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161話 神ならざる魔王の所業

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161話 神ならざる魔王の所業

カリギュリオは、自身を優しく包み込む暖かさを感じ、目を覚ました。

(こ、ここは?)

自分が今まで何をしていたのか、俄かに思い出せないカリギュリオ。

銀髪の十歳を少し超えたばかりと思われる少女が、天使のような 微笑 ( ほほえみ ) を浮かべて何事か作業を行っていた。

横目で見れば、倒れた仲間――断言は出来ないが、クリシュナだろう――に手を翳し、その手から虹色の光が倒れた仲間に注ぎ込まれている。

暫くすると、その者――やはりクリシュナだったようだ――も薄目を開けて、此方と視線が交差する。

ただし、目覚めたばかりの自分と同様に現在の状況に戸惑い、現状を理解出来てはいないようであった。

銀髪の少女はカリギュリオ達が目覚めたのに気付く事なく、次々に同じ作業を繰り返していく。

部屋に集められていた100名程に対し同じ作業を終えた時、ようやく満足そうに頷くと此方を向いた。

「よう、目覚めてるんだろ? 調子はどうだ? 名前、思い出せるか?」

気軽な口調で、話しかけて来る少女。

しかし不快さは感じなかった。

少女が可憐だった事も理由の一つだろうが、少女の持つ気配がカリギュリオに叛意を持つ事を許さない。

戸惑うカリギュリオやその他の仲間の様子を見て、

「あれ? 失敗したか? 術式は完璧だったハズなんだけどな……」

と困ったような表情をする少女。

どうやら自分達は、何らかの術に掛けられたようだと悟るが、身体に異常は感じない。

強いて言うと、力が入りにくい気がする程度である。

そこまで確認していると、唐突に、 魔物の国 ( テンペスト ) に侵攻して戦争中であった事を思い出す。

「あ、悪魔は? あの赤い髪の悪魔はどうなった? 我等は生き延びたのか?」

叫ぶカリギュリオ。

その発言で、ようやく仲間達も直前までの記憶を取り戻し、現状の異常性に思い当たったようである。

確か、カリギュリオ達は 悪魔 ( ディアブロ ) に殺害されたはずなのだ。

自分の攻撃が一切通用せず、 悪魔 ( ディアブロ ) の手刀が自分の心臓を握り潰したのを、カリギュリオは思い出したのだ。

だからこそ、自分が生きている事に疑問を覚えるカリギュリオ。

「お、思い出せたか? 自分の名前も覚えているか?」

質問に頷きつつ、

「我輩は、カリギュリオと申す。

帝国機甲軍団・軍団長であり、此度の作戦の総司令官を任されておる。

作戦内容は機密事項故、ここでは言及出来ぬが、許されよ。

それよりも、貴殿が我等を救って下さったのか?」

勢い込んで聞く。

あの状況で自分達を救出するなど、余程の者でなければ不可能であろう。

あの悪魔は、正しく悪魔の王たる実力者であった。

その悪魔を前にして自分達を救出可能となると、風の噂に聞く"勇者"しか心当たりが無い。

帝国近衛のNo.1〜10ならば可能かも知れないが、一人で出来るかと問われれば疑問が残る。

まして、近衛ならば顔も知っているし、カリギュリオに隠し立てする意味もないはずだ。

自分の知りえぬ人物で、それ程の実力者に思い当たる人物など居ないのである。

「ん? 作戦も何も、お前達の軍を全滅させたのは俺達だぞ?

多分勘違いしているだろうから説明してやるけど、お前達は死んでいる。

というか、従軍した兵士は全員死亡したんじゃないかな?

生き残りがいるかも知れないけど、それは後でいいだろう。

どうやら記憶も大丈夫なようだし、術式は成功か。

じゃあ、改めて。

初めまして、俺がリムル。魔王リムルだ。

この国で王様をやっている。ヨロシクな!

後、一応言っておくけど、お前達を蘇生させたのも俺だから。

まあその辺も含めて、ボチボチ説明してやるよ」

カリギュリオは何を言われているのか理解出来ず呆然となる。

言葉が脳に達し、意味が理解出来るにつれて、カリギュリオの目は限界まで見開かれて、目の前の少女を凝視した。

この少女がリムル。

自分達が障害と考え、排除すべく動いた敵。

現、 八星魔王 ( オクタグラム ) の一柱である、魔王リムルその人。

この少女が!?

生き返らせた、だと? 誰を? 俺達を、か!?

驚愕と混乱、そして恐怖が心を埋め尽くした。

それはカリギュリオだけではなく、生き返った者全てが同じ反応をしていたのだが。

混乱が落ち着くまで、今しばらくの時が必要であった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

混乱するカリギュリオ達を横目に、俺は天幕から外に出る。

天幕の中の100名は、ディアブロが殺した者達で、この軍団の総司令官及び参謀達だった。

言うなれば、この侵攻を行った最高責任者達である。

丁寧に術式を試し蘇生させたのだが、効果は完璧なようであった。

無論、責任を取らせる為である。

なので、天幕は厳重に結界にて封鎖を行い、ソウエイの監視下に置いてある。

逃亡は不可能であろう。

最も、生き返らせたと言っても、実は仮初の生であった。

きっちりと奪った魂を、わざわざ返却する理由も無いのだ。

攻めて来たのは向こうの都合であり、そこで死ぬのも自業自得である。

ただし、色々な理由があって、今回の蘇生術式を施術する事にしたのだ。

この術は、仮初の生を与える術である。

シオンの死亡事件以降、 智慧之王 ( ラファエル ) による魂の解析は順調に進められていた。

クレイマンから奪った"聖霊の宝玉"は、原材料は人間の魂から出来ていた。

エネルギー量に換算し、人間1万人分の魂に相当する。

しかし、その力は時間制限付きのものである事から、一瞬だけの燃焼により力の増幅を行っているのは明白だった。

事実、 智慧之王 ( ラファエル ) の解析では、人間100名分程の魂を融合し、瞬間出力を高める事が出来るようにしただけの宝珠だったのだ。

名前の割りには大した事の無いアイテムである。

一種のドーピングに該当するのだろうが、こんな物に頼るのでは先が無さそうだと思い、分解させて魂に戻したのである。

まあ、復元も可能だからこそ実行したのだが、その魂を研究に流用していたという訳だ。

人に限らず、魂には質と量が存在する。

質はともかく、動植物に入っている魂のエネルギー量は極小であった。

それに比べて、人間の魂には莫大なエネルギーが込められている。

これは等しく平等に、誰にでも一定数与えられているのは確認済みであった。

その魂のエネルギーを使いこなせるかどうか? それがスキルと呼称する、魂の力である。

魂に刻まれた情報が、力を行使する元になる。

では、エネルギーに直接情報が刻まれるのかというと、そうではない。

まず、自我があり、それを包む 心核 ( ココロ ) がある。

ここに、全ての情報は刻まれる。

その 心核 ( ココロ ) を覆うエネルギー結晶が魂となるわけだ。

宝珠 ( ギジコン ) も、この 心核 ( ココロ ) の投影する受け皿として開発したものであった。

心核 ( ココロ ) にはエネルギーが無い状態。だが、自我はある。

魂の力が無いからスキルは行使出来ないけれど、自我を持って行動する事は可能なのだ。

それは、 宝珠 ( ギジコン ) は魔素にて魂のエネルギーを代用させているからである。

だが、エネルギーの質が違う為、限界があるのは否定出来ない。あくまでも、迷宮を楽しむ為の 玩具 ( オモチャ ) なのだから問題は無い。

何が言いたいかというと、 心核 ( ココロ ) にスキル情報が刻まれていても、魂の力が無ければ行使出来ない、という事なのだ。

今回、カリギュリオ達の蘇生には 宝珠 ( ギジコン ) を用いている。

魂を奪い、そこから 心核 ( ココロ ) を抜き取って、 宝珠 ( ギジコン ) に移したのだ。

宝珠 ( ギジコン ) を創るのは簡単だが、エネルギーには各人から抜き取った"魂の力"の百分の一以下の少量を流用している。

実質、俺に損失は無いが、強いて言えば労働力か。

死者の肉体を魔法で治癒し、 宝珠 ( ギジコン ) を埋め込む。

そして 心核 ( ココロ ) を流し込むのだ。

簡単に言うけど、 智慧之王 ( ラファエル ) さんの圧倒的な演算力あっての作業であるのは言うまでも無い。

個人特定すら難しいその作業を、肉体の遺伝子情報と魂の記録を照合し、一瞬で個人特定をするその様は、正しく先生とお呼びするしかない見事さであった。

こうして、肉体の復元が可能だった者には、 宝珠 ( ギジコン ) を用いて蘇生する事に成功したのであった。

この蘇生にも問題が無い訳では無い。

まず、大きく弱体化する。

魂の力を全て、俺が奪った訳だから当然だ。

今後はスキル使用は不可能だろうし、下手すると魔法の使用にも影響が出る。

だが、鍛えた肉体や修練を積んだ技術は残るので、スキルに頼りっぱなしで無かったならば問題では無いだろう。

そして、もう一つの問題。

此方はどうしようもない。

肉体が残っていない者の蘇生が出来ない事、だ。

当然だ。

俺も万能の神では無い。

肉体情報も無く、魂の記録を元に無から有は創り出せないのである。

人形に入れる案もあるのだが、果たしてそこまでする価値はあるのか?

そもそも、人形の数も足りないのだ。俺がそこまでする義務は無いし、それを行う利点も思いつかない。

残念ながら、運が悪かったと諦めて貰う事にする。

肉体が一部でも残っていれば魔法による修復は可能――蘇生魔法が不可能と言われる理由が、魂の再現が出来ない事――なのだが、全く肉体が残っていない者も居たのだ。

ウルティマの" 破滅の炎 ( ニュークリアフレイム ) "で完全焼失した者や、テスタロッサの" 死の祝福 ( デスストリーク ) "により遺伝情報を完全破壊された者達だ。

後は、恐怖や絶望により魂そのものの死を迎えた者達。

こればかりは、精神的な治癒魔法の手段を持たない俺にはどうする事も出来ないのだ。

結局、蘇生不可能だった者達は、全員で20数万名余にも上った。

94万名の内、20万名が死亡。

だが、本来なら全員死んでいたのだし、この数で済んで幸運だったと言えるのではないだろうか。

実の所、テスタ達が遣り過ぎだとは思ったが、肉体の損傷を防ぐように指示はしなかった。

理由は簡単。

そんな事に気を取られて、此方に被害が出たら意味が無いからである。

俺にとって大事なのは身内だけであり、何の関係も無い他人と身内を比べるならば、迷う事なく身内を守る。

まして、侵略して来る敵兵にも慈愛の心で、などと聖人君子のような事を言うような脳ミソお花畑にはなりたくもない。

なので、蘇生出来ない者がいたが、それは気にすべき点では無いのだ。

無いのだが……俺が平和な国である日本での感性のままだからか、亡くなった方に対しては何とも言えない気持ちになった。

自分の仕出かした事が間違っているとは思わないが、未だに慣れる事は無い。

冥福を祈るのは偽善だろうけど。

それでも、俺は今後も自分の領域を侵す者へは容赦しないし、徹底的な恐怖を与える事を是とするのだ。

カリギュリオ達へ術式を施術し、効果を確かめた。

問題ない事は確認出来たので、大規模に実施する事にする。

迷宮入り口周辺の開けた場所に、凡そ70万名もの遺体が並べられていた。

戦闘終息と同時に、ゲルドが回収して来たのだ。

第一次戦闘の被害者も、転移して回収済みである。

ここに並べられた遺体が、今回の犠牲者の全てであった。

大規模術式展開 ( セイクリッド・バースディ ) 。

天幕から此方を伺っていたカリギュリオ達が、驚愕に目を見開いている。

あの調子では、目が開きっぱなしになるのではなかろうか。

まあ俺の知った事ではない。

さっさと終わらせる事にしよう。

全ての遺体に、複製した 宝珠 ( ギジコン ) を埋め込んでいく。

遺体の修復は、アダルマン以下、神聖魔法の使い手が総出で行っていたお陰で、今は全員綺麗な状態であった。

ここ最近、皆寝る間を惜しんで活躍してくれていた。

死霊であるアダルマンは、寝る必要は無さそうだったけど。

そんな訳で、綺麗な状態の遺体に次々と 宝珠 ( ギジコン ) を埋め込み終える。

続いて、〈反魂の秘術〉ならぬ〈授魂の秘術〉を行う。

魂の再生と違い、これに要するエネルギーはそれ程必要としない。

個々人の特定に莫大な演算が必要なのだが、実行するのは 智慧之王 ( ラファエル ) だ。

全て 先生 ( ラファエル ) にお任せである。

俺には到底出来そうもない、複雑怪奇な術式であった。

だが、傍から見ていたカリギュリオ達には、俺が全て執り行っているように見えたのだろう。

何時しか平伏し、何か拝み奉るような仕草を始めていた。

ちょっと、そんな事されたら居心地悪いんだけど?

だが、術式が終了するまでは苦情を言う事も出来ない。

そんなこんなで一昼夜、居心地の悪い中で70万名近くの〈授魂の秘術〉を行使したのだった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

翌日、蘇生した者達に食事が振舞われた。

蘇生した直後は混乱も大きく、とてもではないがそれどころでは無かったのだ。

大きな鍋にて色々な野菜や肉が煮込まれた、シチューのような独特の味わいのする食べ物。

具が沢山盛られて、温かい。

混乱が収まり、現実を認識しつつあった帝国軍将兵にとって、そのスープは筆舌に尽くしがたい温もりと感動を与えた。

空腹にも気付かず、張り詰めていた空気がほぐされる。

魔王の配下により一度殺された、それは確かなのだと実感する。

だが、自分達は生きている。

魔王は"仮初の命"と言っていた。

安心しろ。普通に生きる分には、何の不都合も無いよ。

恋愛して家庭も持てるし、子供も作れる。

ただし、 魔物の国 ( テンペスト ) に対し不利益となる行動には制限が掛かるけどな!

宝珠 ( ギジコン ) に刻み込んだ"呪"によって、二度と敵対行動は取れなくしている。

そこは了承して貰いたい。

全員蘇生し、混乱が収まった時に、そう告げていたのだ。

だが、そんな"呪"など必要ないだろう、そうカリギュリオは確信していた。

誰が二度も、この様な愚行を重ねるものか。

数百年前のヴェルドラによる災禍の際は、その結果を見て恐怖のみが伝わった。

だが、都市一つ消滅し、そこの住人全てが消え去ったとしても、それに匹敵する災禍を人の手で演出する事は可能なのだ。

だからだろうか? 恐怖は伝わったが、決して倒せないとは誰も思わなかったのだ。

或いは、生き残りが多数いたならば、もっと根源からの不可侵性が伝わったかも知れないのだが。

その点に関しては、今回は間違いが起きようがない。

一度死んだ上で、生き返らせて貰ったのだから。

神ならざる魔王の手で。

愚かなる我等は、余りにも増長していたのだと思い知らされた。

いや、そもそも本当に魔王なのか?

そこから疑問を禁じえないカリギュリオである。

クリシュナ等は、一晩で信仰の対象へと魔王を崇め奉るようになっていた。

先に魔王を拝んだのは自分なので、文句も言えないし言うつもりも無いのだが。

魔王が言う、"仮初の命"だが……

実は、何の問題も無いのだ。

確かに、能力を行使する事が出来なくなり、魔力を行使する事も苦労するようになってしまった。

だが、鍛え抜かれた肉体は、未だ自分の意思に応えてくれるのだ。

肉体が老化し、生物としての寿命を迎えるまで、生きる事を許されたのである。

皆が感謝と畏怖の念を抱いているのに、 魔王 ( リムル ) に対して叛意を持つ者など出よう筈もない。

だが、それとは別の点で問題があった。

帝国に戻るのかどうかで、意見が別れる事になりそうだったのだ。

ともかく一度戻る事を主張する者。

このまま 魔物の国 ( テンペスト ) に恭順すべしと主張する者。

真っ向から意見の対立を招いたのだ。

両者の言い分は理解出来るし、家族を持つ者が帝国に戻ると主張するのも当然だった。

しかし、下手に帝国に戻ると言い出すと、魔王の不興を買いかねない。

助命して貰った以上、魔王の出方に従わなければならないだろうから。

どうしたものかとカリギュリオが思案していると、魔王から召集がかかったのである。

呼び出されて、参謀数名と魔王の御前に出頭する。

畏まるカリギュリオに対し、

「まあ寛いでくれ。今日は相談があるんだ」

そう言って、魔王リムルは、可憐な少女の笑顔で邪悪に嗤った。

結論から言えば、魔王の命令によって、カリギュリオ達の帰還は認められなかった。

あくまでも条件付で、である。

現在、帝国と 魔物の国 ( テンペスト ) は交戦状態にある。

停戦に至っていない以上、戦闘行為は継続しているのだ。

戦時条約を結んでいないので、捕虜という概念はお互いに存在しない。だが、カリギュリオ達は生き返らせて貰った身であり、魔王の言葉に逆らうつもりは無かった。

まして、現在戦争継続中。

そんな中で、自分達を解放出来ない事は、カリギュリオにも十分に納得出来る話である。

カリギュリオ達が魔王を攻める事が出来ないにしても、後方支援に回し別の部隊を動員する事も可能となるだろうから。

なので、戦争終結する迄は、 魔物の国 ( テンペスト ) の下に居るようにと命令されたのである。

その時に言われたのが、

「お前達の食事も 無料 ( タダ ) じゃない。

30万名分までなら賄えるが、70万名分ともなると他国から購入する必要がある。

なので、食べる分は働いて貰うぞ!」

との事だった。

なるほどもっともな事ではある。

ゲルドという将軍に紹介されて、彼の監視下で建築作業を行う事になった。

何でも、30万人以上が生活出来る工業都市を建設するのだとか。

鉱山から取れた鉄鉱石等を首都に運ぶのが効率的でないとかで、鉱山の麓に町を作れと命令を受けた。

馬鹿みたいに簡単に引き受けるゲルド将軍。

「何なら、終戦後にお前等の中の希望者も住まわしてやるから、精々頑張って良い町を頼むぞ。

お前は強欲そうな顔をしているし、丁度いい。

車を大量生産する為の工業都市だ、精々儲けが出るように機能性重視で開発をしてくれよ!」

笑顔の魔王にそう告げられて、拒否権等無いのだと悟るカリギュリオ。

言っている意味は良く理解出来ないが、期待されたのは間違いないだろう。

心が高揚するのを感じ、若干戸惑った。

不満がある訳では無いのだが、この会議も何もなく思いつきだけで出された命令に従う魔物達に途轍もなく不思議な気持ちにさせられたのだ。

町を作れ!

その命令は、 軌道 ( レール ) を引く道を整備する所から始まるのだ。

ゲルド将軍も、人手が足りなかったので丁度良い、と笑っている。

軍団を率いていたのだから、人員編成は得意だろ? そう簡単に言われた。

どうなっておるんだ、この国は?

そんな悩みが一瞬心に浮かんだが、魔王に対する不敬に当たると慌てて考えを放棄する。

それから直ぐに、カリギュリオは悩む間もなくなる程に扱き使われる事になるのだが、本人は未だその事に気付いていない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

カリギュリオが退出すると同時、ディアブロが入って来た。

「手筈通りに進みましたね、我が主よ」

と話しかけるディアブロに頷き返す。

一度、帝国軍が全滅する様を見せつけ、慌てたネズミが逃げ出すのを敢えて見逃す。

これにより、帝国は自軍が全滅――文字通りの意味で――したと思い込む。

クリシュナが懺悔するように、皇帝に緊急通信を行ったと俺に報告して来たが、それもディアブロに放置させていただけの事。

ミランダという名の女の死体は発見出来なかったので、間違いなくソイツがネズミ、つまりはユウキのスパイだろう。

恐らくは、 三巨頭 ( ケルベロス ) の 頭 ( ボス ) の一人。

カリギュリオはミランダに、それと気付かぬように思考誘導を受けていたのだ。

詐欺の手口のようなものだが、持ち前の強欲さを刺激されているだけなので、本人は気付いてもいないだろうけど。

そのミランダも、カリギュリオの敗北を予見し、大急ぎで逃げ出したのだが……監視していたディアブロには筒抜けであった。

更にその外側を、ソウエイの手の者が監視していたのだから、どの道逃げ場は無かっただろう。

敢えて、情報をユウキや帝国皇帝に伝えさせる為に、逃がしたのである。

この情報で和睦を申し出て来るならばそれでいい。

だが、尚戦争を継続するというならば、完全に叩き潰す。

特にユウキは、逃がすと厄介になりそうだ。

帝国と和睦を結ぶにしても、ヤツの身柄だけは確保しておきたい。

戦争は未だ継続中なのだ。叩ける時に叩いておくべきだろう。

今回の防衛戦は、完全なる勝利だった。

カリギュリオには食費がどうのと尤もらしい事を言って脅したが、実質損害は軽微である。

回復薬を大放出し、皆が痛い思いをしたのは確かだが。

その他の損害は、森が一部開拓された程度のもの。

神話級 ( ゴッズ ) 防具一式に、 伝説級 ( レジェンド ) も三 組 ( セット ) 手に入った。

まして、魂を94万名分手に入れたのだ。

大勝利と言っていい。

配下の誰を進化させるかは思案中だが、近い内に褒美として一大発表と同時に行うつもりだ。

勿論、身内だけで。

まだ戦争は終わっていない。

海路上を通り、飛行船部隊が300隻移動しているのを把握していた。

まだまだ油断は出来ないのだ。

一つの勝利に浮かれている場合では無いが、信賞必罰は大切である。

魔王として覚醒して、俺への忠誠が薄れるとも思えないが、ともかく一度実験しておきたい。

それが終われば海上の航空戦力を叩く。

次は、此方の番なのだ。

こうして、 魔物の国 ( テンペスト ) は帝国軍の侵攻を退け、反撃に移る事になる。

帝国侵攻編、終了です!

本当はもっと苦戦させる予定だったのに、どうしてこうなったんだ。

今回の話は、否定意見も出るかも知れませんが、そこはそれ。

一応、以前からこうなる感じにギジコンとか出してましたので。

プロットの修正が必要な感じなので、一旦空くかも知れません。

遅くとも日曜には再開します。

暫くお待ち頂きますよう、宜しくお願いします!