第二回家族イベント後篇 その13
第二回家族イベント後篇 その13
ルリの最強最悪の『プログレス』により、強制的にLUC値を五桁までマイナスに落とされてしまった俺。
今動けば、間違いなく転ぶ……そのうえで心肺停止だのクモ膜下出血だの複雑骨折だのといった不運な出来事に見舞われ、そのまま死ぬことになるだろう。
そこでお助け『SEBAS』様。
結界で間接的に操ることで、俺自身の行いでは無いと誤認──また、『SEBAS』の『プログレス』が俺の行動を補助する。
《『セバスチャン』を起動、旦那様の勝利を目的に行動を実行します》
ありとあらゆる可能性を考慮し、結界を操作して俺を延命させてくれた。
ただ生き残るだけでは、おそらく勝てないのがルリの恐ろしい点である。
「……正直、喋ったら舌を噛んでそのまま死ぬぐらいの不幸が起きそうなんだが」
「ふぅ。アナタ、いくら何でもテレビの見過ぎじゃないの?」
「いやいや、マジゅ──」
《……旦那様、舌を結界でお包みしていなければ、この瞬間に死んでおられました。普段の思念による会話を外部に届けられるようにしましたので、そちらをお使いください》
嗚呼、敗北理由が舌を噛んだから、となるところだった。
もしかしたら今この瞬間、ルリがそんなこともあるかもしれないと思ったのかも。
そうなれば、絶対に無いというルリの中での価値観が変わり、マイナス値のLUCが引き起こす不運の仲間入りしたのかもしれないのだ……たぶん、その可能性は高いだろう。
呼吸しただけで死なない、突然心肺停止にならないなどは、ルリがそんなことは絶対に無いと思ってくれているからこそ、世界が都合よく解釈してくれているだけに過ぎない。
ルリの中で小数点以下でも可能性があったら、それはもう事実として事象に登録されてしまう……それぐらいの心持ちで、挑まなければならないのだ。
口を動かすだけで死ぬという恐怖の現象から逃げるため、脳内で能力の発動を念じて対応を開始する。
《なら、こっちも手段は選ばない──“神持祈祷:ドミネイトテリトリー”!》
「あら、ジンリさんが使っているって言っていた『プログレス』かしら?」
《……さすがはジンリ、この中でだけなら局地的に不幸度合いを緩和させられるのか》
《間違いありません…………ですがそれは、ジンリの力を以ってしても、完全には排除できない力であると認識されている、ということになります》
やはり恐ろしや、ルリ。
世界最高峰の大金持ちであり、権力者であるジンリが『プログレス』にその拒絶を発現するほどの警戒をさせるとは。
昨日の敵は今日の友理論で、ジンリの力を少々拝借。
これで、『SEBAS』が突然動けなくなるなどの問題は起きないだろう。