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第40話 領主は威厳が大事

転生七女ではじめる異世界ライフ 〜万能魔力があれば貴族社会も余裕で生きられると聞いたのですが?!〜 — kakuyomu.jp · All chapters

第40話 領主は威厳が大事

移民に同行し、魔物の露払いをしたグリフィス公爵家の騎士団がミーリアへ先触れを出したのか、屋敷に騎士がやってきた。

「来たね!」

屋敷でジャスミンからもらった新開発のチョコレートを食べていたミーリアは、指をぺろりと舐めて浄化魔法で綺麗にし、応接室に向かう。

応接室に入ると、きらびやかな白銀の鎧に身を包んだグリフィス公爵家の騎士が一礼した。

「移民の第一陣は明日の正午に到着いたします」

「了解いたしました! ここまでのご同行ありがとうございます」

ミーリアは笑顔で騎士を労い、旅塵で汚れた身体と鎧を浄化魔法で綺麗にしてあげた。

騎士は驚くが、すぐに相手がただの女の子ではなくドラゴンスレイヤーだったと再認識し、笑顔で一礼して退室した。

「ミーリア、移民を受け入れに行きましょう。忙しくなるわよ」

クロエがミーリアに笑顔を向ける。

ミーリアは「そうだね。頑張ろうお姉ちゃん!」と答えて、クロエと手を繋いで移民受け入れの最終確認へ向かった。屋敷から出てクロエと空へ飛び上がった。

(森の開拓と整地はかなり進んでいるよね。自分が作った土地に人が住んでくれるのは、ちょっと嬉しいかもしれない)

ミーリアは空を飛び、移動しながらアトウッド領を見下ろす。

街が自分の姿を模倣したものだとはつゆ知らず、計画の三割ほど整地された縦長の土地を見下ろす。

定規で引いたように、綺麗にまっすぐと開拓した土地が広がっていた。

最果ての街道が右足の部分に接続しており、地平線の向こうまで街道と魔の森が続いているのが見える。

ちなみにだが、ラベンダー町は右肩に存在しており、ミーリアの髪の毛のように斜めに広がっている。最終的に街が完成すると、ラベンダー畑が髪の役割をするように設計されていた。

クロエの職人魂が込められた設計図である。

ミーリアとクロエは元アトウッド家の村人であるラベンダー町民が作った、受付会場へと降り立った。

受付会場は教会前の広場に設置されている。

教会の存在は移民たちに安心を与えるから、というクロエの提案だ。

数字のかかれた番号札が1から30まであり、三十の長机が用意され、各テーブルに文字の書ける領民が二人ずつ控えていた。

また、会場整理要員として数十名の町民がラベンダーのドライフラワーを胸ポケットに差して巡回している。

移民のお腹が空いていたら大変なので、特大の鍋をミーリアがハマヌーレで購入してきて、シチューやポトフを大量に作っていた。料理のできる女性たちが、楽しそうにおしゃべりしながら鍋をぐるぐると回していた。

(ん〜、いい匂いがする。腸詰めをいっぱい入れてるな、さては)

ミーリアは見下ろしながら、鍋から上がる湯気を見てうなずく。

ミーリアとクロエが空から降りてくると、はつらつとした様子の町民たちが「おはようございますミーリア様!」と挨拶をしてきた。

「どうもどうも。おはようございます、皆さん。今日は忙しくなるので頑張りましょう」

ミーリアがねぎらいの言葉を言うと、皆が気持ちよく了承の返事をしてくれた。

続いて白髪赤眼の美人司祭、ジョセフィーヌが長い髪を揺らしながら、笑顔で教会から出てきた。

「ミーリア嬢。いよいよですね。街の開発が進めば大神殿の建設も早くなるでしょう」

建築に異様なこだわりをもつジョセフィーヌが嬉しそうに聖印を切った。

「そうですね。大神殿はばっちり作るので安心してください」

「ええ、楽しみにしておりますわ」

大神殿は日本円にして二百億円の一大事業だ。

街の雇用を生むだろう。

(……ロリコンの変態はいないよね)

教会でこき使われているアレックスの存在を思い出し、ミーリアはちょっといやな気分になって周囲を見回した。

「悪魔に取り憑かれた変態は教会に謹慎させておりますので、ご安心を」

ジョセフィーヌがミーリアの気持ちに気づいて言ってくれる。

「よかったです。あとで出てきて移民の皆さんを不安がらせても困りますから」

(変態のいる領地とか思われても嫌だしね……)

ミーリアが遠い目になる。

元親戚が変な人間ばかりで若干げんなりした気分になった。

「ミーリア、時間になったらここに座ってね」

いつの間にかグリフォンのヒポヌスがクロエの隣におり、ヒポヌスが魔法袋から豪奢なワインレッドカラーの椅子を特設会場の壇上に設置した。

「え? 私の定位置、ここなの?」

「そうよ。領主の威厳というものを見せておかないと」

「え〜、ちょっと恥ずかしいんだけど」

「気持ちはわかるけどこればかりは仕方ないわね。それから、魔法袋からサーベルタイガーとダボラの死骸を出してくれる?」

「何に使うの?」

「ミーリアの背後に置くのよ」

「……なんでそんなことを? みんなびっくりしちゃわない?」

「魔物を狩れる魔法使いだって皆がひと目見てわかるように、よ。移民はミーリアがドラゴンスレイヤー魔法使いだから自分たちのいた街を捨てて、引っ越してくるのよ。だから安心させてあげないとね」

「あ、そういうことか。魔物が多い場所だし、そういうわかりやすさは大事かも」

ミーリアは前世の知識から、広告塔の代わりみたいなものか、と解釈した。

「本当は魔古龍がよかったんだけど、女王陛下に売却してしまっているからね。今度ドラゴンを狩ったら頭部は売らずに剥製にしておいたほうがいいかもしれないわ。検討しておいてね」

「そうだね。別のドラゴンの肉も食べたいし、今度は女王陛下に売らないで自分で持っておくよ」

「ドラゴンなんて早々遭遇するものでもないから、覚えていたらでいいわ」

「うん。じゃあ、この辺に出せばいいかな?」

ミーリアはヒポヌスが設置した椅子の背後を指さした。

クロエが了承してうなずく。

特設会場を見下ろせる壇上に、ミーリアはなるべく綺麗に退治したサーベルタイガーとダボラを左右に置いた。

「腐っても困るから、劣化防止の魔法をかけておくね」

「さすがミーリアだわ。そうしてちょうだい」

ミーリアは劣化防止の魔法を二つにかける。

「ヒポヌス、サーベルタイガーの頭を前に見えるように持ってきて。そうよ、うん。もう少し前で……」

クロエがヒポヌスに指示を出し、見栄えがよくなるように調整する。

ヒポヌスが「ビックボス、こうか?」と嬉しそうに鳴いて、魔法でサーベルタイガーとダボラを椅子を挟むようにして調整した。

(サーベルタイガーもダボラも体長三メートルくらいあるから、迫力がヤヴァイね)

凶悪な牙をむき出しにしたサーベルタイガーと、大きなくちばしと鋭い目をしたダボラが、椅子を挟んで斜め前を向くようにしている。

(蛮族の長っぽい雰囲気だけど……いいのかなこれ?)

あの椅子に自分が座ると思うと、ちょっとお尻がむずむずしてくるミーリア。

クロエの指示で椅子に座り、今度は椅子の位置を調整する。

それが終わると、クロエとグリフォン村のレディに近くの家に連れられ、ミーリアは高そうなドレスに着替えさせられた。

足がつきそうなほど丈が長いラベンダー色のAラインドレスに、ダイヤが散りばめられたティアラをつけ、簡単な化粧を施された。髪型はいつもより豪華な編み下ろしのハーフアップスタイルだ。

「うん、うん、可愛いわ。ええ。とても威厳があって可愛くて最高に美しい妹様ね」

親戚の結婚式に出席した姪っ子のような風貌になり、ミーリアは蛮族の長っぽい椅子に着席した。

「ミーリア様ばんざい!」

「天才七女様ばんざい!」

「ミーリア男爵とアトウッド家に栄光あれぇぇぇッ!」

領民がミーリアの姿を見て万歳三唱をし、ハイタッチをして踊り始め、めちゃくちゃ盛り上がっている。

ラベンダー町の年老いたじいさんとばあさんは「七女様のおかげで村は救われた……!」とむせび泣いていた。

クロエ、ジョセフィーヌも嬉しそうに手を叩いている。

準備に追われていた長女ボニーもやってきて、これなら移民も納得するわね、と満面の笑みだ。

(いや……過剰なリアクションが困るんだけど……)

ミーリアは困惑し、魔法袋から撮影魔法を込めた魔石を取り出し、宙に浮かせて自分の姿を撮影し、宙に投影した。

(うーん……蛮族の長の娘って感じだね……。高級ドレスと両隣の魔物の死骸が成り上がり&成金具合を加速させている気がする……)

ミーリアは苦笑いが出たが、皆があまりに嬉しそうなので、まあよしとしよう、とあまり考えないことにした。

そうこうしているうちに、護衛の騎士を先頭にして移民が続々と受付会場へと現れた。