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203話 大魔王カザリーム

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203話 大魔王カザリーム

201話と202話のタイトルを変更しました。

カガリは笑う。

邪悪に嗤う。

全ては計画通り。

憎きレオンに復讐する機会を得た。

そして、今となっては、それは容易い事なのだ。

フットマンに立ち向かったのは、 銀騎士卿 ( シルバーナイト ) アルロスである。

悪魔公 ( デーモンロード ) 級の力を得て、 黒騎士卿 ( ブラックナイト ) クロードと並ぶ強さを得た。

半精神生命体となり、高い不死性と回復能力、そして強靭な肉体を得たのだ。

圧倒的な魔力と 魔素量 ( エネルギー ) は、今までと比較にならぬ程の上位魔法の行使を可能としている。

長い詠唱を必要とせず、上級魔法を発動させる事も可能となっていた。

溢れ出る程のパワーを感じ、世界の深淵を覗き見た気分を味わった程である。

それなのに、アルロスに対するフットマンは、明らかに余裕を見せていた。

その太った身体をコミカルに動かし、機敏な動作でアルロスの剣戟を避けるフットマン。

そして、指を弾くだけでアルロスに邪悪な力が襲い掛かる。

フットマンの能力は、ユニークスキル『 増幅者 ( フトルモノ ) 』である。

この能力の本質は、増幅。

少量の 波動 ( エネルギー ) であれ、 物質 ( マテリアル ) であれ、意のままに増幅する事を可能とする。

故に、 抵抗 ( レジスト ) に失敗した騎士達は、その肉体を増幅させられた上で弾けて死んだのだ。

パチン! と指を鳴らし、その音を衝撃波と変えて撃ち出す事も可能。

その外見に似合わない、凶悪な能力所持者なのである。

ティアに立ち向かったのは、女性騎士団長の二人。

黄騎士 ( イエローナイト ) キゾナと、 白騎士 ( ホワイトナイト ) メーテルだった。

二人は非常に相性が良い。

鉄壁の防御を誇るキゾナに対し、治癒能力の申し子であるメーテル。

二人のコンビを倒せる程の攻撃力を持つ者は、数える程しか居ないだろう。

まして、 悪魔公 ( デーモンロード ) 級の力を得た今、彼女達は敗北など考えられないと自負していたのだ。

対し、ティアは不気味に笑う。

笑いながら、手に持つ大鎌を振り回す。

涙目の道化 ( ティアドロップ ) のティア。それは、生を刈り取る死神の名。

彼女の好物は、懇願の涙。

慈悲を乞う者の涙を見るのが、何より大好きなのだ。

そんなティアが所持するのは、ユニークスキル『 楽天家 ( ムチナルモノ ) 』という特殊能力。

何も考えず、ただ言いなりになる事を最上とする彼女。

そんな彼女に相応しい、命令を受けた時のみ全ての能力を上昇させるという使用に限定条件がある能力であった。

だが、彼女にとっては何も問題にならない。

元々の強靭な肉体と悩まぬ故に不屈の精神を持つが故に、ティアは能力に頼らずとも強者だったから。

何よりも、常に自分に命令をくれる、頼もしき仲間達が居るのだから。

何も悩まない。

だからこそ、より残忍に敵対者へ死を振りまくのだ。

そして、最後の人物ラプラスへは、 赤騎士 ( レッドナイト ) フランと 黒騎士卿 ( ブラックナイト ) クロードが対処している。

赤騎士 ( レッドナイト ) フランは強い。

一度、死を体験した事により、その存在値は大きく上昇していた。

そして、悪魔と融合した事により、それは開花する。

得た能力は、ユニークスキル『 無常者 ( ユルガヌモノ ) 』という。

感情の高ぶり、その他一切に影響を受けない、怜悧な心。

寧ろ、心に動揺を感じれば感じる程に、その強さを増すという不思議な能力。

それは、怒りや恐怖という感情さえも力に変える事の出来る能力。

そして今、弟である 青騎士 ( ブルーナイト ) オキシアンを担ぐラプラスに対し、激しい怒りをフランは感じているのだった。

激しい感情を湧き出る力と変えて、フランはラプラスを睨み付けた。

このままでは剣を掠らせる事さえ出来ないだろう。そう理解して、感情をエネルギーと変え、心は冷静に平常心を保つ。

ラプラスが感情の波さえも読み解くと言うのならば、その全てを悟らせなければ良い話なのだ。

フランはラプラスに対峙しつつ、その持つ能力を更なる高みへと押し上げていく。

黒騎士卿 ( ブラックナイト ) クロードは、レオン配下の中で最強の騎士である。

だが、その心に驕りは無い。

本当の最強とはどういう 存在 ( モノ ) なのか、ユウキの所に居た時に味わったのだ。

"勇者"クロエ・オベール――彼女は別格だった。

そして、混成軍団の上位の者達もまた。

異世界人も多数在籍しており、その持つ特殊能力は厄介であると言えた。

愚直なまでに剣で戦うのではなく、全ての利用出来る能力を利用して戦う術を学んだのだ。

正々堂々というのは、相手も同じ土俵に立つからこそ成立する言葉である。実戦では、生き残った者こそが正義なのだから。

その事を理解し、自分よりも上位の者達の戦い方も研究し、クロードは変わった。

より貪欲に、強さを求めるようになったのだ。

悪魔との融合は契機に過ぎない。自身が思い描いていた力を得る為の。

そして得た能力こそ、ユニークスキル『 戦闘士 ( イドムモノ ) 』であった。

闘う事に特化した、正しくクロードの望んだ力。

クロードは研鑽を怠らず、その能力を開花させる。時間は関係なく、その力は彼の望みに応えてくれた。

そして今、クロードは闘うべき相手、能力を試すべき敵に出会えたのだ。

猛々しい笑みを浮かべると、クロードはラプラスへと挑みかかる。

そして、ラプラスは。

彼は中庸道化連の中で最強の魔人である。

不世出の魔王とも言うべき、凶悪な力を持つ。

見通す力、ユニークスキル『 未来視 ( ミエルモノ ) 』により、彼は数秒先を見通せる。

そして、ユニークスキル『 詐欺師 ( アザムクモノ ) 』により、変幻自在に攻撃を繰り出して来るのだ。

まるで、無から有を生み出すが如く、何も無い空間からナイフが飛び出して来たり、ナイフに見せかけた爆弾であったりと、掴み所が無い始末。

高い身体能力に、戦闘センス。

そして、完全なる未来予知と自由度の高い攻撃能力により、彼は無敵であった。

中庸道化連の副長を名乗るが、戦闘力で見れば会長であるカザリームを上回っていたのだ。

というよりも、旧魔王をも上回る戦闘能力を有していたと言える。

面倒な立場が嫌いだったから、自分がトップに立たなかっただけの事。

気の合う魔人同士、仲良くつるんでいればそれで幸せだった。

会長であるカザリームが、魔王の 一柱 ( ひとり ) として台頭してからは、関係を絶っていた。

理由は簡単で、ラプラスが遣り過ぎるからである。

仮初の協定を結ぶ以上、魔王同士の揉め事は御法度であった。

だが、ラプラスに仕事を頼んだならば、必ず酷い状況になるのが目に見えていたからだ。

ここぞという時しか、役に立てないとラプラスも自覚していた。

ラプラスは、血を見れば見る程、止まらなくなる性格をしていた故に。

彼が頂点に立つ意思が無いというのも、その性格に由来する。

だからこそ、万が一の切り札としてラプラスは温存されていたのである。

だが、そんな彼に目的が出来た。出来てしまった。

この世に混沌を!

もっと世の中を混乱させて、阿鼻叫喚の騒ぎを巻き起こすのが彼の夢。

真性の狂人であり、もし話し合う機会があったならば、ユウキと気があった事だろう。

彼がその目的を持った事は不幸な出来事である。

仲の良かったクレイマンが、魔王リムルに殺された事がきっかけとなった。

目的の無かったラプラスは、親友の死によって目的を得たのだ。

恐怖と混乱を撒き散らし、世界を発狂せしめる為に、彼は行動しているのである。

カガリは中庸道化連の仲間達を巻き込んだ事に後悔は無い。

この局面、最終決戦だからこそ、彼等の力が必要だと決断していた。

自身が魔王カザリームであった時、ラプラスをレオンにけしかけていたならば、結果は違っていたかも知れない。

ラプラスの狂気と実力は折り紙つきであり、あの時に協力を求めていれば、今頃は違った道を歩んでいたかも知れないと思う。

クレイマンも自分の片腕として未だ健在であっただろう、そう思うカガリ。

しかし、全ては結果論に過ぎない。

当時の自分は自信家で、レオンを完全に舐めきっていたのだ。

それを後悔しても今更であり、反省し次に生かすべきなのだが……

カガリに反省という言葉は無縁のものである。

カガリはラプラス程に仲間意識が強い訳でも無いので、弱者が淘汰された事については何も感じてはいなかった。

ただ、少しだけそういう道もあったのだろうか? そう思っただけの話である。

この戦に、嘗ての仲間達を巻き込んだ以上、半端な事は出来ないし、するつもりもなかった。

自分の力は大きく増大した訳だが、手駒が少ないのは心許無い。

故に、最も信頼する者達を呼び寄せ、力を与えた。

ヴェルダに紹介し、それぞれに大量の魂を与えて貰ったのだ。

魔王種を得て、覚醒に至る。

ヴェルダは如何なる技を用いたのか、魔法のように彼等に望むだけの力を与えてくれた。

今では、それぞれが覚醒魔王並みに強化されている。

レオンの配下の騎士達も大きく力を増したようであるけれども、所詮カガリ達の敵では無いのだ。

それを思うと滑稽であり、精一杯の抵抗を見せる騎士達が哀れでもある。

と同時に、心の奥底から込み上げて来る愉悦に、ついつい笑みが毀れてしまうのだ。

(馬鹿なヤツ等。所詮、我等に勝てる筈も無いのに)

そう思い、優越感に浸りながら、カガリもレオンに向けて歩を進めるのだった。

激しい戦闘が始まり、状況は一気に傾いた。

中庸道化連は強すぎた。

レオンの配下の騎士達も、悪魔との融合をしていなかったならば、今頃は皆殺しにされていたであろう。

覚醒魔王級である中庸道化連の圧倒的なまでの強さに、レオン配下の騎士達はまるで歯が立たなかったのだ。

寧ろ、まだ全滅していない事を賞賛しても良い程である。

それ程までに、カガリの連れて来た魔人達は凶悪であったのだ。

(このままでは不味いな)

レオンは状況の悪さを分析し、歯噛みする。

そして何より――

「うふふふふ。レオン、貴方ももうお仕舞いね。貴方の部下も頼りにならないようだし。

それに貴方、この状況では本気を出せないでしょう?

判っているのよ、貴方の弱点。

貴方は、甘すぎるの。

貴方がユウキ様と戦っているのを見て思ったわ。

コイツ、部下を庇って本気出せない甘ちゃんなんだ、ってね。

笑ってしまうわね。

天使20万を使い潰しても痛くもないワタクシ達と違って、貴方は百万の住民を守るつもりでいる。

そんな者同士が戦闘になって、本気で勝てるとでも思っていたのかしら?

まさか、守りたい思いが力になる! とか、青臭い事を考えているのでは無いでしょうね?

貴方が拾って来た孤児や、虐げられた者達が集まって、この都を創ったっていうのは調べたのよ。

そして、今までの貴方の行動を分析もしたわ。

偽悪的な言動が目立つけれど、貴方は本当は優しい人間なんでしょう?

ええ、判っていますよ。

貴方のその、否定したいという思いも、ね。

でもね、どれだけ否定しても、貴方が本気を出せないという現実は変わらないわね。

何しろ、貴方の能力は強力過ぎて、本気を出したら国が消滅してしまうもの、ね!」

――そう、実際の所、カガリの言葉が真実であった。

レオンの力、 究極能力 ( アルティメットスキル ) 『 純潔之王 ( メタトロン ) 』は大規模殲滅に適する、広範囲型の能力なのだ。

本気を出せば、この魔法都市国家を内部から崩壊せしめる事になってしまうだろう。

そしてカガリは、それを見越して天使により結界外を封鎖し、自分達のみで潜入して来たのである。

本気を出せないレオンに対し、十分過ぎる戦力を用意して。

そして今、状況は見事に、カガリの望む通りとなっていたのだ。

カガリは嬉しそうに、笑いながらレオンを攻める。

甚振るような攻撃にて、楽しそうにレオンの退路を断つカガリ。

長きに渡る恨みを晴らすべく、復讐の時を迎えたカガリは最高に良い気分になっていた。

覚醒魔王の力と 熾天使 ( セラフィム ) 級の天使の力、その両方を融合させたカガリは、真性の化け物になっている。

であるにも関わらず、あくまでも策を弄してレオンを追い詰めて見たいという欲求に駆られていた。

そして、それは成功していたのだ。

「ねえ、今どんな気持ち? 見下していたワタクシに追い詰められて、どんな気持ちなのかしら?」

カガリの持つ 神話級 ( ゴッズ ) の片手剣が、レオンの 黄金円盾 ( ゴールドサークル ) を切り裂いていく。

辛うじて攻撃は全て捌いているものの、地力の差によりジワジワとレオンは押されていた。

聖炎細剣 ( フレイムピラー ) を突き出すものの、カガリは完璧にその攻撃を受け流して見せた。

「黙れ。貴様程度に本気を出すまでもない」

レオンは動じずに答える。

確かに分は悪い。だが、まだ慌てる段階では無いのだ。

レオンもまた、勇者として覚醒した者である。能力に頼らずとも、基本の戦闘力だけでも十分にカガリ程度を倒せる自信はあったのだ。

だが、それはあくまでも少し前までの話である。

今のカガリは精神生命体となっている。つまりは、エルフの外見をしているが、中身は別物であるという事。

カガリ――魔王カザリーム――は、本来は後方支援が得意な遠距離支援型の魔人である。

手駒を操り、目的を達成する事を得意としていた。

であるから、自分が正面から戦っても強くないのを十分に熟知していた。

まして、元の魔王の肉体であったならば一般的な魔人程度には戦えたものの、今のエルフの状態では全然戦えない事を、ダムラダに敗北した時に思い知ったのである。

だからこそ、 創り変えた ( ・・・・・・ ) のだ。

究極能力 ( アルティメットスキル ) 『 支配之王 ( メルキゼデク ) 』によって、自分の肉体をも完全に支配してみせた。

今のカガリは、レオンとも互角以上に戦える肉体能力を持ち、それを支える高い戦闘センスを『 支配之王 ( メルキゼデク ) 』が代行している状態であった。

故に、レオンの攻撃はカガリに通用せず、カガリは戦うごとにレオンの戦い方を吸収し、成長していく。

レオンにとって、非常に悪い状況となっていたのだった。

口では余裕のある所を見せたレオンであったが、流石に異常であると直ぐに悟った。

かといって、カガリの言う通り、本気を出せる状況でもない。

相手を余りにも甘く見過ぎていたと、レオンにも焦りが生じる。

その時、ついにカガリの剣撃が軽くレオンの脇腹を掠める。鎧の隙間から入った剣先により、小さな切り傷がレオンに付けられたのだ。

カガリはそれを見て、ニンマリと邪悪に嗤った。

「うふふふふ。あらら、あらあら。

レオン、貴方ったら、とうとうワタクシの剣を捌き切れなくなったのではないかしら?

ワタクシの動きは更に鋭くなっていきますわよ? 大丈夫かしら?

ワタクシに泣いて謝り、土下座して忠誠を誓うのならば、命は助けて差し上げますわよ?」

「ッフ。黙れ、貴様如きに下げる頭は持っていない!」

「あらまあ、そう仰ると思っていました。

では――」

そこで一旦言葉を切り、邪悪な笑みを深くするカガリ。

そして、

「手前の綺麗な顔を涙でぐしゃぐしゃにして、後悔塗れにしてやるわ!!

裸に引ん剥いて、手足を切断して達磨にして、お前の守った住民達の前を首輪付けて引き回してなぁ!!

ぎゃあぁっはっはっはっはーーーー!!

惨めで無様なお前を見て、住民が絶望するのを見るのも一興だろうぜ。

泣いて許しを乞うても、もう許さねーぞ。

無様な手前の前で一人ずつ惨殺し、最後は犬のエサにでもしてやろう!」

そう大声で言い放ち、哄笑する。

「ほーーーっほっほっほ。素晴らしいぃ!! 流石は会長!!」

「うん、楽しそう。アタイも楽しみ!」

「流石やでぇ、その考えは無かったわ。アッシでは到底思いつかん、残虐な仕打ちやでぇ!」

カガリの発言を聞き、興奮して絶賛する中庸道化連の一同。

流石のレオンも、想像し顔を顰める。

下種にも程があると考えて。

カガリはニヤリと笑い、

「うふふふふ。いいのよ、レオン。

無様を晒すのが嫌なら、この国を滅ぼしてしまっても。

貴方が本気を出すなら、ワタクシも正々堂々と本気で相手をしてあげても宜しくてよ?」

出来ないだろうと嘲るように、レオンを挑発する。

仮にレオンがそれを選択したとしても、カガリにとっては問題ないのだ。

その時は、正面からレオンを撃ち破り、自分の強さを見せ付けるだけの話であった。

いまや、レオンに脅威を感じる事が無い程に、カガリは自分が強くなったと感じていたのだ。

レオンの高いプライドをへし折れるならば、手段はどの様なものであっても問題ないのである。

レオンはカガリの反応から、それがハッタリでは無いと見抜いた。

だとすれば、カガリは実際に、自分に匹敵するかそれ以上に強くなっている可能性がある。

どの道、このままでは住民に被害を出さずに終わらせる事は難しい。

「レオン様、我等の事はお気になさらず!!」

「この様な外道共、野放しには出来ませぬぞ!」

アルロスとクロードが、揃って進言してきた。

彼等は彼等で、必死の状況のようであったが、レオンを馬鹿にされては黙っていられなかったようである。

そう。どの道、自分が敗北したならば、国の者達も無事では済まないのだ。

(許せ、必ずこの外道は殺す!!)

レオンは覚悟を決めた。

どちらにせよ、この外道共を倒さぬ限り住民の安全は保障されぬのだ。

ならば、自分に出来る事をするだけであろう。

そう考え、その強大な 能力 ( チカラ ) を解き放とうとして――

「お待ち下さい、レオン様。心配せずとも、この城を町と隔離致しました」

清涼なる女性の声にて、理性を取り戻す。

ミザリーと言う名の 悪魔王 ( デヴィルロード ) 。そして、今はレオンの協力者であるその女性。

その、ミザリーの能力により、城は完全に外界と隔絶していた。

様子を伺い、状況に応じた最適行動を取る事を優先したミザリー。

そのお陰で、今一度、状況は変動する事になる。

カガリはミザリーの出現に不愉快そうに眉をひそめた。

「あら? ギィの腰巾着ではなくて?

貴方、勝手な行動を取れたのね。

てっきり、ギィの命令でしか動けないと思っていましたわ」

「お久しぶりです、カザリーム様。

てっきり野垂れ死んでしまったものと思っておりましたが、しぶといのは相変わらずですね」

「っふ、ふふふふふ。言うじゃねーーか、ギィの影に隠れているだけの雑魚が!!」

「試してみますか? まあもっとも、時間を稼げば此方の勝利です。

共闘関係にある魔王リムルへの応援を依頼しましたし、間も無く援軍が駆けつけるでしょうから」

「はあ? 魔王リムルへの応援だと? く、ククク、うふ、うはははははははぁあああ!!!」

そのミザリーの言葉に、カガリは笑い出した。

それは大爆笑になり、カガリの仲間の道化達も同様に嘲り笑う。

「何が可笑しいのですか?」

不審に思い、ミザリーが問う。

「うふふふふ。馬鹿め、魔王リムルは死んだんだよ!!

あの忌々しい魔王は既に居ない。今頃は、リムルの部下達も大混乱の真っ最中さ!

醜く仲間割れするか、新たな魔王を名乗り分裂するのか。

どっち道、そう簡単に纏まりはしないでしょうねぇ。

当然、応援なんて出る筈もないって事よ。お解かりかしら?」

勝ち誇ったようなカガリのセリフに、流石にレオンとミザリーも表情を変えた。

予想外過ぎた。

あの出鱈目な魔王リムルが、真っ先に脱落するなどと、簡単に信じられる話では無い。

だが、目の前のカガリの様子は、決して嘘を言っているという感じでは無かったのだ。

「馬鹿な!? あのしぶとい魔王リムルが、そう簡単にくたばる訳がない!」

「ギィ様も認める魔王リムル様が、そんなまさか……」

二人の反応に、カガリは優越感に満たされ、答える。

「うふふふふ。

そうね、絶望を味わうのもいいかもね。

この大戦、我等の勝利は最早揺るがないの。

何故なら、ね――

魔王リムルを滅ぼしたのは、魔王ミリムなのだから。

この意味が判るかしら?

最強の存在である、魔王ギィ・クリムゾンと魔王ミリム・ナーヴァ。

そして、忌々しい魔王リムル。

その3名の内、魔王ミリム・ナーヴァはヴェルダ様に下った。

そして、魔王リムルは滅びたのよ。

残る警戒すべき存在は、魔王ギィ・クリムゾンのみ!

そのギィにも、最強の勇者が向かっているのよ。それ所か――

うふふふふ。ね、理解出来たわね?

ミザリー、貴方もこんな所で、ギィの死に目にも会えずに死ぬ事になるわね」

衝撃を受けるミザリー。

そして、レオンもまた。

そんな二人に、

「さあ、それでは始めましょう。

外界と隔絶したのなら、レオンも本気を出せるわね。

ならば、ワタクシも本気で相手をしてあげる。

そして絶望を知るがいい!

この俺様、大魔王カザリームの力を見せてやろう!」

そう言うなり、カガリ――いや、カザリームの肉体が創り変えられる。

美しいエルフの女体から、最適化された魔王カザリームの本来の肉体へと。

そして、激しいパワーを迸らせてミザリーの頭を掴み、そのまま地面へと叩きつける。

カザリームにとっては、単なる準備運動といった所であった。

反応が遅れて、その攻撃をまともに受けてしまったミザリー。

激しいエネルギーの衝突により、多少だがダメージを受けてしまったようだ。

明らかに近接戦闘能力も高まっており、油断したならばレオンも同じ目に会うのは一目瞭然であった。

だが、レオンは口元に笑みを浮かべる。

「自惚れるなよ、カガリ。いや、カザリーム!

もう一度、以前と同様に貴様を葬ってやろう」

応じるレオン。

隔絶された空間であるならば、レオンも本気で戦えるのだ。

ミザリーも余力は十分であるようで、平然と立ち上がり構えを取った。

こうして、外界と隔絶した城の中で、カザリームとレオン、そしてミザリーの戦闘が開始したのである。

魔王リムルが滅んだという話の真贋を確かめるのは、この戦闘が終わってからだと意識を切り替えたレオン。

ミザリーも、自分如きが主である魔王ギィ・クリムゾンを心配するのは不敬であると、目の前の敵に意識を集中させる。

どっちにしろ、その話が本当であれ嘘であれ、カザリームは滅ぼすべき敵なのだから。

………

……

…

そして二人は、絶望的なまでの力の差を前に、そのプライドを叩きのめされる事になる。

覚醒したカザリームは、自らを大魔王と名乗った。

そして、その名に相応しき力を証明して見せたのだ。

二人で掛かって尚、カザリームを倒しきれない。

四凶天将カザリームは、自らの能力を使いこなし、レオン達を追い詰めていく。

そして――

戦いはより激しさを増し、大戦二日目は過ぎ去ったのだった。

詰め込みすぎたと反省。

肉付けが少なすぎる感じになってしまいました。

後日見直すかも知れませんが、内容は変更しない予定です。