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閑章 フランとクーネ 04

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閑章 フランとクーネ 04

「ここニャ! ここがニャーの行きつけの店ニャ!」

俺たちはクーネの案内で地元の食堂へとやってきていた。

料理を広める前に、この辺りでどんな味が好まれているか知らねばならないのだ。こういうのは、押し付けては駄目だからね。

食用カエルとかザリガニとか中国のデカい魚とか、日本でも受け入れられず、定着しなかった食べ物がたくさんある。

国が主導していようが、偉い人が美味しいと言っていようが、食べたくない物は食べたくないのだ。

「おばちゃーん! いつもの3つニャ! あ、1つはこの狼用におっきいので出してほしいニャ」

「はいよ!」

本当に行きつけなんだろう。いつもので注文が通ってしまった。

「いつもの?」

「そうニャ! ニャーの大好物ニャ! フランもきっと気に入るはずニャ」

「どんな料理?」

「ニャッフッフ。食べてみてからのお楽しみニャ」

司令のポーズで、重厚感たっぷりに勿体ぶるクーネ。よほど自信があるんだろう。

「レイドスで一番うまい料理ニャ。食べたら耳がぶっ飛ぶくらい驚くはずニャ」

「楽しみ」

「オン!」

待つ間にレイドスの料理について聞こうと思ったんだが――。

「お待ち! ぶっかけ粥だよ!」

「待ってたニャ!」

「ほほー」

「オフ?」

早いな! だが、それも納得の見た目だ。名前の通り、麦粥に薄い色の汁がかかっただけの料理だったのである。具は、僅かな魚の解し身だけだ。

正直、貧相とさえ言える見た目だ。だが、問題は味である。得てしてこういうシンプルな料理こそ、実はメチャクチャ美味しかったりするのだ。

「うまいニャ! やっぱこれだニャ! 早い安い美味い! 完璧だニャ!」

クーネが粥をかき込むようにバクバクと食っている。その顔は本当に幸せそうだ。だが、フランたちの表情は微妙である。

『フランどうだ?』

(……まあまあ?)

なんでも美味しく食べるフランのまあまあって、実質マズいってことだからね?

『ウルシ?』

(オフン)

ウルシも何とも言えない表情だ。それでも食べられないって程ではないようだが……。

すると、フランたちを見ていた女将さんが苦笑いをしながら近づいてきた。

「あんたらは味覚がちゃんとしてるみたいだね」

「どういうこと?」

「いやね、そんな料理とも呼べない賄い、美味そうに食うのはクーネだけだったからさ。もしかして黒猫族はこういうのが好きなのかと思ってたんだが……」

「うまい! うまいニャ! 最高だニャァァァ!」

粥をかき込むクーネを生温かい目で見る2人。

「違ってたみたいだねぇ」

「ん」

なんでも、初めてクーネが食堂にきた時、何でもいいからすぐに食べられるものを出してほしいと無茶ぶりをされたそうだ。

一番忙しい時間帯の直後で疲れていたことと、食材がろくに残っていなかったことから、自分で食べようとしていた間に合わせの賄いをやけくそで提供したらしい。

少し放置したせいでデロデロになった粥に、塩で味付けした水と余り物の魚の干物を解してぶち込んだだけの、本当の賄いだ。

マズいと言われたら、早く出せって言ったのはそっちだろって言い返すつもりだったのだが……。

「美味い美味いって、あっという間に完食しちまったんだよ」

それ以来クーネは、日を置かずに店にきてはアレを出せと騒いだらしい。

アレは適当に作った賄いだから普通の食事を食えと色々出してやったのだが、何を食べてもアレの方が美味しいとしか言わなかった。

どれだけ手の込んだ料理を出しても結果は変わらず、最後は女将さんが根負けしてしまう。

結果、クーネしか頼まないぶっかけ粥が裏メニューに加わり、おかしな常連客が誕生したのであった。

となると、1つ問題がある。

「これ、レイドス料理じゃないの?」

「これをレイドス料理と言ったら、他の客に怒られちまうよ」

クーネの奴、全く役に立たなかったぁ!

「ちゃんとしたレイドス料理が食べたい」

「ちゃんとって言われてもねぇ。うちで出してんのはこの辺で食べてる家庭料理ばかりだよ?」

「それでいい。この辺の人が好きな料理、色々持ってきて。5つくらい」

「あいよ!」

その後運ばれてきた料理は、しっかりと作られた普通の料理であった。

ハニーマスタード味の茹で肉、甘塩っぱい味付けの煮魚、甘いマッシュポテト、甘塩っぱい挽肉が詰まったニョッキモドキ、魚と野菜のスープと、フランも納得の味だ。

問題は、ほぼ全ての料理に砂糖かハチミツが大量に入っており、その味に慣れているだろうってことだった。

しかも、香辛料はマスタードしか使われていない。女将さんに聞いても、それ以外の香辛料はほとんど入ってこないので食べた経験すらあまりないという。

料理人であるこの人が食べたことないんじゃ、一般の人々は存在すら知らないんじゃなかろうか?

カレーを作ればいいと思っていたけど、そう簡単ではないかもしれない。

「もぐもぐ……これ、おかわり」

「はいよ」

「クゥン」

フランは甘い物も気に入ったみたいだね。レイドスの人たちも、同じようにカレーを好きになってくれればいいんだが。

あと、ウルシにも分けたげて!

「うまーニャー!」

GCノベルスさんの10周年記念企画が色々進行中ですね。

私もいくつか参加してますので、お楽しみに。