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第28話 マッピング魔法

転生七女ではじめる異世界ライフ 〜万能魔力があれば貴族社会も余裕で生きられると聞いたのですが?!〜 — kakuyomu.jp · All chapters

第28話 マッピング魔法

ミーリアは一度自室に戻り、制服に着替えた。

(念のため、師匠にもらったローブを着ておこう)

劣化防止、自動洗浄、物理耐性、魔法耐性が付与された、どこのVIP専用だとツッコミが入りそうな性能のローブである。

アクアソフィア色のスカーフで髪をハーフアップにまとめ、アリアの部屋へ転移した。

アリアも制服に着替えて、待っていた。

「おまたせしました」

「……行きますわよ」

「いつでもオーケーです」

「教わった浮遊魔法がすぐ役に立つとは思いませんでしたわ」

規則破りをする緊張からか、アリアの口調が軽い。

窓を開けると、二人は宙を浮き、ローズマリア寮塔から出た。

ミーリアがそっと窓を閉める。

それを合図に、見慣れた中庭の花壇中心部へと下りていった。

「四色の塔の花壇――ここであることは間違いなさそうですけど」

「どこでしょうかね?」

「ヒントはありませんの?」

二人は着地し、デモンズマップを広げ、アリアが覗き込んだ。

周囲が暗い。アリアが杖を取り出して光源魔法を使う。

そこでミーリアが思いついた。

「アリアさん、ちょっと魔法を使ってみますね」

「……わかりましたわ」

ミーリアが思いつきで魔法を使うことに慣れてきたのか、アリアが何も言わずにうなずいた。

(魔力を特殊超音波に変換――ソナー魔法発動!)

潜水艦のソナーのように、ミーリアの魔力が飛んでいく。

人や物が持つ魔力を感知して索敵する魔法だ。

(……ッ! さすが王国女学院……、やっぱ魔道具の数が半端じゃないよ!)

ミーリアの脳内に魔力の点が大量に浮かび上がる。

実は入学してから何度かソナー魔法を使ったのだが、そのたびに大量の魔道具が反応した。頭痛がしてくるレベルだ。

(あ、クロエお姉ちゃん起きてるみたい)

さすがミーリア。クロエの反応には敏感だった。

(いけないいけない。それじゃあ今度は、効果範囲を花壇に設定――もう一回、ソナー魔法発動!)

魔力の波が花壇を駆け抜ける。

(あった! それっぽい反応。魔道具かな?)

「アリアさん、見つけました。こっちです」

ミーリアが先導して、花壇を東側へ進む。

アクアソフィアが植えられた奥に、女神セリスを模した石像が立っていた。

二人が近づくとデモンズマップが反応し、音もなく石像が真横にスライドした。

どうやら条件を満たし、通路が出現したようだった。

「手の込んだ仕掛けですわね……」

アリアが驚き、石像のあった場所にできた空間を見る。

(すっごいファンタジー。地下室っていかにもだよね)

自分の存在が一番ファンタジーなミーリアが、恐る恐る空間へ光球を飛ばした。

急勾配な通路になって奥へと道が続いている。

ミーリアとアリアは目を見合わせ、緊張した視線を交換した。

「……心の準備は大丈夫ですか?」

「……わたくしは、問題ありません」

「では、行きましょう」

「はい」

「私が光球を飛ばします。アリアさんは周囲に注意してください。私、結構ヌケているので……何か気づいたら教えてくださいね」

「承知しましたわ」

夜更けに出現した秘密の通路へ、ミーリアとアリアは足を踏み出した。

二人の姿が闇に溶けると、石像が音もなく元の位置へと戻った。

◯

通路はじめじめした空気に包まれていた。

風切り音がどこかからしているので、空気は確保できているようだ。

ソナー魔法を飛ばしてみたところ、広い地下空洞になっているらしい。

それを聞いて、アリアはむやみに歩き回るのは得策ではないと考えた。

そんな思案をよそに、ミーリアが魔法を使った。

「迷路マッピング魔法――アンド――プロジェクター魔法発動!」

ミーリアが大量の魔力を通路に噴射して脳内地図を構築し、さらに地図を映像として壁に投影した。魔力量、イメージ力、前世の知識でゴリ押しに発現させた創作魔法だ。

ミーリアのおでこから光が出て、通路の壁にマップが映し出される。

「よし、成功」

確認するように、ミーリアが頭を天井や床へ向けると、マップもそれに合わせて動いた。

「自分のおでこから出るのはちょっとカッコ悪いなぁ……。手からだと……うまくイメージできない……あとで練習しよう」

「あの……ミーリアさん。これはどのようなイメージで、どういった魔力に変換すればできる魔法ですの?」

アリアが驚きを通り越して菩薩のような表情をしている。

訳のわからない魔法を連発するミーリアを見て、規格外ぶりを把握してきたらしい。

これを魔法科の教授に見られようものなら、質問攻めに合うこと間違いなしだ。彼女はできる限りミーリアと行動を共にしようと誓った。

「うーんとですね、ちょっと説明が難しいので、あとでも大丈夫ですか?」

「そうですわね。今は進むことに集中しましょう」

アリアが気を取り直し、緑の光線で引かれたマップを見た。

「中心部があやしいですわね」

「ですね。中心部から魔力反応がします」

ミーリアが姿勢をそのままにして、指を差した。

「そこにデモンズマップの謎を解く鍵がありそうですわ……」

「行きましょう。罠とかあるかもしれません。気をつけましょうね」

「わかりましたわ」

「マップ、出しっぱなしにしておきます?」

ミーリアがアリアへ首を向ける。

プロジェクター魔法の光を浴びて、アリアが目を細めた。

「お願いできますか? 複雑なので記憶には時間がかかりますわ」

「了解です。では、行きましょう」

ミーリアが気合いを入れて一歩足を踏み出した。

――バシュッ!

すると、何かのスイッチを踏んでしまったのか、バスケットボール大の球が壁から発射された。

「――ッ!」

アリアが咄嗟に杖を構えるが間に合わない。

球がミーリアの顔に直撃――したかのように見えた。

「へ?」

(あああっ! 何ぃ?!)

ミーリアが球に気づいて身をこわばらせると、

「にゃあん」

自動防御――猫型魔力防衛システムが作動した。

猫の形をした魔法陣が球をガードし、魔法陣の中からにゅっと猫が半身になって現れ、球をキャッチして壁へと弾き返した。

球は壁に当たって破裂し、紫色の塗料をぶちまけた。

「……っくりしたー」

ミーリア、あり余る魔力で二十四時間稼働していた自動防御に救われた。

猫と魔法陣は用事が済むと消えた。

「ふぅーっ……自動防御システム稼働してるの忘れてた……セーフ」

「猫型魔法陣……前に言っていた……」

アリアは開いた口がふさがらない。

魔法陣が攻撃に対して自動で反撃するなど、どれほど魔力を常時消費するのだろうか?

疑問を脳内で渦のごとく巡らせ、彼女はミーリアと破裂した球を交互に見つめた。

「……」

「アリアさん。あの塗料、浴びると一週間は落ちないみたいです。悪辣な罠ですね。十分に注意して進みましょう」

プロジェクター魔法を額でビカビカさせているミーリアが腰を落とし、周囲を警戒する。

傍から見るとヘルメット懐中電灯をつけた金塊泥棒に見える。

「ミーリアさん…………いえ、もう聞かないことにしますわ…………」

アリアは額を押さえた。

王国魔法研究所、有力貴族、冒険者組合など、ミーリアの常識外れが見つかったら大変な騒ぎに巻き込まれる未来が容易に想像できる。

ミーリアの姉クロエが、やけに心配している理由がわかった気がした。

ちなみに、ミーリアがすでにクシャナ女王と近衛魔法使いにお気に入り登録されていることをアリアは知らない。

「それにしても……罠だらけだと進むのも大変ですわね」

「あ、そっか。ちょっと待ってくださいね」

「ミーリアさん、まだ何かあるんですの?」

「ええっと、罠が魔道具で構築されているので……イメージして……罠用ソナー魔法・色付きバージョン――発動!」

超音波よろしく、ミーリアの魔力が飛んでいく。

数秒後、壁や床が点々と赤く光った。

「罠がある場所を表示しました。これで安心ですね。さあ、進みましょう」

弾ける笑顔を向けるミーリア。

「え、ええ……そうですわね」

アリアはプロジェクター魔法の光に目を細め、初めてこの謎を作ったデモンズが可哀想だと思った。