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第二十九話 未遂

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第二十九話 未遂

「俺は正直、自殺をした本人も罪に問われるべきだと思うんですよね」

「自殺も罪って、どういうこと?」

「だって、人を殺すんですよ?

結局は同じじゃないですか?」

「でも、やむを得ない事情で自殺をする人もいるのよ?

死ぬことで気持ちが楽になる人だって…」

「それでも、他殺だったやむを得なくて人を殺すこともありますよ?

正当防衛でなく、気持ち的な問題で殺してしまった場合は、罪になる。

殺せば気持ちが良くなることだってあるんですからね。

別にその理由が恨んでいるからとかでなくて、いじめられていたり、家庭環境が悪かったとしてもね」

「でも、自殺は他殺と違って本人を裁かないからそもそも罪でないんじゃ?」

「罪っていうのは、裁けるからじゃなくて、そのことをしたか発生するものだと、俺は思っている。

そもそも罰も、人を罰するときのためだけでないと思っている」

「でも、それじゃあ罰は受けることはできないんじゃ?」

「たとえ実際に決められた罰を受けなくても、実際に自分がこれくらいの罰を受けなければならないという罪悪感を感じることはできるはずです。

そうすれば、少しくらいは自殺が減ると思うんです。

自殺未遂の場合も、死ななかったなら、それは他殺未遂も同じだから、同じように裁かれるべきだと思うんですけどね」

「じゃあ、私が今しようとしていることは、罪ってこと?」

「そうかもしれないな」

「それなら私、もう少し人を幸せにするために、そして罪を犯さないために生きてみるわ」

「それはよかった。

ああ。それと、今言ったことは、法律とか宗教とかとは全く別の、全て私の考えに過ぎないっていうことだけ、忘れないでくださいね。

仮にこれが色んな人に広まって、変に糾弾されても私は何も言えないので、変に責任を負わさないように頼みますね」

「わかったわ。

私はあなたと、それだけは絶対に約束するね」

そもそも俺がこの世界に来たのって、自分から死んだからなんだった。

彼女は橋から離れた。

そうしたら周りから人が集まってきた。

「こいつ、説得させたぞーーー!」

「おーー!凄すぎるー!まさに英雄だ!」

俺がみんなから注目されているとき、横からだんだんと足音が迫ってきた。

「お姉ちゃん!無事なの?」

ん?なんか聞き覚えのある声だな?

「ええ。お姉ちゃんが間違っていたわ

……キーヌ」

「え?!」

この女性って、コキーヌの姉なのか?

でも、声からして絶対あいつだったし、流石にこんな名前他にはいないだろうし。

「お姉ちゃんを救ってくれたのって、もしかして?!」

「救ったというよりは、ただ話しただけで…」

「何を言ってるんですか?

この人はねぇ。飛び降り寸前だったお姉ちゃんを説得してくれた人なのよ!」

「はい。まあ、そんな感じです」

「そうなの?!

それなら、本当に、本当にありがとう。

姉は元々メンタルが弱くて、すぐこんなことを言い出すから、私いつも困ってて、今日なんて飛び降り自殺するなんて聞いたから、驚いて駆けつけたら、まさかこんなことになっていたなんて」

「でももう、あんなバカな真似はなどとしないわ。

説得されてから全てを悟って、もう真面目に生きていこうと思うわ」

「お姉ちゃーん!お姉ちゃーん!」

なんか俺、無理やり説得しろとか言われて思ってることとりあえず話言っただけなんだけど、人を救ったみたいになってるな。

まあ、とりあえずよかった。

そして俺は男たちに担がれて、

「英雄に万歳だ!英雄!英雄!英雄!」

と言われ続けた。

すごいぞ。まだ村のためにモンスターの1匹も倒してないのに、胴上げまでされるなんてな。

「いったい何の騒ぎなんだ?」

「とっトンプリー!」

「人だかりができていて何かと思えば、まさか君が胴上げなんてされているから驚いたよ」

「体調悪そうだったけど、大丈夫だったか?」

「少し横になっていたから、まあ多少は良くなったよ。

それにどうしても、君のノートが心配になってしまったからね。

群衆に紛れて、また盗まれていないかい?

「大丈夫に決まってるだろ?

俺のポケットの中に…え!」

「どうしたんだ?!」

「俺のポケット、底が切られて中だけなくなっているんだ!」

「なんだって?!」