643 変わった未来
643 変わった未来
超多忙なお盆期間をなんとか乗り切り、更新再開です。
間に合ってよかった……。
「フラン、剣さん。接続が切れるわ!」
レーンの声が、俺たちに聞こえた。この不可思議な状態が終わりを迎えるということだろう。
最後に、何か声をかけてやらねば!
「ん。じゃあね私」
『フラン! 俺はお前の味方だぞっ! 何があっても、ずっとだ!』
そう叫んだ直後だった。
耳飾りのフランと、馬鹿野郎な俺と、あっちのレーンの姿が消えた。
『これで、終わりか?』
「ええ。接続が切れたわ」
レーンが言う通り、すでに気配は感じられなかった。
『なあレーン。あのフランたちは、いったいなんなんだ?』
「あれは、前のフランと前の師匠。シエラやゼライセたちがこっちの時間軸に消えた直後だったはずよ」
『あの俺は……剣化が進んじまった俺ってことか?』
「そうよ」
「あれが、師匠?」
フランが悲し気に呟いた。どうやら、俺がああなってしまった時のことを想像してしまったらしい。
『あのフランはどうなる?』
「ごめんなさい。もう、完全には分からないわ。でもね、未来は大きく変わったはず。だから、接続も切れた」
「変わる前の未来は、どんな未来だった? あまりよくない?」
「フランが絶望の果てに暴走し、全ての力を使って師匠の内に封印された邪神の欠片と相打ちになる。大勢の人間を巻き込んで、ね」
それは酷い……。だが、確かにあっちのフランは、そうなりかねない危うさがあった。そして、それを止めなきゃいけないはずの俺は、あんな有様だ。
『だが、未来は変わったんだろ?』
「ええ。貴女たちのお陰。フランと剣さんがあっちの2人にかけた言葉が、大きく未来を変えてくれた……」
『じゃあ、あっちのフランは、レーンが言ってたみたいな死に方はしなくなったってことだな?』
「ええ。少なくとも、剣さんは心を取り戻したはず。それくらい未来が変わらないと、接続があれほど急に切れたりはしないわ」
『そうか……』
「あとは、少しでもいい未来に変わったことを、祈るしかない」
「ん……」
あっちの俺たちは、どうなっただろう? 傷ついていたフランの心は、少しは癒せたか? 剣に成り下がっていた俺は、少しでもましになったのか?
「師匠、きっとへいき」
『そうか?』
「ん。だって、私たちの言葉、届いてたから。だから、へいき」
『そう、だな。なにしろ、俺とフランだからな! きっかけがあれば、きっと良い方に変わるよな?』
「ん」
フランに言われると、本当にそう思えるな。
『あっちのアナウンスさんも復活したみたいだったし』
《是。あっちの仮称・アナウンスさんとは、情報の共有を行ないました。有効に活用するでしょう》
『情報共有?』
《個体名・師匠の行動パターンを解析した情報や、そこから導き出される剣化を防止、解除するための方法の考察です》
『な、なるほど』
俺の性格を分析したデータってことだよな? それを使って、あっちの俺が剣化しないように、アナウンスさんが色々と打開策を練ってくれると。
なら安心だ。アナウンスさんは有能だからね! なんか、俺の内面が分析されたみたいでちょっと恥ずかしいけどね。
《また、一部のスキル情報の交換にも成功しました》
『それって、新しいスキルをゲットしたってことか?』
《是。こちらからは、破邪顕正、魔力供給の情報を提供し、あっちの仮称・アナウンスさんからは精霊察知、邪気支配の情報を提供されました。情報を基に、スキル精霊察知、ユニークスキル邪気支配の入手に成功。また――》
な、長い! あの短い時間でアナウンスさん同士は凄まじい情報のやりとりをしたらしい。
《破邪顕正、邪気支配の情報を基に、ユニークスキル神気操作の入手に成功。神気操作、精霊察知の情報を基に、ユニークスキル精霊の手の入手に成功》
い、色々と手に入れてしまった。簡単に説明されると、精霊察知は名前そのままだ。精霊を感じ取れるようになるらしい。これで、俺も精霊をスキルで察知できるだろう。
邪気支配は、邪気を操るためのスキルである。魔力操作の邪気版に近いようだが、より上位で影響力が強いっぽかった。
そして、俺たちにはありがたい神気操作。これはそのまま、神属性を扱うことが上手くなるスキルだ。自傷ダメージを少しでも減らせるかもしれない。
そして、精霊の手。これは、精霊を視るだけではなく、影響を及ぼすことができるスキルだった。触れたり、攻撃したりも可能らしい。まあ、使いこなすのが相当難しそうだが。今後の修練しだいだろう。
色々と試してみたいところだが、俺たちにはそれ以上の検証をする時間は残されていなかった。
「ごめんなさい。そろそろ、時間の流れが元に戻るわ。気を付けて……」
『おい! それってメチャクチャヤバいんじゃないか……?』
今の超加速状態からいきなり普通の時間に戻って、どんなことになるのか分からない。最悪なのは、バランスを崩すことだろう。
何せ、俺たちは天空から大魔獣に向かって高速で撃ちおろされている最中なのだ。
段階を踏んで、ゆっくり元に戻してもらうことはできないかと思ったが――。
「レーン、平気? 辛そう」
「ちょっと、無理をし過ぎただけよ……。でも、もうこれ以上は……」
周囲の景色が段々と流れ出すのが見える。すぐに元の時間に戻るぞ!
《時間加速が解除されるまで、残り3秒》
『フラン! バランス崩すなよ!』
「ん! 任せて!」
フランがやる気に満ちた表情で、頷く。どうやらあっちのフランと俺を見て、触発されたらしい。
「負けてられない」
『おう! そうだな!』
何にとは言わないが、俺も同じ気持ちだよ!