プログレス配布後篇 その03
プログレス配布後篇 その03
大量の『プログレス』を、【魔王】は新たに購入することを選んだ。
まあ、魔族であれば誰でも使えることが分かったからな。
同時に、どうやら魔物が起動させられる場合、何らかの利点が【魔王】にあるようで、試験用にその倍買っていった。
「人族とはあれから、どうでしょうか?」
「うむ……ぼちぼち、と言ったところか。休人は基本的に、クエストという形を通せば大抵のことはやってのける。そこに、定番のフレーズを載せるだけで、その確率が上がる」
「……ちなみにそのフレーズとは?」
「ユニーククエスト、運命、一度限り……どうしてああも、上手くいくのだろうか?」
神算鬼謀な【魔王】でも、休人たちのお頭に関してはまだ分かっていないようだ。
特別を求めてEHOを始めた奴らにとっては、そんな単語など垂涎モノだろう。
「え、えっと……まあ、死なないからこその英雄願望のようなものですね。恐れを無くした結果、その力を振るう先を求めているんですよ。そして、それは自分のためだと、誰でもない自分を必要としていると願います」
「ほぉ、英雄願望か……我が友にも、そのようなモノがあるのか?」
「恥ずかしながら、若かりし頃には。今は家族を守る、そのためだけにやれることをやっていますよ」
「はははっ! その結果が、【魔王】に家族へ害を成さない契約なのだから、英雄よりも偉業を成しているだろうな!」
俺は【魔王】用の武器を提供し、その対価として契約を結んだ。
意図して【魔王】軍が、うちの家族を狙わないという内容である。
まあ、いずれショウが戦いたいというかもしれないので、挑もうとするなら全力で受けてやってほしいとも伝えてあるが。
向こうも向こうで、興味は持っているし。
「さて、私はそろそろ帰ります。【魔王】様も、たまにはご連絡してあげてください」
「……まだ足りぬのか?」
「どれだけやっても足りませんよ。せっかく通信の精度も上がったのです、もっと気軽に使ってみてください」
「そういうものか。我が友、そして配下の願いだ……可能な限り、努力はしよう」
同じ『プログレス』使用者は、システムの恩恵として連絡も取り合える。
そうなれば……アイプスルに居る、あの娘も少しは喜ぶ機会が増えるからな。
「最近は……どう、なのだ?」
「子供たちのお姉さんとして、とても楽しそうですよ。誰も彼女を拒みませんし、彼女も拒むようなことはありません」
「そうか……」
その言葉に、どこまで深い意味があるのかは【魔王】のみぞ知ること。
……だがまあ、なんだか娘を気に掛ける父親みたいだったな。