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閑章四 絶海の孤島 05

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閑章四 絶海の孤島 05

「では、模擬戦を開始する! 序列50位、リジン! 前へ!」

「おう!」

島に到着した翌日。さっそく修練場では依頼が開始されていた。

因みに、最上位の癒し手はまだ戻ってきていないので、その下の治癒術士が控えている。それでいいのかと思ったが、ルシール商会から最上級のポーションを購入したので大丈夫とのことだった。

まあ、いざとなれば俺が癒せばいいしな。

「豪掌拳のリジン、お相手仕る!」

「ん。いつでもかかってくるといい」

「おおおぉぉおぉぉ!」

リジンは大きく吠えると、一気に踏み込んできた。その勢いを殺さず、正拳突きのような掌底を繰り出す。手には魔力を纏っており、かなりの威力がありそうだ。動きのキレもいいし、冒険者で言えばランクC上位くらいの力かな?

強いことは強いが、フランはその攻撃を完璧に見切って回避していた。リジンが繰り出す連撃は、かすりもしない。幾度かの攻防の後、フランがリジンの腹に拳を叩き込んでいた。

腹をワンパンされ、思わず後退するリジン。その顔には悔しさよりも、純粋な称賛の色がある。

「剣士殿に体術でも上を行かれるのか……」

「本気でくる」

「おう! 我が奥義をお見せしよう! はあああぁぁぁぁぁ! 豪掌撃ぃぃぃ!」

リジンが拳を腰だめに構えると、魔力を練り上げる。その構えから繰り出されたのは、先ほどと同じような掌底攻撃だった。

だが、速度も、そこに込められた魔力も、段違いだった。さらに面白いのは、纏う魔力の形状だろう。

まるで盾のように、彼の掌底を起点として円形に広がっているのだ。相手の攻撃を防ぎつつ、攻撃も可能な一撃なのだろう。言うなれば、魔力を使ったシールドバッシュのようなものだった。

因みに、豪掌撃と叫んでいるが、使っているのは拳闘技スキルに存在する、チャージナックルというアーツである。

ただ、魔術でもそうだが、イメージと修練によってアーツの発動形態を弄ることも可能だ。リジンはそれを利用して、オリジナルのアーツを編み出したんだろう。世界に登録されるほどじゃないけど、珍しいアーツの使い方って感じだ。

面白い技を見て、フランは興味を惹かれたらしい。俺を肩に担ぐように構えると、自身もリジンに向かって踏み出した。

正面からぶつかり合う、リジンのアーツと俺。

結果、リジンのアーツは紙のように切り裂かれ、その肉体は血を撒き散らしながら修練場の地面に倒れ伏したのだった。

「む、ねん……」

「いい技だったけど、魔力の練り込みが足りない」

『いや、もう聞いてないと思うぞ』

リジンの傷を癒してやると、すぐに次の挑戦者が前に進み出る。その顔にはリジンを心配する素振りなど一切なかった。

薄情というわけではなく、模擬戦での怪我など当たり前という考えなんだろう。

「次! 序列49位! 氷槍のゼンデ!」

「おっしゃ!」

そうして次々と挑戦者と模擬戦を行い、フランは勝ちを重ねていった。41位の刀使いを倒すまでに、1時間もかからなかったかな? でも、誰もが特殊なアーツや立ち回りの使い手で、フランとしては結構楽しめたらしい。

ああ、昨日入れ替え戦をやっていたオウリ君とも戦ったぞ? 普通に勝ったけど。昨日とは違い、一撃の威力を重視する立ち回りだったが、フランの見切りの前には何もできなかった。

壁にぶつかっていた様子だったし、フランとの模擬戦が何かのきっかけになればいいんだけどね。一応、フランがアドバイスっぽいことは伝えたけど、どうだろうか?

「お疲れ様でした。本日はこれで終いですじゃ」

「別に疲れてない。明日まで待たなくてもいいよ?」

「はっはっは! さすがですのう! ですが、次の挑戦者たちの準備ができておりませぬ」

明日の予定をいきなり今日って言われても困るだろうしな。

「本日相手にした者たちはどうでしたかのう? 何か気になる点などはございませんでしたか?」

「気になるとこ? オウカ流の使い手以外にも、色々な流派がいる?」

「おお! そこですか! それを語るには、この島の歴史を――」

ゲッコーは歴史語りたいおじいちゃんだった。聞いてもいないのに、歴史を詳しく教えてくれたのだ。

この島に人が住み始めたのは、記録にも残らない遥か昔のこと。

強い魔獣が闊歩するこの島で生き残るためには強くならねばならず、自然と強さを求めて己を鍛える人々が増えていった。

そこから長い間、ここは武芸者の島として強い武人を生むことで名を馳せていたが、今のように発展することはなかった。まあ、脳筋が増えたところで、交易や産業が大きく進歩することはないよな。

どちらかといえば殺伐としそうだし。

だが、そこに新たな変化がもたらされる。他国で政治的な争いに負けた一団が、島に逃げ込んできたのである。

彼らは島の者に迎え入れられ、統治に参加することとなる。というか、元からいた者たちは武芸者と漁民、農民だけだったので、今までは自分たちでやっていた自治組織の運営など、政治的な部分を彼らに丸投げしたって感じらしい。

新しくやってきた逃亡者たちは島民に感謝し、真摯に政事に取り組んだ。

手に入れた権力を笠に着て暴走しなかったのは、最終的には武力をもつ武芸者たちに勝てないからってのも大きいだろう。

結果この島は、王や貴族がおらず、島民に認められた自治組織の幹部たちが合議制で政治を行う特殊な場所となったのであった。

『ハガネ将国の属領になったのはその後か?』

「そうですのう。まあ、向こうとしてはシラード聖国にこの島が取られる前に、とりあえず自治領として認めてしまえということだったようです」

有用な素材がたくさん採れるみたいだし、そこに目を付けたのかもしれないな。実際、税金はほとんど払っていないが、薬草やオリハルコンなどを一部献上しているそうだ。

『オウカ流の話が一切出てこなかったが、どうなってるんだ?』

「開祖オウカは、その逃亡者の中に交じっていたそうです。当時はまだ年端も行かぬ少女でしたが、島で武芸に打ち込むことで才能を開花させたのですじゃ」

『なるほどなぁ』

オウカ流の開祖がいたから武芸が盛んになったわけじゃなくて、武芸が盛んだからすごい武人が生まれたのか。

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