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第42話 召喚石と新魔法

転生七女ではじめる異世界ライフ 〜万能魔力があれば貴族社会も余裕で生きられると聞いたのですが?!〜 — kakuyomu.jp · All chapters

第42話 召喚石と新魔法

◯前回までのあらすじ

移民の受け入れをしていたら、

脳筋元父親アーロンが召喚石を投げた。

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アーロンが召喚石を空中へ投擲した。

クロエ、ヒポヌス、会場整理をしていたボニー、領民、移民、全員が召喚石を見上げる。

ミーリアにはその光景がスローモーションのように見えた。

(予知と同じ光景。みんなを守らないと)

咄嗟に椅子から立ち上がる。

投擲された召喚石は禍々しい漆黒の光を放ち、不吉な振動音を響かせながら一筋の光へと収束して、会場の上にある雲を貫いた。

分厚い雲に円形の穴が空き、その奥から空気を震わせる魔力の波動が放たれた。

空を覆う黄金色の巨大な魔法陣が出現し、ギュリギュリと押し出されるようにして灰色の物体がその姿を空中に現していく。

「隕石……!」

クロエが伝承でしか確認できない隕石という言葉を発した。

魔法陣から隕石が排出されると、魔力の残滓を残して魔法陣がかき消える。

隕石は目算で直径百メートル以上ありそうだ。その大きさに、会場が影で覆われて半夜のように暗くなった。

(こんな大きいなんて聞いてないよ……!)

予知で見た隕石と大きさだろうとは思うが、肉眼で見る実物の迫力は段違いであった。

「はははははは! これで俺は準男爵だ! 約束は守ってもらうぞ、ロドリゲス!」

アーロンはたまらなく可笑しいといった様子で両手を広げ、召喚石を渡してきた魔法使いの名前を呼ぶ。

家の陰から見ていたのか、事なかれ主義の母親エラが半笑いをしながらアーロンに飛びついた。エラの顔つきは以前とは違い、目の下にくまが色濃く浮かび、老け込んでいた。

「あなた! これでまた貴族になれるのよね?!」

「公爵付きの魔法使いが約束した! 間違いない!」

「それならいいわ! こんな領地、潰れてしまえばいい! 小麦も育たない呪われた土地よ!」

母親エラが髪をかきむしり、喚き散らす。

「残念だったなミーリア! クロエの小賢しい知恵で俺の領地を奪ったまではよかったが、全員死ぬんだ! 領地ごと吹き飛べ!」

アーロンが上空の隕石を見て発狂したように笑う。

「どこに召喚石を隠してたの?!」

思わずミーリアが叫ぶと、母親エラが高笑いした。

「私が肌身離さず持っていたのよ!」

「なんてこった……マミィがアーロンの共犯になるとは思わなかった」

あの事なかれ主義の母親がアーロンの共犯になり、このような強硬手段に及ぶとは想像の範疇を越えていた。確かに思い返せば、爵位を剥奪されたあたりから母親エラの様子がおかしくなっていたような気がした。

「落ちてくる!」「なんだあの大岩は」「た、助けて!」

会場にいる全員はゆっくりと落ちてくる隕石を見て、大パニックになった。

ある者は自身の持つ家財を両手に持てるだけ持って駆け出し、隕石の大きさに絶望した者はその場にひれ伏してセリス神に祈りを捧げ始める。

「あなた、この後はどうすればいいの?!」

母親エラがアーロンの太い腕をつかんだ。

「は? この領地が破壊されて俺が準男爵になるだけだ。何を言ってる?」

「このままじゃ私たちも隕石につぶされるわ!」

アーロンは後先をまったく考えていなかったのか、顔面を蒼白にして空を見上げた。

そうこうしている間にも隕石が地上に近づいてきている。隕石は万有引力を無視し、水中を落ちるような、ゆったりした速度で落下していた。

その姿はじわじわと恐怖を与えることを楽しんでいるようにも見えた。

「し、し、死ぬのはおまえたちだけだぁぁぁ!」

アーロンは背を向けて駆け出した。

この姿もミーリアが予知で見たままであった。

「ま、待って! 死にたくないっ! 死にたくないぃぃ!」

母親エラも髪を振り乱してアーロンの後を追う。

だが、二人はミーリアの魔法でラベンダー町から出られないようにされている。走り去ったところで逃げ場がないことに気づいていない。

「ミーリア!」

元両親の滑稽な姿を横目に、クロエが必死の表情でミーリアへ駆け寄った。

「私はグリフォンたちと残ってできる限りの人を逃がすわ! お願いだから転移魔法であなただけでも逃げて! あんなの……人間がどうこうできる質量じゃないわ……!」

クロエは落ちてくる隕石を見上げて絶望した顔になるが、ミーリアの肩に手を乗せ、無理に笑顔を作った。

「今までありがとう。お姉ちゃんはね、ミーリアのお姉ちゃんで嬉しかったわ。私がいなくても元気に生きて。寝るときはきちんとパジャマをズボンに入れて寝なさい。お腹を出すと風邪を引いてしまうからね」

クロエがにこりと笑うと、ヒポヌスたちに号令を出した。

「ヒポヌス、子どもを最優先で助けるわよ!」

「クルルッ!」

ビックボスの心意気に感動しました、とヒポヌスが鳴いて承知する。他にいるグリフォンたちも高々と鳴いた。

クロエがヒポヌスに飛び乗り、飛び立とうとしたところでミーリアが手を上げた。

「待って! 大丈夫! 大丈夫だから落ち着いて!」

「ミーリア、大丈夫じゃないわ。時間がないの。早く行きなさい!」

「お姉ちゃんをここに残すくらいなら私も残るよ! お姉ちゃんのいない人生なんて何の意味もない! 勝手に決めないで!」

「私はお姉ちゃんなの! 妹を守る義務があるわ!」

「それなら妹はお姉ちゃんを助ける義務があるよ!」

「ミーリア! お願いだから先に逃げてちょうだい。あなたに何かあったら私……」

「大丈夫。これでも私、ドラゴンスレイヤーの男爵芋だよ」

(みんなを守る……!)

クロエの必死な行動を見てミーリアは冷静になり、やるべきことが定まって思考がクリアになっていく。

(まずは状況確認。ターニアクリスタルは作動している。あと数十秒で隕石は対物防護膜とぶつかる)

ミーリアは素早く感知魔法でティターニアと共同制作した対物防護膜を確認する。

問題なく作動しており領地全体が防護されているが、隕石が想定よりも大きいため数十秒の足止めにしか使えないと判断した。

次に隕石に目をやり、どうやって破壊するかを考える。

すると、脳内に聞き慣れた声が響いた。

『ミーリア、こちらティターニア』

『師匠』

『その様子だと冷静なようね。あなたの魔力量なら問題なく隕石を破壊できるわ。隕石の横合いから高位力の魔法をぶつけて軌道をそらし、破壊してしまいなさい。最大出力を許可するわ』

『了解です』

ティターニアの助言で吹っ切れたミーリアは全力で魔力を練り始めた。

ぽんと頭上にドライアドの草が生え、魔力が腹の下あたりに渦巻いていく。

(横から叩くならやっぱりこれだよね……爆発もおまけでプレゼント……)

ミーリアは魔法をイメージして右手を頭上に掲げる。

ミーリアの小さな手に光り輝く棒が出現し、じわじわと棒全体がハンマーのように変形していく。

金づち程度の大きさの魔力ハンマーは一秒ごとに倍、倍、と大きくなり、天を覆い尽くさんばかりの巨大ハンマーへと変貌した。