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128話 三者同盟

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128話 三者同盟

ヒナタとルミナスが椅子に座って俺達を待っていた。

その表情から、何やら問題が起きたというのは予想出来る。

いや、本当に下手に遊んでいた事がばれなくて良かったかも知れない。ばれていたら何を思われるやらわかったものではなかった。

「フューズ君、まあ中に入ってくれ」

そう言って、執務室に隣接して用意されている応接室へとフューズを誘った。

シュナは俺が何も言わなくても、お茶を用意しに去っている。

本当に良く出来たお姫様だ。どこかの残念秘書とは大違いなのだが、その秘書も自分の親衛隊や部下達の訓練を真面目に行っているらしい。

遊んでいた俺が文句を言うのは、筋違いというものである。

いや、遊んでいたのではなく勉強してたんだった。

自分で間違っては駄目だな。気をつける事にしよう。

フューズを伴い、ヒナタとルミナスに向かい合う形でソファーに座る。

最高級の素材を用いたクッションが、俺の身体を優しく受け止めた。

「やあヒナタ、久しぶり。ルミナス、さん、も初めまして、ではないな。久しぶり。

此方はフューズ君。自由組合のブルムント支部長さんだ」

俺は席に座る二人に向けて、フューズの紹介を行った。

「は、初めまして! 自分は、ブルムント王国にて、自由組合の支部長をさせて貰っております!

この度は、栄光ある西方聖教会の最高指揮者である、ヒナタ様にお会い出来て、光栄であります。

そして、此方の美しいお嬢様は初めてお見受け致しますが、さぞかしご高名なお方なのでしょう。

無知な粗忽者ですが、何卒お見知りおき下さい!」

フューズは緊張しまくりつつ、挨拶を行っている。

だが、そんなフューズを無視し、

「リムル、と言ったか? 魔王達の宴 ( ワルプルギス ) 以来だな。

息災そうで何より。だが、その男はいかんな。

自由組合は敵だ。貴様、気付いているのだろう?

ここにいるヒナタを操っていた者の正体を。

それを知りつつ、何故、自由組合の縁の者と付き合っているのだ?」

魔王の 一柱 ( ひとり ) であるルミナスが、俺に責めるような口調で問うてきた。

銀髪の可愛らしい少女だが、その 金銀妖瞳 ( ヘテロクロミア ) の瞳は強い輝きを放っている。

八星魔王 ( オクタグラム ) の 一柱 ( ひとり ) である彼女が、何故ここに?

何故ヒナタと行動をともにしているのかは疑問だが、下手な対応をして敵対するのは望ましくない。

西方聖教会との同盟は、 魔物の国 ( テンペスト ) が人間社会に溶け込むのに願ってもない効果を得られるだろう。

何としてでも成立させたい話なのだ。ヒナタとルミナスの関係が判らぬ以上、隠し立てするよりも全てを打ち明ける方が得策かも知れない。

ヒナタが知りえる情報は全てルミナスも知っているものと仮定して、隠し立てすべき情報を取捨選択する事にしよう。

だが、先ずはフューズをこの二人に信用させる事から始める事にする。

タイミング良く、シュナが用意したお茶を持って入室してきた。

シュナがお茶を配り終え、一礼し部屋を退出する。

それを横目で確認し、

「うむ。では、先にフューズ君の紹介を兼ねて、調べて貰った事を報告して貰おうかな」

そう言って、フューズに目で合図を送った。

それだけで、気苦労の絶えないフューズは俺の意図を読み取ったようだ。

「了解。どうやら、俺が疑われているみたいだな。

先にその疑いを晴らしておきましょうかね……」

そう言って、今現在の自由組合内部の状況を、説明し始めた。

フューズの説明は簡潔でわかりやすかった。

イングラシアの本部は9割方がユウキの手の内にあるらしい。

副総帥のカガリという女性まで、ユウキに心酔しているとの事。

他にも支部長クラスの能力を持つ上位の冒険者の纏め役達が、ユウキの一派であるらしい。

という事は組合の組織として、ユウキを糾弾するのは難しいだろう。だが、本部以外は思ったよりも影響を受けてはいないようだ。

そこまで思考誘導や精神支配の能力が万能では無いようなので、一安心というものである。

更に有益な情報としては、市民に対しては思考誘導しか行っていないようだということ。

魔物の被害が大きいので、魔物は害悪。そういう情報を流して、魔物に対する恐怖を植えつける程度の情報操作しか行ってはいないようだ。

この程度であれば、実際に貿易などを行い俺達の有用性を知る内に、お互いの信頼関係を構築するのは不可能では無いと思う。

何しろ、 地下迷宮 ( ラビリンス ) を取り囲むように出来た 魔物の国 ( テンペスト ) の衛星都市では、魔物であるオークやゴブリンと冒険者が一緒に食事を採る事もあるくらいなのだ。

そこには確かな信頼関係が構築されていて、人間と魔物が理解し合える事を証明していた。

「だが、これ以上の調査は不可能だぜ。

カガリ副総帥を調べに行った者が一人、記憶を消されたようだ。

廃人にされて、街をさ迷っていた所を保護したのだが、自分の名前すら忘れてしまっていた。

カガリがやったという証拠は無いが、状況から見て間違いはない。

此方から情報戦を仕掛けた以上、直接文句を言う事も出来ないだろうし、実際お手上げさ」

どうやら、ある程度以上は手を出せないとの事だった。

だが十分である。

これなら、子供達をささっと救出するのも問題なさそうだ。

俺が手を出したら、魔王に攫われたとか問題になりそうで躊躇していたのだけど、マサユキ辺りに頼んで救出作戦を実行するなら問題ないだろう。何しろ、アイツの行動は何でも都合良く相手に解釈して貰えるというものだし、適任である。

ユウキの支配力が絶対的で無さそうだとわかった以上、遠慮する必要は無い。

子供達を救出した後は、即効で潰す事にしよう。遊んでいると思われると困るし、少しは働いておかないとね。

しかし、記憶の消去か。厄介な事を……けど、俺なら治癒可能かも知れない。

「フューズ、その記憶を消された人は、俺が治癒してみるよ。

魂と脳が無事なら、何とか出来るかもしれない」

「何、本当か? 頼む、何とかしてやって欲しい!」

俺の申し出に、フューズは期待を込めた目を向けてくる。

自分の命令で、部下を廃人にしてしまったのだ。治る可能性があるならば、期待するのも当然だろう。

嬉しそうな表情になり、あれの提案を受け入れてくれた。

魔王 ( オレ ) の申し出をアッサリ信じるあたり、フューズは完全に俺を信用してくれたようで嬉しい。

そして、そんな俺達の遣り取りを見て、

「リムル、貴様は人間と共存なぞと、本気で出来ると思っているのか?

人など、口で何を言おうとも、心で何を考えているか判らぬ生き物だぞ。

精神を支配し、我等の管理下に置いてやるのが、人間達にとっても幸せであろう?」

ルミナスが冷たい眼差しで水を差す。

彼女なりに考えがあるようだが、俺の考えに真っ向から対立する意見である。

リスクを考えた時、それも一つの意見であるのは間違いないのだが――。

「おいおい、お嬢さん。綺麗な顔をしている割に、言う事は酷いな。

人間を精神支配って、あんた何様だ?

例えお偉い貴族様であってもだ、一般人を見下すのは良くないぜ?」

フューズが腹を立てたのか、ルミナスに噛み付いた。

そうか、フューズにまだ紹介していないな。先に紹介してやらないと、フューズが地雷を踏み抜きそうだ。

「まあまあ、フューズ君。ちょっと落ちついて。

此方はルミナス。

八星魔王 ( オクタグラム ) の 一柱 ( ひとり ) だ。

俺も会うのは二度目で、喋るのも初めてみたいなものだし。

今日は最初だし、喧嘩腰は止めて前向きに話をしよう。

で、こっちはヒナタ。

俺より詳しいんじゃないか? 西方聖教会の聖騎士団長さんだ」

簡単に二人を紹介した。

ヒナタとルミナスも、フューズが俺の依頼で調査した内容を聞き、状況判断でユウキの仲間では無いと判断した様子。

だが、ヒナタはともかくルミナスは、未だにフューズというより人間そのものを信じてはいないようだったけど。

「え、何て? 魔王? 誰が?」

俺とルミナスを交互に見やり、フューズは混乱している。

さっきの発言が喧嘩腰だったのもあり、一瞬で顔が青褪めてしまった。

ちょっと可哀相だし、フォローしてやらないと。

「ルミナス、この男は俺の仲間だ。

先ずは信用してやって欲しい。

人間に対するお前の考え方に干渉する気は無いけど、此方にその考えを強制するのも止めろ。

強制するなら、お前は敵だ」

「何だと? 貴様、新参の癖に妾に意見するか?

喧嘩を売っているのならば買ってやるぞ」

ルミナスが立ち上がり、両手を広げて構えを取った。

フォローするつもりだったのに、喧嘩を売る感じになってしまったようだ。

というか、見た目に反して、えらく気が短い奴だ。我侭なのは魔王だし仕方ないにしても、状況くらいは考えて欲しいのだけど。

流石にここで戦闘になるのは勘弁して欲しいのだが……

「やめろ、ルミナス。ここには同盟をしに来たのだろう?

敵を増やしてどうする?」

ヒナタが少し怒った感じに、ルミナスを宥めた。

「フン」

初めから本気では無かったのか、あっさりとルミナスも怒りを解く。

そして椅子に座り直し、

「確かに、敵対は妾の望む所ではない。

今日来た目的は、神聖法皇国ルベリオス及び西方聖教会併せて、 魔物の国 ( テンペスト ) への同盟申し入れだ」

薄く口元に笑みを浮かべ、そう宣言したのだった。

どうやら、最初から俺の反応を見るのが目的だったようだ。

見た目からは想像出来ない程に、性格の悪い魔王である。

それはともかくとして、俺達はもう一度自己紹介をやり直し、今回の同盟について検討を行う事になったのだ。

………

……

…

つまり、ルミナスが神聖法皇国ルベリオスの支配者だったと?

落ち着いてから話を聞いた訳だが、驚きの新事実が判明したものだ。

フューズなど驚きの余り、口から魂が抜け出たような顔をしている。

そりゃあそうだろう。

聖なる者の住まう神聖法皇国ルベリオスとは、西方聖教会の奉る法皇の住まう都なのだ。

そこが 魔王 ( ルミナス ) の支配下だとは誰にも想像出来ないだろう。

では、法皇とは一体?

「爺、法皇の正体に興味があるらしいぞ?」

ルミナスが言った言葉に反応し、ルミナスの背後に付き従っていた執事が恭しく一礼した。

「確か、設定では現法皇は齢47歳、でしたな」

そう呟いたかと思うと、執事さんが若々しい姿へと変貌したのである。

「お初におめにかかります。現法皇、ジル・リラ・ルベリオスです。

お見知りおき下さい」

若い姿(といっても、壮年だが)に変貌すると同時、神々しい 神気 ( オーラ ) を放出し、純白の衣に覆われる執事さん。

その姿は、壮年の男性になっている。人間で言うと、丁度40歳代の半ば程だろう。

マジかよ。つまりは、この執事さんが、年代毎の法皇を演じていたという事らしい。

チラリとフューズを見ると、目を開けたまま気絶していた。

器用な奴だ。ちょっと感心してしまう。

「って、おかしいだろ! 何で魔王の配下が、法皇様なんだよ!

どうなってやがる!? 魔物なのか? 何で神々しい気を感じるんだよ?」

おっと、気絶してはいなかったのか、スイッチが入ったようにフューズが騒ぎ出した。

「っふ。ジル、説明してやれ」

ルミナスの命令に、

「畏まりました、お嬢様」

恭しく頷く法皇、いや、執事のジルさん。

一種異様な感じになるので、その仰々しい姿で執事の動作を行うのは遠慮して欲しいと思ったのは秘密である。

そもそも、神聖法皇国ルベリオスの成り立ちは、千数百年前に遡る。

吸血鬼の王国 ( ヴァンパイアキングダム ) が邪竜ヴェルドラに滅ぼされた時、幸いにも死者は出なかったらしい。

その時に、ルミナスとクロエは出会ったそうで、色々あったそうだ。

クロエに庇われたとの事だが、それが無くとも怪我程度で済んでいそうではあったけど。

ルミナスの中では、クロエはかなり美化されているのだろう。

そもそも、ヴェルドラは喧嘩友達と遊んでいるだけの感覚だったようだし、凄惨な戦いというよりも、結構一方的に暴れたというのが真相のようだ。

だが、やられた方はたまったものではなく、次は簡単には手出し出来ないように隠れ住む事にしたらしい。

しかし、そこは魔王ルミナス。

隠れるだけでは面白くないと考え、地下帝国を築き上げた。

その地上部分に、彼女達の餌を住まわせる事を考案したのである。

当時、戦乱による貧困や天使や悪魔の争いにより、力ある国家は少なかった。辛うじて東の帝国が形を成していた程度であったらしい。

魔物の脅威にも対抗出来ない国家では、民を守る力はない。

そうなれば当然、難民やそれを狙う盗賊も氾濫し、世は乱れに乱れていた。

そうした世の中だったからこそ、魔王の力で魔物を操り土地を耕し国土を整え、人の心を掌握するのも容易かったのだという。

人は救いを求め、救いの場所へと集った。

ルミナスは、自分の下に集う者には慈悲を与えた。餌として血液(生気)を貰い、守護を与えたのだ。

こうして、いつしかルミナスの思惑通り、国家が形成されていったのである。

そして出来たのが、神聖法皇国ルベリオスであった。

人間に好き勝手させると、争いや混乱を生み出す。それがルミナスの考えなのは、こうした歴史からの判断なのだろう。

それは否定出来ない事だとは思う。けど、だから何だという話でもあるがね。

争うなら争えばいいし、混乱するのも好きにすればいい。

また仲直りするのも自由なら、恨み続けるのも自由だろうし。

そういうのは、管理されてどうこうするものでもないだろう。自由意志で行うからこそ、面白いのだ。

話がそれた。

で、結局国が出来た訳だが、その国を纏める中枢は自分の意思で操る事が望ましい。と、ルミナスは考えた。

そこで出番になったのが、自分の片腕である上位魔人であるジルだ。

執事ジルさんは、吸血鬼でありながら聖魔導師としても一流で、日光の下に出る事が可能な超克者の一人だった。

超克者とは、吸血鬼でありながら日光の下に出る事が可能な者であり、現在はルミナスとジルさんの二人に加え、後数名いるらしい。

当時は、ジルさん一人であった為、必然的に彼が法皇に就任したそうだ。

分身を使ったりと色々小細工を弄しつつ、一人何役もこなして神聖法皇国ルベリオスを表から操っていたというから、さぞかし大変だったのだろう。

まあ、そんな訳で、光の化身とも言われる法皇役を長き年月行ってきたジルさんは、特殊な能力を得たそうだ。

それが、ユニークスキル『 神の代理人 ( ハイエロファント ) 』である。

――迷える者や救いを求める者に守護を与え、その精神を支配する能力――

上位の詐欺師とも言える、とんでもなく出鱈目な能力である。

一切の疑問も持たずに住む者への安心を与えていたのが、この能力のお陰であるそうだ。

ぶっちゃけ、闇に生きる魔物が、この光の能力を得る自体、非常識であった。

その辺りの説明を聞いている時、ヒナタが苦々しい顔をしていたのが面白かった。

教義こそ全て! なんて格好いい事言っていたけど、真相を知ってしまうと黒歴史である。

ニヤニヤしつつヒナタを見た時、目があった。

殺されるかと思うほど、冷たい視線で睨まれた。怖いので、この事でからかうのは止めた方が良さそうだ。

知らないふりをしてやるのも優しさだろう。

と、そんな感じで執事ジルさんの説明は終わる。

次はヒナタの番で、何故同盟の話になったのか説明して貰った。

子供達を救出に向かい、ユウキと一戦交えた事。

ヒナタの死亡と、勇者の覚醒。

ルミナスによるヒナタ蘇生と、勇者クロエとルミナスの奇縁。

そして、勇者クロエの現状と、対ユウキを目的とした同盟の必要性。

なるほど。

俺の懸案であった子供達の救出は、ヒナタが代わりに行ってくれたらしい。

有り難い話である。

「で、その子達はどうしているんだ?」

「ああ、この国を見学して回っている。剣也などは、強くなってクロエを見返すと息巻いていたよ

余程自分達に挨拶せずにクロエが去ったのを気にしているのだろう」

ヒナタの説明に納得する。

だが、クロエの気持ちも理解は出来る。

自分だけ忘れられていたのも辛いだろうし、一人だけ大人になってしまったのだ。

勇者として、過去を経験して来た肉体が目覚めた時、現在の力無きクロエは勇者の影に飲み込まれて存在を認識されない状態になったのだろう。

その存在を認識出来るのは、もとからクロエを知っていて 究極能力 ( アルティメットスキル ) に目覚めている者のみ。

さぞかし心細かっただろう。

ヒナタの魂の力を得て、過去に旅立つ。どれだけ、苦労して、過酷な旅を……。

「リムル、お前に渡された聖霊武装の 複製 ( コピー ) 品。

あれは、クロエに譲ったぞ。私の魂と共に過去に行き、私達を守ってくれた。

あの武具には助けられた。礼を言う」

ヒナタが真っ直ぐに俺を見つめ、礼を言ってきた。

照れるから止めて欲しい。

だが、そうか……

「お前も、クロエと一緒に過去を旅して来たんだったな。

クロエを守ってくれてありがとう」

「よせ、礼を言われる事ではない。当然の事をしたまでだ」

俺の礼を、ヒナタは軽く受け流す。

勇者に魂のエネルギーを譲り渡し、今は残滓が残るのみだというけれど――それでも、ヒナタもまた、勇者だと思う。

戦う力は無くなったと、少し悲しそうに言っているけど、ヒナタの心が弱いとは思えない。

以前とは違う、確かな強さを身に付けて、ヒナタもまた成長したのだ。

――俺には想像も出来ない、長い時の旅を経て。

ヒナタの話も終わった。

しかし、やばかった。

ヒナタがそんな大変な思いをしている時、遊んでたなんて言える訳がない。

最初に上手く誤魔化せたのは僥倖だった。

別に遊んでても問題ないと思って開き直る事も出来たのだが、もし開き直っていた場合は、今頃どう思われているやらわかったものでは無さそうだ。

正しい選択を選べて一安心である。

さて、ヒナタの話の内容について考える。

信じられないような内容ではあるが、クロエは勇者になったらしい。

しかし、ユウキに支配され、三つの命令を行う迄は自由には動けないようだ。

話に聞く限り、最強に近い能力に思える。時を操る事は出来ないだろうけど、止めるに近い事は出来そうだ。

最強の勇者を誕生させる為に、長い時を旅させる、か。

しかも、一度未来が滅びに向かい、俺もそこでは死んだらしいし。

でも、どうだろう?

確かに、初見でヒナタと戦いになったら、敗北しただろう。それは間違いない。

けど、ひょっとしたら、俺だけ生き残ってしまっていたりして。

だとすれば……いや、止めよう。

仮定の話をしても仕方ない。

ともかく、クロエは無事なのだ。先ずはクロエの救出を優先すべきである。

ルミナスの目的もクロエの救出にあるそうだし、その為に同盟も辞さないそうだ。

残りの子供達も連れて来てくれたそうだし、だとするとイングラシア王国に対する心配事は無くなった訳だ。

心置きなく、ユウキと敵対しても問題なさそうだ。

「よし、状況は理解した。

此方こそ、同盟をお願いしたい」

俺の言葉に、頷くヒナタとルミナス。

フューズは目を彷徨わせ、

「なんてこった……こいつは、とんでもない事になったぞ……

大体、何でいつも俺が来た時に、こんな重大な話をしてやがるんだ。

毎回毎回、おかしいだろ。

俺は、しがない雇われの支部長でしか無いんだぞ……

あんな安い料金で請け負う内容じゃ無いだろうが!

俺に何の恨みがあるって言うんだ……」

真っ白に燃え尽きたように、ブツブツ呟いている。

考えてみれば、彼の役回りは毎回こんな感じだ。

嘆きたい気持ちも良く理解出来るのだが、ここは聞かなかった事にしよう。

彼には、まだまだ頑張って貰わないといけないのだ。

こうして、フューズの嘆きを無視して、神聖法皇国ルベリオス及び西方聖教会そして、 魔物の国 ( テンペスト ) の三者同盟は成立したのである。