106話 武闘会-本選 その1
106話 武闘会-本選 その1
昨夜も飲みすぎた。
勿論、俺がじゃない。
俺はどれだけ飲んでも酔わないのだ。その一点だけは、毒無効は無い方が良いかも知れない。
所詮、食べる事は毒を取り入れる事。なので、多少の毒は誰しも抵抗があるのが現状なのだけど。
まあ、酔った気分は味わえるので、飲む行為そのものは好きである。
飲みすぎなのは、招待客の皆さんである。
昼間に見た戦いの興奮が忘れられないのか、夜遅くまで飲んで語っていたようだ。
そんな訳で、皆ちょっと疲れた顔で、闘技場まで移動している所だった。
闘技場にて、選手が一同に会し、中央にて整列している。
整列というか、円陣を組み、客席側へ向いて立つ。
大モニターが画面ごとに、選手の様子を映しているので、その表情も良く見てとれた。
その選手を前に、俺が 拡声器 ( マイク ) にて挨拶を行う事になっていた。
ちなみに、ヴェルドラは昨日に続いて呼んではいない。
地下迷宮 ( ダンジョン ) 作成に夢中になっているので、敢えて呼ばなかった。
また暴れられても面倒だし、一緒にいるヤツが来る恐れがあるのだ。
ミリムが来たら、間違いなく参戦したがるだろう。代理を送り込んで来ただけで満足出来るとは思えないのだ。
そんな訳で、今日の解説も俺が行う事になった。
先ずは選手紹介である。
俺は合図を送り、一人づつ選手の紹介を開始させた。
大画面が切り替わり、一人づつ紹介に合わせて選手を映し出すよう指示してあった。
最初に、昨日のバトルロイヤルを勝ち抜いた者、3名の紹介である。
ソウエイの配下代表として、 龍人族 ( ドラゴニュート ) のソーカがアナウンスを行っている。
選手の一言を貰う手筈になっていた。
さて、始めるか。
まずは、 牛頭 ( ゴズ ) 。
コイツは、昨日の勝利を褒めると同時に、"ゴズール"という"名"を与えていた。
名付けも手馴れたもので、そこまで魔素を奪われる事なく、少し成長を促す程度で留めている。
だが、元Aランクの上位者。
種族も 牛鬼族 ( ギュウキ ) に進化し、昨日迄とは別人の如く、迸る 力 ( パワー ) を感じ取れた。
攻撃特化か。
ユニークスキル『 限定者 ( サダメルモノ ) 』とエクストラスキル『自己再生ex』を獲得している。
他には特殊能力やスキルを獲得せず、その身体能力を大幅に伸ばしたようだ。
ユニークスキル『 限定者 ( サダメルモノ ) 』とは、限定能力しか使用出来ない空間を創りだす能力。
しかし、これは相手が同意しなければ抵抗され、限定空間を 拒否 ( キャンセル ) される事になる。
使い勝手の悪い能力だった。
強制で引きずり込む事も出来るかもしれないが、相手次第だろう。
同格では、まず成功しない。
おそらく、聖結界と同様に、スキル使用禁止などのルールのある空間に設定しておけば、身体能力特化が生きるという思惑なのだろう。
面白い発想である。
使い方を考えれば有用かも知れないので、『 誓約之王 ( ウリエル ) 』に取り込む事は忘れない。
空間系なので、簡単に追加可能だったのだ。
「まず、昨日の第一試合の覇者、ゴズール!
100年の争いに終止符をうち、本戦出場権利を獲得!
その力は、 魔物の国 ( テンペスト ) に吹き荒れる新たな風を巻き起こす!」
ソーカはノリノリで言葉を紡ぐ。
向いてるな。
見た目も可愛い感じで、観客受けも良いようだ。
尻尾と羽と角があるけど、そんな事は"可愛い"の前には何の問題にもならないのである。
「そして、このゴズールこそ、 魔物の国 ( テンペスト ) の誇る 地下迷宮 ( ダンジョン ) の覇者なのだ〜!
その強さ、刮目して見よ! そして、倒す自信のある者は迷宮へと向かうが良い!!」
ノリノリだ。
きっちり迷宮の宣伝まで。
まだ解放してないから、今迷宮がどうのと言われてもピンと来ないだろうけどな。
まあ、この強さを見てから、迷宮に挑む者が出るかどうか。
一回戦目でどれだけ活躍するかにもよるな。これだけ宣伝したのに、アッサリ負けたら舐められるかも。
だが、そこは考えようだ。
舐めてくれる方が賞金目当ての挑戦者が増えるのだ。
まあ、相手次第。クジで全てが決まるだろう。
続いて、ダグラ。
ダグリュール三兄弟の長兄。
ダグラ、リューラ、デブラの挨拶は、昨日の勝利の報告と同時に受けている。
何でも、父であるダグリュールに、この国で色々学んで来いと送り出されたそうだ。
『雑用でも何でも致しますので、この国への滞在をお許し下さい、魔王リムル様!』
と、三人揃って頭を下げられたのだ。
面倒なので、シオンに付ける事にした。本人達の暗黙の希望にそったのだ。
"シオン命"と書かれた服を着ていたし……。
現実を知り、幻想が砕けるのは時間の問題だが、それもまた彼等の生き方である。
パワーだけは凄まじい。
だが、この長男が最もバランスが取れていて、強いのだそうだ。
「続いて、第二試合制覇のダグラ!!
その圧倒的なまでの 覇気 ( オーラ ) を放つだけで、ジュラの大森林の魑魅魍魎を吹き飛ばした!
その姿は正に圧巻。まだ見せぬ本気は、果たしてどこまでのものなのか!?
その力は、 魔物の国 ( テンペスト ) の幹部達に通用するのか?
期待が高まります!」
その紹介に合わせて手を振るダグラ。
ゴズールの静かな闘志に比べると、余裕が感じ取れる。
果たして、どこまでその余裕が持つだろうか。以前のままなら、幹部には通じないだろうけど。
さて、次は勇者マサユキ、か。
コイツの実力は本物か否か。今日の試合で判明するだろう。
とはいえ、今日は4試合なので、クジ次第では明日だけどね。
「そして、昨日の第三試合の覇者、勇者マサユキ〜!!
その華麗な剣技を見た者はいない! 何故なら、抜かれたその時は、既に死んでいるからだ!
圧倒的強さで、名を馳せて、若くして勇者を名乗るその男。
その甘いマスクに見惚れる者が後を断たず、その目で見つめられて落ない女は居ないと言う!
マ〜サ〜ユ〜キ〜!! 本戦でその勇姿を見れる者は幸せ者だ〜!!」
本当かよ?
本当にそんなにモテるのか?
というか、あの宣伝文、ソーカが考えてるのか?
だとしたら、思わぬ才能だぞ。
大半が嘘で褒め殺しの域じゃねーか。何が、マ〜サ〜ユ〜キ〜!! だ。
真面目に聞いてると頭が可笑しいと思われそうだ。
こんな宣伝されて、一回戦負けだと恥ずかしいってものじゃない。
これはある意味、嫌がらせだな。
ソーカなりの、高等な嫌がらせに間違いないと思う。
残りは、特別枠と幹部達だ。
まずアルノー。
「さ〜て、続いて、特別枠の選手紹介で〜す!
最初に紹介するのは、聖騎士アルノー・バウマン!
その名も名高き聖騎士最強の男!
我等、 魔物の国 ( テンペスト ) の幹部達と熱い戦いを繰り広げ、互角に戦い友情に芽生えた〜!
狙うは完全勝利! 引き分けは男の 誇り ( プライド ) が許さない。
今回は、優勝を狙って、その実力を発揮する〜!」
うん。
本当に、凄い才能だ。
アルノーは追い込まれた顔で、額に汗が浮かんでいる。
何が引き分け、だ。
引き分けてすらいなかったのに、引き分けすら許されない空気になっている。
ソーカって、マジで悪魔の血でも引いているのか? 追い込みのかけ方が半端じゃないぞ。
天然ガビルの妹とは思えない悪辣さである。
「次も特別枠の選手! その名は、ダムラダ!!
謎の組織より派遣された、謎の男!
今回参戦した目的は、武力の押し売りだ〜!
傭兵として、その力を誇示出来るのか!?
魔王リムル様も興味深々。注目が集まります!」
いやいや。
興味深々なのは当たってるけど、謎の組織って何だよ……。
言われた方を見やれば、不敵な笑み。
問題ないようだ。名前バレしても大丈夫なようで良かった。
まあ、相談は受けていたのだろうし、問題あるなら止めるわな。
「続いて、特別枠より、謎の覆面男の乱入だ〜!
正体不明の 獅子覆面 ( ライオンマスク ) 、正義の味方か悪魔の使者か!?
果たして、どのような戦いぶりを魅せてくれるのか!?
あっと、ここでとある匿名の人物より 伝言 ( メッセージ ) です。
『判っているだろうが、無様な戦いを見せたら、覚悟せよ』
との事。
どういう意味でしょうか? わからないけど、楽しそうだ〜!」
いや、判かってる。
ソーカのヤツは判ってて、楽しんで追い込んでいる。
追い込まれた 獅子覆面 ( ライオンマスク ) の御武運を祈るしかないな。
「続いて、特別枠より最後の選手。
究極の 戦闘狂 ( バトルマシーン ) であり、彼の前には聖も魔も意味が無い!
匿名人物より受けた紹介文では、
『アタシのベレッタ、マジ最強!』
となっております。
しかし、まともな実戦は今回が初めてなのだとか?
どうしてそれで最強なのか理解に苦しみますが、ともかく期待は高まります!」
いーや。
まったく期待してないよね?
強引に繋げて紹介を終わらせやがった。
確かに、ベレッタの存在を知る者は少ないし、その強さも未知数。
言ってる事は間違ってはいないけどな。
「さて、ここからが真の強者の登場です!
魔物の国 ( テンペスト ) の誇る幹部達。
その実力は一騎当千。
先ずは最初の一人、ゴ〜ブ〜タ〜!!
そのニヒルなマスクに憧れる者も多い、エリート戦士!
天才の名を欲しいままにする、若き戦士長。
果たして、今回はどのような戦いを魅せてくれるのでしょう!」
やめるっすよ〜!! というゴブタの心の声が聞こえてきそうだ。
青褪めた顔になっているぞ。
そりゃそうだ。どう見ても、 獅子覆面 ( ライオンマスク ) さんに当たったら半殺しでは済まないだろうし。
まあいいか。
ゴブタも必死になって、本気出すかもしれない。
「さて、次の選手はガビル!
飛竜衆 ( ヒリュウ ) を率いる、大空の戦士。
その身に宿す龍の血を滾らせて、無敵の戦士として覚醒出来るのか!?
ちなみに、私の実の兄でもあります。
父も見ているので、無様な戦いを見せる訳にはいかないでしょう!」
おお……
実の兄にも容赦無いな。
いや、追い込まれてからが本番だ。
誰に当たるか判らないけど、案外覚醒したガビルが見れるかも知れない。
アビルも見ているのは本当だし、少しは期待してもいいだろう。
「前座は終わり、ここから紹介するのは真打です!
次に紹介しますのは、 猪人族 ( ハイオーク ) のゲルド!
魔物の国 ( テンペスト ) の守護神。鉄壁の守りの要です!」
おおっと、前座と言い切りやがった。
確かに、この先は本当に強いけど。口調も変わり、真面目に紹介モードになってやがる。
「ハクロウ選手は、剣の達人。
剣術指南を任命され、我等を鍛えてくれる師匠でもあります。
シオン選手は、魔王リムルの第一秘書。
その知的な風貌に相応しく、出来る女そのもの。
リムル様を守り、また相談に乗る。女の憧れの地位を独占していると言えるでしょう」
はあ?
裏で手を回したのか?
聞き捨てならんが、シオンは満足そうに頷いている。
どうやら、何らかの取引を行なったのは間違いなさそうだ。
「ソウエイ様は、私の上司でもあり、憧れの 男 ( ヒト ) でもあります。
何でも完璧にこなし、その実力を知る者はいないと言われています。
今回も、きっと素晴らしい戦いを魅せてくれるでしょう!」
ソウエイは"様"付けか。
しかも、頬を染めつつ、本気で言っているね。
まあいいけど。
「さーて、今大会唯一、人型では無い獣型の選手、ランガ!
リムル様の 護衛 ( ペット ) として君臨し、何者も寄せ付けぬ孤高の狼!
続いて、本大会優勝候補の一角、ディアブロ選手!
本来の実力は疎か、まともな戦闘を見た者も居ないと言います。
今回、その秘密を暴く事の出来る選手が、果たして存在するのかどうか!?
次元の異なる戦いが見られそうです!
さーて、それでは最後の選手を紹介しましょう!
魔物の国 ( テンペスト ) の総大将、ベニマル選手です!
魔王リムル様の配下の中で、最強と言われるその力、一体どれほどのものなのでしょう。
また、ソウエイ様と互角と言われておりますが、果たしてその噂は本当なのか!?
今回、その真相が明らかになりそうです!」
流石に、最後の紹介はまともだったな。
だが、一体誰が強いのか、本当にわからん。
ディアブロ、ランガ、ソウエイ、ベニマル。
この4強に加えて、シオンにベレッタ。
ハクロウの技術を学んでいるので、最近ではレベルも上がっているようだし……。
あと、 獅子覆面 ( ライオンマスク ) って、元魔王のカリオンさんだろ?
あの元魔王に対し、うちの幹部が何処まで戦えるのか。
非常に楽しみであった。
選手の紹介が終わり、クジを引いて対戦相手を決める。
トーナメントになっているので、一日目と二日目で4試合づつに分けられる事になるのだ。
早速クジを引いて貰い、トーナメント表に名前が記入されていく。
結果。
一日目
第1試合…… ベニマル vs ゴズール
第2試合…… ソウエイ vs ダグラ
第3試合…… ゴブタ vs 勇者マサユキ
第4試合…… ガビル vs ランガ
二日目
第5試合…… アルノー vs ベレッタ
第6試合…… 獅子覆面 ( ライオンマスク ) vs ディアブロ
第7試合…… ハクロウ vs ダムラダ
第8試合…… ゲルド vs シオン

となった。
公正なクジの結果なので、恨みっこ無しなのだが、ガビルは可哀想だな。
調子者だから、調子良く勝てる相手なら良かったが、ランガ相手では無理そうだ。
絶望的な表情だし、うん。精々頑張って欲しい。
あとは、ゴブタ。
もし、勇者が本当にヒナタと同格なら、ゴブタに勝目は無いだろう。
勇者に対する試金石としては、ゴブタは適任かも知れない。
精々此方も頑張って欲しい所だ。
後は、俺の見立てでは結構良い勝負になりそうだ。
ちなみに、 智慧之王 ( ラファエル ) による完全予想も出てはいる。
面白くなくなりそうなので言わないけどね。
自由意思があれば、一万回の演算を覆す行動を取る場合もあるらしいので、確定は出来ないそうだ。
逆に、相手が操られていたら、100%の行動予測が可能なのだとか。
さてさて、予想はともかく、結果はどうなる事やら。
さっそく最初の試合が開始されようとしていたのだった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
第1試合…… ベニマル vs ゴズール
何やら中央で睨みあっている。
ソーカの「始め!」という掛け声にも反応していない、
「ふっふふ、最初にアンタに当たってラッキーだぜ。
ベニマルさんよ、アンタが総大将なんだってな。だが、それも今日までだ!
今日からは、この俺、ゴズール様の時代よ!!」
などと、いきなり噴出しそうになるセリフを述べるゴズール。
やっべ、名前付けたせいで力を得て、増長しちゃったみたいだ。
これは、俺への反逆も……そう思ったのだが、
「見ていて下さい、リムル様!
この俺、ゴズールが、新たなる片腕となって御覧にいれます。
その際は、シオン殿をこの俺の嫁に!!」
俺に向けて恭しく礼をしつつ、そんな事をほざき出す。
そのセリフに、
『シオン様はこの俺の、俺達の嫁よ!!』
ブーイングが飛び交った。
一部に熱狂的なファンを持つらしい。
まあいいや。バカバカしい。
というか、もう試合始まってるぞ……。
「判ったから、真面目に試合しろ。
口だけの馬鹿は要らんぞ」
拡声器 ( マイク ) で言ったので、会場中に響き渡る。
観客は爆笑であった。パフォーマンスの一環と受け取ったようだ。
本気 ( マジ ) でやってるから、勘違いして貰って助かった。
大恥じである。
「始め!」
再びソーカが合図を出した。
今度は真面目に戦いが始まる。
ゴズール優勢。そして、地面に突如描かれる魔法陣。
「掛かったな、総大将の座は俺のものよ!
ユニークスキル『 限定者 ( サダメルモノ ) 』、発動!」
ほう、早速使用したようだ。
馬鹿には使いこなせない能力。地面に描いた魔法陣で、 拒否 ( キャンセル ) を防止したのか。
なかなかやる。
だけど、どう見てもベニマルはわざと受けてるようだ。
あれだけ挑発されても、激昂する様子もない。以前なら間違いなく切れている。
この国の総大将を任せてから、ベニマルの短気な部分が無くなった。
そして、冷静なベニマルは恐ろしく強い。
今ではハクロウと闘っても、何時までも剣戟が終わらぬ程なのだ。
ハクロウ並みに身体能力を制御した上で、である。つまり、同レベルまで剣の腕が上達したという事。
短気では無くなった事により、注意深く、相手の言葉を聞くようになった。
それ故の成長。
ゴズールの『 限定者 ( サダメルモノ ) 』による能力制御は、スキルや妖術、魔法の禁止であった。
「わははははあ! アンタは炎熱攻撃を得意とするそうだな?
どうだ、得意技を封じられた気分は!
俺に総大将を譲るというなら、俺の片腕として副将にしてやってもいいぞ?」
うーむ。
ゴズール、調子乗り過ぎだ。
やはり簡単に名前付けるのは駄目だな。こういう馬鹿を量産しそうだし。
俺に忠誠があったとしても、実力を省みず先輩を敬えないようでは話にならん。
先輩が間違ってるならともかく、だが。
ディアブロなんて、どう見てもヤツより弱い相手にも丁寧に接してるのに。
まあ、アイツは怒らせたら怖そうだから、誰も舐めた態度を取らないようだけど……。
さて、ベニマルはどう出るか?
以前なら、この段階で相手を殺してた。良くて半殺し。
ゴズールは相手の能力を封じ、調子に乗って大斧でベニマルを攻め立てる。
妖術等を封じている以上、自分の方が力も速さも上だと信じているのだろう。
しかし……
「おい、お前の力はその程度か?
もう他に遣り残した事はないのか?
そろそろ30分経つ。それまでは好きに攻撃を許す。
せいぜい後悔しないように、気合を入れるがいい」
30分。
それは、俺が事前に設定した試合時間。
大体一試合30分程度だと、ベニマルと相談した事があったのだ。
という事は、その時間を守る為に、敢えて相手に好き放題させているのか。
ベニマルの成長ぶりに驚くしかない。
「はあ? 寝ぼけた事を言うんじゃねーぞ!
俺様の攻撃に手も足も出ないで、受けるので精一杯じゃねーか。
負け惜しみも大概にしやがれ!」
ゴズールは実力差に気付かず、一方的にベニマルを攻めているつもりのようだ。
力と速さがゴズールの方が上?
いや、違う。
ベニマルのヤツ、何時の間にか、大幅に能力を上昇させているようだ。
もしかして、 魔素量 ( エネルギー ) の最大値も大幅に上がっているのかも知れない。
妖気を抑えているから、上がっていても気付き難いのだ。
智慧之王 ( ラファエル ) はきっちり測定しているんだけど、聞かないと教えてくれないし。
そして、30分経過した瞬間、
「時間だ」
ボソっと、ベニマルが呟き、ゴズールがその場に膝をつく。
左手に紅蓮丸と言う真紅の刀身の刀を持ち、大斧の攻撃を受け流すだけだったベニマルが、時間経過と同時に反撃したのだ。
右拳がゴズールを捉え、練り込まれた浸透勁をゴズールの鳩尾に叩き込む。
その一撃で、魔素の流れを乱され、立つ事も出来なくなるゴズール。
結界を張っていたとしても、あの一瞬で全てぶち抜いたのだろう。
圧倒的すぎるベニマルの、鮮やかな勝利であった。
「お前は性根から叩き直す必要があるな。精々、覚悟する事だ」
その言葉を受けて、ゴズールが気絶した。
第1試合、終了である。
駄目だ、ダイジェストでササっと流そうとして失敗しました。
ちょっと長引いてます。
もう暫くお付き合い下さい。