務形態を調整検討していく予定よ」

クロエが頭の中で計算をしながら口の端を上げた。

未来へ前進していることが嬉しいようだ。

「あ、そのことなんだけどさ、師匠に聞いてみない?」

「ティターニアさんに?」

「うん。グリフォンのこと詳しそうだし」

「そうね……ぜひお願いしてもいいかしら? 実は頼もうと思っていたのだけれど、ミーリアにおんぶに抱っこだから申し訳なくてね」

少し顔を伏せた姉を見て、ミーリアはクロエの手を握った。

「私の物はお姉ちゃんの物! お姉ちゃんの物はお姉ちゃんの物だよ!」

ミーリアが鼻の穴をふくらませて力説する。

「……それじゃ私が傲慢な人間みたいよミーリア。でも、ありがとね」

「お金だってよくわからないうちにゲットしたものだし、バンバン使っちゃって!」

クロエが使うならいくらでもどうぞ、という心づもりのミーリアだ。

「ミーリア」

クロエがミーリアを抱きしめて、プロの手付きで頭を撫でた。

「ああ、ああ、いい子に育ってくれてお姉ちゃん嬉しいわ。こんなに可愛いのに王国一の魔法使いなんてズルいわよ本当に」

「可愛いのは違うと思うけど、これからも頑張るよ」

撫でられて夢見心地になりつつ、ミーリアはクロエと目を合わせた。

「じゃあ明日、一緒に行こうね」

「私も?」

「うん」

クロエが聞き返すと、ミーリアがへへっと笑顔を浮かべた。