布教活動 前篇
布教活動 前篇
意図してルリ教団の上層部に、失名神話の情報を漏らした後。
奴隷(仮)騎士ことフィーヌに語ったように、布教を始めてみた。
だが、俺の行う布教はそんじょそこらのものとは一味違う。
ビラ配りでも拡声器による演説でもない、シンプルかつ卑怯極まりない手段。
「──つまり、これです」
「…………」
人々が身に着けている『プログレス』。
その普及率はすでに休人九割、原人八割以上となっていた。
そんな装置における、[ステータス]の開示と能力詳細画面。
鑑定スキルが無くとも使えるシステムは、原人たちから大変好まれている。
──というわけで、そこに細工をした。
「ずいぶんと回りくどいですが、これならば確実に目にします。というより、加護を得た場合は自動的に詳細が表示されるようになりましたので、否が応でも目にします」
「…………」
「ふっふっふ、強制的に情報はアップデートしていますので、抵抗は不可能です。さぁ、人々よ知るのです! ただそれだけで、我らが失名神話は再び幕を──」
「いや、やり方!?」
うおっと驚いた衝撃でショック死、そして蘇生後にフィーヌを見る。
……俺が首輪の設定を予め弄って無かったら、この時点で主殺しにより死んでいたな。
「もっとこう、無かったのか? 言い方はアレだが、恩を着せるとか地道に広めるとか、少なくとももっとあっただろう!?」
「もちろんありますが……それが実を結ぶには、少々時間が掛かりますので」
「いや──」
「言いたいことは分かります。急激に発展したルリ教団、そこにはたしかにこれまでの積み重ねがあったのでしょう。しかし、私はあえて言いましょう──そんなに都合よく、布教できるなどありえないのです!」
ルリ教団がどうして急速に広まったのか。
それはひとえに、運命的なイベントの数々のお陰だ。
偶然、有能な人材をスカウトし。
偶然、地位を持つ人々を救出し。
偶然、神殿すらも確保に成功し。
それらはすべて、幸運の女神に愛されたルリが居たからこそ。
そんな創作物の展開じゃあるまいし、世界は(ルリ以外には)甘くないんです!
「……分かってください。はっきり言ってしまいますと、貴女が今なお騎士として振る舞えているのも、すべてはルリ様のお陰です」
「…………」
「私への対応、アレを貴族にしていたらどうなっていたか。外見で判断してのことだったかもしれませんが、それでも問題視されていたでしょう。剥奪は無かったにせよ、信用は失っていたでしょうね」
「うっ……」
まあ実際、信用を失い信頼を勝ち得るための手段として奴隷に任命されたのだが。
……この辺りは、放置していた俺にも責任があるからな。
布教活動を通じて、ある程度は回復できるよう手を打とうじゃないか。