魔王防衛策 その20
魔王防衛策 その20
休人を追い返し、魔族たちが行う宴。
まさに酒池肉林……一部の魔族には、そういうことをメインで楽しんでいる連中も居るみたいだからな。
俺は独り、城のバルコニーに立っていた。
四天王や有力な魔族たち、そして【魔王】とも話を済ませ、参加を許されている一部の魔物からも感謝を告げられている。
空を仰ぐと、そこには瞬く無数の星々が輝いていた。
その手にはグラスを握り締め、中に注がれた飲み物を揺れ動かす。
「うーん、何という非現実感だ。でもまあ、だからこそ一興ってやつなのかな?」
《旦那様──》
「分かってるって……うん、やっぱりか」
俺の体が一瞬光る。
それは死んだ証──だがそれは、俺自身が死んだ証ではなく……庇って代わりに死んだという証だった。
「呪い系の『プログレス』だな。殺した数に応じて、相手の即死耐性や抗呪性能を下げる仕様か……まあ、アレだけ殺せば充分に効果が発揮されるのか」
《──名称は『バイバイバック』、能力名は“デッドデュエッド”。旦那様の予想通りの能力で、発動の前提条件は自身の死となっております》
「死に戻り前提の休人限定か……けど、普通ならシビアな条件だからこそ、効果も著しくなっているわけだな。まあ、実際に倒せていたかは別として」
現在、俺の周りには結界が張られている。
魔力、中でも闇……というか呪いに対する防御性能を発揮する結界で、効果は内側から外側に力を漏らさないというもの。
これは本来、【魔王】を殺すために仕掛けられた最期の抵抗。
残念会をしている辺り、本当にごく一部の者が企んだ足掻き。
おまけに呪殺しても呪いが余った場合、周囲の者を無作為に殺すクソ仕様。
そういうことすらも、『SEBAS』は御見通しだったのでこんな風に準備していた。
「──『生者』よ、どうであったか?」
「ええ……ご覧の通りですね。呪いが何度も私を殺しています」
「ふむ……我自身はともかく、周囲の者たちが危険であったか。やはり、『プログレス』には厄介なモノが多い」
結界の端で、こちらにわざわざ出向いてくれた【魔王】と話す。
今、俺と【魔王】は『プログレス:ライフアライブ』で繋がっている。
かつて、アインヒルドにも使ってもらったこの『プログレス』。
使い手が成長させた結果、状態異常の押し付けも可能になっていた。
それを利用し、俺が呪殺対象になって結界の中で独り自爆。
呪殺をするエネルギーが尽きるまで、ひたすら待つという作戦を提案したのだ。
「それで『生者』よ、この後は?」
「そうですね…………息子が死闘を繰り広げていたというのに、こんな姑息な手を使う方に慈悲は要らないかと。こちらの方で処理いたしますので、【魔王】様にはその権利をお譲りしていただく」
「貸し……いや、我が友にそのようなものは不要か。むしろ、借りと言えよう」
「いえいえ、そんなお気遣いは。私にとっても、これには意味がありますので」
取り出すのは、つい先ほど生成された物。
藁人形型のアイテムを、俺は非力ながら全力で握り潰すのだった。