懇神会 その03
懇神会 その03
ついに始まった懇神会。
俺はある方法で司会の座を手に入れ、会の進行を行っていた。
「──では、開会の言葉をゼウス神様、お願いします」
ギリシア神話の主神による開会宣言。
俺の進行に問題があれば、異が唱えられるところであるが──ゼウス神は舞台に上がると、声に神威を乗せて語りだす。
「ヘルメスのヤツは、急に体調が悪くなったため司会を変わってもらったと言っていた。当のバカが今どこで何をしているのかはともかく……こうして、代役はここに居る。問題がある奴は居るか?」
見た目は老人──もとい老神でも、秘められた神の権威は絶大。
その言葉に逆らうことができる者などほぼ存在せず、できる者も逆らおうとはしない。
先ほど苦言を申し立てていた英霊など、顔が真っ青になっている。
神の意向に背いた、そう認識してしまっているからだろう。
なお、ヘルメス神に関しては普通にこの場に居てバレないように潜んでいる。
会が始まった瞬間など、面白そうに手をこちらに振っていたし。
「問題は無いな。では、これより懇神会を開催する! 各々、ネクタルはあるか? 無い者はすぐに用意せよ!」
ネクタルは神の酒と呼ばれる品だ。
EHOの場合、ごく一部かなり品質の悪い品が地上に持ち込まれるのだが……それでもかなりの高値が付いている。
理由は付加価値が凄いのもそうだが、単純に効果が絶大だから。
不老不死……とまではいかないが、低品質の物でも一時的な完全状態異常無効付きだ。
そんな酒の高級品質版が、ここでは乾杯の品として使われている。
俺の下にもネクタルが注がれ……チラリとこちらを見るゼウス神がいい顔をしていた。
神々が手にしているのは、彼らのサイズに合ったグラスに適した量のネクタル。
対して、俺に与えられたのは──樽、そこに並々と注がれた物だ。
世が世なら、確実にアルハラで訴えられそうな気がしそうだが……神々の世界にそんなルールは無いのかもしれない。
どこかで『うわっ、ゼウス様のアルハラがまた出たよ……』と言っている気がしないでも無いが、遠くに見える創造神様がとても面白そうに笑っており──選択肢は一つのみ。
「では、皆の物──乾杯だ!」
『乾杯ッ!』
「か、乾杯……うぉおおお!」
『ッ!?』
ゼウス神の一言で乾杯を始めようとしていた神々だったが、俺の張り上げた声にそれは止まってしまう。
俺は俺で叫びと共に『SEBAS』が重力操作で樽を持ち上げ、中身を流し込む。
味わうだの楽しむだの、そういった感覚は無く──そこにあるのは死、のみ。
溺死だの臓器不全だの疾患だの、ありとあらゆる要因で俺は死んでいく。
乗り越える手段は無数にあったが、あえて体を張るこの方法を選んだ。
「ふむ……」
「あははははは!」
隣のゼウス神が感心するように頷き、遠くで創造神様が笑っている姿を見てこれは間違いでは無かったと察する。
別空間に仕舞い込む、あるいは収めた瞬間から消すなど方法はあるが……神様相手に隠し事は無理だと最初から諦めていた。
だからこそ真正面から、この試練(仮)に挑んだのだ。
その結果は見ての通り──まずは第一の試練(仮)を突破した。