第13話 グリフォンとクロエ
第13話 グリフォンとクロエ
◯2022年も本作をよろしくお願いいたします!
前回のあらすじ:グリフォンがクロエに服従してるっぽい件
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腹を見せたまま、くるくると鳴いているグリフォン。
それを見てクロエが苦笑いを顔に張り付けた。
「私が魔法を使ったと勘違いされているみたいね……」
グリフォンがつぶらな瞳をクロエへ向けている。離れた距離で見ても、ちょっと可愛い。
(すぐに魔法は撃てる状態にしてと……)
ミーリアはいつでも反撃できる状態のまま、クロエの隣に立った。
「お姉ちゃん、近づいてみたら? 不穏な動きをしたら魔法で焼きグリフォンにしちゃうから」
「ミーリア、怒ってる?」
「結構ね」
その言葉を聞いて、クロエがミーリアの頭を撫でた。
「私のためにありがとう。防護魔法を信頼していたのはミーリアを信じていたからよ」
「うん」
クロエに笑顔を向けられ、久々に感じた怒りが消えていく。
(お姉ちゃんのスマイルは百億ドルだよ)
落ち着いたミーリアは転移魔法でクロエと池の向こうへ移動し、グリフォンを見下ろした。
グリフォンは相変わらず、くるくると鳴いている。
クロエはそれを見て優しく目を細めた。
「私の言葉がわかるかしら。私はあなたに危害を加えるつもりはないわ」
クロエがそう言いながら、グリフォンの腹へそっと腕を伸ばす。
鳴き声を止めたグリフォンがじっとクロエを見つめた。
(お姉ちゃん結構大胆だね)
クロエはそのままグリフォンの腹へ手を置き、ゆっくりと撫で始めた。
「もふもふしているわ……」
グリフォンは気持ちがいいのか、ごろごろと声を漏らす。
(生態がよくわからないけど、犬っぽい……)
ミーリアは油断せずに見守る。
大型犬よりも一回り以上大きいグリフォンだ。くちばしも鋭い。飛びつかれたら一大事になるだろう。防護魔法があるので問題はないだろうが、念のためだ。
(お姉ちゃんをつついたら焼きグリフォンだからね〜)
脳内で恐ろしいことを考えているミーリア。
だが、グリフォンの身体から出ている砂糖菓子のような匂いに、気が抜けそうになる。
(甘いものが好きっていうのは本当みたい)
しばらくクロエがプロの手付きで撫で回していると、グリフォンが立ち上がり、クロエに顔を擦り付けた。
「完全に懐かれてない?」
「そうね……人間慣れしている気がするわ」
グリフォンの首付近をこちょこちょと触りつつ、クロエがうなずく。
「そうなの?」
「野生のグリフォンがこんな簡単に懐くとは思えないもの。伯爵の文献にもそう書かれていたわ」
ためしにミーリアが手を伸ばすと、グリフォンはするりとかわしてクロエの背後に移動した。ついでに、おまえじゃないんだよと言わんばかりに「キューッ」と鳴かれた。
「なんか腹立たしい……」
「ひょっとしたら、ミーリアは私の子分みたいに思われているかもしれないわ。ティターニアさんのお話だと序列を重んじるそうだし」
「お姉ちゃんがボスなら全然オッケー」
両手で丸を作って笑うミーリア。
「まあ」
くすくすとクロエが笑う。
ミーリアの動作が面白かったようだ。
「ねえ、あなたは人間を知っているの?」
「クゥ」
クロエに聞かれ、グリフォンがうなずいた。
人語を理解できる知性にミーリアは驚く。
「一緒に住んでいるの?」
「クゥ」
首を縦に振る。
「もしよければどこにいらっしゃるか教えてくれないかしら?」
クロエが優しく頭を撫でると、グリフォンがぺたりとしゃがんだ。
「乗れってこと?」
「クゥ」
「……わかったわ」
クロエがそっとグリフォンにまたがり、首のあたりに手を添える。
ミーリアも乗ろうとすると、「キューッ」と鳴かれた。
「あ、私は乗るなって? それは失礼しました〜」
「ごめんなさいねミーリア。あとで乗せてもらえるように相談してみるわ」
「いいよいいよ。まずはお姉ちゃんがグリフォンと仲良くなって!」
(これはしょうがない。私がグリフォンだったら私よりもお姉ちゃんを乗せたいもんね。これすなわち自然の摂理)
姉ファーストなミーリアはそんなことを考えつつ、魔法で飛翔する。
続いてグリフォンが飛び上がった。
ゆっくりと高度を上げていき、眼下を見れば、倒壊した木々が見えた。
(アンチマジックバースト……もうちょい抑えてかけたほうがいいね。グリフォンに申し訳ないから、あとで植林しにこよう……)
「ミーリア、池はまたあとで来ましょう」
「はぁい」
考えはお見通しなのか、クロエが呼びかけてくれる。
ミーリアはクロエの乗るグリフォンと並んで、五分ほど進んだ。
すると、上空からだとわかりづらいが、たしかに人の集落らしきものが見えてきた。どうやら上から見つからないように色々とカモフラージュしているらしい。
グリフォンが一鳴きして、集落の端へと下りていく。
徐々に集落が近づいてくる。
(アトウッドの村と同じくらいの規模? もうちょっと小さめ?)
茅葺き屋根のような家から村人が出てくる。
原始人のようなものではなく、身なりは上下きちんと服を着ていた。
「グリフォンに人が乗ってる!」「だ、誰だ!?」「村長を呼べぇぇぇ!」
村人たちがクロエとミーリアを指差しで叫ぶ。
数人の男が猛ダッシュで駆け、広場には村人たちが集結し始めた。
(皆さん大混乱してない……?)
いきなり、上を下への大騒ぎになった。